戌年なので『大きい犬』のこと

いやはや、年が明けて、すでにこーんなに日にちが経ってしまっているとは……今更ですけど、あけましておめでとうございます。マンバ通信の伊藤ガビンです。本年もマンガを読む気持ちをブーストする記事・企画を作っていきたいと思いますので、どうかひとつよろしくおたのもうします。

いやあ、こんなに遅くなっちゃったけど、年明け一発めに書こうと思ってたやつ書きますね。スケラッコさんの『大きい犬』についてなんですけれど。なんせほら戌年なので犬の話からいってみようかと。

『大きい犬』は昨年発売されたマンガの中でも特に印象深い作品。スケラッコさんといえば『盆の国』という圧倒的な傑作があるわけだけど、こちらの短編集『大きい犬』の中身も粒ぞろい。

あ、やばい。この調子だとお屠蘇気分でだらだら書いてしまいそうなので、スケラッコ作品を読んだことない人は、表題作の「大きい犬」が無料公開されているので大至急読んできてくれ! 話はそれからだ。
ここから読めます

ふう〜〜、読みました? いいですねえ。なんど読んでもいいぜ。
というわけで、このマンガが好きな人は単行本を買って今年一年の幸福度を上げていきましょう。

宣伝おわり。さて、あとは余談をだらだら書かせていただきますよ。

スケラッコさんは『盆の国』のように普段は人に見えない存在を描いたり、「大きい犬」のように物理的な目玉や耳だけを使っていたら捉えられないその存在の大きさや声などを描いたりでできる、稀有な作家だなあとつくづく思います。安易に水木しげる先生の名前を出すわけにはいきませんが、見えないけれども確かにそこに息づいているなにかを描く才能に関して、水木先生が鬼籍に入られたことで心にポッカリ空いてしまった穴を、スケラッコさんのマンガに埋めてもらっているなあと感じたりもするのです。

『盆の国』に登場する死者や魂のような非日常の存在だけでなく、本来の妖怪たちのように生活に密着した(そして不可視で名付けようのない)存在までも、スケラッコさんの作品の中には息づいていて、たまんねえな、という気分になります。

表題作の「大きい犬」がスケラッコさんのデビュー作なわけですけど、なんでいきなりこれが描けるのだろうか。設定も、キャラクターたちの描写も素晴らしい。

僕はこの作品が特に好きなんだけど、なぜかというと、僕は犬って生き物に対して、こんな風であってほしいという気持ちに気付かされたからなんですよ。

超然として、どこかすっとぼけていて、いつまでもここにいるようでいて、自由にどこかに行ってしまってほしくもあり、それでもいつかまたどこかで出会いたいと思える存在。そして大きくて、ふかふかしてる。
最高じゃないですか。

実は僕は実物の犬はすこし苦手で、友人の犬はもちろん、かつて事務所に犬が住んでいた時なんかも、ついつい距離をおいてしまう。彼らは、飼い主に対して従順なところがあるでしょう。よく躾けられていたらなおさらに。

僕は動物全般に、というか人間ともそうなんだけど、俺なんかとは関係なく生きててほしいという気持ちが強くて、犬と飼い主の濃ゆい関係を保つことはできないと思っているんですね。

去年だかにバズった「犬にとっての人間は、人間にとってのエルフ」みたいな見立てがあるじゃないですか。

犬から見た人間は、自分たちより長命で、守護者である、というね。これは犬に親しみを持っている人にとってはかなりグッと来る見立てなんじゃないでしょうか。かくいう僕も、ふおっ、てなったんですけどね。そうか、わいら人間もエルフのように誇り高くあらねばな、と思ったりして。しかし一方で、いやどっちかっていうと犬のほうが俺のエルフになってくれたらええのに、とも思うんですよ。

この人間のせかせかした暮らしっぷりなどとは無関係に、もっと大きな時間の流れの中で生きててほしいよ! なんて思うんですよ。そうあってほしいと。

そしたら「大きい犬」の大きい犬がまさにそういう立ち位置だったので、わたしの気持ちにとても気持ちよくフィットしたのでした。犬にはこうあってほしいよな、と。

単行本『大きい犬』は短編集。バリエーション豊かで珍妙なストーリーが詰め込まれております。もう一話紹介しておきたいのが「七福神再び」という、七福神もの。とある事情で離ればなれになった七福神たちが、再び集まり車で旅に出るというお話です。

僕は七福神が大好きなんですよね。あの、日本の神様とヒンドゥー教や道教、実在の禅僧までごちゃまぜのところがいい。寿老人と福禄寿が同一人物(同一神?)だったりするのもいい。要するに、結構なぬるさというか、いい加減さが人間味を感じさせていいなあと常々思っているんですね。

そしたらこのマンガに出てくる七福神たちが実に人間臭いんですよね。
毘沙門がバイク乗ってたりとか、神々の息遣いが現実世界にしっかりと係留されている。
僕の持っている七福神のちょっと猥雑な、カオスを宿している感じをマンガの中に発見して、嬉しくなってしまった。

それはそうと! スケラッコさんに『大きい犬』についていくつか質問したところ、このような描き下ろしマンガをいただいてしまった!

犬に対するこの距離感、ますます親近感をもってしまいました。
というわけで、まだ読んでない人は『大きい犬』買って読むとよいと思いますよ。

現在スケラッコさんは、「平太郎に怖いものはない」という作品をトーチで連載中ですね。

それはそうとスケラッコさんの作るグッズもいい。なんなんだいったい。
スケラッコのグッズ

餃子の皮とは……

大きい犬に関するマンガ情報・クチコミ一覧

大きい犬 スケラッコに関するマンガ情報・クチコミはマンバでチェック!みなさまからの投稿もお待ちしています。

記事に登場した作品の購入はこちら!

感想・コメントお待ちしてます!

コメントを書く
コメントする

話題に出た著者

水木しげる

水木しげる

鬼太郎大全集 水木しげるの遠野物語 のんのんばあとオレ ゲゲゲの鬼太郎 【水木しげる漫画大全集】 のんのんばあとオレ 水木しげる漫画大全集】 ゲゲゲの鬼太郎 悪魔くん 水木しげる伝 ボクの一生はゲゲゲの楽園だ 世界怪奇シリーズ〔全〕/サラリーマン死神〔全〕他 【水木しげる漫画大全集】 貸本版墓場鬼太郎 【水木しげる漫画大全集】 昭和史 河童の三平 劇画ヒットラー わたしの日々 カランコロン漂泊記/ゲゲゲの家計簿 【水木しげる漫画大全集】 ゲゲゲの不思議草子/水木しげるの日本霊異記他 【水木しげる漫画大全集】 ボクの一生はゲゲゲの楽園だ 【水木しげる漫画大全集】 貸本版悪魔くん 【水木しげる漫画大全集】 河童の三平 【水木しげる漫画大全集】 怪物マチコミ 【水木しげる漫画大全集】 今昔物語 【水木しげる漫画大全集】 水木しげるの異界旅行記/水木しげるの古代出雲 【水木しげる漫画大全集】 水木しげるの遠野物語/水木版妖怪大戦争 【水木しげる漫画大全集】 水木しげる人生絵巻/わたしの日々 他 【水木しげる漫画大全集】 総員玉砕せよ!! 他 【水木しげる漫画大全集】 東西奇ッ怪紳士録[全] 【水木しげる漫画大全集】 補巻 媒体別妖怪画報集 【水木しげる漫画大全集】 方丈記/水木しげるの泉鏡花伝 【水木しげる漫画大全集】 糞神島 他 【水木しげる漫画大全集】 テレビくん 他 【水木しげる漫画大全集】 なまけの与太郎 他 【水木しげる漫画大全集】 水木氏のメルヘン[全] 他 【水木しげる漫画大全集】 悪魔くん復活 千年王国 【水木しげる漫画大全集】 『コミックボンボン』版悪魔くん 【水木しげる漫画大全集】 悪魔くん ノストラダムス大予言 【水木しげる漫画大全集】 20世紀の狂気 ヒットラー 他 【水木しげる漫画大全集】 シリーズ日本の民話/怪奇幻想旅行[全] 他 【水木しげる漫画大全集】 星をつかみそこねる男 【水木しげる漫画大全集】 霊形手術 他 【水木しげる漫画大全集】 『ガロ』掲載作品 【水木しげる漫画大全集】 河童シリーズ[全] 【水木しげる漫画大全集】 現代妖怪譚[全] 【水木しげる漫画大全集】 昭和史 【水木しげる漫画大全集】 水木しげるの遠野物語 水木しげる漫画大全集オールガイド 東西奇ッ怪紳士録 妖怪博士の朝食 神秘家列伝 『ぼくら』版カッパの三平他 【水木しげる漫画大全集】 貸本版河童の三平 【水木しげる漫画大全集】 不思議シリーズ〔全〕 【水木しげる漫画大全集】 妖怪変化シリーズ〔全〕 【水木しげる漫画大全集】 木槌の誘い 【水木しげる漫画大全集】 沖田総司他 付四コマ漫画 【水木しげる漫画大全集】 猫楠他 【水木しげる漫画大全集】 神秘家列伝 【水木しげる漫画大全集】 神秘家水木しげる伝 【水木しげる漫画大全集】 貸本漫画集 【水木しげる漫画大全集】 貸本漫画集(3)怪獣ラバン他 【水木しげる漫画大全集】 貸本漫画集(6)地底の足音他 【水木しげる漫画大全集】 貸本漫画集(7)化烏他 【水木しげる漫画大全集】 「忍法秘話」掲載作品〔全〕 【水木しげる漫画大全集】 コケカキイキイ他 【水木しげる漫画大全集】 戦記短編集 幽霊艦長他 【水木しげる漫画大全集】 東海道四谷怪談/耳なし芳一 【水木しげる漫画大全集】 貸本戦記漫画集 【水木しげる漫画大全集】 貸本漫画集(8)花の流れ星他 【水木しげる漫画大全集】 のんのんばあ他 【水木しげる漫画大全集】 ぽけっとまん他 【水木しげる漫画大全集】 フーシギくん他 【水木しげる漫画大全集】 悪魔くん 【水木しげる漫画大全集】 縄文少年ヨギ 【水木しげる漫画大全集】 『ガロ』版鬼太郎夜話 【水木しげる漫画大全集】 ゲゲゲの家計簿 最新版 悪魔くん 悪魔くん千年王国 水木しげる貸本傑作選 墓をほる男 水木しげる貸本傑作選 水木しげる貸本ホラー傑作選 水木しげる貸本傑作選 悪魔くん

話題に出た作品のクチコミ

吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2018/03/26
執着無さが故に恐怖を感じない男の話
スケラッコ先生の新作。 実在したとされるたくさんの怪異に遭う侍の話が現代版にされてすごくゆるくかわいくなっている。 広島でお好み焼き屋を営む16歳の平太郎の元に、ある日から妖怪たちが現れ始める。 何をするというわけでもなく、驚かせようとしたり、お店の邪魔をしたり。 その怪異、妖怪を流しながら近所の人や彼女、家族との生活を1日ごとに淡々と描いていく。 この淡々と、というのがみそで、恐怖心というものをあまり感じない平太郎は逆に執着みたいなものが無いように描かれるので、人間同士の関係性においてもどこか距離を感じてしまうのだ。 恐怖を感じる源ってやっぱり執着だよね、と思う。 何かを失うのが怖かったり、嫌われるのが嫌だったり、固定観念を壊されるのが怖い人もいると思う。 僕はお腹がすくのが怖いからご飯をできるだけお腹空いてなくても3食ちゃんと食べようとする。 それらは今まで自分が得てきたものへの執着からなんだろうなと思うんだけども、平太郎にはそれがない、ように見える。 日を重ねていくことで平太郎の中に何か芽生えるものがあるのかないのか。 執着を自覚できるのかどうか。あのかわいい彼女のことは。 後編が楽しみです。