『男子校の生態』は実際に男子校生活を送ったコンテくん先生が実体験をもとに描いたエッセイ漫画です。全国で希少な存在となった男子校のユニークな生活を覗き見ることができます。
男子校は全国で100校に満たず、女子高よりも貴重な存在です。1日のほとんどの時間を女性がほとんどいない空間で過ごすというのは、通っていた人には当たり前でも経験したことがない人からするとどんな生活なのだろうと興味があるところ。コンテくん先生の漫画はそんな疑問に応えるものです。
例えば身長が小さく童顔で中性的な雰囲気を持っていると「姫ポジ」にされます。重い荷物を持ってもらうなど、クラスメイトにやさしくしてもらえたり、授業中寝ていても先生に大目に見てもらったり。コンテくん先生はちょうどそんな存在だったようで、漫画からは悪くはない学校生活を送っていたことがうかがえます。こうした現象が起きるのは、愛でる対象が少ないからとのこと。ちょうど女子校でかっこいい女子が周りから「王子」扱いされる現象と似ています。
文化祭に体育祭と、男子しかいない空間で生徒たちは伸び伸びとした学校生活を送っています。おバカなことも言い合うけれど、林間学校に麻雀を持ち込むなど緩やかで和気あいあいとした時間が流れます。
男子校にいる「女性」は先生や食堂の人など、生徒たちを異性として見る女性ではありません。異性愛がマジョリティを占める社会で、一時的でも異性の視線から解き放たれることは、男子にとっても自由な道の追及につながるもよう。そのためオタク道を究める生徒も多いようで、男子校ではスポーツだけでなく、鉄道やゲームといったオタク的ともされがちな部活動も盛んです。女子校で女子が男性の目を気にせずに自分の望む道を選べるように、人によっては男子校という環境はすごく合うのかもしれません。
だからといって世間一般のいう「男らしさ」から必ずしも自由になるというわけではありません。それぞれが自分の好きな道を追求する結果なのか、コンテくん先生は、「世間一般のいう男らしさから解放される人も、逆に追及する人もいて、バラエティ豊かな男子がそろっていく」と指摘します。
もちろんすべての男子校がこの作品に描かれた雰囲気や文化というわけではないでしょう。人によって合う・合わないもあると思います。作品に登場するキャラクターたちがガラケーでやり取りしていることをみると、時代的には少し前の時期であることもわかります。しかし「こんな環境もあるのか」と視野を広げるには十分。男性ばかりが集まると出てくる独特の性的ジョークさえ受け入れられるなら、是非楽しんでほしいです。