阿保美代さんは1970年代から1990年代にかけて多くの作品を発表され単行本も多く出版されている漫画家さんですが、恥ずかしながら私が知ったのは最近になってからです。
その作品のほとんどが『少女フレンド』と『mimi』に集中し、この二つの雑誌にはあまり触れてきませんでした。
数年前に漫画雑誌の切り抜きを手に入れた際に「阿保美代」さんの作品が混じっており、これがとんでもなく優れたメルヘン漫画で素晴らしい画力と共に感嘆させられることしきりです。
現在はあまり触れられることが少ない漫画家さんだと思い、是非もっと再評価されて欲しいと願って記事を書く次第です。
この阿保美代さんの切り抜き、全部で10作品あります。
短いページの作品ばかりですが、全部は無理なので今回は猫を題材にした短編を2本ご紹介しましょう。
ファンタジック・メルヘン 「雪の子ねこ」
柱に初登場とあります。「mimi」に初掲載の作品です。
『アボサンのふるさとメルヘン』(第1巻)という単行本に収録されてます。
全6ページ。
女の子が箱に入れられた子ねこを道端に捨てる描写から始まります。
目を覚まし、ママを探し出す子ねこ。
雪だるまをママと認識します。
振り始めた雪。
寒いからママの中に入っていい? と子ねこ。
雪だるまからは返事はありませんが、とても良い笑顔で眠りにつく子ねこ。
朝になり女の子が捨てた子ねこを心配して見にきますが箱の中にはいません。
そして溶けかけた雪だるまのコマで終わります。
とてもとても切なくて悲しいメルヘンです。
この歳になってこんなの読むもんじゃありませんね。
胸が締め付けられてキュウキュウしっぱなしです。
雪の野原が舞台の為前半の3ページは描きこみも少なく白い印象ですが、後半3ページは降り注ぐ雪の描写やとても効果的なコマ割りが素晴らしいの一言に尽きます。
降りしきる雪の中、雪だるまの前で「ミャウミャウ」と鳴く子ねこのコマ。
ページの縦全てを使い3分の2を雪降る夜空にあてて、下の方に小さく描かれる子ねこ。
同じページの隣の縦5コマの描写とのバランスが凄く良い。
子ねこがどうなったのかのオチはあやふやです。
短い6ページで幻想的な描かれ方も影響しているのか、感傷的な気持ちにはなりますが悪い読後感ではありません。
でもやっぱり切ないです、はい。
メルヘンの世界 「野原のネコさん」
最後のページの裏面に週刊少女フレンド第7号の予告があり、『はいからさんが通る』最終回となってます。
そこから『mimi』昭和51年4月号の掲載ではないかと推察されますが確証はありません。
というのもこの『野原のネコさん』は検索で調べましたが、阿保さんの作品リストなどに記載されてないのですよ。
あくまで私が調べた限りですが、単行本にも未収録の様です。
全5ページ。
女の子が汚れたネコのぬいぐるみを拾って帰ってきます。
野原で泣いていたネコさんと一緒に遊んで友達になったと女の子。
掃除してぬいぐるみを綺麗にしてあげます。
その夜眠りについた女の子の枕元にネコさんが現れます。
汚れていては帰ることが出来なかった人形の国に綺麗にしてもらったおかげで帰ることが出来ます、とネコさん。
「ありがとう」とお礼と共に、白い馬に乗って帰っていくネコさん。
涙を流す女の子。
一緒に遊んだ野原と女の子の後ろ姿で終わります。
こちらも切ないですね。でもとても癒される話です。
そして点描や『雪の子ねこ』同様、黒の中の白点の描かれ方がとても素晴らしい。
多くのコマが丁寧に描きこまれ、線や点をとても大事になさる漫画家さんだと感じます。
残りの8作品は男と女や大人と子供、擬人化された蛍など様々な設定です。
丁寧に描き込まれた絵とメルヘンはどの作品も変わりません。
また10作品全てではありませんが、最後のコマの下に小さく「おしまい」と手書きの文字が入っているのが何とも言えません。
私の個人的な感覚でしょう。でもこのちっちゃな「おしまい」がとても刺さるんですよ。
メルヘンと癒しに「ほっこり」が足されるような気分になります。
単行本が欲しいですね。
良く行く漫画古書店には今のところありませんでした。
ネットで買う習慣は無い為、地道に足で探していきます。
それがまた楽しいアナログ世代ですからね。
興味を持たれた方、お勧めしますよ。
是非読んでこの独特のメルヘン世界を楽しんでください。