今年8月にSNSで突然ブレイク、今もっとも更新が待たれるWebマンガ「王様ランキング」。その作者・goriemon(*当時。現在のペンネームは十日草輔)にインタビューをおこなった。
「たぶんこれがデビュー作だと思うけど、いきなりこんなクオリティの作品を描けるって、いったいどんな人物なんだろう?」と思っていたら、取材場所に現れたのは……。
耳が不自由で非力な王子ボッジが多くの人と出会い、成長していく物語。投稿サイト「マンガハック」にて更新中(ほか「ニコニコ静画」「マンガボックスインディーズ」でも公開)。「次にくるマンガ大賞2018」Webマンガ部門ノミネート作品。
40代で会社を辞め、マンガ家の道へ
──(あれ? 思ってたよりも……)
意外と年取ってて驚いたでしょう(笑)? 僕、43歳なんです。
──HPに「2016年に会社を辞めてマンガを描き始めた」と書いてありましたけど、それも40歳すぎてからってことですよね。
だから勝負だったんです。会社を辞めたとき、本当は絵本を描こうと思っていたんですよ。でも絵本は募集しているところも少ないし、投稿している人の年代が20代でみんな若いんです。「これは敷居が高くて難しいな」と思っていたときに、素人が投稿できるWebマンガのサイトを知ったんですね。それだと、不特定多数の方に読んでもらえて、コメントまでもらえる。20年前、マンガ家を挫折したときは、一人の編集者さんにしか見せられなかったけど、Webマンガだといろんな人に読んでもらえるのがいいなと思って。
──20年前にもマンガを描いていたんですね。そのときは持ち込みをしていた?
投稿をしていたんですけど、箸にも棒にもかからず、それでやめたんです。でも絵は続けたくて、絵本を描いたら、そっちでたまたま賞をいただいて。「これはいける!」と思ってやってたんですが、結局うまくいかず、そっちもやめてしまったんですね。
──絵本でも出版には至らなかった?
それが大賞を取って、本が出せたんです。でもその出版社がつぶれちゃいまして……。
──それで絵本のほうもうまくいかなかったと。会社員時代は、絵やマンガとは関係ない仕事だったんですか?
Webの仕事をしてました。コーダーやデザイナーも経験したんですけど、そこからWebマーケティングの仕事を始めて。仕事で企画を提出するときって、「相手にどんなメリットがあるのか」「相手はどんなことを求めているのか」みたいなことをいっぱい考えないと通らないんですね。そういうことをやっていたとき、ふと「そういえば、昔、投稿をしていたとき編集者さんが同じようなことを言っていたな」と思い出して。言われた当時はあまりピンと来なかったんだけど、企画を作る立場になってみて、「あ、こういうことか」と思ったんですね。それで、また絵本を描いてみようと思って、初めてペンタブレットを買ったんです。ワコムの。使ってみたら、本当に普通に鉛筆で描くのと変わらないんですね。そこにすごく可能性を感じて。勤めている間ずっと、「絵でやっていきたい」というもやもやした思いがあったんですよ。僕は家族もいないし、いい年だし、「1年やって何も声がかからなかったら、絵でやっていくのはスパッとやめて、普通に働こう」と決めて、描き始めたんです。それが2016年の10月。そこから絵本のほうで模索していたんですけど、先ほどお話したように、マンガをWebで投稿し始めたんです。
ボッジとカゲはもともと絵本のキャラクター
──「王様ランキング」のことを連載マンガだと思っている人も多いと思いますが、マンガハックは要するに「自分で投稿してみんなに読んでもらう」というサイトなんですよね。持ち込みや賞に応募してデビューするということは考えなかった?
一応、読み切りを31ページ描いたんです。練習のつもりで……というか、けっこう本気で描いたんですが。でも出来上がったのを見たら、あまりの下手さに愕然としてしまって。
──「王様ランキング」とは全然違う路線のもの?
2ちゃんねるで話題になった「赤いワンピースの女」というホラー系の話、知ってます? それがすごく面白かったので、「これを原作にしてみよう」と思って描いてみたんですけど、絵も話も作り方も全部ダメで。「自分は読み切りのように、決まったページ数の中に起承転結を詰め込むことができない。それなら連載形式でやってみよう」という軽い気持ちで始めたのが、「王様ランキング」なんです。
──話を広げていけるほうが、むしろ向いていた。
主人公と、カゲという相棒がいますよね。あれはもともと、僕が考えていた絵本のキャラクターだったんです。
──そう言われると、たしかに絵本っぽさはありますね。でもマンガ自体は「王様同士がランク付けされている」という、少年マンガ的なコンセプトになっている。
「王様ランキング」というタイトルは後付けなんです。絵本をやめて、マンガでやってみようと思ったときに、一番売れているマンガを読んでみようと思ったんですね。つまり「ワンピース」なんですが。マンガ家になるのを1回挫折していて、それからマンガをずっと読んでいなかったんです。それでそのとき初めて「ワンピース」を読んだんですが……。
──どうでした?
もうめちゃくちゃ面白い! 「これは一体なんなんだ!?」と思って。
──読んだのは会社を辞めてからだから、けっこう最近のことですよね?
去年の1月くらいです。
──もともとマンガ家を目指していて、でも長いことマンガから離れていて、そこで初めて「ワンピース」読んだら、染み込み方がすごそうですね。
あれを真似するなんてことは僕には無理なんですが、でも子供が喜ぶのってランキングだし、少年マンガでもいろんな形でランキングが使われてますよね。言ってみれば、そういう安易な考えで「王様ランキング」と付けたんです。あと、主人公に目的を持たせたかったんですね。絵本のキャラクターってあまり目的を持っていないけど、マンガの場合は目的があったほうが燃えるなと。それで「立派な王様を目指す」みたいな目的をつけたんです。それも後付けなんですけど。
──後付けと聞いて、ちょっと納得しました。「王様ランキング」というタイトルを見たときは、「いろんなランカーが登場するマンガなのかな」と思っていたんですが、読んでみたら、タイトルほどにはランキングに触れていなかったので。
僕もジャンプのバトルマンガのように「ランキングを上げるために戦う」みたいなのをやりたいのですが、自分で描いてみて初めて、それをやっている人たちのすごさがわかりました。僕がそれをやったら超不自然になってしまう。
──でもみんなが「王様ランキング」を面白いと言っているのは、バトルじゃない部分の描写が好きだからだと思いますよ。
そういうのも、すごく運がいいんです。
──運がいいというのは?
マンガハックは投稿サイトで、「王様ランキング」も僕が自主的に投稿してるわけですけど、なぜ(普通の連載のようなペースで)こんなに続けてこられたかというと、コメントがあったからなんです。読んだ人からコメントをもらえたとき、本当に涙が出るほどうれしくて。更新間隔があいてしまうと、そうやって読んでくれている人たちが離れてしまうんじゃないかという恐怖もあった。それでここまで描いてこられたんですね。
バズった日はうれしくて夜通しエゴサーチ
──それでも、外部から締め切りを設定されずに、自分のペースだけでここまで描き続けて来たのはすごいことだと思います。
それはやっぱり覚悟があったからだと思います。「これで結果が出ないなら、マンガをあきらめるしかない」という。
──今は特に副業やバイトはせずに、貯金を切り崩しながらマンガを描き続けているんですか?
はい、マンガに集中しています。
──注目されはじめた最初は、やっぱり「次にくるマンガ大賞」?
そこなんですけど、僕は「王様ランキング」を去年の4月からマンガハックだけに投稿していたんです。マンガハックって、ご存じでした?
──いえ、実を言うと「王様ランキング」をきっかけに初めて知りました。
たぶんみなさんそうだと思うんです。もともと、なぜマンガハックに投稿したのかというところからお話しすると、投稿サイトを探していたときに、読者が多いのはニコニコ静画なんですけど、コメントする人がちょっとおっかなくて(笑)。他にLINEマンガなんかも人気だったんですけど、プロ級の描き手がゴロゴロいて、「これじゃあ自分は埋もれてしまう」と思ったんですね。
──そこでマンガハックにたどり着いた。
マンガハックは自由度が大きかったんです。バリエーションが豊富だし、しかもコメントをする人がみんな礼儀正しかった。辛辣なコメントは僕も怖いですから、「ここなら大丈夫だろう」と思って、マンガハックにずっと投稿していたんです。でもなかなか認知度が上がらなくて。
──宣伝は特にしてなかったんですか? そういえばツイッターのアカウントも見当たらないですが……。
アカウントは持ってないんです。SNSで発信をするというのが、すごく苦手なので。「自分で宣伝できないなら、じゃあ他のところにも上げてみよう」と思って、ニコニコ静画と、マンガボックスインディーズ(*アプリで公開中)というところにも上げてみたんです。その時点で50話くらいたまっていたので、1日1話ずつアップしていたら、ニコニコのほうで「この人、1日でこれを描いて上げ続けているのか!」と誤解されて話題になって(笑)。それで「次にくるマンガ大賞」に投票してくれる人がいて、ノミネートされたんです。
──ノミネートされただけでもすごいことではありますが、そこでは上位20位には入らなかった。
そうなんです。そもそもノミネートされたのも不思議でしたから。他のマンガを読んだら、面白いし、絵もうまいし、これは敵わないなと。だから当然ランク外だったんですけど、そこからなぜ突然バズったのは実は自分でもよくわかってないんですが。
──8月の下旬に同時多発的におすすめツイートがRTされだしたんですけど、たぶんこれやこれあたりが発信源だと思います。
僕はツイッターをやらないので、読んでくれてる方やマンガハックの方から「バズってますよ!」と教えてもらって。その日はもううれしくて、うれしくて。夜、全然眠くならないんです。感想を片っ端からエゴサーチで読んで(笑)。
──これだけバズったということはやっぱり、いろんな出版社から連絡が……。
一気に来ましたね。もう本当にいろんなところから。どこから出すかについては自分の中で決めていたので、メールの段階で断ろうと思っていたら、ある編集の方から「これからマンガを描いていくんだったら、いろんな編集者に会っておいたほうがいい」と言われて、「たしかにそうだ」と思って、なるべく、お会いするようにしました。今週はずっといろんな人に会ってましたね。
キャラクターの参考にしたのはジャイアン
──「王様ランキング」を読んだ人は、まずあの絵に目をひかれると思います。さいきん見ないタイプのタッチで、でもちゃんと世界観が確立されている絵というか。
絵についてはすごく模索していたんです。初めの頃は「絵本っぽいマンガを描きたい」みたいな気持ちがあって。あべ弘士さんという絵本作家がいるんですが、「こういう絵が描きたい」と模索して描いているうちに、だんだん自分の絵というか、ちゃんとマンガチックな絵になってきたという感じですね。
──最初にこの絵を見たときは「もしかしてムロタニツネ象や山根青鬼が好きなのかな?」と思ってましたけど、あべ弘士の影響なんですね。
絵以外のことで言うと、スマホのことは意識しています。僕はスマホ使わないんですけど、今はスマホで読まれる方が多いですよね。だから極力、セリフを大きくして読みやすいようにしてるんです。たくさんしゃべるところは、コマを分けて、一つ一つのセリフを短くしたり。
──「王様ランキング」の素晴らしいところ……というか、ある意味「だまされた!」と思ったところは人物の描き方で。読み始めたときは、なんとなく童話のような話、それこそ「良い人はとにかく良い人、悪い人はとにかく悪い人」という話かと思ってたんです。でも読み進めていくうちに、「良い人と思っていた人に別の面がある」「悪い人と思っていた人にも別の面がある」というのが一人や二人じゃないレベルで出てきて、それが物語に奥行きを与えていると思いました。
僕、藤子・F・不二雄先生が大好きなんですよ。僕のマンガって、純粋にオリジナリティのあるところは全然ないんです。全部何かの影響を受けていて、意識して出しているものもあれば、無意識のうちに出ているものもある。キャラクターの描き方については、ジャイアンの影響が大きいですね。ジャイアンって、テレビ版だと単純にいじめっ子じゃないですか。でも映画版になると、頼りがいのあるタフガイになる。そういうギャップって、子供心にすごくワクワクしたんです。そういうものを自分でも表現したい、「人間って本当は面白いんだよ」いう思いが僕の中にあるんだと思います。
──これはフライングな見方かもしれないですが、あの人間の描き方って、もちろん「演出手法」でもあるけれど、goriemonさん自身の「人間観」も反映していたりしますか?
読んでくれる人に感じてほしいテーマというのが一応あって、それが「勇気」なんです。「勇気」って、描いているほうも楽しいし、読んでいるほうも楽しい。僕も一度マンガを挫折して違う方向に行ったけど、挫折ってつらいこととは限らなくて、別の道に行ったらもっと楽しいこともあるし、自分に向いていることもあるし……ということを考えていると、なんだか勇気が出てくるんです。目が見えない人の話(64話)は、ちょっと説教くさいかなとも思ったんですが、基本的に僕は弱者とか強者とか、勝ち組とか負け組とか、そういうことを考えること自体が嫌いなんです。そんなもんないだろうと。
具体的なキャラクターの動かし方については、もう「ぽっと出てくる」としか言えなくて。自分が生きてきた中で学んだことが、無意識のうちに出てくるのかもしれないです。ストーリーについても、プロットをがっちり組んでやっているわけではないんです。一応終着点というのは考えているんですが、そこまでの道のりは基本的には行き当たりばったりですね。
──「終着点はあるけど道のりは行き当たりばったり」ということは、最終的にどれくらいのボリュームになりそうか、現時点では全然わからないということ?
わからないです。会った編集さんからも「どれくらいで終わらせる予定ですか?」とよく聞かれました。そういうときは逆に「普通のマンガ家さんって、そこらへんどういうふうに考えてやっているんですか?」と聞くんですけど。でも僕はそんなの全然考えていないです。
大変なのは「作業の手間」より「やる気との戦い」
──雑誌で連載を持っているマンガ家って、たいていアシスタントを入れて描いてるじゃないですか。goriemonさんはずっと一人で描いていて、週刊に近いペースで投稿していますけど、それは無理なくやれてるんですか?
若いときにマンガを描いてたときは、アナログだったんです。アナログで描くことの大変さは、描いた人にしかわからないと思うんですが、すさまじく大変なんです。ベタを塗るのにも技術がいるし、手間もかかるし。でも今はデジタルの環境でやっているから、昔に比べるとびっくりするくらい楽なんですよ。ベタも、ピッとやれば終わるわけですから。だから、一人でやっていることの大変さというのは、「作業の手間」じゃなくて「やる気との戦い」のほうなんです。なまけようと思えばなまけられるので。基本的には1週間まるまる使っているんですが、ダラダラダラダラ描いています。僕、一人で引きこもって机に向かっているのは苦じゃないんです。ペース的にも、自分が大丈夫なペースで描いているので、そんなに無理はしていないです。だから長く続けられたというのはあると思います。ただ、一人で描いているから、ずっと不安でした。今でこそ、いろんな人が話題にしてくれていますけど、話題になる前は本当に怖くて、不安に押しつぶされそうな中で描いていました。だから(話題になる前の時期に)コメントをしてくれた人がいると、本当に涙が出るほどうれしかった。
──そうですよね。2017年の5月にスタートして、本格的に話題になったのが今年の8月だから、不安に押しつぶされそうになったのもわかります。
そのときも不安でしたけど、今でも不安はありますよ。ずっと不安です。(投稿サイトなので)お金も入ってこないし。たぶん僕だけじゃなくて、何かを作っている人というのは、ずっと不安だと思います。だから、今は本当にいい時代だなと思って。ずっと続けていれば、誰かが見つけてくれるから。その「ずっと続ける」というのがなかなか難しいんでしょうけど、僕の場合は、一度挫折して普通に働いたというのが、遠回りのようで、実は近道だった。仕事で企画を作りながら、「相手の気持ちを考える」ということにも気づけたし。
──設定の面白さや絵のうまさだけでは、マンガは成り立たないと。
どう人に伝えるか、どうすれば人が面白がってくれるか。そういうことを考えてつかんでいないと。本当に才能がある人は、いちいち考えなくてもそういうことができちゃうんでしょうね。だから「ワンピース」を見ると驚くんですよ。「俺が今までの人生で学んできたことを、なんでこの人は若いうちから描けるんだ?」と思って。
──マンガで挫折してから、しばらくマンガを読むことから遠ざかっていたとおっしゃってましたけど、もともとはどんなマンガが好きだったんですか?
やっぱり少年ジャンプです。「キン肉マン」や「ドラゴンボール」。鳥山明先生に一番影響を受けています。20歳の頃にマンガ家を目指していたときは、それまで少年誌くらいしか読んでなかったんですが、そこからは手当たり次第に読んでました。ただ、その頃はいろんな作品から受けた影響を自分のマンガに生かせなかった。ずっと年月が経って、それらの影響がやっと出始めているような気がします。
ホワイト企業にいてもずっともやもやが消えなかった
──ところでマンガハックでは「goriemon」というペンネームですけど、ニコニコ静画だと「aaa」、自分のHPだと「とかただ」だったりして、もしかしてペンネームにあんまりこだわりがないのかな?と思ったのですが。
これはまだ考え中なんです。自分の本名を姓名判断したら、すごく悪かったんですね。なんだかんだいって、名前って毎日書くからやっぱり刷り込まれるし、運気というのはたぶんあるんだろうなと思って。それで今、一生懸命考えているところなんです。
──暫定の名前だったんですね。
基本、作品を見てもらえればよくて、作者個人なんか、読者にとってはどうでもいいだろうと思ってるんですよ。「goriemon」と付けたのは、ペンネームというよりも、マンガハックのアカウント登録をするときに、アカウント名として付けたものなんですよ。アカウント名だから英語のほうがいいだろうと思って。
──とはいえ、もう「goriemon」名義のほうで有名になっちゃったから……。
まあ……でも変えます(笑)。今のままだと縦書きにしにくいし。
──引きこもって一人でマンガを描き続けるのは、時に寂しくなったりはしないですか?
僕、もともと人付き合いがほとんどないんですよ。友達も二人くらいだし、人と会うのも半年に1回くらいなんです。
──じゃあ会社を辞めて、マンガを描ける環境になって本当に良かったわけですね。
さっきも言ったように、(これからどうなるかという)不安はずっとつきまとってるんですけど、でも働いているときのもやもやに比べたらずっと良くて。働いている間、いつも目の前に霧がかかっているような感じで、本当にずっと「このままでいいのか?」というもやもやが取れなかったんです。ブラック企業も経験したんですけど、最後にいた会社はホワイトで、給料もいいし、働きやすいし、定時で帰れるようなところだったんですよ。それでも霧は晴れなかった。
──ちなみに会社を辞めてマンガを描くことに対して、親は応援してくれてるんですか?
親には黙っています。僕がいま何をやっているのか、親は全然知らないです。うちの親は「アニメを見ちゃダメ」「マンガを読んじゃダメ」と言って僕を育ててきた人間なんですよ。たとえば本屋に行って「キン肉マン」を買おうとすると、「こんなくだらないもの」と言われて、その時点で傷ついてしまって。
──「どの作品が」というより、もうマンガやアニメという時点で一段低く見てしまう。
僕らの親の世代の価値観はそうですよね。今の若い親はマンガで育ってきてるからそんなことないと思いますけど。うちは「ドラえもん」を見ることも禁止されてました。だから人からマンガを読ませてもらったり、マンガを描くということにずっとコンプレックスがあったんです。「こういうのを読んじゃいけない」というのを言われ続けてきたから。でもずっとマンガを描きたいという思いがあって、それでやっと描けたのが20歳のときなんです。
──「マンガを読んじゃいけない」というコンプレックスを乗り越えて、やっとマンガを描いて、でも挫折してマンガから離れて、そして40代になって再びマンガに戻ってきたというのは、ちょっとドラマティックですね。しかもその作品が多くの人の心を打っているという。
「王様ランキング」で僕は勇気を描いてますけど、僕の年齢で新しいチャレンジしていることで勇気を持ってくれる人も、もしかしたらいるかもしれない。そんなこと思うと嬉しくてたまらなくなります。
──さて、みんな「王様ランキング」の単行本を待ち望んでいると思いますが、いつ出るというのはもう決まっているんですか?
まだ詳細は決まっていない段階なのですが、出す方向で動いていますので、楽しみにしていてください。というか、本が出ないと、僕も現時点で収入がゼロなので……(笑)。
──それなら、なおのこと早く出してください。買いますので!