みなさん、黄昏てますか? あ、慣れない言葉を使ってしまいましたね。今のは「みなさん、いずれ自分も中高年になることに備えて、ちゃんと黄昏流星群を読んでいますか?」という意味の挨拶です。『僕の心のヤバイやつ』とかのラブコメマンガを読んで悶絶しているみなさん、実年齢はおいくつですか? 山田や市川よりも、その親御さんの方が年齢が近かったりしちゃうんじゃないですか?(私は山田ママと同い年になりました……)
まぁ人は年齢を重ねていくものです。そして、いくつになっても恋愛というものには心をときめかされてもいいのです。そんなみなさんに今一度オススメしたいのが、40代以上の中高年向け恋愛マンガ『黄昏流星群』です。『黄昏流星群』がどんなマンガなのかというのは、2年ほど前にも書かせてもらった記事に書いてあるので、そちらをご参照いただければ幸いです。
(参考記事:中高年向け恋愛マンガの殿堂『黄昏流星群』の世界)
あれから2年経って、最新刊は69巻という良い数字になったことと、前回の記事を書いて以降『黄昏流星群』について新たな課題が提示されたため、夏休みの宿題として全巻再読して再度取り上げさせていただきました。その課題というのはこちらです。
数年前、「小学生の娘が『黄昏流星群ってさ、ジジイがベンチの上で死ぬ確率高くない?』って指摘してきた」的なツイートを読んだ数日後に出た雑誌の最新回でまさにジジイがベンチ死ぬエンドだったことあるんで、いのけんさん(さっきの黄昏流星群の記事の人)は正確な回数を数えてほしいですね…
— 松本 (@matsushin1978) April 18, 2023
小学生の娘が『黄昏流星群』を読んでるんかい!とか言いたいことはありますが、直々にご指名をいただいたからには……ね? よーし、いっちょ数えてやろうじゃないか!
1.『黄昏流星群』の「ジジイがベンチで死ぬエンド」の回数
まず結論から申し上げますと、『黄昏流星群』の「ジジイがベンチで死ぬエンド(もしくはそれに類似するエンド)」は5回です。状況が近いものを合わせても7回。
◎屋外のベンチに座っているもの:計5回
・3巻収録「星よりの使者」
・9巻収録「ソドムの星」
・20巻収録「恋する星霊」
・56巻収録「星霊の森」
・64巻収録「同星ハウス」
◯ベンチではないが状況は近いベンチ類似エンド:計2回
・45巻収録「俺の明星」(公園内の路上)
・67巻収録「星光の灯籠」(橋の上で凍死)
なお、40巻収録「星と死の狭間で」や54巻収録「星田一夫さんの幸福」は病院のベッドに寝ていますし、57巻収録「妖星奇譚」は自宅、44巻収録「3つ星ピッツェリア」はレストランだしババア、50巻収録「星光耿耿」は自宅だしババアなので、この5回は除外しました。
その他、五里霧の中へと消えた27巻収録「五里霧の星域」や、マンガの中の世界へと消えた54巻収録「厭星漫画家」のように行方不明になっているものもいくつかありますが、明らかに死んでいるであろう63巻収録「星空怪談」を加えて、『黄昏流星群』の死亡エンドは全152回中の13回(8.6%)となりました。主人公ではなくその恋愛対象や近親者が死んで終わるパターンもある(11巻収録「極北に星光る」で超能力を限界まで使ったことによる衰弱死エンドや、69巻収録「連星哀歌」の恋愛対象が自殺した後の散骨エンドなど。また、ジジイがベンチで死ぬエンドのうち3巻収録「星よりの使者」や9巻収録「ソドムの星」も主人公ではなく恋愛対象)ため、実際は1割くらいにはなりそうです。そして、こうしてちゃんと集めてみると、序盤はまだ主人公死亡エンドは少なく、40巻以降の方が明らかに多い(40巻以降に絞ると10/73で13.7%)ことが分かります。『黄昏流星群』はとにかくハッピーエンド率が圧倒的に高い作品のため、主人公が死んでしまうという一見バッドエンドに見える状態を、「安らかな死という”救済”が得られる」というハッピーエンドとして描けるようになるまでには、さすがの創造主でもけっこうな時間と経験の蓄積が必要だったのかもしれませんね……。(※筆者は『逢いたくて、島耕作』の影響で、『黄昏流星群』を「聖典」、弘兼氏を「創造主」と呼ぶ)
2.『黄昏流星群』ではどれくらい「同窓会」が行われているか
ヤングマガジンで短期連載していた『ゴリラーマン40』にて、人生の黄昏時の恋愛を描いた大人のマンガ『黄昏ゴールデンスターズ』という、明らかに『黄昏流星群』をモチーフにした作中作が登場して、そこに補足として「同窓会ネタが多い」とありました。
今週のゴリラーマン40に出てきた作中作「黄昏ゴールデンスターズ」は明らかに「黄昏流星群」ですよね。黄昏流星群の豊富なデータを持つ私ですが、不覚にも同窓会の登場回数は数えていなかった…。とりあえず自分の感想を検索した限りでは、14巻、27巻、39巻、43巻、51巻で確実に同窓会があります。 pic.twitter.com/m3yANcmoeR
— いのけん (@inoken0315) July 4, 2022
たしかに同窓会はちょくちょく出てくる印象はありましたが、不覚にも回数を数えてはいませんでした……。なので、こちらもあらためて数えました! その結果、『黄昏流星群』で「同窓会」が行われているのは計9回でした。詳細は下記の通りです。
・5巻収録「同窓会星団」
・14巻収録「恋の星乱れ星」
・24巻収録「同星時代」
・27巻収録「五里霧の星域」
・39巻収録「萬代星の女」
・42巻収録「星降るホテル」(※ただし不参加)
・42巻収録「金星症候群」
・43巻収録「タイムカプ星ル」
・51巻収録「星々流転」
その他、8巻収録「我が星の果てるまで」は同窓会名簿の住所録を使って恩師や旧友と再会していたり、25巻収録「煌めかざる星」は同窓会のような正式ではない同級生の集まりが、36巻収録「惑星同期会」は同期会という定期的な集まりがメインテーマになっていたりと、近いものも多いです。「昔の同級生が久しぶりに集まる」という類似のものも集めると十数回はあり、死亡エンドと同じく全体の比率として10%前後もあれば十分に「多い」と言ってしまってもいいのかもしれません。
3.『黄昏流星群』によく登場する舞台ランキング
私は舞台探訪という作品のモデルになった場所を実際に訪れる行為を趣味の1つにしています(「聖地巡礼」とも呼ばれる)。『咲-Saki-』シリーズ(長野県から始まり日本各地)や『僕の心のヤバイやつ』(洗足・渋谷など)の他に、『1日外出録ハンチョウ』(都内・京都・名古屋など)や『焼いてるふたり』(浜松市)など、大好きな作品の舞台が分かって具体的な場所が特定できたら、ついそこに行ってみたくなってしまうものです。
『黄昏流星群』は登場人物や舞台などに連続性が無いオムニバス作品のため、たまに舞台が登場しても基本的には1シリーズ限りではあるのですが、話を跨いで何度も登場している舞台や背景というものもいくつか存在します。それらをランキング形式で発表させていただきます。
3位:新宿都庁前
新宿都庁前と言ってもいろいろありますが、具体的には都庁通りのハイアットリージェンシー東京の前や東京都庁第二本庁舎前で、どちらも奥に東京都庁から都庁広場へと伸びる特徴的な渡り廊下が見える場所となっています。待ち合わせや立ち話などでよく使われており、確認できただけでも5回は登場しています。
ただ、ここ!というピンポイントでなくふんわりとした地域で言うなら、登場頻度自体はお台場の方が多いかもしれません。お台場側からレインボーブリッジを見る構図だったり、逆にレインボーブリッジ側からお台場のフジテレビが見える構図だったり、パレットタウンの方だったりと、デートスポットとして各所が登場しています。
2位:東京拘置所
登場人物が物語の進行上で殺人や傷害などの犯罪行為をする(もしくは過去にしていた)ケースがそこそこ高いため、刑が確定する前にまず東京拘置所がちょくちょく登場します。私が確認できただけでも7回は登場しています。ただ、あくまで一時的に登場するのみで、場面転換時に一コマ描かれているだけだったりもしますし、東京拘置所がメインの舞台になっている話というのは無いため、意外と気付いて居ない人も多いかもしれません。
なお、刑が確定した後の、網走刑務所や府中刑務所や広島刑務所や市原刑務所(交通刑務所)なども登場します。こちらは物語のメイン舞台になっているものもあり、網走刑務所を出所後にそのまま網走で暮らしている真崎茂という男の持つとある「能力」についての物語・11巻収録「極北に星光る」は、1巻丸々使った名作長編ですので是非お読みください。
1位:ファミレス「yonathan’s」
これは前回の記事でも少し触れましたが、『黄昏流星群』ではファミレスがよく登場します。作中にファミレスが登場する場合は、Jonathan’sをもじった「yonathan’s」や、Denny’sをもじった「Denis’s」「Dorry’s」「Donny’s」「Doney’s」「Renny’s」「Ronny’s」、そしてその2つを混ぜ合わせたかのような「Donathan’s」「Jonar’s」「Joney’s」「Jonney’s」「Jonny’s」「join’s」などの店舗名になっています。『黄昏流星群』は都市部に住む中高年の物語の方が多いこともあり、中高年が落ち着いて食事や会話をする場所としては、店舗数が多いサイゼリヤやガストよりも1ランク上のファミレスであるJonathan’sやDenny’sが適しているのかもしれませんね。だいたいは1回限りやせいぜい数回しか登場しないのですが、飛び抜けて多いのが「yonathan’s」で、登場回数はなんと15回です。ブッチギリで『黄昏流星群』最多出場です。
なお、15巻収録「我が愛しの剣星」にて、一度だけ「Jonathan’s」と現実そのままのファミレスの名前で登場しちゃってます。もしかしたら、この回で「うーん、やっぱりそのままはマズイでしょ」となって、以降は「yonathan’s」を多用することになったのかもしれませんね。
ちなみに、39巻収録「萬代星の女」は、新潟市がメイン舞台になっていることで旅情を感じられる上に、同窓会があって東京都庁前とyonathan’sが登場して、北朝鮮のスパイという突飛な設定の人物も登場して死亡エンドもあるという、『黄昏流星群』らしさ全部盛りな1本となっているのでオススメです。
4.『黄昏流星群』69巻までの性行為中に「69」をしているのは何回か
最後に、『黄昏流星群』の単行本が69巻へ到達したという記念で、数字の「69」のように2人が互い違いに重なり合う体位(ラーゲ)で性行為をしている描写は何回あったのかを数えてみました。まず、そもそもとして『黄昏流星群』既刊69巻・全152作のうち、性行為をしているのは79%となります。お互いにその気はあっても、年齢的な問題による性機能の限界などにより挿入までは至らない「未遂」も含めると87%です。これを多いと思うか意外に少ないと思うかは人それぞれでしょうが、性行為に及ばない話が13%もあったのかと驚く人も多いのではないでしょうか。
そして、そのうち「69」の描写があったのは、47巻収録「未来予想図 星団」でのたった一度だけでした(見落としがあったらスイマセン)。しかも、この話は近未来にゲイとレズビアンのカップル2組が共同生活をする話のため、「69」をしていたのはレズビアンの夫婦でした。つまり、男女が「69」をしている描写は一度も無かったということになります。人間関係も時代設定も物語のバリエーションもとにかく多種多様な『黄昏流星群』ですが、男女が「69」をすることだけは無いというのは驚きですね。
この意外な結果についての考察ですが、『黄昏流星群』では中高年の性行為が頻繁に描写されるものの、誰一人そこに実用性を見出しているわけではないことが大きいのでしょう。そのため、性行為の中身については重要視されておらず、ミサイル発射や花火などの比喩表現が行為中に挟まれることも多いです。あくまで「心を通わせ合う2人が身体を重ねている」のを見せることに意味があるため、正常位などの分かりやすい・見せやすい体位が優先されて、「69」などの凝った体位をわざわざ描く理由が無いのかもしれません(しかも、「69」は正確には挿入行為はしていないため体位と呼ぶのかも怪しいですし)。このあたりの話はいつかぜひ創造主に話を伺ってみたいですね!
次に『黄昏流星群』の記事を書くのは、69巻の次に良い数字である92巻の時でしょうか。あと23巻! まだまだ聖典の連載をお願いしますよ、我らが創造主!(※筆者は『逢いたくて、島耕作』の影響で、『黄昏流星群』を「聖典」、弘兼氏を「創造主」と呼ぶ)