デビュー作「最後の妖精」を含む、木村直己の初期短編集がこれ。「監察医朝顔」や「天涯の武士」など、青年誌掲載の木村作品を読んだことのある人には、あまりに現在と作風も絵柄も違うことに、ちょっとした驚きを感じると思います。この本に収められているのは、すべてSFファンタジー。そして絵柄は手塚治虫石ノ森章太郎に近い、柔らかなタッチ。漫画家の絵柄は、何年も描き続けていくうちに変わってくるものですが、それにしても現在と比べるとまるで別人のよう。また一方ではそれ以外の絵も描けるんだといわんばかりの、劇画タッチの作品「小雪鬼」なんて作品もあり、将来花開く才能の片鱗も見受けられます。これら5編の短編が中学三年から高校三年の間に発表され、単行本にまとめられていたということにもびっくり。木村直己という漫画家に興味をもった人は、一度読んでおくべきかと思います。

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