麒麟・川島とかまいたち・山内が「面白いマンガ」に沼のようにハマって楽しむマンガバラエティ「川島・山内のマンガ沼」。前回放送された、山内おすすめのマンガ『ドンケツ』シリーズの作者・たーし先生をゲストに迎えた回の模様をお届けします。
山内おすすめのマンガ『ドンケツ』とは
川島 たーし先生は、テレビ初登場なんですよね?
たーし テレビで自分のマンガを紹介されたことが今までなかったので、(山内が『ドンケツ』を番組でおすすめして)びっくりしました。
川島 芸人界隈はめちゃめちゃ読んでますよ。
山内 では先生のプロフィールを紹介させていただきます。たーし先生は福岡県北九州市出身。1998年、24歳のときに描いた『KUZU』がちばてつや賞準大賞を受賞。2002年に中古車販売業の青年・原田朝男こと「アーサー」の奮闘を描いた『アーサーGARAGE』でマンガ家デビュー。2011年から『ドンケツ』の連載を開始、外伝も含めたシリーズ累計発行部数は何と365万部を超える大ヒット……という大人気マンガ家さんでございます。
川島 たーし先生の大ヒット作といえばやはり『ドンケツ』でしょうけど、『ドンケツ』がどんなマンガなのかを、大ファンの山内くんから説明させてください。
山内 『ドンケツ』は2011年から2019年までの8年間ヤングキングにて連載。ヤングキングはパンチの効いたマンガが多いんですけど、その中でも頭角をあらわされまして、単行本は全28巻ございます。
『ドンケツ』のストーリーを簡単にご紹介
物語の舞台は北九州・小倉。主人公の沢田政寿は敵対するヤクザの事務所をロケットランチャーで爆破させたことから「ロケマサ」と呼ばれ恐れられている、ならず者の最強やくざ。組長も手を焼くヒラ組員だが、その腕っぷしを買われ、所属する「月輪会(がちりんかい)」の組織抗争へと巻き込まれてゆく。そんなロケマサが男気や不思議な魅力で仲間を引きつけ、裏社会のヒーローのごとく縦横無尽に暴れまくるという作品。現在はヤングキングで第2章が、ヤングキングBULLで外伝が絶賛連載中です。
山内 あまりにも面白いから、「本当に創作なのか?」とか、「もしかして作者の人、反社の人ちゃうか?」とか、めっちゃ思ってたんですよ。でも『ドンケツ外伝』5巻のカバー折り返しにある「19歳の僕です」という写真を見たときに、「間違いない、この人はもともとダメな人なんだ」と思いました。
川島 (ジャージでポーズをつけてる写真を見て)いたよな、こういう親戚の兄ちゃん。「髪型」「ポーズ」「着ているジャージの素材」全部ダメです(笑)。まさしく『ドンケツ』。
山内 組織の一番下です。
ロケマサのモデルは、誰もが知るあのキャラ?
川島 僕は山内君にこの番組で「めちゃくちゃおもろいですよ」とすすめられて読み始めたので、まだ新参者なんですけど、普通のマンガだったらロケマサは主役にならないですよね? まあ名言が一つもない(笑)。
山内 最初下っ端で、出世していくならわかるんですよ。でも出世もない。
川島 これはやっぱり「あえてそういうキャラを描きたい」という思いがあったんですか?
たーし 「他とは違うものにしたい」と考えていて、「こういう主人公は嫌だ」みたいなのを挙げていったんですよ。「自分の周りにこういう人がいたら嫌だな」と思う人を挙げていったら、こんなキャラになっちゃったと。
川島 ロケマサ見ててちょっと思い出したのが『じゃりン子チエ』のテツですね。
たーし それ、後から言おうと思ってたんです。ロケマサは思いっきりテツのオマージュですね。テツが好きで始めたようなものなので。
川島 ただロケマサの場合、家族がいないから抑えられないですよね。テツと違うところはそこです。
たーし しかも、テツほどかわいくもないという(笑)。
マンガ沼ガチアンケート「あのセリフ回しはどこから?」
川島 我々もいろいろ聞きたいことあるんで、事前にアンケートを先生に送らせていただきました。先生からいただいた回答をもとに、ディープな見解をお伺いしていきたいと思います。ということで最初の質問はこちら。
川島 これは山内くんが紹介したときに、おすすめポイントで言ってたことですね。
山内 『ドンケツ外伝』の5巻に出てくるんですけど、先輩ヤクザが集まっているところで、下っ端ヤクザが先輩たちに言うセリフがあって、「バケツいっぱい歳食っとるくせしやがって オレのいいよることがわからんですか」。
川島 あるあるじゃないよね。
山内 「バケツいっぱい歳食っとる」って聞いたことない(笑)。でもニュアンスはわかる。
川島 意味はめっちゃ分かるし、その世界観をちょっと垣間見た感じがして、すごくいいセリフですけども、さあどうやって作っているのか。先生の答えはこちら。
回答
実際のヤクザ語録というよりは、年配の方の言葉を使うことが多いです。それにイジワルや大げさや余計なひと言を簡単なワードで付け加えて、「ヤクザ語録風」に作っています。
川島 ということは、実際にヤクザのみなさんが使っている言葉ではない?
たーし ではないと思います。セリフは「それっぽく」というのを考えて作ってます。この「バケツいっぱい」でいうと、うちの奥さんが使ってた言葉なんです。
山内 ええええええ(笑)!?
川島 いつ? どのシチュエーションで? ちょっと教えてください。
たーし うちの奥さん、僕の8歳下なんですけど、僕に不満があったり文句があったりすると、「バケツいっぱい歳とってるくせに」 と言うんです。
山内 そのまんまの使い方!
川島 奥さんは小倉の方?
たーし そうです。奥さんがなんで「バケツいっぱい」と言うのかといったら、奥さんのお母さんやおばあちゃんが田舎の方で使ってた言葉みたいで。それで「面白いな」と思って使いました。
川島 ちょっと方言的なものでもあるという。子供の頃から絵は上手かったんですか?
たーし 上手い方だったんですけど、クラスの中で僕より上手い子は何人かいましたね。
川島 じゃあその画力はどこで培われたんですか? どこかでアシスタントになって修行したことはないんですか?
たーし まったくなくて。だから本屋さんで「マンガ入門」みたいな本を買って勉強しました。
川島 じゃあ完全に独学ですか?
たーし そうです。だから道具のこともわからなくて。初めて編集の方とお会いしたときに言われた言葉もわからなかったんですよ。ネーム(セリフ・コマ割りなどを入れた「マンガの下書き」)も知らなかった。
川島 ネームを知らない!? 俺らで言うと「ネタ合わせ」を知らないようなもんやな。
たーし 今もあんまりわかってないです。原稿用紙にワク線を引くのも、僕は定規でマジックみたいなのを使って引いてるんですけど、他のマンガ家さんはいろんな道具を使ってるらしいですね。
川島 先生、今も手描きですか?
たーし 手描きです。背景のところで少しだけパソコンを使ってます。それはうちの奥さんがやってるんですけど。
川島 夫婦の共同作業なんですか!?
たーし スタッフが全員家族なんですよ。入れ墨はうちの兄貴が描いてて、スクリーントーン貼るのとか仕上げの作業は、僕の高校の同級生が。
川島 身近なコミュニティでやってるんですね。
たーし で、掃除と、みんなのお昼ごはんを作ってるのがうちの母親です。
川島 そういうすべてをひっくるめて「たーし」、もうチーム名みたいなものなんですね。
たーし 完全に家族経営です。何度か他からアシスタントの方を入れたりしたんですけど、まあ家族の中に入れないんで……辞めてしまいまして。
川島 まあ家族の絆には入れないですよね。
山内 それは特殊やなあ。
川島 われわれ、けっこうな量のマンガを読んでますけど、先生は上手いですよね。相当上手い。
山内 格闘シーンもめっちゃ見応えありますし。
川島 めちゃくちゃ痛そうやしね。「ちょっとやりすぎじゃないかな」というところもあって……殴るのはまだええけど、「鼻を食う」とか。ダメですよあんなの(笑)。
たーし 担当さんにもそのとき言われましたね。「これはちょっと厳しいかも」とか。
山内 マンガなのにモザイク入ってるシーンありますよね(8巻に掲載)。
川島 そういうところは痛いでしょ、描いてても。
たーし そうですね。「なんか嫌だなぁ」とか思いながら(笑)。
川島 われわれはその10倍思ってます(笑)。
たーし先生へのガチアンケート後編は、次回オンエアの「川島・山内のマンガ沼」で!
(構成:前田隆弘)
【放送情報】
川島・山内のマンガ沼
読売テレビ●4月24日(土)深2:33〜3:03
日本テレビ●4月29日(木)深2:04〜2:34
たーし先生ガチアンケート後編と4コママンガ王決定戦を放送。
(Tverでも配信中!)
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