町田粥先生の『発達障害なわたしたち』は、実際に発達障害な人たちのインタビューをマンガ化したエッセイコミックです。彼らが日々を乗り越えるための生活の知恵は、発達障害の診断を受けていない人にも参考になります。
発達障害な人とは、人とは脳が違う働きをすることで、行動面や情緒面の一部で特徴があるひとたちのことです。自閉症やADHD(注意欠如・多動症)、学習障害と様々な種類があります。
この作品ではこうした症状をかかえた人たちが日々の生活で何に困り、どのように乗り越えているかをまとめています。
町田先生自身も、「Mちだ」として作中に登場。担当編集のK成さんとともにADHDの診断を受けて、子供のころからの経験談を語ります。Mちださん含め、発達障害の人が日々何に悩み、どのような困りごとを抱えているのかが明文化されています。同じ発達障害の診断を受けていても、得意なことや苦手なこと、どのようにその特性が現れるかは人それぞれということも見えてきます。
例えばADHDの人は、不注意が強いためケアレスミスが多く、面倒に感じることに手を付けるまでに時間を要するなどの特徴があります。
Mちださんを含め、いろいろな人のケースに耳を傾けることで、様々な発達障害な人のタイプへの理解を深めることができます。そして彼らが日常において何に困り、コミュニケーションにどう悩んでいるのかが見えてきます。
この作品に登場する発達障害の人たちの事例を知ることで「同じようなことで悩んでいる」と思う人がいるかもしれません。どうしてもケアレスミスがなくせなかったり、衝動的な行動に出てしまったり。そうした人も、実際に病院で診断を受けているかどうかに関わらず、発達障害の人のように、その特性や何が苦手かを理解したうえで、得意なことを見つけてその分野に注力していけばいいという姿勢には背中を押されます。
作中に登場する発達障害の人のライフハックも参考になります。曰く火を使わない、約束しない、運転しない、手に荷物を持たない、など。こうしたライフハックを守って生活できるのかと疑問を持つかもしれませんが、意外に実践できるもののよう。人付き合いの方法、ケアレスミスが多いときの対処方法などは、診断を受けていなくても同じような悩みやもやもやを抱える人のヒントになるでしょう。