1980年、順調に連載されていたにも関わらず、この作品が打ち切られた理由は広く知られてます。
作中に実在の学校や人物の名前を無断で描いた為、抗議を受けて連載は打ち切り。該当の号は回収という形になってます。
1980年の『週刊少年ジャンプ』を調べましたが『Dr.スランプ』が5/6合併号から新連載です。
翌年にアニメ化されてとんでもない大人気を誇り、日本中にアラレちゃん大ブームを巻き起こし後の『ドラゴンボール』へと繋がりますがそれはまた別の機会に。
『私立極道高校』の連載終了が11号です。
当時私は大学1年生で、この頃は『ジャンプ』、『マガジン』、『サンデー』は喫茶店で読むのが習慣になってました。
漫画喫茶なる物はまだありません。
近頃はめっきり姿を消す一方のいわゆる「街の喫茶店」です。
漫画や新聞を置いて、くつろぐ空間の手助けをする。
あの頃は日常生活と言っていいくらいにそこかしこに存在してました。
そのせいか当時の『ジャンプ』連載漫画の題名を見ても熱心に読んでいたという実感が湧きません。
いくつかの作品はよく読んだ記憶がありますが喫茶店という制限された空間なのもあり、きっと斜め読みしていたのでしょう。
それでもこの『私立極道高校』の打ち切りはよく覚えてます。
本当に突然だったのですよ。
連載終了の11号に打ち切りの理由が説明されていたのかは、残念ながら覚えてません。
打ち切りに驚いたのとその理由を知っているのに記憶の中でも隔たりはなく、『ジャンプ』が回収措置まで行っているという事はきっと説明されていたのではないかと推察します。
おぼろげながらですが、「別にいいじゃん」と当時思った記憶はあります。
部外者の無責任な考えですね。
当事者にとっては大問題です。
そのあたりの当事者と出版社の事後のやり取りが、松本大洋さんの『東京ヒゴロ』で描かれました。
今回の記事を書くきっかけになったエピソードですが、連載中の作品でもある為詳細は控えます。
現在の漫画含めたフィクション作品で実在する名称はほとんど使われることはありませんね。
必ず少し変えられてます。
つい最近まで『イブニング』で連載された『SUPERMAN vs飯 スーパーマンのひとり飯』も、誰がどう見てもあの店でしょうと判るのに名前はちょっともじってあります。
昔の漫画はゆるかった、で済ませるのは簡単ですがいつ頃から今の様になったのでしょうか。
しっかり検証したわけではなく憶測ですが『私立極道高校』がきっかけの一つではないかと思います。
ジャンプコミックスとして第1巻が発売されてますが、打ち切りと共に絶版に。
奥付を見ると1980年1月15日第1刷となってます。
第1巻が出てまだまだこれからという時にこの様な事になって作者の宮下あきらさんの無念や如何に、と思いますが謹慎期間の後に復帰されます。
そして今も人気が高い『魁!!男塾』へと続いていくのは宮下さんの漫画に描ける情熱の高さ故でしょう。
長らく絶版だったこの作品も当該箇所を修正した「復活版」が上下巻で出版されてます。
当時の原本を手に入れなければ読む事が出来ないというのは個人的に漫画にとって良くないと考えてます。
漫画だけではありません。
映像作品にも多く存在します。
封印作品というやつですね。
でもやっぱり当事者ではない受け入れ側の考えです。
注釈をつければいいという物では無いでしょう。
手塚治虫さんでさえ全集に収録されない作品が幾つかあるくらいですから、商業にも関係してただの漫画読みには測れない様々な事情があると思います。
それでも『私立極道高校』が復刻された事実は素直に嬉しさを感じる次第です。
手元にあるのは元版です。
後の『魁!!男塾』と何ら変わらないキャラクター達。
そして全員デカい!
後に何かの検証本で読みましたが敵キャラがどんどんデカくなる展開はすでにここから健在です。
1巻にはまだ登場しませんが生徒会長の学ランがタタミ六畳じきで、毎夕食に牛一頭を平らげるという恐ろしさ。
今読み返してもなかなかに衝撃を受ける破天荒な発想です。
バイオレンスが全面に出ていながらギャグマンガという範疇に入る宮下ワールドの、正に「先駆け」的な作品は『ジャンプ』を語る上で欠かせないのではないかと思います。
さてこの絶版のジャンプコミックス第1巻。
意外と数は残っていると長年古書店に通っている私の感覚です。
最近はあまり姿を見かけなくなりましたが、復刊される以前は漫画専門の古書店にはよく棚にありました。
理由は色々考えられますが、そんなに入手困難ではないと考えてます。
『魁!!男塾』がお好きでまだ未読の方。
元版は少々プレミアがついた価格なので、復刻された上下巻をお読みになってみてはどうでしょうか。