マンバ通信『この世界の片隅に』関連記事24本まとめ

こんにちは、マンガを語りたい気持ちをブーストするサイト『マンバ通信』です。

日本の8月は、広島・長崎の原爆や、終戦の日など、戦争について思いを巡らすことが多いですよね。
マンバ通信では、アニメーションが話題になった『この世界の片隅に』関連の記事がよく読まれています。
しかし! 実はマンバ通信の中には『この世界の片隅に』だけですごくたくさんの記事があるんですよ! どこから手をつけたらよいのかわからないという人も多いのではないでしょうか。

というわけで『この世界の片隅に』に関する記事をまとめてみました。寝苦しい夜の布団の中で、帰省の旅の道すがら、あるいはクーラーのきいた部屋でアイスかじりながら、ゆっくりお楽しみください。

中身はこんな感じです。

  • アニメーション版『この世界の片隅に』の片渕須直監督インタビュー
  • 細馬宏通さんによる論考「アニメーション版『この世界の片隅に』を捉え直す」18本
  • 片渕監督と細馬宏通さんの対談4本

の計24本です。すごいボリューム。

まずは大評判だった、細馬宏通さんの連載『おしゃべり風船:吹きだしで考えるマンガ論』の中から、『この世界の片隅に』関連の記事を。

アニメーション版『この世界の片隅に』を捉え直す

細馬宏通さんが原作マンガとアニメーション版の間を往復しながら、作品中の起こっていることを掘り起こし、原作をどのように翻案してアニメーションが作られているかを読み解くシリーズです。

この連載、吹きだしについて考える連載だったはずは、連載第2回目で『この世界の片隅』を取り上げてから「しばらく続けていいですか」ということで「しばらく」続きました。その数、なんと18回……。読者からは完全に「細馬さんの『この世界の片隅に』の連載」と認識されました。

他の媒体の『この世界の片隅に』の記事と比較して、この連載がユニークなのは、マンガのサイトなので、こうの史代さんの原作マンガとアニメーションを往復しながら、読み解いていくその視点です。原作ファン、アニメーションファンのどちらの方にも(もちろん両方好きな方ならなおさら)楽しんでいただけるものになっています。

ここから先18本は順番で読んでいただくのを推奨しますが、気になる話をつまみ食いしてもらっても全く問題ありません。

そんな連載内連載の第一回はこんな内容でした。

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(1)姉妹は物語る

 

第1回目は、主人公「すず」と妹「すみ」の会話をじっくり読み解く回。二人の会話の中に発生する物語を語るかのような言葉遊びから、互いの置かれた状況や心情が見えてくる……というもの。

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(2)『かく』時間

 

作中に度々登場する「かく」場面に注目。すずの「かく」動作のひとつひとつを細やかに繙き、アニメーションとマンガではどのように表現が変化しているのか、その差について語ります。

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(3)流れる雲、流れる私

 

マンガで言うと第1話、映画が始まり冒頭からの数分のできごとについて書かれた回。映画のオープニング・タイトルは、何気ない風情にも見えつつ、そこから衝撃的な考察へと繋がっていきます。

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(4)空を過ぎるものたち

 

すずの郷里でよく見かけていたサギや飛行機など、空を過ぎ去るものたちにフォーカスした第4回。原作マンガ下巻に描かれたサギは、その存在感を際立たせるために、ある手法を用いて描かれていることに触れています。さて、その手法とは……?

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(5)三つの顔

 

慣れないお粉をはたいて真っ白になったすずの顔、戦地のフィリピンで真っ黒に日焼けした幼馴染の水原の顔、周作の生白い顔、この三人の顔色から読み取ることのできるそれぞれの思いについてのお話です。

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(6)笹の因果

 

すずの手によって着物から作り直された笹柄のモンペ。この「笹柄」に秘められたいくつかの因果について、その他、不発弾以降に現れる不思議なシネカリグラフィとある実験アニメーション作品とのイメージ的繋がりについて、奥深く掘り下げられています。

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(7)紅の器

 

アニメーション版で原作のリンのエピソードが削られていることの他に、もう一人、アニメーションにはほとんど描かれない重要な人物がいます。その人物からすずへと託されたある小さな器について。

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(8)虫たちの営み

 

「戦争しよってもセミは鳴く。ちょうちょも飛ぶ。」作中に登場するさまざまな虫たちの中から、アリ、トンボ、ウジ虫、シラミに注目し考察を展開。本作で描かれる虫たちの行いは、人間の営みにも重なるところもあるようです。

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(9)手紙の宛先

 

「突然失礼致します」の書き出しから始まる原作の最終話「しあはせの手紙」について考えます。読者は最終話を読み進めていくうちに宛先側の人間となり、無意識のうちに「しあはせの手紙」へ荷担するという細馬さんの考察は流石です。

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(10)爪

 

原作の中に登場する人物たちの手には「爪」が描かれていないが、すずの出会うある人物と動物には爪がしっかりと描かれている。この差は一体何なのか? 「爪のある者たち」がどこから来たのかについて語ります。

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まだまだ続きます

(11)こまい

 

「すずさんは小まいのう」と言う周作に対し、幼なじみ水原は「すずは温いのう」と言う。この回では、すず・周作・水原の何気ない言葉遣いや相手の呼び方から考えられるそれぞれの距離感に注目しました。

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(12)右手が知っていること

 

アニメーションには原作にないエピソードがいくつか織り込まれいます。中でも原作後半に登場するすずの幻の右手の現れ方が異なっているシーンは印象的です。では、なぜ異なる必要があったのか?

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(13)サイレン

 

下巻から頻繁に出てくる警報音。マンガの画面のあちこちに白抜き文字の「う~」が、うねうねと左から右へコマとコマの間を縫いとる表現。これがマンガを読む際の視覚にどのように影響しているかというお話です。

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(14)食事の支度

 

どんな作品でも食にまつわる描写は見ていて楽しく、食事の支度も然り。『この世界の〜』においても原作とアニメーションでそれぞれ繰り広げられる食事の場面では、どちらもアングルや音楽など大変凝った演出がなされています。

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(15)かまど

 

原作マンガの特徴でもある「ページを繰り返して謎をとく」手法について、「かまど」周りにまつわるエピソードを用いて解説。第19回冒頭(中巻p.59)のすずとリンの比較の話も「ナルホド〜」の連続です。

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(16)遡行

 

原作の遡行シーン(昭和9年1月)をアニメーション版では昭和8年12月22日の出来事として描かれていることについて。冒頭にフォーク・クルセイダーズの『イムジン河』に関するかなり長めの解説を持ってきた細馬さんらしさ炸裂の考察回。

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(17)風呂敷包み

 

作品冒頭のすずが海苔の入った風呂敷包みを背負う10秒足らずのシーンについて、4,000字+細馬さん直筆イラストで熱く(厚く)語っています。このシーンを手掛けたアニメーターさんたちの素晴らしさはもちろん、コマ送りにしてすずの動きを見守る細馬さんの情熱には頭が下がります。

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(18)バケツの宿

 

捉え直し続けた連載もいよいよ最後。原作ですずは自分を「記憶の器」と比喩するが、アニメーションではその例えを言い換えた直後に海水の入ったバケツを映し出します。その流れの持つ意味のほか、作中によく出てくる「宿る」という表現について、最終回らしいしんみりとした趣で語られています。

『二つの「この世界の片隅に」』extra

 

書籍『二つの「この世界の片隅に」』でじゅうぶんに語り尽くしたと思っていましたが……細馬さん、さらに書いておきたいことがあるようです(素晴らしい!)。今回は『二つの「この世界の片隅に」』extraヴァージョンということで、すずが着ていた服の「柄」について考察しております。

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細馬さんの連載は以上です!

さて、マンバ通信にはまだまだ『この世界の片隅に』の記事があります。次のページに続きます。

特集:「この世界の片隅に」監督・片渕須直インタビュー 調べるだけではだめだ、体験しないと!

まず最初は、アニメーション版『この世界の片隅に』の片渕監督のインタビューです。

 

特集:「この世界の片隅に」監督・片渕須直インタビュー 調べるだけではだめだ、体験しないと!

映画「この世界の片隅に」の片渕須直監督に、映画制作と原作の良さについて聞いたインタビューです。フィクションだからと言ってあいまいな描写が許されるというわけではなく、徹底したリアリズムを追求することが、主人公「すずさん」の実在感を支えていたことがわかった。そのすごい監督が「すごい」と絶賛する、こうの史代の原作についてもあわせて語っていただきました。

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まだまだ記事があるんですよ〜。

マンバ通信で上記を連載中だった細馬宏通さんと片渕監督がついに直接トーク!

京都で行われたこのトークショー、猛烈に話が盛り上がり、ヒートアップしたお二方の語りは、打ち上げ会場の居酒屋でも続きました。マンバ通信ではぬかりなくその居酒屋トークも収録して記事にさせていただきました。

特集:片渕須直✕細馬宏通トークセッション「この世界の片隅に」の、そのまた片隅に

 

作品の細部にまでこだわって描写する監督・片渕須直。作品の細部を読み解こうとする研究者・細馬宏通。「この世界の片隅に」をめぐって、この二人のトークセッションが行なわれました。聞き手も受け手も、ものすごく細かいところについて語っていて、思わず「こまけー!」と声が出そうになるのですが、しかし読めば読むほど、原作も映画も本当に丁寧に作られた作品であることがしっかりと伝わってくるトークになっています。

4本に分かれてますよ! 読んでくださーい。

(前編)

マンガはコミックではなく掲載誌派と語る片渕監督のマンガ歴の話題からスタートしたトークセッション。「キャスティング前から主役のすずはのんちゃんの声で脳内再生されていた」という片渕監督の打ち明け話からトークは「映像と声のタイミング」という大変コアな内容へ! 原作マンガをアニメーションにするさい吹き出しと吹き出しの間を一瞬の“間”と捉えることや、表現を1つにしない工夫についてなど監督のアニメ制作に対するこだわり的なことも語っておりますゾ!

 

(中編)

原作マンガの中でそこまで詳しく描かれなかったバックグラウンドについて、片渕監督と細馬さんの読み取り力をフルに発揮したトークを展開。スルッと流していたシーンにもきちんとした理由や背景が詰め込まれており、作品を見直したくなること必至の内容です。 また、原作マンガと映画の中では遊び歌や軍歌などが各シーンで流れている「音」から片渕監督がアニメに音楽を付けるときのこだわりについても盛り上がっています。

 

(後編)

いよいよトークセッションも後半! 原作マンガとアニメに出てきた土地にまつわる話へと進みます。これは広島や呉に土地勘がないとチンプンカンプンな“ド”マニアックな話題。マンバ通信ではトークセッションで登場した地名にピンをたてたグーグルマップの資料をつけて掲載しました! トーク、原作、アニメを行ったり来たりしながらマップを見ると、この作品に対する理解度もグッと深まるので、ぜひご覧ください〜。

 

(打ち上げ編)

トークセッションの前・中・後編を読んで「読んだわ〜」と満足しているみなさん! まだ終わってませんよ!! なんとこの二人のオジサンの話はイベント終了後の打ち上げまで続いていたのです…! これはイベント参加者も聞けてない初公開の内容。普通のインタビューでは絶対に聞かれることのない細馬さん独自の鋭い質問によって、片渕監督の素晴らしさをこれまで以上に知ることができる、必見の内容! これは読まなきゃ絶対ソンするボーナストラックなのです!

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フー。24本。完走した人はどれくらいいらっしゃるのでしょうか。

マンガもアニメーションももう一度見たくなりますね。

そういえば、細馬宏通さんの連載はさらに加筆されて単行本化されます!

楽しみですね。


この世界の片隅に』のクチコミを書いてみませんか?印象に残ったセリフや場面など一言でOK!もちろん、長文で熱い想いを書きたい人も大歓迎です!

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