法月理栄さん第7回。『利平さんとこのおばあちゃん』インバネスと健さん再び。「バスが行く」「健さんの贈り物」

法月理栄さんの記事第7回です。

 

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おしげさんと仲良しの芸術家先生以外で、再び話の主役となる愛すべきキャラの再登場を紹介しましょう。

 

ビッグコミック』昭和62年3月25日号「バスが行く」

『ビッグコミック』(小学館)昭和62年3月25日号

おしげさんの村や近隣の他の村を繋ぐ民間会社が運営する路線バスが廃止になり、代わりに村営バスが走るという話題から話が始まります。

『ビッグコミック』(小学館)昭和62年3月25日号

鉄道やバスの利用者が少ない赤字路線の廃止は、この作品から36年経った今も深刻な問題として変わりません。

代替の手段が用意されているとはいえ、これまであったものがなくなると社会から取り残されていくような不安を村の人々は抱えます。

そんな村人たちの不安を知らずに、畑作業のおじさんから大根をもらう「インバネス」さん。

『ビッグコミック』昭和62年3月25日号

電子版第2巻に収録された「木枯らしのインバネス」に登場する、村に居ついた浮浪者です。

少し元気が無さげなおしげさんとすれ違う際に声をかけると、バスが村に来なくなると聞かされます。

その後「インバネス」は村から姿を消し、消息不明に。

「インバネス」に大根をあげたおじさんは、黙って居なくなった事に怒り心頭です。

廃止される路線バスと居なくなった「インバネス」を重ねて、「村を捨てられたみたいだ」とつぶやくおしげさんのセリフが後の展開に繋がります。

そして路線バス廃止から村営バスが走り始めたある日、「インバネス」を町の駅のバスターミナルで見たとの情報がおしげさんに届きます。

翌日早速駅へ出かけるおしげさん。

この行動の速さがおしげさんらしくていいですね。

初めて乗る村営バスはこれまでより小さいマイクロバス。

「こういうバスもええもんだ。なにも苦にすることはなかったな」と話すおしげさんの笑顔が素敵です。

『ビッグコミック』昭和62年3月25日号

法月さんはこんな細かい表情の描き分けが本当上手いですよね。

村営バスから路線バスを乗り継いで駅へ着いたおしげさん。

「インバネス」を見つけます。

この駅の待合室の描写がいいんですよ。

ダイヤル式の公衆電話に当時感満載の自販機。

自販機のメーカー名がどう見ても実在のロゴのままもじって無いのが気になりますが、細かい事はスルーします。

段ボールを布団代わりにし、床に寝っ転がる「インバネス」。

段ボールにはバス路線廃止反対と大きく書かれてます。

既に廃止され新しいマイクロバスが走っている現状から、おしげさんは「インバネス」に村へ戻るように言いますが何故か嫌がる「インバネス」。

村の人が迎えに来て、山道を登る車のコマで終わります。

その前のコマで描かれた「インバネス」の複雑な表情。

『ビッグコミック』昭和62年3月25日号

わざわざ来てもらって申し訳ないのか。

帰りたくないのか。

余計な事をしたと後悔しているのか。

何故かはわかりません。

私はここを迎えに来てもらって嬉しい笑顔にしないのが法月さんの上手さだと思ってますがどうでしょうか。

 

ビッグコミック』昭和62年6月10日号「健さんの贈り物」

『ビッグコミック』昭和62年6月10日号

電子版第2巻収録の「健さん」が再登場です。

前回の話で次の仕事の為にお世話になったおしげさんと涙の別れとなった健さん。

作中ではどれくらい経ったのか説明されてませんが、突然健さんがおしげさんちに帰ってきます。

『ビッグコミック』(小学館)昭和62年6月10日号

しばらくおいて欲しいと頼む健さん。

息子が帰ってきたかの様に喜ぶおしげさんは、理由など聞かずに面倒を見ます。

健さんも力仕事をしておしげさんの手伝いをし、半月も経った頃。

ただおしげさんちにいるだけの健さんを訝しがり始める村の人々。

そしてその評判はおしげさんの耳にも届きますが「いらぬお世話」と反発します。

結局少し様子がおかしい健さんに理由を聞くおしげさん。

15年ぶりに郷里へ帰った健さんは、おふくろさんが亡くなっていたことを知ります。

『ビッグコミック』(小学館)昭和62年6月10日号

母親へ何一つ孝行が出来なかったことを悔やんだ健さんは、代わりにおしげさんに孝行しようと再訪したことを話します。

その気持ちを受け入れたおしげさん。

じいちゃんの墓参りに健さんを誘います。

途中でいつも一休みする木の根元に座るおしげさん。

ここでおしげさんの足だけが描かれ、右足のかかとで左足を掻くコマがありますが、半分は吹き出しです。

『ビッグコミック』(小学館)昭和62年6月10日号

残り半分は顔でも何でもいいのに、何故かこのしぐさが描かれているのにちょっと感心してしまいました。

私だけの事だとしたら申し訳ないのですが、このしぐさは年配の女性がよくやる印象が大きいんですよ。

勿論男性もするでしょうが、子供の頃足をこうやって掻くおばさんやおばあちゃんを見た記憶が呼び覚まされました。

こういうさりげない表現を深読みするのが『利平さんとこのおばあちゃん』を読む楽しみの一つです。

そしてしばらく日々が経過したある日、おしげさんは一人でじいちゃんの墓参りへ行きます。

いつもの一休みする木の根元に、平らで座りやすい大きな石が置いてあるのに気づいたおしげさん。

健さんが自分の為に置いたに違いないと、座るおしげさん。

『ビッグコミック』(小学館)昭和62年6月10日号

それを木の陰から見て黙って去っていく健さん。

子供がいないおしげさんと、まさに「不器用」な健さんとの心温まる話です。

柱に『利平さんとこのおばあちゃん』単行本第2集の広告があるのもいいですね。

この小学館から出た単行本はまだ手に入ってません。

早く入手したいとは思ってますが、中々難易度が高く、いつになるやらです。

今回はこの2話の紹介です。如何でしたでしょうか。

それでは第8回の「法月理栄の世界」をお待ちください。

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