マンガ大賞2022受賞作『ダーウィン事変』は、実は打ち切り寸前だった?|川島・山内のマンガ沼web

マンガ大賞2022受賞作『ダーウィン事変』は、実は打ち切り寸前だった?|川島・山内のマンガ沼web

麒麟・川島とかまいたち・山内が「面白いマンガ」に沼のようにハマって楽しむマンガバラエティ『川島・山内のマンガ沼』。今回は、前々回&前回放送された「マンガ家ガチアンケート・うめざわしゅん編」を前後編あわせてお送りします(放送を見逃した方はTVerもご覧ください)。

ダーウィン事変』打ち切りの危機を救ったのは……!?

川島 川島・山内のマンガ沼、今回は「マンガ家ガチアンケート」。現役のマンガ家の中では、この方が一番天才として名前が挙がるんじゃないかな、という先生です。以前、私がおすすめマンガで紹介した『ダーウィン事変』の作者・うめざわしゅん先生です。

 

 

山内 川島さんが紹介した段階では、まだあんまり知られてなかったですよね。

川島 まだ1巻出始めくらいでしたからね。

山内 すごいですね。かなり先物。こういうパターンが一番うれしいですね。

川島 最初から応援してた本が、後で賞を取ったり、すごい存在になったりするのはファンとして一番うれしいですね。そんなうめざわ先生でございますが、現在は連載を抱えていてお忙しいということで、今回はアンケートでのご出演になります。

川島 代わりに『ダーウィン事変』の担当編集者さんにお越しいただきました。

山内 『ダーウィン事変』売れてますか?

編集 おかげさまで売れてまいりました。

川島 この「マンガ沼」の影響って、ちょっとあります?

編集 もう絶大でして。「マンガ沼」のおかげと言っても過言ではないです。

川島 いやあ、どうなんすかね(笑)?

山内 言われて気持ちよくなってる(笑)。

川島 講談社の会報誌に、『ダーウィン事変』が2022年のマンガ大賞受賞と書いてあるんですけども、担当の寺山さんが受賞のコメントで「2巻刊行直後、本作は打ち切り一直線の売れ行きでした」と答えてるんです。

 

撮影/池ノ谷侑花(ゆかい)

 

山内 え?

川島 そんなところへ、テレビ番組『川島・山内のマンガ沼』で取り上げていただけるという話がやってきて、「ここしかない」と社内各所に相談しました、と書かれてある。つまり我々の番組がなかったら、『ダーウィン事変』は世間に広がることもなかったかもしれないと言っても過言ではない。

編集 過言ではないというか、その通りです。

川島 1巻出たときからめちゃくちゃ話題になってて、すごく評価されてる作品だと思ってたんですけど。

編集 1巻の頃から、読んでいただいた方には好評だったんですけど、そんなにたくさんの方には読んでいただけなくて。こちらの「マンガ沼」でご紹介いただいてから、みなさん少しずつ読んで「面白いね」となってきましたね。

山内 すごいですね。いや、うれしい。

川島 これはもう売れるべくして売れた感じです。微力ながら応援させていただいたのがよかったです。

寄生獣』とも共通する部分がある

川島 それでは、うめざわ先生のプロフィールを簡単に紹介したいと思います。うめざわしゅん先生、43歳。私と全く同い年です。千葉県出身。1998年、大学在学中に『ヤングサンデー増刊』の読み切り『ジェラシー』にてマンガ家デビューされました。麒麟も1999年やったから、デビューもほぼ一緒。完全に同期です。2006年には『ヤングサンデー』に掲載の短編連作をまとめた『ユートピアズ』を刊行。この中の『どつきどつかれて生きるのさ』と『ヘイトウイルス』この2作品が「世にも奇妙な物語」の原作として使用され、まずは短編の名手として注目を集められました。2015年、単行本未収録作品を集めたうめざわしゅん作品集成『パンティストッキングのような空の下』を発売。これが「このマンガがすごい!2017」オトコ編第4位にランクインされました。

 

撮影/池ノ谷侑花(ゆかい)

 

山内 この頃から名前はもう知られてたんですね。

川島 ただ、皮肉が効き過ぎてたり、時代を違う角度から切ったりする作品が多かったから。小説や映画が好きな人には、たまらん作品集ですけども。で、これが『ダーウィン事変』の元となるような流れを作っていくわけです。そして2020年から『月刊アフタヌーン』にて『ダーウィン事変』の連載がスタート。その2年後に「マンガ大賞2022」の大賞を受賞して、今、大注目のマンガ家ということでございます!

山内 すごいっすね。

川島 ちなみに弟さんも福星英春の名前で、プロのマンガ家としてデビューしています。兄弟どちらも才能があり余ってるんでしょうね。では現在連載中の人気作『ダーウィン事変』を改めて簡単に紹介したいと思います。

山内 お願いします。

川島 うめざわしゅん先生、『ダーウィン事変』。2020年から『月刊アフタヌーン』にて連載中。単行本は第4巻まで発売中です。このマンガ、ざっくり説明するのも難しいんですよ。本当は、何のあらすじも知らずに読んでほしいというのが本音です。表紙だけ見て、ギャグマンガと勘違いしてる人はいるんじゃないかな? 1巻出たときはそんな感じでしたもんね。

山内 1巻の表紙、インパクトありましたよね。どういうマンガやねんっていう。

川島 かわいらしいキャラクターが描いてあるのに、『ダーウィン事変』という難しいタイトルが付いている。これだけでは内容がまったく想像つかないので、1巻の段階で単行本を手に取る人は少なかったのも、分からんではない。

山内 はい。

川島 テロ組織の動物解放同盟(ALA)が生物化学研究所を襲撃した際、妊娠しているメスのチンパンジーが保護されました。彼女から生まれたのは、チンパンジーじゃないんです。半分ヒトで、半分チンパンジーの「ヒューマンジー」。その名をチャーリーという男の子でございます。その後、チャーリーは人間の両親の下で15年間育てられ、高校に入学することに。その学校でチャーリーは頭脳明晰だが陰キャと揶揄されるルーシーという女性と出会います。テロ、炎上、差別。ヒトが抱える問題に、ヒト以外のチャーリーがルーシーと共に向き合う、ヒューマン&ノン・ヒューマンドラマでございます。

山内 川島さんは『ダーウィン事変』のどのへんに惹かれたんですか?

川島 これ、僕がまったく読んだことないテーマだったんです。人間は「平和で仲良く」とか、「戦争反対」とか、「差別反対」とかいろいろ言ってますけど、人間より知能も運動神経も高い生き物が現れた際に、人類がどう対応するかというのが、すごくリアルに描かれてるなあという。1巻でいうと、理解できない存在が現れて、しかもそれが自分より優秀だったときに、「人間って差別してしまうんや」っていう。そこがすごくリアルでした。

 

撮影/池ノ谷侑花(ゆかい)

 

山内 設定がリアルなラインで、ちょっとありそうなんですよね。僕は『寄生獣』の哲学的な部分に通ずるものを感じましたね。人間の命と、その他の動物の命との天秤具合とか。

川島 確かに主人公のチャーリーと『寄生獣』のミギーとは、ちょっと共通する部分があって。あまりにも知識が深くなっていく寄生獣と、それが敵である寄生獣との間の立ち位置であることによって人間を俯瞰で見る。

山内 自分のことも俯瞰で見れてて、いろんな意見を言っていくのがちょっと面白いなっていう。

川島 「問題があるのは人間じゃないか?」って。

ダーウィン事変』の基となった短編『もう人間』

川島 ここからはうめざわ先生に書いていただいたアンケートを基に、『ダーウィン事変』の魅力を深堀りしていきたいと思います。最初の質問はこちら。

 

ダーウィン事変』を描こうと思ったきっかけはなんですか?

 

川島 先生の回答はこちら。

 

以前描いた『もう人間』という短編で、生命倫理的なテーマが見つかり、これをもっと掘り下げたいと考えていたところ、ある本で1920年代に実際にあった、人間×チンパンジーの交雑実験のエピソードを知りまして、それは(幸いにも)成功しませんでしたが、マンガならやれるかと。

 

山内 実際にあったんだ。

川島 こういう非人道的な実験が実際にあって、それがマンガだったら実現できると。先生のアンケートにあった『もう人間』は、短編集『えれほん』に収録されております。これ、もう絵より文字のほうが多いんです。

 

 

山内 『ダーウィン事変』もけっこう多いですけど。

川島 テーマもテーマやし、めちゃくちゃ頭使うんです。文章を全部理解した上でマンガを読まないと。母親とへその緒でつながっていないと生きていられない、10万人に1人の難病「アンビリクス症候群」というのがあるんです。通称「臍子(へそご)」という、まれな病気を持つ人々がいるという世界で。

山内 これは架空の病気?

川島 もちろん架空です。日本では、そのため中絶が違法になり、女性ジャーナリストが彼らの取材を続けていくが……というお話しです。これが、めちゃくちゃおもろいんです。短編集って、ストーリーが短いので気軽にポンポン読んでいけるものなんですけども、これは今まで読んだ短編集で一番重たいです。

山内 そんなに!?

川島 『ダーウィン事変』にハマってから、この短編集『えれほん』を買って、寝る前に読んでたんですけど、2ページ目でもう気絶しました。ルール説明がめちゃくちゃ深いんで。

山内 この設定を考えるって、すごいですよ。

川島 主役は女性ジャーナリストの水迫さんなんですけど、この方自身も「お前にそんな権利あるのか」「臍子をエンタメとして捉えていないか」というのを突きつけられるんです。『もう人間』濃い内容なので、これはこれでめちゃくちゃ読んでほしいです。で、これをもっと掘り下げたいと思って、『ダーウィン事変』を描いたということなんですね。

あらすじも宣伝コピーも書きにくい!

川島 編集の方にちょっとお聞きしたいんですけど、初めて『ダーウィン事変』をネームで読んだとき、どういう感想でしたか?

編集 最初はやっぱり「むちゃくちゃよくできた妄想だなあ」と。「ヒトとチンパンジーの間の子」という大きな嘘(フィクション)から入るんですけども、読むごとにどんどんリアリティがすごくなってきて。相当考えて作られたんだなあって関心しちゃいました。

川島 ビジネスとしての感想はどうですか? これは売れると思った?

編集 「売りたいな」とは思ったんですけど、「売るのめちゃくちゃ難しいな」って。

川島 だって、どこのジャンルに置いていいか分かんないですよね。「ヒューマンジー」の棚ってないから(笑)。

編集 この面白さって、やっぱり説明がしにくくて。正直、単行本のあらすじもめちゃくちゃ書きにくいんですよ(笑)。そのまま書くと、難しく思われちゃうというか。

川島 そうですよねえ。

編集 で、先生はそれまで短編をずっと描いてきて、長編連載をされたことなかったんです。「短編をいっぱい描いてたけど、長編で売れたい。どうすればいいか」と、うめざわさんから相談されて、この作品になったという感じです。

山内 先生が講談社で描くのは、これが初めてですよね? この作品をうめざわ先生が持ってきて、「じゃあうちからデビューさせましょう」となったのか、それとも先に講談社が「何か描きませんか?」と声をかけて、先生がこれを持ってきたのか。

編集 うめざわさんが編集部に電話をして持ち込んだのが最初ですね。

川島 新人みたいな感じで持ち込まれたと。駄目だったら「うちでは無理です」って言えるわけですよね?

編集 そうですね、はい。

川島 ただ、「ジャンルは分かんないけど、これはとんでもない作品だ」という手応えはあった?

編集 それはありました。「これは売らなきゃヤバいなあ」と。

川島 という感じで『ダーウィン事変』が始まったわけですよね。確かに帯もむずいんですよ。「半分ヒトで半分チンパンジーのNEWヒーローVSテロリスト!!!!」これだけでは全然説明できてないんですよね。

編集 はい、1巻の帯、むちゃくちゃ苦労したんで(笑)。2巻でどうしようとなって、「海外で大反響!!」と書いたりとか。

川島 海外で!? 失礼ですけど……嘘ついた(笑)?

編集 いや、嘘じゃないんです。1巻が出たとき、すぐフランスから翻訳刊行のオファーが来て。その部数も、とんでもない数だったんです。

川島 フランスで。やっぱり動物愛護みたいなところが、日本より進んでるんでしょうね。で、3巻では、「[川島・山内のマンが沼]などで取り上げられた、続々重版の話題作!!」。「来た来た来た!」っていう(笑)。

 

撮影/池ノ谷侑花(ゆかい)

 

「誤謬」って読めますか?

川島 続いては私からの質問でございます。

 

ダーウィン事変』の他にタイトル候補はありましたか?

 

川島 めちゃくちゃすごいタイトルじゃないですか。「ダーウィン」と「事変」。あんまり並ばない言葉ですから。だから他にどういうタイトルがあったか、あれば教えてくださいということです。回答はこちら。

 

企画当初のタイトルは『ダーウィンの誤謬(ごびゅう)』でした。

 

撮影/池ノ谷侑花(ゆかい)

 

川島 この漢字、誰が読めるの(笑)?

山内 分からんなあ(笑)。誤謬ってどういう意味ですか?

編集 間違い、誤りですね。

川島 ダーウィンの過ち。進化論を唱えたあの方が1つ間違えてたという。それを「誤謬」。これだと取っ付きにくいということで、担当さんと他にもいろいろ案を出していって『ダーウィン事変』に決まったと。ここで先生から逆に我々2人に質問があるということです。こちら。

 

お2人とも有名人ですが、有名であることのメリットってどんなものがありますか? チャーリーもある種有名人ですが、そのせいでだいたいろくな目に遭ってないので知りたいです。

 

川島 確かに我々芸人も、ヒューマンジーみたいなとこありますけど(笑)。「芸人ってどうですか?」って言われるもんね。

山内 言われますね。

川島 別に我々もいうたらサラリーマンみたいなもんなんで、あんまり変わんないですけどね。

山内 確かに。でも「大変でしょ?」とか言われますね。

川島 どうですか? 有名であることのメリット。

山内 メリットなあ……飲食店で、ちょっとサービスしてくれたりとか。「山内さんですよね? 応援してます。これ店長からです」みたいな。だいたい注文し終わった後に、店長がサービスですごいお肉出してくれるから、いつも「先に言っといてもらったら……」って思うんですけど(笑)。もう満腹状態で、すごいの出していただいたりね。

川島 そこ、ちょっとデメリットでもあるよね。

山内 ご厚意を残すわけにもいかないから、何とか頑張って食べないといけないし。

川島 酒飲まれへんのに、「店からです」って何万もするシャンパン贈られたりして。あと、デメリットとしてはあれかな。お店と何かトラブルあったときに、何も言えない。

山内 そうなっちゃいますよね。

川島 100%こっちが正しいときでも、揉められない。

山内 あとやっぱり、街を女子と歩けない。一番のデメリット(笑)。

川島 浮気とか不倫じゃなくてもね。

山内 そもそも「芸人になって有名になって女子にモテたい」と思って入ってきたのに、急激に時代が変わって、女子と歩こうものならすぐSNSに載せられることになって。「聞いてた話と違うやん」って思います。

川島 マジで「今、一番真面目な職業は芸人や」と(笑)。

山内 いや、ほんまそうです。

川島 あと、家族ができて特に思うけど、本名でやらんかったらよかったね。例えばお店を予約したら、「あ、あの川島さんなんですね!」ってなっちゃうんですよ。

山内 ネットで注文するときも、向こうがフルネーム知ってたら、「あれ? これもしかしたらあの人ちゃうん?」みたいになっちゃうので。僕らの時代って「芸名付けてるやつなんやねん」っていう風潮、なかったですか?

川島 「何で個人で芸名? ピン芸人だったらいいけど」みたいな。

山内 当時は「変な芸名付けるの、嫌やなあ」という気持ちもあって、「絶対本名で行くべきやろ」と思ってたから。

川島 そういう意味では、「お笑いでご飯を食べたい、でも顔はバレたくない。名前もバレたくない」という理想型はパペットマペットや(笑)。ああなりたかった! 「実は俺がパペットマペットや」って言えるし。プライベートで女性と歩いてても、「うわ、パペマペや!」って言われへんし。我々はこんなに素顔も本名も丸出しでやるという、怖いことやってます。

4巻の最後にはいったい何が描かれている?

川島 続いての質問こちらです。

 

ダーウィン事変』で一番読んでほしいシーンはどこですか?

 

川島 先生の回答はこちら。

 

4巻の156ページで、あるキャラクターが登場するシーンです。連載開始から、まずはそこを目指して進んできたので、描けたときはうれしかったです。

 

川島 (4巻の156ページを読みながら)これ、ヤバいでしょう?

山内 最初からここを目指してたんですね。

川島 これ紹介したいんですけど、最新刊の最終ページになっちゃうので。そんなもんオチだけ言うてるようなもんやもん。私は新幹線の中で読んでて、ビリビリビリ!となりました。先生、分かってない。これテレビだから、ネタバレになりますよ。俺がこれ言おうものならば、ファンにボコボコにされるんちゃいます? だから内容は言いませんけど、とにかく(1巻から)買って読んでください。4巻の最後にビッグウェーブ来ますから。ここでタイトル出てもいいくらいですよね。

編集 そうですね。

山内 もう買わざるを得ない終わり方してますね。素晴らしいです。

 

撮影/池ノ谷侑花(ゆかい)

 

川島 マジでスクリーンで見たい。これは全員の背筋伸びます。

山内 映画化もありそうですよね。しかもハリウッドとかで。

川島 日本映画もすごいけど、これはやっぱりハリウッドでやってほしい。予算をかけて。

ルンバに人間性を見出す?

川島 続いての質問は、マンガ沼恒例のこちらでございます。

 

マンガを描く時の7つ道具は何ですか?

 

川島 この天才が何を道具として用いてるのか、気になります。先生の回答こちら。

 

デジタルにしてから筆記用具すら7つもない。3つぐらいでいいですかね。

  • 連載前に買ったチンパンジーのフィギュア(かわいいです)
  • 最近買ったルンバ(癒されます)
  • 漢方茶(おいしい)

 

川島 「かわいいでーす」「おいしー」カラオケのコーラス部分ですか(笑)。先生がルンバに癒されてる瞬間って見ました?

編集 「何で癒されるんですか?」って聞いたことがあるんですけど。掃除でいろんな部屋を回ってくれるじゃないですか。うめざわさんは1人住まいなんですけども、遠くで掃除機の音がしてると、誰かが住んでくれてるみたいな気持ちになって、寂しさがまぎれるんですって。

川島 基本的に寂しい前提なんですね。

山内 分かるわー。ルンバはいいですよ。俺、家に5つあるんです。

川島 カーリングやん(笑)。そこまで広い?

山内 そんな広くないんですけど。ルンバが好きだし、新しいルンバが出たら買うんですよ。でもまだ使える状態のルンバを捨てるのって嫌じゃないですか。前のルンバ、1年前のルンバ、最新のルンバみたいな感じでどんどんルンバがたまっていって、で、今はルンバ同士がぶつかってあんまり掃除ができない(笑)。

川島 本末転倒(笑)。捨てられないの?

山内 捨てられないですよ。まだ全然ゴミ取ってくれるんで。

川島 じゃあ買わなきゃいいじゃない。

山内 そうなんですけど、最新式って、前とどう変わったか気になるじゃないですか。だから番組で「達成したら何が欲しいですか?」と聞かれたら、毎回ルンバって言ってます。しかもまあまあの確率で達成してるんです(笑)。

川島 買ってもらうのが一番いいよね。

山内 プレゼントでルンバって、めちゃくちゃうれしいから。

川島 これはルンバサイドに非はないと思うけど、ルンバをポチッと押して仕事に行って、さぞかしきれいになってるだろうと思ったら、ひっくり返ってたりするやん(笑)。風呂場で寝てたり。そのへんがちょっと人間っぽいというか、先生もちょっとそれを感じてるんじゃないですかね。

編集 そんな気がしますね。

川島 ヒューマンジーみたいな感じで、人間と機械の間みたいなところを感じてたりして。

山内 マンガの後半に「ルンバンジー」みたいなのが出てきたりして(笑)。

川島 ルンバンジーが出たら僕は読むのやめます(笑)。

最近もっとも交流があるのは……?

川島 うめざわ先生って、ざっくりいうと、どういう方ですか?

編集 とにかく理知的な方ですね。ネームを読ませていただいたときに「ここはどういう意図で描いたんですか?」と聞いても、全部ちゃんと説明してくれるんです。作品から受けるイメージ通りの方ですね。かなり職人気質な方です。

山内 趣味は何かあるんですか?

編集 趣味はあまり聞いたことがなくて。実は連載が始まるあたりにコロナ禍になってしまって、それ以降、会ってないんです。

川島 じゃあ打合せもリモートってこと?

編集 はい。全部リモートで、直接顔を合わせているわけではないので、そうすると「ご趣味は?」と聞くタイミングもなくて。

川島 一緒にご飯っていうわけにもいかないしねえ。じゃあけっこう謎多き方なんですね。続いての質問はこちらでございます。

 

影響を受けたマンガ家や作品は何でしょうか。
また仲が良い、交流のあるマンガ家もお聞きしたいです。

 

川島 先生の回答はこちら。

 

新井英樹先生の『ザ・ワールド・イズ・マイン
岩明均先生の『寄生獣
ジョージ秋山先生の『捨てがたき人々
根本敬先生の『タケオの世界』

など、いっぱい影響を受けてます。

仲の良いマンガ家、いないなあ。最近はルンバくらい。

 

川島 もうマンガ沼からルンバ贈ろう(笑)!

山内 ルンバ増やしてあげよう。

川島 ルンバでギュウギュウにしてあげよう。

川島 動くもん、最近ルンバしか見てないのか。

山内 先生、そんなに隔離されてるんですか?

編集 外に全く出られないそうなんで。

川島 『寄生獣』はやっぱり出てきましたね。チャーリーのDNAには、ミギーが入ってるかもしれないですね。

三者三様の忘れられない言葉

山内 続いては僕からの質問です。

 

先生のこれまでの人生の中で、ぐっと来た格言や名言はありますか。

 

川島 これは良い質問。

山内 『ダーウィン事変』には哲学的なものをかなり感じるんで、何か影響を受けた言葉とかあるのかな、と思って聞いてみたわけです。先生の回答はこちら。

 

僕は昔からよく職質を受けがちなのですが、ある日、散歩していたら警官3人に囲まれてあれこれ聞かれたので、「何か事件でもあったんですか」と尋ねると、「いや、ないけど、あなた怪しいから」と言われたときは、この世の不条理を深く感じて震えました。

 

川島 まあ、こういうことあるわな。

山内 僕が聞きたかった回答ではないんですけど……いや、合ってるといえば合ってるのかな。

川島 山内君はありますか? ぐっと来た言葉。

山内 『キャプテン翼』のシュナイダーの名言で、「強い者が勝つんじゃない。勝った者が強いんだ」というのはずっと印象に残ってますね。それは子供ながらに、おーっと思って。

川島 「勝てば官軍」って言いますからね。

山内 川島さんは何かあります?

川島 英語の先生。僕、英語の成績が5段階で3くらいだったんです。まあ普通ですね。でもテストでは一生懸命答えるじゃないですか。で、最初の簡単な問題を間違えたんですよ。そしたらそれ以降の回答、なぜ全部バツにされてたんですよ。合ってるやつもあるのに。で、「これ採点ミスされてるわ」と思って、「先生これミスってますよ」と言ったら、「あ、この問題間違える人はもう全部間違えてると思ってた」とか言って。結局、採点し直して20点くらい上がったんやけど、「すっごいこと言われてるな、今」って思って。

山内 すごいですね。

川島 すごいですよね、先生として。一昨年くらいかな、その先生がインスタで「●●です。川島くん最近活躍してるね。東京行って成功しておめでとう」みたいなこと書いてきたから、ブロックしといた。

山内 ブロック(笑)。

川島 いまだに覚えてるくらいやから、思春期でそういうことされるの、一番つらいんですよ。そりゃブロックされるでしょ(笑)。そういう人を見返すために売れたんで。そういう意味では先生の職質と通じるものがある。「これは不条理過ぎるぞ」というのがたまって、こういう番組をやらせてもらってます。先生のおかげです(笑)。

 

撮影/池ノ谷侑花(ゆかい)

 

 

次回放送は「夢の最強ラインナップ『週刊少年マガジン編』」前編をお届けします。

 

(構成:前田隆弘

 


【放送情報】
マンガ沼 公式サイト
次回放送
読売テレビ●10月8日(土)深1:28~1:58
日本テレビ●10月13日(木)深2:35〜3:05
「夢の最強ラインナップ『週刊少年マガジン編』」を放送。
Tverでも配信中!)
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