聖地巡礼。
本来、宗教的な意味を持っている場所を訪れることを指します。
しかし、現代日本では、もう一つの別の意味があります。
そう、マンガやアニメ等の舞台になった場所を訪れることです。
ヒットした作品では特に、馬鹿にならない数の訪問者が聖地に赴きます。
実際、アニメの舞台になったことを観光資源とし、町興しを図る自治体もあるほどです。
ただこの聖地、殆どのものが既に掘り起こされてしまっています。
ある程度レジャーとして定着してきてしまったため、そんじょそこらの聖地では、マンガ仲間に驚いてもらえないでしょう。
アクセスの悪い地方ですら巡礼に来る人が後を絶たない状態ですので、当然です。
じゃあ、どうするか。
実は、あるんですよ。
まだ掘り起こされていない聖地が一つだけ。
しかも、都内でアクセスもいいです。
それこそが、『1日外出録ハンチョウ』で大槻が目覚めた公園なのです。
『1日外出録ハンチョウ』とは
『1日外出録ハンチョウ』は、2017年より『週刊ヤングマガジン』で連載されているマンガです。
『賭博破戒録カイジ』という作品に出てきた敵のボス、大槻班長を主人公に添えた、軽快なスピンオフです。
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多重債務者たちを強制労働させる地下労働施設。
この中にあって、労働者たちの意欲を完全に削がないように設定された「1日外出券」という特例。
1日外出券を使えば、24時間だけ鬱屈とした地下環境を逃れ、地上で好きなように振舞えるというシステムです。
1日外出券は高額で普通の労働者には手が出ません。
しかし、自らが運営する売店やイカサマギャンブルによって潤沢な資金を持つ大槻は、頻繁に外出券を使い、外の世界を満喫するのです。
その外出ぶりは圧巻で、知恵と嗅覚を使って全力で地上のグルメや憩いを満喫する様子が描かれています。
地下労働施設のボスを張っているだけあって、計画性の高さや判断の的確さ、その場の機転は目を見張るものがあります。
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そしてこのハンチョウの外出先として放り出される公園、どうやらローテーションがあるらしいのです。
まあ、毎回違う公園を探すのは大変でしょうからね。
強制労働をさせている帝愛グループのモデルになった会社の本社が東京にあったことから、東京の公園で解放されることが多いです。
聖地として訪れるにはもってこいですね。
ということで、今回はハンチョウに出てきた公園に触れてみましょう。
実際に行ってみるとかなり脚色されている場所もあったので、実在したかどうか○×クイズ形式で出題します。
第一問:錦糸町編
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大槻が学生時代を過ごした思い出の街、錦糸町。
このとき解放された公園は実在する。
○か×か?
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正解:○
実在します。
おそらく錦糸公園がモデルと思われます。
大槻の見上げていた大きな二つのビルが決め手になりました。
時代背景からか、本編では東京スカイツリーが描かれていないんですね。
現地に赴いてみると、こうした発見もあるので面白いです。
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大槻が解放された芝生も…
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おそらくここじゃないかなという場所が見つかりました。
本当にだだっ広くて、寝転ぶと気持ち良さそうです。
2018年9月現在は、芝生の種を撒いた関係で立入禁止となっています。
11月上旬に開放予定ですので、錦糸公園で債務者を降ろそうとしている黒服の方はご注意下さい。
第二問:日比谷編
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ハンチョウの記念すべき第一話で選ばれた公園、日比谷公園。
この公園は実在する。
○か×か?
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正解:△
実在しますが、一部に脚色があります。
左下に見える、丸い屋根のステージの形から大まかな位置は割り出せますが、ピッタリ一致する場所はありません。
公園内を隅々まで5周歩いたので、断言できます。
なので△。
とはいえ、○×クイズと銘打っておいて△を出すのは卑怯なので、△のときは○の人も×の人も正解とします。
よかったですね。
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ネックになったのは、ベンチです。
日比谷公園のベンチは大体画像のようなデザインなんです。
何が言いたいか分かりますか?
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そう!
真ん中に仕切りがあるせいで寝転べないんです。
だからベンチの形状を変える必要があったんですね。
大槻がちゃんと寝転べるように。
やむを得ず脚色をしたというわけです。
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おそらく、この辺りの縁石と…
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この辺りの草木の感じを合成させて、登場シーンを描いている雰囲気がします。
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茨城のアンテナショップを味わう第4話、「飲芋」でも日比谷公園が使われています。
大槻のモノローグから、日比谷公園はローテーションに組み込まれていることが推察されますね。
このときのアングルは、近いものが再現できます。
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この辺りですかね。
右の方にある街灯を目印にすると、いい感じになります。
因みに、テントの映り込みから分かると思いますが、祭りの日に当たりました。
外出すると思わぬ偶然に出会います。
大槻が祭りに遭遇した回のように、楽しみに変えていきたいところですね。
第三問:西荻窪編
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では、その祭りに遭遇した回からの出題です。
第2話で沼川と外出したときに解放された井の頭公園。
この公園は実在する。
○か×か?
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正解:△
実在しますが、大槻たちのいた場所は特定できません。
ここでもまた、椅子の形状が壁として立ちはだかります。
真ん中に仕切りがあったら、債務者たちが寝転べないではないか!
さらに、茂みを背にしたベンチは、隣のベンチとの間に木を挟んでいます。
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なので、このようにベンチが並んでいる構図は、ストーリーの都合で脚色しているのだと分かります。
とはいえ、公園自体は実在するので撮影が可能なシーンもあります。
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例えば、子供たちが元気に走っている場所。
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これは、ここなんじゃないかなあと思います。
道の両側にベンチがある箇所は少なく、それだけで数箇所に絞ることができます。
さらに、レンガっぽい床や、街灯、後ろにある斜めになった木を加味すると、この道でほとんど確定となります。
実際に子供や子供連れも多いですしね。
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白鳥ボートで賑わうこちらの池のコマは…
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七井橋という橋の上から撮ると、近いものが撮れるはずです。
見えづらいですが、奥の方にある柵の再現を重視して撮りました。
第四問:清澄編
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第4問は、大槻と完全に嗜好の合う男に出会った回からの出題です。
画像の清澄公園は、実在する。
○か×か?
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正解:△
実在しますが、大槻は清澄「庭園」で解放されています。
清澄公園は、清澄庭園の隣の公園で、1924年に清澄庭園から切り離されて公園用地となりました。
物語に出てくるベンチがあるのは、清澄庭園部分です。
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特徴的なのは、杭にロープを繋いで作られた柵。
これは美しく整えた草木が踏み荒らされないための措置です。
本当に見事な日本庭園ですので、聖地巡礼でなくても訪れてみて欲しい庭園です。
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ベンチもちょうど二つ並んでいて、再現度の高い写真を撮ることができました。
不思議なのは、この写真を撮った場所、清澄庭園の最深部なんです。
寝ている大槻たちを見張り役の黒服が一生懸命背負って運んだんでしょうか。
入園料まで払ってあげて。
そう考えると、よっぽど清澄庭園に来たかった黒服がいたということになります。
日本庭園好きの黒服なのでしょう。
ボーリング好きな黒服や蕎麦打ちが趣味な黒服もいたりと、黒服たちの中にも個性がありますからね。
第五問:国分寺編
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最後は、ノープランでの外出を敢行し、アドリブ力の高さを見せ付けた国分寺編です。
このとき解放された公園は存在する。
○か×か?
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正解:×
この公園は、国分寺市には存在しません。
いわゆる悪魔の証明で、存在しないと断言するのは怖いのですが、少なくとも国分寺駅と西国分寺駅徒歩15分圏内にはありませんでした。
もちろん、大槻が寝るために作られたかのような、ジャストサイズのベンチもないです。
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こちらの夢みたいな通りもありませんし、沼川みたいな人もいませんでした。
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おそらくですが、こちらも複数の公園のパターンからちょうどいいものを組み合わせている気がします。
これから国分寺にハンチョウの聖地巡礼に行くという方は、ご注意下さい。
徒労に終わる可能性が高いです。
逆にもし、国分寺で該当する箇所を知っている方は是非ご共有下さい。
まとめ
以上です。
聖地巡礼なんてしたことありませんでしたが、なるほど、楽しいですね。
マンガと同じ風景が見つかったときの喜びは、筆舌に尽くしがたいものがあります。
3巻以降のハンチョウは、作者が忙しいからか、毎回大槻が寝るのにちょうどいい公園を探すのが大変なのか、具体的な地名の出ることが少なくなっています。
でも、話自体はずっと面白いので、他の公園が現れたら是非訪れてみたいところです。
最後に、公園ではないですが番外編として、こちらの写真を載せておきます。
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手塚治虫を訪ねたときの…
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雑司が谷です。
参考資料
『賭博破戒録カイジ』1巻 福本伸行 2000年 講談社
『1日外出録ハンチョウ』1巻〜2巻 漫画:上原求、新井和也 原作:萩原天晴 協力:福本伸行 2017年 講談社