話せば盛り上がる学参の世界!『ガクサン』展は5月8日まで

話せば盛り上がる学参の世界!『ガクサン』展は5月8日まで

はじめまして。豊島区のトキワ荘通りで「E Gallery」「マンガナイトBOOKS」を運営しているマンガナイトの松尾と申します。「E Gallery」は、2022年3月31日にオープンした、マンガの原画やイラスト、デジタルデータ等を展示するギャラリースペースです。「マンガナイトBOOKS」は、2018年に文京区春日でオープンしたマンガ専門の書店で、3月31日に移転オープンしました。マンバさんでもこれまで、連載続行祈念!『古代戦士ハニワット』原画展平成最後に銭湯サウナマンガの魅力を振り返る「マンガで入る銭湯サウナ」が高円寺・小杉湯で開催など、展示やイベントをご紹介していただきました。移転前は6人いるだけで既にぎゅうぎゅうなスペースでしたが(それはそれで、熱気があり好きでしたが)、移転して、少しだけ広くなりました。同施設内にはマンガを読める空間の「マンガピット」があるので、今後は読書会やトークイベントなども、積極的に開催していこうと計画しています。

これらの施設はマンガと学びの拠点としてオープンしました。「マンガと学びの拠点」という言葉だけだと、少し硬いイメージを抱かれるかもしれません。けれども、はじめて読んだマンガが「学習まんが」だったとか、図書館で読んだ『はだしのゲン』がすごく心に残っていて…という話をすると少しピンとくる方もいると思います。マンガを読んでこれまで知らなかった世界に出会ったり、苦手意識を持っていた分野に興味が湧いたり、マンガによって友達ができたり、マンガそのものを勉強したいと思ったり。そんな「マンガ」と「学び」をテーマに、イベントや展示などの企画を、場所と連動しながら進めていきます。

現在、「E Gallery」と「マンガナイトBOOKS」では5月8日までガクサン展を開催しています。モーニングで連載中の佐原実波先生による作品『ガクサン』の企画展示で、店内では複製原稿とデジタルイラストを、館内でご覧いただけます。

また、作中で登場した参考書やマンガで学べる本も多数販売しております。

 

◆ミーハーとオタクの「凸凹コンビ」

タイトルの『ガクサン』ですが、学習参考書のことを、略して「学参(がくさん)」と呼ぶそうです。

美大受験に向けて邁進する『ブルーピリオド』やロードバイクと出会う『弱虫ペダル』のように、夢に向かって全力で突き進む主人公たちがいる一方、「今の自分には何もない」「何に夢中になればいいかわからない」と悩む主人公たちもいます。『ハチミツとクローバー』や『Paradise Kiss』のように、学生で将来に悩んでいる場合もあれば、『逃げるは恥だが役に立つ』のように、就職がうまくいかず、派遣社員で派遣切りに合い、どう生きていこうか悩む社会人の主人公もいますね。

主人公の茅野うるしは後者のタイプ。職を転々とし、中途採用で中堅の学習参考書専門の出版社に入社します。うるしは「これが大好き」「これを仕事にしたい」と胸を張れる答えが見つからず、小さい頃に亡くなった父親から聞いた「将来好きなことを身につけられるように 選択肢がたくさん得られるように 今勉強するんだ」という言葉を思い返して、「いつか」は「いつ」くるのかと不安に思っています。

出版社で一緒に仕事をすることになったのは、お客さんにも同僚にも関係なく、めちゃくちゃ高圧的に話をするタイプの福山という男。初対面の中学生を泣かせたり、子供に自分と同じ参考書を使って欲しいというお客さんには「時代遅れ」と一瞥したりと、ちょっと…どころかかなり変わった人物。けれども、厳しいことを言いつつも「参考書オタク」として参考書についてなら、いろいろなことを教えてくれます。

うるしは、福山が参考書に夢中になれるのを羨ましいと思いながら、周りと壁があり、うまくやっていけない福山の力を引き出せるよう、悩みながらも仕事に取り組んでいきます。「好きなものがあるほうがうらやましい」というミーハーうるしと、「好きなものが別になくてもいい」「好きになるほどただ苦しくなるだけ…ということもある」というオタク福山。

学習参考書を作る「裏話マンガ」としても、将来をどうしようか悩む「お仕事マンガ」としても、うるしと福山のミーハー×オタクの「凸凹コンビマンガ」としても楽しめる一作。1巻はまだ序奏の段階ですが、今後二人でいいコンビとして活躍してほしいです。

 

◆身近だけれど、実は知らない学参の世界

担当編集者の岩間さんと門田さんによると、『ガクサン』は編集部内でお仕事漫画の企画が立ち上がり、その中でも「身近だけれど実は知らない世界」ということで、学参出版社が作品の舞台に選ばれたそうです。

出版社と言っても、ジャンルが違うと全く別の世界。さらに、学参は多くの人が使ったことがあっても、大人になると手に取る機会がほとんどなくなります。作中でも、学習参考書を販売していて「子どもの参考書。ふーん」というお客さんの反応があるように、年を重ねると、多くの人にとっては、必要ではないものになります。

「高校の時にどういう参考書を使っていたかという話って実は盛り上がりますし、参考書の使い方や選び方って性格が出やすいんです」と岩間さん。確かに、作品を読んで「マドンナの参考書を使っていたな~」と懐かしく感じました。世代による「定番」「あるある」が異なるので、ジェネレーションギャップを感じられるものとしても面白い存在です。

作品の立ち上げにあたり、岩間さんと門田さん、作者の佐原実波さんの3名で、学参を出版・販売している出版社に取材に行った際には、会社によってそれぞれ雰囲気が違い、同じ会社でも営業部と編集部によって雰囲気が全く違うことに驚いたそう。理科の実験室があったり、英語教材の音声を録音するための部屋があったりと、会社によってさまざまな設備があるようです。

働いている方は、実際に「参考書オタク」と呼ばれるような、参考書が大好きで、目がキラキラしている人も多いそう。その取材の中で、先に福山のキャラの肉付けがされていき、そこから性格も背も凸凹だけれども、親しくなれる存在のうるしが生まれたそうです。今後、どんな編集部員の人たちが登場するのかも楽しみの一つですね。

 

◆福山が語る、「学参」の魅力

現在、子どもたちが学力を身につけるためには、学校などの公教育だけでは難しい面がある一方、塾に通うためには、さらに高額な授業料がかかります。さらに、コロナ禍によって、家にいる時間が増え、家庭の経済的な豊かさや、パソコンが使えるかといったような文化的な環境が、ますます子どもの学力格差を生み出すのではないかとも言われています。

『ガクサン』6話では、塾に通わずに参考書だけで受験できるか、という問いに対して、そもそも周りの環境が整っていて、地頭が良くないと難しいという話が登場します。そんな前提を話した上で、参考書オタクの福山はこう語ります。

「希望はあった それが参考書だ 有名講師が自分だけに語りかけているような感覚になる… そういう参考書がある 手の届かなかった世界に… 誰しもを招き入れてくれる」

参考書は高くても3000円前後。比べるまでもなく、塾に通うために必要なお金とは大きな差があります。たとえ格差を全てなくすことはできなくても、架け橋となれるのが参考書の存在。

福山は基本的に高圧的ですが、参考書について語るときだけはとてもまっすぐです。マンガなど、本を読んで世界を広げてきた人にとって、『ガクサン』は特に刺さる作品ではないでしょうか。ガクサン展会場では単行本を用意していますので、これから読んでみようと気になった方もぜひお越しください。

 


◆『ガクサン』展 開催概要

【会期】2022年4月27日(水)~5月8日(日)※月曜定休日
【会場】〒171-0052 東京都豊島区南長崎3-4-10 味楽百貨店 1階「E Gallery」「マンガナイトBOOKS」
【交通】
<電車でお越しの方>
都営大江戸線 落合南長崎駅 徒歩7分
池袋線 椎名町駅 徒歩13分
<バスでお越しの方>
〔都バス23区〕池65、白61、練68 南長崎二丁目(バス)下車 徒歩3分
【営業時間】平日:13:15~18:30/土曜・日曜・祝日:10:30~18:30
【入場料】無料
【公式サイト】https://books.manganight.net/gakusan/

主催:一般社団法人マンガナイト
お問い合わせ:https://books.manganight.net/

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