月刊MdNが『マンガ雑誌をMdNがつくってみた』という特集でマンガ雑誌をつくったと聞いて[後編]

この記事は、
月刊MdNが『マンガ雑誌をMdNがつくってみた』という特集でマンガ雑誌をつくったと聞いて
というニュース記事の後編になります。ニュースなのに後編っていったいなにが起こっているんだぜ……? と思われた方は、前編から読んでいただけると吉とでてます。

いちおう前回をおさらいしておくと、

デザイン雑誌の月刊MdNが、「マンガ雑誌を作って付録につける!」という大胆な企画を実行に移したところからはじまります。いつもちょっと様子のおかしい特集の多い月刊MdNですが、労力が半端ない。しかもテーマがマンガ雑誌ということで、こりゃニュースにするしかないな、と思ったんですよ。

で、軽い気持ちで編集長の本信さんにコメントとっておくカーとご連絡さしあげたところ、めっちゃ長いのが送られてきたばかりか、「後編へ続く」と書かれてたというもらい事故みたいなことが起こったのでした。

しかも、質問に答える前にその前提として本信さんの「編集論」的な内容が熱く語られる、という内容でした。コメントなのに、写真が豊富に添えられてキャプションもついてました。編集者の業……。

さて、後編はどうなるのでしょうか。月刊MdN 本信編集長のコメントの続きをどうぞ〜!


さて今回は下記のことについて紹介すると、お伝えしました。
【1】なぜ『COMIC MdN』というマンガ雑誌を作ろうと思ったのか?
【2】どういうマンガ雑誌にしようと思ったのか?
【3】作家の人選は?

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ここでさっそく……申し訳ございません!

【1】なぜ『COMIC MdN』というマンガ雑誌を作ろうと思ったのか? に関しては、前回、お伝えしてましたね。
そして、結論は「わからない」だったという……(読み返してみると、「わからない」ばかりで、ひどい原稿だった!)。

でも補足すると「わかる企画」ってダメな気がします(「わかる」≒「どんな記事になるか、作る前からわりと想像できる」という感じです)。「わかる」という時点で手垢の付いた企画ということですから。「わからない」けど「売れそう」と思えることを全力でやるのが正解だと思っています。
って自分はそんな売れた本って作ったことはないんですけど!

*****

ということで次。
【2】どういうマンガ雑誌にしようと思ったのか?

これ、説明しだすと長くなるので後回しにします。
編集者の企画立案の考え方をなるべくわかりやすく書いてみたつもりなので、ご興味のある方はこの記事の後半をぜひ読んでみて!

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そして、
【3】作家の人選は?
について。

端的に言いますと「非マンガ家」を選んでいます。理由は、これもこの記事の後半に詳しく書きますが、「マンガ家の方に発注して、既存のマンガ雑誌のようなものを作っても、先達にかなうわけがない」というところでしょうか。本当にザックリ言うとですよ!

そんなこんなで、COMIC MdNにマンガを描いてくださった作家(とその作品)を簡単にご紹介しましょう。

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まず、秋屋蜻一さん「アスタリウム旅行記」。

「アスタリウム旅行記」秋屋蜻一/まだ21才の秋屋蜻一が描いた、初の商業マンガ。この造形力、そしてルックとしての印象の新しさはすごい。

秋屋さんはマンガはほとんど描いたことがなくて、本業は……イラストレーターって言っていいのかな? でもイラストもプロとしての経験はあまりないと思います。なんといってもまだ21才ですから。

マンガって、一番最初に目に飛び込んでくるのは「絵」ですよね。秋屋さんの場合、見た瞬間にもう言葉に出来ない絵の魅力と、圧倒的な造形力と、そして〈新しさ〉が兼ね備わっていました。それでマンガをお願いしたんです。
秋屋さんのマンガはこのあと、月刊MdN誌上で隔月で連載していきます。ぜひ楽しみにしていて下さい。

https://twitter.com/Akiya_kageichi/status/715893209923133440

秋屋蜻一さんがTwitterにあげていたマンガ。これを見て、編集部はマンガの発注を決めた

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次、北澤平祐さんの「ローカル」。電車に乗ることが苦手な女の子のちょっとした、でも本人にとっては大きな物語が描かれています。

「ローカル」北澤平祐/一見、ストーリーを描くのに不向きな、洗練されたグラフィカルな絵で、驚くほど感動的なストーリーを描ききったことに不意を付かれ、目から変な汗が。

北澤さんは超売れっ子のイラストレーターです。ここ1、2年で絵柄がペインティング(塗りの絵)からドローイング(線画)に変わってきていて、商業イラストレーターとして明らかにより多くの人に届く画風になった、と感じていました。
変化の季節にいる人って、絶対に面白いものを作ると思ってるんです。あと何より、北澤さんの絵は昔から、ファンタジックで物語性があった。こういう人がマンガを描いたらどうなるかも見てみたかった。

しかし、マンガのネームがあがってきて驚きました。ファンタジーではなく、日常のちょっとした物語が描かれてましたから。でも、元から彼が持っているサイケな一面も強く表現しつつ、最後はあの東日本の大震災を体験した人だったら心に染みる優しい、ほんとうに優しい着地点を見せる。このマンガも、8ページという小品ながらぜひ読んでいただきたいです。

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Bahi JDさんの「地球のマグノリア」は、宇宙飛行士のマグノリアが謎の生命体と出会い、一緒に戦うアクションマンガ。

「地球のマグノリア」Bahi JD/話題のアニメーター・Bahi JDが初めて描いたマンガ。アニメの絵コンテを思わすコマ運びに注目してほしい。

僕は若い頃、宮﨑駿さんや安彦良和さんのマンガを読んで、アニメーターが描くマンガって、どこかふつうのマンガと文法が違って面白いな、と思っていて。絵コンテ的というか、各コマで絵が止まっているというか。きちんと解析したことないので、適当な印象論で申し訳ないのですが。

なので、いまのアニメーターにマンガを描いてみたらどうなるかを見てみたかったんですね。ということで、アニメ業界の外側でも話題になっているアニメーター・Bahi JDさんにマンガをお願いしました。

Bahi JDさんの場合は、とにかくアクションシーンが見たかった。あのよく動くアニメーションを手掛けるBahiさんのアクションマンガが読みたかった。となると、読み切りという限られたページ数ながら、必要となる〈導入部分〉だったり、〈オチ〉だったりを描いてもらうのがもったいない。また、こちらもマンガの編集に慣れてないから、そこをうまく落とし込むディレクションもできなさそうだし。

ということで、いきなり「101話目」という設定で描いてもらってます。
これだと、一番描いてほしいところだけを描いてもらえる。

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そんななか、人気イラストレーター・loundrawさんには、マンガではなく、イラストの発注をしました。loundrawさんの場合、キャラクターよりも背景を含む世界観自体が主役だと思ったんです。なので、その世界観と共鳴する仕掛けを作ることで、より絵を魅力的に見せてあげられるのではないかと。

ということで、loundrawさんは、絵を4枚描き下ろしてもらい、それに合わせて詩人の最果タヒさんに4編の詩を書いて頂きました。

loundraw×最果タヒ/人気イラストレーター・loundrawが描き下ろした4枚の絵を見ながら、詩人・最果タヒがそれぞれに詩を書くという驚きのコラボ。

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というように、とにかく「非マンガ家」に、でもマンガを描いてもらったら面白そうな人に、発注をかけていくというスタイルを基本は取りました。

でもCOMIC MdNを読んで頂けたなら感じてもらえると信じているのですが、実験的な企画ではありますが、出来上がった本は、相当ポップな仕上がりになっていると思っています。

ということで、なぜ実験的かつポップなマンガ雑誌になったのか(というところを僕らが目指したのか)について、冒頭ですっ飛ばしていた
【2】どういうマンガ雑誌にしようと思ったのか?
という話をすることでフォローしていきたいと思います。

(編集部註:ここで次のページに続きます。本信編集長がここに改ページ入れろっていうので……)

さて、COMIC MdNを「どういうマンガ雑誌にしようと思ったのか?」の話です。

まず、既存の少年誌や青年誌のようなものは僕らには作れません。また作るべきじゃないな、と。
だってかなわないところ、違うところがいっぱいありすぎます。羅列してみます。

  • COMIC MdNは一回こっきりの企画モノ
  • こっちはマンガ家とのコネクションはゼロ
  • そもそもマンガをディレクションするスキルが編集部にない
  • 背景などを描いてもらうアシスタントを雇うようなノウハウもよく知らない
  • COMIC MdNは本誌も含めて1,680円(税込み)という高額商品

たくさんありますね。

*****

これらを見渡しながら、新参者ならではの戦えるポイントを探ろう、つまり以下のような差別化を図ろうと思いました。

【A】リッチな佇まいで保存版感を出す
ふつうのマンガ雑誌は、ざら紙が使われているし、毎週発売されているし、連載マンガばかりだし、モノクロだし、ということで、ずっと保存しようとする人は、なかなかいないのではないでしょうか。

それに対して「MdN9月号+付録マンガ雑誌COMIC MdN」は、1,680円(税込み)という高額商品ということで、保存版的な内容、佇まいになることを心がけました。
例えばカラーマンガが中心で、モノクロページ少なめのリッチな佇まいにするとか。
用紙も、書籍に使われるようなしっかりとしたものを使用。白色度も高くて、印刷した色もなるべく美しく出るものをセレクトしています。

【B】マンガ家に発注しない
マンガ家やマンガ家を志している人に発注したら、絶対に既存のマンガ雑誌にかなわない。
あと、マンガって絵のうまさ(というのは誤解されやすい表現なのですが)だけで勝負してないですよね。ストーリーの面白さだったり、コマ運びだったり、総合力で勝負するジャンルで。
そういう勝負の仕方は、COMIC MdNではちょっと出来ないと思いました。やろうと思ったら、作家と打ち合わせながら、こっちもディレクションのスキルを高めつつ、クオリティを上げていく。2年くらいかかるかも。そんなの作家も付き合いませんよね……。

【C】マンガや記事が集まったときに「いい本」と感じる文脈に
ココらへんは【A】とも被るのですが、価格が高い本なので、マンガや巻頭グラビアなどの記事が集まった時に、「この集合体でまるでひとつの作品だな」とか「このラインナップだからこそ感じる時代性があるな」とか、とにかくお金を出してよかったと思えるような筋を通してあげるように心がけました。
この「筋」というのは【B】の作家選びとも結びついてくる感じですよね。

【D】ポップな商品にする
上記で「リッチ」とか「いい本」みたいなキーワードが出てきていますが、そうすると人を選ぶ、敷居の高い感じになって、売れないものになってしまいます。
なので、マンガ作品もふつうのマンガ雑誌の文脈とは違うけど、わかりづらいものにはしないようにしましたし、表紙や巻頭ビジュアルで、乃木坂46の齋藤飛鳥さん、映画「ワンダーウーマン」、BiSHなどに登場してもらったりして、ポップな佇まいをキープするよう心がけました。

*****

と以上、列記した【A】~【D】を前提条件にしながら、作家を考えていきました。
この中で、詳しく話しておきたいのが
【B】マンガ家に発注しない
です。

だったら、誰に発注するんだ!と。
【B】でマンガのことを、「絵のうまさだけで勝負してない」「総合力で勝負するジャンル」と書きました。

自分たちが何だと勝負出来るかと考えたら、逆にまずは「絵のうまさ(のみ)で勝負する」べきなのではないか、と思ったんです。
コミックイラストやそれに属すると思われるようなイラストに関しては知見のある編集部の方だと思います。これらのイラストを描く人たちは、絵がべらぼうにうまい。

ただ、この「絵のうまさ」という言葉がやっかいなのですが……。
誤解を招くかもしれませんが、『賭博黙示録カイジ』などを描かれている福本伸行さんは、彼が表現したいと思っているストーリー、世界観などに必要な絵の力、魅力が本当にあると思います。いや、むしろあの絵じゃないといけない。
でも、「絵がうまい」というジャンルではないかな、と。

マンガの第一印象ってやっぱりまず「絵」が目に飛び込んでくるので、COMIC MdNはまず、ここに特化したすごいものを作ろうと思いました。
となると、コミックイラストやそうとは言い切れないけど、そのジャンルの境界にいるような絵を描かれる方に思い切ってマンガを発注しようと思いました。

結果、イラストレーターやアニメーターという人選が自ずと浮かび上がってきます。
その後の各作家のセレクト理由はすでに上記で書いたとおりです。

*****

いざマンガがあがってきたら、誤算がありました。
意外にも、マンガを描き慣れていない方々なのに、絵がうまいだけでなく、マンガがうまい……。
これは世代なのでしょうか。マンガを日常的に読み慣れているせいなのか、マンガの文法が身についてらっしゃる気がしました。
だから、本当に恥ずかしくないマンガ雑誌が出来てしまったな、と思っております。

本気でCOMIC MdN、読んでみて頂きたいです!

*****

……はい! マンバ通信さんに「コメントを下さい」と連絡を頂いたので、コメントを書いてみました。だって文字数とか指定されてなかったし!

ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました!(いるのかな……)


と、以上、月刊MdN編集長 本信光理さんからのコメントでした! 長っげ!

しかし、今回の特集の熱い解説でもあり、編集者が一冊の特集を作り上げるためにどのようなことを考えているかがわかる貴重な資料となったのではないでしょうか。

そしてもちろんこのコメントの出し方自体は、作り出したものをどうプロモートするかのひとつの挑戦的なサンプルになっています。アホほど長く、そしてニュースなのに前後編になっている!

考えてみれば、編集者や著者はその作品を人に届けるための努力を目一杯やりますよね。小さな書店でのサイン会やトークショーなどに出張ったり。そう考えると、この本信編集長の目一杯の『コメント』もヒジョーに真っ当な編集長としてのお仕事なのかもしれません。「このひと、どうかしてんナ〜」と思っててすいませんでした〜。

この記事で書かれていることが、どのようなコミック雑誌として結実したのか? 雑誌を手にとって確かめてみてくださいね!


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