レジェンド作家・槙ようこ先生の隠れた名作『勝利の悪魔』の世界観が好きすぎる

レジェンド作家・槙ようこ先生の隠れた名作『勝利の悪魔』の世界観が好きすぎる

少し前の話にはなりますが、2020年3月、僕の人生に大きな影響を与えた大好きな少女漫画家・慎ようこ先生が引退されました。

デビュー当時からずっと大ファンですべてのコミックスを購入していた僕は、2019年に慎先生が翌年での引退を宣言されたときには、衝撃すぎて「慎ロス」で仕事を休みそうになったほどです。

慎ようこ先生と言えば、『あたしはバンビ』、『愛してるぜベイベ★★』、『ロマンチカクロック』、『きらめきのライオンボーイ』などが代表作として挙げられますが、その他にも数々の名作を生み出しています。

今回はそんな慎先生の隠れた名作たちの中から、僕の大好きな『勝利の悪魔』という作品を紹介させていただきます。

 

最初に慎先生の作風について軽くお話させていただきたいのですが、慎先生は作品毎に絵柄を変えている(特に目の描き方など)ということがファンの間では有名です。

また、一風変わったストーリー設定やキャラ設定なども慎ようこ作品の大きな特徴のひとつです。

例えば、『愛してるぜベイベ★★』では、主人公をチャラい高校生男子とし、チャラ男の主人公が幼稚園児の女の子の親代わりになるというストーリーを描き話題になりました。『あたしはバンビ』ではヒロインの恋のライバルがヒーローの親友の男の子であるという、当時の少女漫画としてはかなり珍しい同性愛をテーマにした新しい三角関係の形を描きました。

他にも、鬼と闘うヒロインを描いた『STAR BLACKS』や、霊が見えたり人の考えていることがわかったりする能力を持つヒロインを描いた『山本善次郎と申します』など、いわゆる王道設定ではない少女漫画を多く生み出しています。

今回紹介する『勝利の悪魔』もかなり変わったキャラクター設定と世界観が特徴的な作品です。

 

ざっくりあらすじを紹介すると、ヒロインの田中森朝実(たなかもりあさみ)という世にも珍しい苗字を持つ女子高校生が親の借金のせいで、お嬢様学校から、変人だらけのまるで動物園のような高校に転入する羽目になり、その高校で木下光(きのしたあきら)という美しすぎる生徒と出会うというところから物語は始まります。

(※ちなみに上の1巻の表紙を飾っているのが、光です。)

この作品の見どころとしては大きくふたつありまして、まずひとつ目は変人だらけの動物園のような高校という物語の舞台。そしてふたつ目が、美しすぎる光という存在です。

まず、“まるで動物園のような”と言ってもあまり絵が浮かばないかと思いますので、一部、この高校のヤバさが伝わるページを紹介しますね。

『勝利の悪魔』(慎ようこ/集英社)第1巻 8頁

これは田中森が転校初日に職員室で担任の先生に挨拶に来たシーンなのですが、この1シーンだけでも十分にこの高校のヤバさが伝わるかと思います。

・担任がギャル男(ピアスや指輪をゴリゴリにつけている)

・職員室なのに漫画やおもちゃやお菓子だらけ(ダウンタウンDXのポストみたいなやつまである)

・担任が生徒に携帯で連絡をして指示を出している(しかもじゃがりこで釣ろうとしている)

そして教室の様子がこちらです。

『勝利の悪魔』(慎ようこ/集英社)第1巻 16頁

・クラスメイトに大仏やぬいぐるみみたいなのがいる

・服装や髪型が自由すぎる

・爆音で何かの曲が流れている

ここには出ていませんが、馬のかぶりものをしている生徒や、頭から角みたいなのを生やしている生徒、背中に羽根のようなものをつけている生徒たちも登場します。

(ファンタジー作品ではないため、角も羽根も、さっきの大仏やぬいぐるみなどもすべて、かぶりものやアクセサリーだと思われます。)

お嬢様学校に通っていた平凡で素朴な田中森は、突然こんな世界に飛び込むことになり、困惑します。田中森を歓迎しようとしてくれているクラスメイトたちに「私はあなたたちとは話が合わない」とか「うるさい」とか、はっきり言ってしまうのです。

そうして自己嫌悪に陥りながらも、どうして自分がこんな変な学校に通わないといけないんだと涙する田中森を光が元気づけてくれたりしながら、少しずつクラスメイトと打ち解けていく様子が描かれます。

最初は僕も田中森と同じで、なかなかこの奇妙な高校の世界観についていけず困惑しましたが、読み進めていくうちに逆に段々とクセになっていき、変な世界観が楽しくてたまらなくなってきて、本当に動物園やテーマパークに来ているかのようなワクワクした感情になりました。

クセが強いけど、その分個性的で魅力的なキャラクターだらけです!

むしろ、唯一の一般人(?)の田中森の方が逆に少し浮いてる感じもあり、序盤では田中森にあまり好感を持てないという読者さんも多いと思います。

(実際にレビューサイトなどを見ていると、「田中森なんなん」等という意見もちらほら)

そんな田中森の面倒を見る役(担任にじゃがりこで買収されていた生徒)が、本作のふたつ目の魅力として挙げさせていただいた、美しすぎる光というキャラクターです。

『勝利の悪魔』(慎ようこ/集英社)第1巻 35頁

(クラスを飛び出して雨の中泣いている田中森に傘を差し出す光)

光はこの動物園のような特殊な高校の中でも一際目立っており、みんなから慕われ一目置かれている存在で、クラスに馴染めず困惑する田中森を気遣ったり元気づけたりして、田中森にとって心の支えのような存在となるのですが、実は光は男の子なのです。

『勝利の悪魔』(慎ようこ/集英社)第1巻 40頁

慎先生の圧倒的画力で描かれる光は、美少女ではなく、女装(?)している超美男子だったのです。

美しい女装男子が登場する少女漫画は他にもいくつかありますが、ほとんどの場合が中性的なキャラクターとして描かれることが多いです。

しかし、光は見た目は美少女ですが、中身は男の中の男という感じで、少女漫画のヒーローそのものです。

胸キュンシーンももちろんたくさんあります。

男らしくてかっこいい胸キュンシーンですが描かれているのは美少女というアンバランスな視覚がなんともクセになる漫画です。

この美しくてかっこいい光と田中森の学園生活を描いた『勝利の悪魔』ですが、なんと全3巻で完結しております!

光やクラスメイトや担任のギャル男以外にも、学園の理事長や、田中森のお見合い相手など、個性豊かなキャラクターがまだまだこれから多数登場します。

全3巻では収まりきらないくらい盛りだくさんな内容が詰め込まれているので、ボリューム以上の満足感を得られること間違いなしです。

ノーマルな少女漫画に少し飽きたなと思っている方や、ジェットコースターのような目まぐるしいハイスピード漫画を欲している方にはぴったりの漫画だと思います。

是非ご一読を!

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