1992年より放送開始し、国民的アニメとしての地位を築いたクレヨンしんちゃん。
そのクレヨンしんちゃんに、原作があることはご存知でしょうか?
マンガ版クレヨンしんちゃんとは
マンガ版の『クレヨンしんちゃん』は、1990年から2010年にかけて『漫画アクション』(後に『まんがタウン』に移籍)で連載されたギャグマンガです。
ちょっとおませで好奇心旺盛な5歳児しんのすけが、周りの大人たちを振り回すのが基本スタイルです。
作者の臼井儀人は、残念ながら2010年の事故で故人となっていますが、アシスタントらが後を継ぐ形で2018年現在は『新クレヨンしんちゃん』の連載が続いています。
一部で追加・変更はあるものの、アニメ版とマンガ版は概ね同内容です。
アニメで見たことのある設定やキャラクターの多くは、マンガでも登場します。
ということは、あの演出もマンガ版で当然生きているわけです。
特徴的なたんこぶ
そう!上の画像のような、たんこぶです。
これは、主に母であるみさえにゲンコツされたときにできるものです。
アニメ版を観たことある方なら、一度は目撃したことがあるのではないでしょうか。
マンガ版でもたんこぶは、いたるところで鑑賞できます。
でも、いたるところでとは言いますが、具体的には作中で何回発生するのでしょうか。
こぶの数は全部で何個になるのでしょうか。
今回は、それを調査することにします。
レギュレーション
・マンガ『クレヨンしんちゃん』でたんこぶの発生したコマを調べる
・範囲は、『クレヨンしんちゃん』の1〜50巻とする
・「たんこぶ発生案件の件数」「発生したたんこぶの数」「たんこぶの発生源」「被害に遭ったキャラクター」を記載する
・夢の中、妄想、回想で発生したたんこぶも、カウントする
・1コマで同時に2名以上にたんこぶができた場合、人数分の案件が発生したとみなす
(2名なら2件、3人なら3件)
・ゲンコツをしたものの、たんこぶのできなかったものはカウントしない
・持続(数コマに渡ってたんこぶが残ること)は、最初の1コマのみカウントする
以上のレギュレーションで調べたところ、様々なことが分かりました。
たんこぶ発生件数とその内訳
まずは、たんこぶの発生した件数から見てみましょう。
全体では、204件たんこぶの発生したことが明らかになりました。
たんこぶの発生源の内訳では、みさえが圧倒的なシェアを占めています。
みさえ単独で149件ものたんこぶ発生案件を生み出しています。
率にして、約73.0%。
しかも、コミックス9巻から11巻にかけては27回連続で発生源になるという記録も持っています。
まさに鬼神の如き活躍を見せてくれました。
みさえに大きく引き離されたものの、事故による発生も19件ありました。
事故とは、つまづいたりどこかに頭をぶつけたりしてできたたんこぶです。
一回もたんこぶのできないまま連載終了するマンガもあるので、これでも割と多いといえます。
その他では、発生源になった回数が3回以下になったキャラクターが全て入っています。
主に単発のキャラクターなどがコツコツたんこぶを発生させています。
幼稚園教諭のよしなが先生も、ごく初期にしんのすけに2回ほど鉄拳制裁をしています。
今なら問題になりそうですが、連載当時は大らかだったのでしょう。
被害に遭ったキャラクターとしては、主役のしんのすけが143件と群を抜いています。
この内、加害者みさえパターンが129件(約90.2%)なので、いかにみさえの餌食になっているのかが窺い知れます。
しんのすけに続くのは、父であるひろしです。
夫としての立場を忘れて他の女性に鼻の下を伸ばし、みさえの嫉妬を買うパターンを得意としています。
23件中の8件(約34.8%)は、しんのすけと一緒になってはしゃぐことで、みさえにまとめて殴られる役割でした。
この付け合わせ的な位置取りは、ひろしにしか見られない大きな特徴です。
その他では、発生源と同じく被害に遭った回数が3回以下のキャラクターが全て入っています。
「被害に遭った人」ではなく、「被害に遭ったキャラクター」と記載しているのは、犬のシロや妖精、宇宙人なども含まれているからです。
この世界では、人外すらもたんこぶから逃れることはできないのです。
たんこぶ数で見る
続いては、発生したたんこぶの数をベースにして見てみましょう。
全体では、519個のたんこぶが発生しています。
驚くべきことに、たんこぶ数で見たときのみさえのシェアは、8割近くに上ります。
実に407個(全体の78.4%)ものたんこぶを一人でこさえてしまいました。
その他では、どんな乱暴者でも5つたんこぶを作れば上等という状態でした。
ただ、『ヘンデレとグレテルとしんのすけ』という短編に出てきたグレテルという不良娘だけは、合計21個(約4.0%)のたんこぶを作って意地を見せてくれました。
『クレヨンしんちゃん』を前半後半に分けて、たんこぶの数の分布を見てみます。
便宜上、1〜25巻を前半、26巻〜50巻を後半ということにしています。
横軸が、「1回の発生でできたたんこぶの数」で、縦軸が「発生件数」です。
「1回の発生でできたたんこぶの数」というと表現が固いですが、主に1回のゲンコツで何個こぶができたかということです。
前半の傾向としては、1個と3個をベースに数のレパートリーを幅広く取り揃えていました。
前半でやけに3個が多いのは、コミックス2巻で記載のあった「怒りのゲンコ落とし3連発」という技が関係していると思われます。
技の習得によって、安定して3連発でたんこぶを作れるようになったのでしょう。
一方で後半は、ほとんど1個に収束しています。
発生頻度も前半ほどはありません。
つまり、たんこぶの生まれる機会が減ると同時に、一回に生まれるたんこぶの数も少なくなっていることになります。
たんこぶの少子化。
コミックス26巻で初めて一回もたんこぶが登場しなかったのが、たんこぶの衰退を象徴しているかのようでした。
これは、「後半に話のギャグ成分が減り、いい話が増えたから」「脇役の話が増えて、相対的にみさえの出番が減ったから」「たんこぶの技法に飽きたから」など複数の要因が考えられます。
とても一つには絞りきれないでしょう。
もし追調査をされる方がいたら、後半から遡って調査することをお勧めします。
だんだん減っていって寂しくなるので。
印象的なたんこぶ発生ケース
最後に個別のたんこぶ発生ケースを見ていきましょう。
コミックス全体を見渡すと、興味深いたんこぶ事例が出てきます。
例えばコミックス11巻では、作中最高記録である、たんこぶ25個が収録されています。
2ページの間に1発→6発→25発と、加速度的ゲンコツの増えていく構造になっています。
作中で2番目に多いたんこぶでも11個なので、この回は非常に強烈でした。
話自体は、ホッとするオチなのが救いです。
同じコミックス11巻では、ひろしがしんのすけにたんこぶを作る場面が見られます。
彼がしんのすけを殴るのは、これが最初で最後です。
動機も「火遊びをした子供に、大変なことをしたと分からせる」という、非常に教育的なものです。
普段はどちらかというと子供に甘いだけあって鉄拳の効果は絶大で、しんのすけも素直に謝っています。
コミックス22巻では、新生児のひまわりですらたんこぶの対象になっています。
文脈からして、みさえのゲンコツでしょう。
ひろし用に茹でたえだ豆を二人で食べてしまったことで、怒られたという場面です。
さすがにひまわりがぶたれるのはこの一回だけとはいえ、みさえの容赦なさが光ります。
コミックス47巻では、最終盤にして初めてネネちゃんがたんこぶ発生源になりました。
大人から子供にゲンコツをしてたんこぶを作る場面は数あれど、子供同士のやり取りでたんこぶが発生することは異例です。
最初からたんこぶに注目してきた読者にとっては「おお、ここで新しいパターンを出すのか!」と驚かされる場面です。
まとめ
以上です。
たんこぶだけに焦点を絞って『クレヨンしんちゃん』を見ていくことで、みさえの直情っぷりが数値で追えたのは収穫でした。
そして、しんのすけの主役自ら体を張って物語を盛り立てていこうという姿勢ですよ。
たんこぶの被弾数はぶっちぎりのトップでしたからね。
長期連載を引っぱるだけはあるなと感心しました。
おっと、そうだ。
後半にたんこぶが減った説の中で、一つ有力な説の提唱を忘れていました。
ちょっと、根拠となる画像を添えてその説を教えておきます。
その説とは…
「しんちゃんの頭が固くなり、ゲンコツが効かなくなってきた」説です。
参考資料
『クレヨンしんちゃん』1〜50巻 1990〜2010 臼井儀人 双葉社