『マンガに、編集って必要ですか?』をどう紹介していいかわからないが紹介せざるを得ない

青木U平さんの『マンガに、編集って必要ですか?』を紹介させてください。
ためし読みページはこちらテレビドラマ化もされた『フリンジマン』の作者の方の新作です。

このマンガ、1巻が発売された時に書きたいな、と思ったんだけど、どう書いていいものか悩んでいる間に2巻が出てしまいました。そして2巻で出てからも、どう書いたもんかのう、と考えているうちに時間が経ってきた。やばい。見切り発車で書くしかない。

画像はすべて『マンガに、編集って必要ですか? 1巻』(青木U平 / 新潮社)より

まず、しかし1巻を読んだ時にどうして紹介しようと思ったこというと「このマンガ、ほんとにどうなっていくかわからんな〜」と感じたからなんですね。
で、その「どうなっていくか」を2巻で垣間見て、ウワ〜と思って、ますます紹介したくなった、とこういうわけです。しかし2巻のウワ〜っていう展開は、読む時のお楽しみにとっておくしかない。というわけでたいしたことは書けませんが、マンガは面白いんで! とにかくマンガを読んでいただけたらよいのかと。私の願いはそれだけなんで。

とはいえ説明してみましょう。
まず設定ですが、中堅マンガ家と、そのマンガを担当することになった若い編集者との話です。
マンガ家佐木小次郎(45)は、青年誌でずっと描いてきたが、大ヒットしたマンガはない。現在連載中のマンガは『男の四十路メシ』という40代男性をターゲットにしたものだが、マンガ家としての先行きに不安を感じていて「一発当てとかないと、本気でヤバい」と危機感をつのらせている。
『男の四十路メシ』、たしかに中堅マンガ家が手堅く描くマンガのタイトルに思えてきますね。

そんな彼の担当になった坂本涼(24)は、女性ファッション誌から移動してきたばかりの編集者だ。

「本気でヤバい」佐木は、とにかく焦っている。真面目な彼は、無駄に長い打ち合わせが苦手だ。マンガと関係ない話なんかで、大切な制作時間を失いたくないと思っている。しかし、彼女はキラキラした瞳でキラキラした話題を振ってくる。打ち合わせの席で、優雅にケーキを喰らいながら……。

彼女なりの提案をしてくる。しかしそれがまたどうにもすっとんきょうな提案で、例えば、舞台設定に20代女性が好みそうな「映え」スポットをあげてくる。

これは、後がないマンガ家にとってはツラい状況だ。人生のかかった制作のパートナーに対し不安を抱かざるを得ない状況。編集部の意図はなんなのか。ここまでが第2話。

私は、このマンガがいったいどこに進もうとしているのか、ほんとにわからなくて戸惑いを感じた。

こうしたマンガの通常の流れを考えるならば、これは編集者の成長譚なのだろうと思いますよね。
それと同時に、マンガ家の側もまた成長する。硬直した思考をほぐし、新たな扉を開くというパターンなのだろう。
しかし、どうもそのレールに乗る感じがどうにもしない。なぜだろう?

まず主人公佐木先生が思い悩み、判断・行動していることが、そんなに硬直した人間のものだと思えない。中堅マンガ家のまっとうな考えに思える。ゆえに、ここからの作家側が一皮むける展開というものを想像し難い。

この自己分析も、すごくないですか。

編集部が気にいるマンガと、売れるマンガとの溝。
そしてこのマンガそのものを、作者の青木U平さんと担当編集でどう打ち合わせしているのかというのも気になってきちゃいますよね。

そしてまた編集の坂本さんの態度や提案も、これからの展開にどう影響してるかが読めない。バカだけど頑張る子、みたいな単純な形ではない。いや、バカのようなことというか、とにかく不毛な会話をふっかけてくるんですけどね。

買おうとしてる冷蔵庫の悩み。

新元号の話。

絶妙のしょうもなさですね。しょうもなさが外角低めにバンバン決まっていて、作者のコントールのうまさが際立ちます。

このしょうもない話を繰り出してくる編集・坂本さんですが、1巻の後半では、うちに秘めていたものが溢れ出てきます。これが見事に溢れ出るんですよ。つまり坂本さんは、これまで溢れ出ないように溢れでないように抑制していたんだなと。

そしてようやく、ふたりのマンガ制作が始まろうとしたところで1巻が終わる。しかもここまで紡いできたお話をブチンと断ち切るような衝撃的な最終ページで……。いやはや。

読んで体験して欲しいという思いが強すぎて、わりとわけわかんない紹介となりましたが大丈夫。マンガが面白いんで。
そしてさらに2巻では、またまた予想がつかない展開でお話は転がっていきますよ。

この先の読めない展開、完全に私の好みなのです。なので読んでみて。

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兎来栄寿
兎来栄寿
2019/06/09
マンガなしで生きられない人にこそ読んで欲しいマンガ
あまりにも切実で、あまりにも強く共感する所があって、読んでいて名状し難い感情に襲われます。大好きです。 近年持て囃される「編集者不要論」。誰しもが情報を発信できるようになった今の時代、作家も個人で電子書籍を出版することが可能になり、宣伝も編集者より作家がSNSを活用して行った方がむしろ効率的な場面すらある世の中。 旧来の枠組を超えた現代の編集者に求められる仕事というのも沢山あると思いますし、編集者がいなかったら即打ち切られていたりそもそも誕生もしなかった名作がどれだけあるだろうと思いもするのですが……。ともあれ時代と共にマンガの在り方が変わり、それに伴って編集者や出版社、その周辺の在り方も変化を余儀なくされている過渡期であるのは事実であると思います。 そんな時代背景をベースに、ファッション雑誌編集部からやって来たマンガのことなんて全然解ってなさそうな若い女性編集者に気を揉むベテラン作家のお話として始まる本作。最初は少しゆるい感じで始まりながら、1巻は強烈な終わり方をします。その後の展開を解った上でまた1話から読むと何とも言えない味わいがあります。 単行本の続きがすぐwebで読めますし、そこからが真骨頂となっています。特に 「私が世界と繋がれるのはマンガだけだから」 というセリフは共感というレベルを超えて「これは私だ」と思わされて泣けました。ぜひ最新話まで追ってみて欲しい傑作です。