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戦国時代の歴史ものが好きです。
身を焦がす野望、生死を駆けた合戦、政治的駆け引きの数々--そこに人間ドラマが凝縮されてて読んでて胸アツなんですよね。
ただ、自分は「物語」として好きなだけであって、史実として正しいとかはあまり求めていないタイプ。
ライトな歴史好きです。
マンガにおいては、歴史にあった正しい情報を淡々と描かれるよりは、フィクションを混ぜたり多少脚色されてたほうが嬉しい。
史記における「キングダム」や、藤崎竜の「封神演義」などが良い例です。
そういう意味で、本作「雪花の虎」も、私的にツボでした。
戦国時代で一二を争う超人気武将「上杉謙信」が女性だったという説を題材にした本作。まさに、戦国タラレバ。
上杉謙信といえば、私利私欲では戦をしない、敵に塩を送るなど、欲望渦巻く戦国時代にあって「義」を重視することで有名な武将。その高潔さから、長年のライバルだった武田信玄からも、死に際、「何かあれば上杉謙信を頼れ」と遺言したほどです。
何度も戦った相手から、そんなこと言われてしまう謙信の人徳の高さ伺えるエピソードです。
その上、ほぼ負け知らずという戦国最強の強さも持っているかとか、なんかもう色々カッコよすぎる!
強いのに驕らないとか、ズルいっす。
本作は、そんな上杉謙信が女性として描かれ、東村アキコのもつ独特な女性観と相まって、また違った魅力の謙信を引き出してくれます。
東村アキコ節ともいえる、ブレない芯の強い女性像と、酸いも甘いも噛み砕いた人間臭いキャラクター描写が、歴史ドラマに見事マッチしています。
歴史好きも、そうでない人も楽しめる作品になっています。
(複雑な歴史的描写は、アキコのティータイムコーナーでゆる~く説明してくれる配慮も嬉しい。)
過酷な運命を背負い、女子のまま、女子らしく、強く、賢く、そして美しく成長していく女・上杉謙信に、私、釘付けです。
今後、曲者ぞろいの戦国武将たちを、女としての謙信が、どういなしていくのか楽しみな1冊です。