2.5次元舞台ファンって何をやってるの?『私の鬱を治したのは2.5次元の推しゴト』

急速に市場が拡大している、漫画やアニメ、ゲームを舞台化した2.5次元舞台。生身の役者がそれぞれの解釈で2次元のキャラクターを演じることで生まれるパワーは多くの人を引きつけています。『私の鬱を治したのは2.5次元の推しゴト』の作者、プル子さんもその一人。なんと仕事が原因のうつ病から生活を立て直し、仕事をしながら推しゴトもできるようになったほど。『私の鬱を治したのは2.5次元の推しゴト』はそんな2.5次元舞台のこれまでと楽しさが詰まった作品です。

『私の鬱を治したのは2.5次元の推しゴト』(プル子/竹書房)

プル子さんの2.5次元の推しゴト歴は14年。2.5次元舞台の中でも有名な「ミュージカル テニスの王子様」が2003年にスタートしたことを考えると、黎明期から大きくなっていく過程を見てきた人のひとりといえます。

そのプル子さんが2.5次元舞台に出会ったのは友人のすすめから。仕事でうつ病になり、その後クビになって無職になって引きこもっていたとき、友達が貸してくれたDVDがきっかけだったとのこと。

『私の鬱を治したのは2.5次元の推しゴト』(プル子/竹書房)

DVDの収録されたバックステージ映像と本編を行ったり来たりしながら、徐々にうまくなっていく役者たちの影響を受けて、少しずつ生活を立て直していきます。そしてとうとう生での舞台を見たり、グッズを買ったりという推しゴトのために、引きこもりをやめてアルバイトを始めるところまで生活を取り戻します。

舞台やグッズの購入だけでも十分生活の刺激になりますが、2.5次元舞台の推しゴトの楽しみは、舞台やライブそのものを見に行くだけではありません。2.5次元舞台に出ている役者の多くは、ファンと直接会うファンイベントを実施してます。しかもそのファンイベントは、ファンとの距離がすごく近い。役者とのツーショット撮影会などをする人もおり、プル子さんもずぶずぶとその沼にはまっていきます。

14年の推しゴトの経験もエピソードとして反映されています。例えば舞台やライブでのファンサービス。十数年前のファンサは、役者が客席に降り、手を振って盛り上げる程度でしたが、徐々にハイタッチなど接触が増加。最近は、うちわにメッセージを書いて役者に伝えるという文化が持ち込まれたことで、うちわに書かれたことを再現するというファンサも行われるようになっているといいます。前述のファンイベント同様、2.5次元舞台は、役者とファンの距離が近いように錯覚させる演出が非常に巧みで、随所に取り込んでいることがわかります。

2.5次元舞台はキャラクターのイメージにあわせるため、多くの作品で新人に近い役者が積極的に登用されます。「原作が好き」という思いから舞台に飛び込んだ役者たちが、先輩役者たちとの練習で鍛えられ、心身ともにその演じるキャラクターに近づいていき、舞台上でパフォーマンスを見せる。2.5次元舞台ファンの中には、そうした推しの成長を温かく見守り、その成長に感動する人も少なくありません。

もちろん推しゴトは楽しいばかりではありません。いまでこそ会場が広くなるなどしていますが、2.5次元舞台市場が立ち上がった当初は、作品によってはチケットの入手が困難なものも。どんなに推しゴトとして劇場に行きたくてもそもそも行けないという悩みは常について回ります。そもそも役者が引退してしまうということもあります。

そのためファンはおっかけるのも必死です。役者が軌道にのるまでは、「推しを見られるのは今回の公演が最後かもしれない」という思いから、拍手で盛り上げ、公演はあるだけ見る。公演後のアンケートの自由記入の感想欄もびっちりと埋めます。とにかく推しに舞台に出続けてほしいという一心で、不安も抱えながらの活動なのです。そんな2.5次元舞台ファンの葛藤を、『私の鬱を治したのは2.5次元の推しゴト』を通じて感じていただきたいです。

 

 

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