1970年代にデビューして、今も作品を発表し続けている漫画家さんと言えば誰が思い浮かぶでしょう。
たくさんの方がいらっしゃいますが、少女漫画を支えた弓月光さんに触れない訳にはいきません。
今も私にとって弓月さんは少女漫画家さんとしての思いが強いですね。
その弓月さんの少女漫画作品で私の一押しは『エリート狂走曲』です。
『週刊ヤングジャンプ』で連載された『みんなあげちゃう』に抜かれるまでは弓月さんの最長連載作品でした。
『エリート狂走曲』は昭和52年から54年にかけて連載され、最初の単行本であるマーガレットコミックスで全7巻。
第7巻は半分ほど別の短編が収録されている為、実質6.5巻でしょう。
記事を書くにあたって久しぶりに、それこそ30年以上ぶりに読みました。
まあまあ覚えてるもんですね。
それでも忘れていた展開も多く、「ああ、こうだった。こうだった」と実に楽しく読めました。
そして改めて、「面白い」です。
弓月さんは現在『グランドジャンプ』にて『甘い生活 2nd season』を連載されてます。
グラジャンの読者年齢層ってどのくらいの幅なんでしょうね。
20代から40代くらいだと推察しますが自信はありません。
私は毎号買ってますが、還暦のじじいが購入する理由は『キャプテン2』を連載で追いかけている為です。
もしかすると現在弓月さんが少女漫画誌で活躍されていたことはあまり認知されてないのではないかと最近考えるようになりました。
いやもったいないじゃないですか。
軽快なテンポで進む話の展開の上手さは今も昔もなんら変わらず、少女漫画時代の作品も面白い物ばかりなのに。
その中でも私の個人的基準ですが、群を抜いて面白い『エリート狂走曲』をもっといろんな世代の方々に読んでもらいたいと思い今回の記事を書いてます。
では少しだけ内容を紹介します。
兵庫県の山奥から東京へ転校した野生児の哲矢は小学6年生。
「お受験」「塾」「偏差値」といった都会の受験戦争にうんざりし、早々に知り合った優等生の唯ちゃんと周りを巻き込んでの大騒動が展開します。
う~ん、これ以上は書けませんね。
本当に、読んで面白さを味わって欲しいのですよ。
せめて各巻のサブタイトルを記しておきますのでそこから色々想像してください。
第1巻 転校してきた野生児哲矢
第2巻 関西弁はダメよ
第3巻 めざせ東方中学
第4巻 やったぜ東方中学合格
第5巻 恐怖の寮生活
第6巻 嫌勉バッジ大作戦
第7巻 よみがえった野生児
ちなみに東方中学とは、色々あって哲矢が受験せざるを得なくなった超有名進学私立中学です。
次から次へと騒動を起こす哲矢ですが、一貫して物語は続いておりその騒動の繋ぎ方がとても上手いのは弓月さんの作品の特徴ですね。
ギャグの入れ方も話の内容に沿って違和感なく差し込まれ、キャラクターの表情も実に豊かです。
何より女の子を描くのがとても上手い。長らく少女漫画の世界で活躍された大きな要因です。
還暦の私ですが、哲矢に振り回されながらも想い続ける唯ちゃんが可愛くてときめいてしまいます。
キモいですか。永遠の中二病ですのでそこは許してください。
もともと『りぼん』などで弓月さんの漫画は読んでおり、少女漫画という垣根を越えて好きな漫画家さんでした。
10代の少年が読んでて心地いいソフトな男女の恋愛と、少々お下劣で色気もあるギャグが同居した漫画は弓月さん特有だったと言っていいと思います。
『エリート狂走曲』を最初に読んだのは高校生の時です。
年度から推察して単行本が出て間もなくでしょう。
いつも利用する貸本屋さんで借りました。
その後20代後半になって再読したい気持ちが大きくなり、古書店で全巻セットを購入します。
まだ昭和でした。
そして平成をすっ飛ばして今読み返して思うのは、古さを感じない作品という事です。
令和の今でも違和感なく読めるのはなんとも不思議ですね。
もちろん、そこかしこに時代を反映した描写はあります。
例えば大晦日になっても家庭教師と一緒に勉強させられる哲矢が「せめて紅白のピンクレディーくらい見たい」と愚痴ったりなんてのはまさに当時そのままですね。
でもそんな程度なのですよ。
テレビがブラウン管だったりとか、そこら辺の細かいところを修正すれば十分現在の漫画として通用するのではないでしょうか。
主人公の哲矢と唯ちゃんは弓月さんの後の作品『ボクの婚約者』にガッチリ出ているのを色々調べている中で知りました。
『ボクの婚約者』は未読なのか既読なのか残念ながら思い出せませんが、早くその登場するエピソードを読みたい気持ちでいっぱいです。
別の作品に登場させるのは、きっと弓月さんも『エリート狂走曲』と哲矢と唯ちゃんがお気に入りなのでしょうね。
『甘い生活 2nd season』のヒロイン若宮弓香さんの髪型が唯ちゃんとそっくりなのはたぶん偶然なんでしょう。
でもちょっとだけ「うふふ」と嬉しくなってしまいます。
弓月さんの過去作品は古い漫画を大きく扱う古書店には定番のように置いてあります。
プレミア価格もつかない買いやすい普通に古本価格です。
きっと定期的に売れていくのでしょうね。
ではついでながら。
別途所有する「りぼんマスコットコミックス」の『出発シンコー!』の巻末に掲載されているおまけページの「これでも漫画家!」から若かりし弓月さんをお届けしておきます。
『エリート狂走曲』は一貫して変わらない弓月さんの作風の中でも特にお勧めする作品です。
電子でも読めますので興味を持たれたならば是非ご一読を。