『「ちゃんとしなきゃ!」をやめたら二度と散らからない部屋になりました 家族の悩みも解決編』(KADOKAWA)は、「元・片付けられない人」を自称するなぎまゆ先生が提案する片付け方のコミックエッセイ。シンプルな真似しやすい片付け方を、具体的な事例とともにまとめています。
なぎまゆ先生の片付け方はとてもシンプルです。物を全部を1カ所に出して、要らない物と要る物に徹底的に分類します。このとき要らない物には使わない物・使えない物はもちろん、必要量を明らかに超えている物を入れて手放してしまうことがポイント。そして厳選した物をジャンルごとに収納する、というスタイルです。
■実績をもとに、友人宅の片付けへ
過去のシリーズで自分の家や友人の家を片付けた作者。今回のエッセイでは、リフォーム前の友人宅の片付けの手伝いに行きます。友人宅は、部屋の中は整理されているものの物が多く、部屋の収納に入りきらない分が廊下などの収納スペースに入っているという状態。共有スペースに家族の物が混ざり合って収納され、「自分の持ち物」の正確な量がわからない状態でした。
そのため作者は、友人本人の収納の見直しだけでは不十分ということで家族を巻き込み、家全体で前述の「物を1カ所に出して、分類。厳選したものをジャンルごとに収納する」を進めていきます。自分の部屋だけでなく共有スペースについて、家族一人ひとりが自分の物を抽出し、要る/要らないと分類していくのです。
興味深かったのは写真の捨て方です。「写真=思い出」ということも捨てにくいですが、フィルムを現像するのが主流だったときの写真は撮影に失敗した物や似たような写真も多いため、案外捨てられる物が多いそうです。スマートフォンなど高解像度のカメラでまとめて撮影して手放すという方法もあるといいます。VHSのテープなど時間の経過とともに劣化するものも少なくありませんので、いつかのタイミングで整理は不可欠なのです。
■家族の物をどう整理するか?
家全体で片付けをするとき問題になるのが、家族の物をどうするかです。作者は不在の家族の物に手をつけるときは事前の確認が必要だと強調します。家族の物を勝手に捨てるのはトラブルのもとになるからです。何が大切なのかは人それぞれ。共に暮らす人のやり方や価値観を尊重し、お互い我慢せずに少しずつ擦り合わせる必要があるのです。
部屋の片付けは、片付けて終わりではありません。作者は片付けたあと「必要な物だけを持つ」という意識が大切だと説明します。物が増えるのにあわせて収納を増やすと部屋がどんどん狭くなっていってしまうからです。こうした意識も、一緒に住んでいる人が共有することが必要でしょう。
■諦めずに「ベター」を探す
部屋の片付けに関する書籍や漫画はこれまで数多く出版されています。「ちゃんとしなきゃ」シリーズが安心できるのは決して1つのやり方を押しつけないところです。シリーズ全体が「自分にベストの片付け方なのか考えよう」というメッセージを伝えようとしており、いろいろな人のやり方を見ながら、自分にあうやり方を真似することを勧められます。片付けが得意な人やまめな人、自分とは違う性格の人に片付け方を教えてもらっても身につかないからです。
その点「ちゃんとしなきゃ!」シリーズの作者は元・片付けられない人というだけあって、大雑把という自分の性格もわかったうえで自分なりのやり方を考案しています。それでも作者のやり方も「提案」であって「正解」ではないとのこと。「ちゃんとしなきゃ」シリーズで片付けを始め、いろいろな人のやり方を真似しながら、物があるべきところにある居心地のいい部屋を目指してみませんか。