キャラクター、テンポ、画。3拍子揃った、かたおかみさお初連載の名作『GET PLEASURE!』の魅力

『GET PLEASURE!』

1989年頃の『週刊ヤングマガジン』は私の好みにピッタリの毎号が楽しみな雑誌でした。

ゴリラーマン』『シャコタンブギ』『柔道部物語』等々、当時20代後半だった私が夢中になった作品ばかりです。

 

この頃は欠かさず読んでいたヤンマガです。

突然始まったと記憶してますが当然予告などもちゃんとあったのでしょう。

 

かたおかみさおさんという知らない方の漫画。

 

すぐに引き込まれましたよ。

まずその画力。

現在のかたおかさんとはちょっと違う鋭利さを感じる人物像。

『GET PLEASURE!』(かたおかみさお/講談社より)

デフォルメされた表情とシリアスな表情の絶妙な使い分け。

今回久しぶりにじっくり読みましたが、ほんと初連載なの?っていうくらい表情の描き分けが上手いですね。

『GET PLEASURE!』(かたおかみさお/講談社より)

目元、口元、目線、眉。

シリアスな顔もデフォルメされた絵もキャラクターの心情に合わせて実に細かく細かく描き分けられてます。

そして良すぎるくらいに良い会話や場面転換のテンポ。

何と言っても個性極まるキャラクター。

毎回それは楽しみにしてましたが、あっという間に連載は終わってしまいます。

ええ~、もう終わり?とは思いました。

ただこれまでにも面白いのに早々と終わってしまう漫画はありましたから「終わったのならしょうがないか」と納得します。

 

単行本は発売されてすぐ買いましたよ。

記事の頭に使用した物はその時に買った本です。

 

蔵書整理で手放すことは無く、新刊で買ってから30年以上私の手元にあります。

表紙に描かれたドールチックな主人公のイラストの魅力は何年経っても色褪せません。

ネットが無い時代です。絶版になると古書店をめぐるしか入手の手立てはありません。

時が経つにつれこの本は手放すと再入手に手こずるのではないかとの思いが強くなり、また自分の中で面白く読んだ愛着もあってずっと大事にしてきました。

とはいえ保管状態はあまり良かったとはいえず中身は変色してますが、大切な1冊です。

(パラフィン紙をかけていたのでカバーはまだピカピカです)

 

では作品の紹介に進みましょう。

主な登場人物は5人。全員入学したての高校一年生で同じクラス。

『GET PLEASURE!』(かたおかみさお/講談社より)

実は人気モデルのレイカ。学校では目立ちたくなく素性は隠してます(女子)。

そのレイカの幼馴染、清臣(男子)。

お調子者で人気者、ファッションパンクの矢島(男子)。

矢島の友達、森崎(男子)。

4人に興味を持って一緒に行動するようになる学業一番の優等生、和泉(女子)。

 

いやぁ、これだけだと学園漫画としか伝わりませんね。

レイカさんは中学時代にその美貌と高身長で周りから妬まれます。

ただしメンタルは鋼鉄、根性もちょっと性悪なので逆に周りを見下す最強女子。

高校進学後も煩わしいから目立たずひっそりする筈が、矢島という天真爛漫能天気丸出し直球野郎に興味を持って面白がって絡むうちに結局目立ってしまいます。

レイカ・矢島の絡みが話の中心ですが、色々小技小ネタが存分に挟まれとにかくテンポがいい。

 

急いで来て欲しい友人に「加速装置使って来てよ。奥歯かむのよ」なんてレイカさんが言うんですよ。

『GET PLEASURE!』(かたおかみさお/講談社より)

この小ネタ、そのまんまの世代ですから連載時もグッときましたが今読み返してもニヤッとしてしまいます。

(ご存じの方も多いでしょうが元ネタはあえて内緒にします。超が付くほど有名な作品ですけどね)

こんな小さな遊び心も随所にちりばめられて読んでて楽しさが途切れません。

学校内での話やレイカのモデルサイドとしての話を織り交ぜながら進みますが、後半には5人で遊びに行ったり大物海外バンドのライブに行ったりと広がります。

最後はレイカをめぐる諸々で話が進んで終了。

あっという間です。でも無理やり終わらせた感じはせずに、ちょうどよく収まった満点感の方が勝ります。

 

個人的に一番好きな場面を紹介しましょう。

 

体育の授業で周りの女子にハブられて一人になるレイカ。

それに気づいた矢島が男子の方へ無理やり参加させます。

意に反して男子のソフトボールで大活躍してしまうレイカさん。

『GET PLEASURE!』(かたおかみさお/講談社より)

私ここ大好きなんですよ。

立ってるだけでいいからと男子に言われ守備につくも、体が反射してファインプレーをしてしまう。

打席に立たされついバットを振ってしまったらホームラン級の大当たり。

このあちゃ~感あふれるレイカさんの顔がとてもいいのですよ。

ゆるいエピソードです。でもこの大活躍がまた後の展開につながるという上手さ。

ほのかに当時の音楽的要素が入ってるのもまた私にとって良しです。

リアルタイムで経験した音楽の匂いは当時はもちろん、何十年たっても良き香りとして今読んでも再生されます。

もう若かりし頃の思い出と相まって褒めることしかできないのですよこの作品は。

 

かたおかみさお」さんの名前はその後長らく聞くことはありませんでした。

しかしいつだったかNHKの番組だったと思います。

漫画で生計を立てたいという趣旨だったような記憶ですがもう曖昧です。

突然愛猫と一緒に、かたおかさん御本人が画面に登場。

当時働かれていたスナックのママさんも出演されてました。

いやびっくりしましたよ。

同時に嬉しかった。まだ漫画描いてらっしゃるんだと。

 

いえ、私が知らないだけで作品を発表されていたかもしれません。

画面越しに漫画を描く姿を見て、あんなに面白い作品を描けるんだからまだ続けてて当然じゃないかとファンとして感激しました。

かたおかさんの横に鎮座し、頭をボフられる黒猫さんも可愛かったですね。

そして2000年代に入って『Good Job』という漫画に「かたおかみさお」さんの名前を見つけます。

絵柄は『GET PREASURE!』からは女性誌向けに変化しているものの、まごうことなきかたおかさんです。

 

『Good Job』はドラマにもなり、今も漫画家として活躍されるかたおかみさおさん。

なんていうかただの「漫画読み」な私が言うのはおこがましいのですが、本当に嬉しくて感慨深いのですよ。

 

GET PUREASUE!』は電子版で読むことが出来ます。また古本でもネット上で売られてます。

私の中の殿堂入り作品です。

面白いから読んで、としか言えません。

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