どうぶつのおいしゃさん
動物のお医者さん
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あらすじ

今日も獣医学部のユニークな仲間とかわいい動物たちは大騒ぎ。思わずニヤリのおもしろさで、国民的人気大爆発のドクトル・コメディ!

いい冬を描いているエピソード #マンバ読書会

次のマンバのイベントのテーマが #いい冬のマンガ と知り最初に思い浮かんだのがこの「動物のお医者さん」です。 読んだことがある人は御存知の通り北海道が舞台の作品なので、ただの冬エピソードと言うよりも「北海道の冬」を感じることができるのが特徴であり魅力だと思います。そこで個人的に好きな冬エピソードをいくつか紹介します。長くなりすぎないようにすごくざっくりまとめます。 ●ハムテルと犬ぞり 7巻でチョビがブッチャーさんという外国人にスカウトされハムテルたちは犬ぞりに出会います。ハムテルはいきなりマッシャー(そりに乗る人)を任されたうえに犬たちには完全に舐められ自分には無理だと諦めかけるも、ハムテルが犬同士の喧嘩の仲裁に入った際、新入りの犬に噛まれてしまったことにチームの犬たちが怒り、噛み付いた犬に一斉に攻撃をするという展開に。そこにはもちろんチョビも含まれているところがグッと来ます。あれだけ大人しいチョビもハムテルが噛まれたら怒るんだなぁ…。 結局、ハムテルは舐められながらも仲間と認められていることがわかり、華々しい(?)犬ぞり大会デビューを果たし、まんまと犬ぞりにハマってしまうという話。 そして9巻では、こんどこそ入賞を目指そうとするハムテルたちの前に漆原教授が犬ぞり経験のない寄せ集めの犬を連れて現れるなど波乱の展開。当然のことながら大会にも大迷惑をかけながら参戦します。いろいろあってハムテルはソリから降り自分で犬を引っ張りながら走ってゴールすることになります(なぜそんな事になったかは読んでみてください)。そのおかげ?か見事3位入賞を果たすのでした。 11巻では優勝を目指し参戦するハムテルたちの前にお決まりの漆原教授が今度は本場アラスカで訓練された犬ぞりチームを率いて参戦。果たしてハムテルは優勝できるのか?ぜひ読んで確かめてください。 ☆余談ですが私は北海道で犬ぞり体験をしたことがあります。一生忘れられないほど最高の経験でしたので犬好きの方にはおすすめです。 ●埋まる女・菱沼 動物のお医者さんのメイン女性キャラクター・菱沼さん。彼女はとにかく、大雪が降ると雪に埋まる。そして運悪く通りかかった人に引き抜いてもらうという迷惑な人です。9巻にはそんな埋まってばかりの彼女にほんのりとした恋心のようなものを抱く男子学生が出てくるという世にも珍しいエピソードが掲載されています。 雪の中を牛が通り過ぎる場面に北海道を感じます。 ●埋まるモモンガ・モモちゃん 雪に埋まるエピソード2つ目です。これはエピソードというよりある話の一場面です。二階堂の親戚・里穂が彼らの通う大学を受験するということで試験後に大学内で待ち合わせようとするも里穂は迷子になり、最終的に大学内で遭難(?)してしまいます。その里穂を探す中で以前ハムテルたちが保護していたモモンガのモモちゃんが雪の中で眠ってしまっているところを発見するという、少しヒヤッとする場面があります。北海道にはモモンガも雪の中に埋もれるんだなぁ。と思ったことが強く印象に残ったのでした。 今回このクチコミを書くにあたって読み返して気づいたのが、思っていたより冬のエピソードが少ないということ。北海道の冬は人間があまり活動できないから、マンガにできるエピソードも少ないのかな、と勝手に予想しました。

nyae
nyae
ゆうかんくらぶ
有閑倶楽部
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あらすじ

聖プレジデント学園の名物生徒会「有閑倶楽部」。メンバーは会長の菊正宗清四郎を筆頭に、松竹梅魅録・美童グランマニエ・黄桜可憐・白鹿野梨子・剣菱悠理といずれもひとクセあるやつばかり。退屈なんてふきとばせ!

ちびまる子ちゃん
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あらすじ

“さくらももこ”は小学3年生。とても小さくて女の子だから“ちびまる子ちゃん”とよばれている。そんなまる子ちゃんが、おかしな家族の人たちや学校のお友だちとくり広げる、愉快な日常絵日記コミック。

透明な作家さくらももこ

『ちびまる子ちゃん』で世に知られるさくらももこには隠れた名作がある。それは読み切り作品として『ちびまる子ちゃん』の各巻末に収録された『ほのぼの劇場』である(現在は文庫版にして上下巻にほのぼの劇場のみを抜粋したものがある)。 ほのぼの劇場は、いわば"永遠の小学3年生"まる子の前後譚であり、幼稚園生の頃からデビュー前後ぐらいまでの出来事がまちまちに描かれている。はじめて鼻血を出した日、マンガ家デビューが決まった日、小学6年生の運動会、盲腸になった日、高校3年生の失恋、はじめての雪遊び、はじめてディスコに行った夜、大好きな担任先生の転任、はじめての一人暮らし、ある友人の転校、受験生の夏、等々、能天気に小学3年生をくりかえす『ちびまる子ちゃん』本編とはうって変わり、そのどれもが人生においてたったの一度切りしか起こりえない"あの頃"として描かれている。『ちびまる子ちゃん』にしても作品背景こそノスタルジックなあの頃にはちがいないが、ちびまる子ちゃんはあくまでも過去を振り返らない現在進行形であり、つまり現在から果てのない未来に向かって描かれ、それゆえに"永遠の小学3年生"でありつづける。いっぽうで『ほのぼの劇場』は、起こってしまった一度切りのかけがえのない体験を、つまりもはや取り返しのつかない不変の過去を現在から観照して描いている。 『ほのぼの劇場』を読んでまず読者は、小学3年生時点からみて過去のまる子/未来のまる子が「まる子」と呼ばれていないことに驚きを隠せない。ここではあの馴染みのまるちゃんが「ももこ」や「ももこちゃん」や「ももこさん」と呼ばれているのである。"ももこ"とはもちろん作者さくらももこの"ももこ"にほかならない。ところが驚くもなにも、まる子にしても単にあだ名として呼ばれているだけで、それは確かにさくらももこであり、つまり少なからず作者自身の投影として描かれている。あえて作品世界の繋がりを尊重するならば、まる子=さくらももこは小学3年生のときだけあだ名"まる子"で通っていたことになるが、しかしそれにしても『ちびまる子ちゃん』に登場するさくらももこ、『ほのぼの劇場』に登場するさくらももこ、このふたつのさくらももこは単に時間軸の隔たり以上に異質さをもっているように思われる。そもそも『ちびまる子ちゃん』の劇中のまる子=さくらももこというものに対して、作者さくらももこという存在は、作品の内外のそこかしかこに介在していながらあまりに希薄すぎはしないか。平仮名で書かれた"さくらももこ"というベタすぎるペンネームからして他の文字群に混ざって雲散霧消してしまいそうである。つまり『ちびまる子ちゃん』にとって主人公まる子は作者の投影でありながら、そこに作者は不在というより透明になり姿をくらましているのである。いっぽうで『ほのぼの劇場』の主人公には、単に名前の呼ばれ方がちがうという以上に、作者さくらももこの存在がそこここに見え隠れしているようには思われないか。『ほのぼの劇場』は透明な作家さくらももこが姿を現した唯一の作品ではありはしないのか。 ところで『ほのぼの劇場』から作者の人間くささがしてくるのは、それが現在から過去を描いていることに関係してはいまいか。過去というものは今ここには存在しない代わりに決定事項であり不変である。いっぽうで未来とは可変である、可変であれば先行きはわからない。先行きがわからないという意味での不透明という言葉があるが、透明すぎても何もみえない。さくらももこの透明性とは実はこのどこまでも続く現在進行にあるのではないか。

影絵が趣味
影絵が趣味
わらうみかえる
笑う大天使
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あらすじ

史上最強の名門お嬢様学校に学ぶ史緒(ふみお)、和音(かずね)、柚子(ゆずこ)。それぞれにネコをかぶって、お互いの本性を知らぬまま生活していたのだが!?ハイセンス学園コメディ?

あさりちゃん
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あらすじ

日本一元気な小学4年生のあさりには、ケンカの強い姉のタタミや、さらに強い母のさんごがいる。この強敵2人をたおすため、あさりのハチャメチャなギャグパワーはいつも全開!この3人のドタバタギャグバトルに、父のいわしは毎日たじたじ…。浜野家の大騒動に爆笑!元気いっぱいの明るい美少女(?)あさりちゃんが巻き起こす、痛快ドタバタコメディー!!

こうしえんのそらにわらえ
甲子園の空に笑え!
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あらすじ

女監督率いる弱小野球部が甲子園へ。気のいい弱小野球部の新感覚スポーツドラマの表題作ほか、『ゲートボール殺人事件』『銀のロマンティック…わはは』の長編2編を収録。

初めて「クワドラプル」という言葉を覚えた『銀のロマンティック…わはは』について

北京の冬季五輪では、羽生結弦選手が挑戦した前人未到のクワドラプルアクセルが大きな話題になりました。 私が「クワドラプル」という言葉を知ったのは、川原泉さんの『銀のロマンティック…わはは』でした。 川原泉ファンの間でも屈指の名作とされており、花とゆめコミックス版では単巻で発売されていたのですが、電子化されているのは文庫版『甲子園の空に笑え!』の中に収録されているものだけです。『川原泉傑作集 ワタシの川原泉』というシリーズの3巻にも収録されていますが、こちらも紙版書籍のみとなっており、電書派の方からは非常に見付かりにくくなっていると思うので、これを機に紹介しておきます (『甲子園の空に笑え』自体や「ゲートボール殺人事件」も面白いのですが、そちらは別で非常に熱いクチコミが書かれていますのでそちらをご参照ください)。 本作は、元々スピードスケートの選手だったものの競技中に怪我をしてしまいフィギュアに転向することになった影浦忍と、父親が世界的な天才バレエダンサーでありながら母から教わったスケートの方が好きで初のジャンプでトリプルアクセルを飛べてしまう才能を持つ由良更紗の二人がペアを組み、ペアスケートという道で戦っていく物語です。 この作品が書かれた1986年には、まだ公式戦でクワドラプルを成功させた選手は現れていませんでした。それから2年後、カナダのカート・ブラウニング選手が1988年の世界選手権で初めて4回転トウループを成功させることとなります。伊藤みどりさんがトリプルアクセルを決めて世界を沸かせて本格的なスケートブームが日本に訪れるのもその後の時期です。川原さんがフィギュアスケートを題材として選び、(「アーティスティック・インプレッション」など現在では採用されていない基準ですが) ルールの解らない読者にも懇切丁寧な解説を挟みながら、クワドラプルに挑戦していく様を時代を少し先取りして描いたのは流石の慧眼と言うべきでしょう。 本作のみならず川原泉作品に通底する特徴としてシリアスとギャグのバランスの良さが挙げらます。中でも、この作品は特に抜群です。時にメインキャラクターが酷い境遇であったり、理不尽が襲い掛かったりするのですが、抜け感のすごい絵柄によって悲しみが緩和されながらも心の奥底にはしっかりと届く作りとなっています。シリアスな絵柄と混ざり合い、しかし決めのようなシーンでも絵が抜けているところはあり、それでいて深い感動を与えられる……。こんなにも軽やかでありながら沁みるマンガを描ける人はそうそういません。「川原節」と言うべき、独特の読み味を実現しています。 元々はB6サイズ1冊に収まるお話ですが、その分テンポも良く充実感も大きく、何度も何度も読み返したくなる名作です。 時代は移り変わり、とうとうクワドラプルアクセルを現実に行う選手が現れたことに目を細めながら、クワドラプルという単語を聞くといつもこの作品の「ある見開き」と、最後の二人の表情を思い出さずにはいられないのです。

兎来栄寿
兎来栄寿

攻撃のない野球 ~その涙のゆくえ~

2018年の夏の甲子園といえば、金農旋風が世を席巻しましたが、農業高校が9人の固定メンバーで県予選から甲子園の決勝まで勝ち進んだことが、川原泉の『甲子園の空に笑え!』とまったく同じだと密かに話題になっていました。偶然って、本当におそろしいですね。まさか、川原泉も自分の描いた嘘でたらめのようなマンガの物語が現実に起ころうとは夢にも思わなかったことでしょう。決勝戦で春も制した優勝候補の大本命に負けてしまうところまで同じですからね。 さて、この季節になると、もともとが涙もろい性格なのに、それにさらに拍車がかかります。今年は春夏ともに甲子園はありませんでしたけど、それでも、地方大会や交流試合の中継をみて涙をこぼしてしまう。それだけでは済まなくて、ネットのニュース記事を読んだだけで泣けてきてしまうから困ったものです。それで、まあ、『甲子園の空に笑え!』を読んだら、これまたボロボロに泣いてしまい、今に至るというわけです。こんなに泣けてしまって、自分ってもしかして何かの病気なのかなって思い立ち、色々と調べはじめるぐらいですからね。悲しくて泣いたことっていうのは、たぶん人生で一度もなくて、何かを美しいと思ったときとか、人の懸命な頑張りの軌跡みたいなものを感じとったときにとにかく弱い。つまり、受け身で泣くということはなくて、自分がそこに何かを見出したときに涙が出るみたいなんです。じゃあ、そこに何を見出したのかといって、球児たちの美しさを見出しましたなんていまさら言えるはずもなく、仕方がないので人が泣くことについて調べてみる。 ふむふむ、近年の心理学的見地では「無力感の認知」と泣くことの関連性が言われているらしい。例えば、人が予期せぬ朗報を受け取った時に泣くのは、表向きには、起こっている事態に対して無力である、影響を与えることができないと感じるためである、と。 閑話休題。 野球というスポーツの特異点は、まず何と言っても攻撃と守備の時間が明確に分かれている点にあると思います。攻撃と守備がまったく無関係に独立している、とまでは言いませんが、ルールの上では無関係に徹している。表と裏と言いますけども、表裏一体なんて言葉もありますけども、野球にかぎっては表裏がたがいに独立している。もっといえば、表と裏をひとつの単位にした回というものも、1回から9回までそれぞれに独立しています。三者凡退の回もあれば、ビッグイニングの回もある。さらにもっといえば、各バッターの打席ごとに独立していますし、ピッチャーの投げる一球ごとに独立しています。こうしたひとつびとつのプレイには全て判定があり、名前が付けられています。ストライク/ボール、アウト/セーフ、三振/四球/死球、犠打/単打/長打/本塁打、盗塁/盗塁刺、刺殺/併殺/失策/捕逸、挙げていけばきりがないですね。もちろん記録に残らないプレイというのもあるにはあるんですけども、基本的には全てのプレイに名前があり、記録として残されます。こうしたプレイのひとつびとつが一回一回を進め、野球という時間をつくっていきます。ここらへんがサッカーやバスケといったスポーツと大きく異なる点で、野球は時間のなかで行われるのではなく、ひとつびとつのプレイが野球という時間をつくってゆく。プロ野球のナイターでは、18時に始まって、24時過ぎに終わった試合まであるそうですからね、なんと6時間! ちなみに最短は55分だそうです、短! ちょっと話が逸れましたが、野球というスポーツは、ひとつびとつのプレイ、ひとつびとつに名前があって、それぞれに独立しているプレイのひとつびとつが時間をつくってゆく、尚且つ、それらは記録として残される。良い記録も、悪い記録も、勝敗を分ける点数に結びつく記録も、結びつかない記録も、それぞれに独立していて、それら全てに名前があり、記録として残されるのです。 これは野球にかぎった話ではありませんが、よく失敗を挽回するなんてことが言われます。でも、どんなに次の機会に頑張ったとしても、失敗は失敗としてそこにあるわけで、あったことを無かったことにはできません。失敗は失敗としてあり、挽回は挽回としてあり、それらは表裏一体のような体をなしておらず、あくまでも、それぞれに無関係に独立していると思います。こういった考えは残酷と思われるかもしれませんが、あったことを無かったことにできるというのなら、その逆もまた然りというわけで、成功もまた失敗によって無かったことになってしまう。そんなことが許されますか、めっちゃ頑張っていい球を投げられるようになったのに、たった一球の失投をホームランにされて、それまでの好投は無かったことになる、そんなことが許されてたまるもんですか。でも、試合は試合ですし、相手だってこの一球を逃さないための練習を重ねてきていたからのホームランです。 コロナで春のセンバツが中止になったとき、頻りに救済案ということが言われました。結果として春夏ともに甲子園大会は中止になりましたけど、仮になにか救済案があったとして、それでもセンバツを戦えなかった選手たちの無念は残ると思うんです。救済は救済としてあるかもしれない、でも、それは選手たちの無念とは無関係にすれ違ったままだと思うんです。数学ではマイナス1にプラス1をすれば0になりますけど、人の心はそんなふうにはできていなくて、マイナス1も、プラス1も、ともにそこに変わらずにあり続けると思うんです。 ある意味でこのことは、いっぽうからしてみれば、もういっぽうに影響を及ぼすことができない「無力感の認知」ということにもなり得ます。とくに攻撃と守備が相互に独立している野球というスポーツにおいて、この「無力感の認知」はよりいっそう顕在化されると思います。夏の甲子園の球史に深く刻まれた一試合に「日本文理の夏はまだ終わらない」でよく知られる、中京大中京vs日本文理の決勝戦があります。10-4と大差をつけられた日本文理が9回裏二死から怒涛の追い上げで1点差まで詰め寄ったところで、最後の快音が三塁手のグローブに吸い込まれて終わるのですが、負けた日本文理は負けたのに晴れやかな顔をしていて、勝った中京が悲愴な顔をしている。しかも、優勝インタビューを受けた四番でピッチャーの堂林が帽子で顔を隠して泣いているんです、ほんとうに情けなくて悔しいです、と。このことを書きながら自分もまた泣いてしまっているんですけど、この試合で堂林はホームランを含めた三安打で得点のほとんどに絡んでいるのにもかかわらず、9回裏の情けない自分を悔いて泣いているんです。しかも、10点をとられて負けた日本文理のピッチャーの伊藤、9回裏二死が続いて、なんということか偶然にも彼の打席で満塁となり、三遊間を破るヒットで走者を二人還して二点差まで詰め寄ります。このとき、二塁まで到達した伊藤のガッツポーズもまた忘れられない、さらに次の代打のヒットで伊藤はホームベースを踏んでついに一点差まで! また、このことを書きながらボロボロに泣いてしまっているんですけど。 そして、広岡監督の率いる豆の木高校は守備のチームです。というのも、赴任してきた広岡先生はドライでクールな生物の教師として、何故かやりたくもない野球部の監督を押し付けられ、そもそも汗と涙の高校野球なんてキモチワルイとすら思っている。それで、まあ、ストレス発散にノックで生徒たちをいびっていたら、いつのまにかチームの守備力が向上していたという能天気ぶりなんですけど、そんなドライでクールな広岡先生が不純な動機とは無関係にいつのまにか高校野球にのめりこんでいくんですよ。 守備だけをひたすら鍛えたチームですから、点なんかとれやしない。広岡監督は選手たちに言います「うちのとりえは守備だけなんだから、たとえこっちが0点でも、相手に一点もやらなけりゃ、少なくとも負けることはないのさ」そして、自分自身にも心の中で言うのです「そーだ、守るんだ、それしか生きる道はない」。となれば、攻撃はもはや神頼みしかない、祈ることしかできないわけです。まさに自分たちの守備に誇りを抱いて、人事を尽くして天命を待つですよ。 ところで、甲子園交流試合の鶴岡東5-3日本航空石川では、5-3の9回裏、追いかける航空石川が2アウト1・2塁と逆転のチャンスをつくって、勝利目前の鶴岡東は最後の打者を打ちとったと思ったんですが、それまで投手のピンチを何度も救ってきた遊撃手がエラーしてしまい、満塁の大ピンチを招いてしまいます。結果としては次のセカンドの好守備に助けられて鶴岡東が逃げ切ったんですけど、自分があの遊撃手なら高校最後のエラーを忘れられないと思うんです。だからといって高校最後の試合を勝利でおさめたことが消えてなくなるわけでもない。どちらとも、ともに、それぞれに無関係に独立にして、そこにあり続けると思うんです。 それはちょうど、恋人にフラれてしまっても、かつて恋人と過ごしたきらきらした日々が消えてなくなることのないように、いつか見た川のせせらぎのきらきらが消えてなくなることのないように、全てのあったことは、ネガティブなことでも、ポジティブなことでも、どちらでもないことでも、あったこととして、そこに変わらずにあり続けると思うんです。自分さえそう信じていれば。 思えば、人生なんてどんな人でも負け戦だと思います。あの清原が見事に体現してくれているように、裕福な家に生まれようが生まれまいが、才能があろうがなかろうが、努力で這い上がろうが這い上がるまいが、多かれ少なかれどんな人生もひとしく負け戦だと思います。攻撃のない野球みたいなものです。誰も彼もボコスカに打たれまくって肩で息をしているピッチャーみたいなものだと思います。攻撃のない野球ですから、どんなに上手く守ってもゼロ、最高のパフォーマンスを発揮してもゼロ、ゼロじゃあ試合には勝てません。たぶん、生きるということは大洪水の川のなかにいるのにひとしくて、流されないように辛抱するのがせいぜいで、進むことなんてできやしない。でも、それでも、と信じさえすれば、守備とは無関係のどこかできっと攻撃が繰り広げられていると思うんです。どんなに清原が落ちぶれようとも、かつて清原が打ったホームランは消えてなくならないように、かつて清原が日本シリーズで流した涙がぜったいに消えてなくならないように。 豆の木高校の豆っ子たちが点をとれなくてもあの手この手で(自分たちの手には負えないやり方で、でも、守備だけは懸命に頑張った!)決勝まで勝ち進んだように、今日もどこかで日本文理の終わらない夏が9回裏の奇跡のような猛攻をどこかで繰り広げていると思うんです、すくなくとも自分がそう信じさえすれば!!!!

影絵が趣味
影絵が趣味
やじきたがくえんどうちゅうき
やじきた学園道中記
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あらすじ

腕っ節は天下一品、冷静沈着・篠北礼子と江戸っ子姉ご肌・矢島順子。彼女たちは千代田一の名門校、三葉学園の理事長から風紀を乱す「関東番長連合」の一掃をしてほしいとの依頼を受ける。しかし転入したやじきたコンビを待ち受けていたのは番長連合だけでなく、裏に潜む謎の影だった…。総長の徳也雪也、謎の従者・各雲斎小鉄、八丁堀の大門、四天王の一人・緑川、青菱の菊千代、そして姿の見えない葵上総介。個性派キャラクターが繰り広げる学園捕物帳第一巻、ここに見参!!

ちびまるこちゃんおおのくんとすぎやまくん
ちびまる子ちゃん―大野君と杉山君―
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あらすじ

まるちゃんのクラスのリーダー格・大野君と杉山君は名コンビ。共に船乗りになる夢を抱く2人は、ときにはケンカもするが、堅い友情で結ばれていた。そんな折、大野君が突然転校してしまうことになって…。映画第1作目の笑いと涙の感動作!!

ひあたりりょうこう
陽あたり良好!
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あらすじ

下宿屋を営むおばの家から、明条高校に通うことになった“かすみ”。ところがそこには、同じ高校の四人の男子生徒が下宿! BFの克彦を一途に思うかすみだが、調子のいい下宿人・高杉勇作がなぜか気になって…。週刊少女コミック・昭和55年第2号より連載の青春コメディー!

みそっかすちばてつや
みそっかす
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あらすじ

茜は名門一家上条家の三女。体が弱かったため、しばらく田舎の草介おじさんのもとに預けられ、療養生活を送っていた…。そして6年後、自由奔放なおてんば娘に成長した茜が上条家に帰って来た!行く先々で大騒動を巻き起こす茜だが、その心は誰よりもやさしく、思いやりに満ちている。明るく強く生きる茜からたくさんの勇気をもらえる物語――。

ファミリー!
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あらすじ

LAのアンダーソン家は総勢5人。人のいいパパにマリア様のようなママ。男が好きな長男のケイに、男の子みたいな長女のフィー、おませな次女のトレーシーの仲良し家族。ところがそこにパパの隠し子を名乗る5歳の天才少年・ジョナサンが訪ねてきたから大騒ぎ!ショックで寝込んでしまうパパ、火花を散らすフィーとジョナサン、アンダーソン家はどこへゆく!?恋と友情と家族愛にあふれた傑作長編ホーム・コメディー!

はじめちゃんがいちばん
はじめちゃんが一番!
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あらすじ

はじめは5つ子の弟が生まれてから、極貧の中、家事にあけくれる毎日。ある日、TVCM出演をきっかけに、5つ子はM2プロにスカウトされ急なデビューが決まった。最初は反対していたはじめも、ひと目惚れの相手がスーパーアイドル・『WE(ウイ)』の瑞希と知るや協力的になり……。読めば元気いっぱい、スラップスティック・コメディー!!

どろろんぱっ!
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あらすじ

美少女おばけ小野小町/愛のエンジェル小町?/小町vs藻奈寛/おばけ対決/小町は吸血鬼!?/あたくしアンジーです… 他全10話収録!

ちびまるこちゃんわたしのすきなうた
ちびまる子ちゃん―わたしの好きな歌―
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あらすじ

「めんこい仔馬」の歌が大好きなまるちゃんは、ある日出会った絵かきのおねえさんとの交流の中で、歌の本当の意味を知り涙する。そして、やがて遠いところへお嫁に行ってしまうおねえさんへの思いを、その歌に重ねて…。映画第2作目の笑いと涙の感動作!!

いがのかばまる
伊賀野カバ丸
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あらすじ

忍者として修行をしていた伊賀野影丸・通称カバ丸は、祖父・才蔵の死後、人里離れた山奥でろくな食事もせずに暮らしていた。そこに祖父の若かりし頃の恋人・大久保蘭が出現!“きちんとした食事”に釣られたカバ丸は、大久保蘭が院長を務める名門・金玉学院に入学することに…。そこでカバ丸は、夢にまで見た美しきお弁当と、院長の孫娘・大久保麻衣に出会う。

ねこねこふぁんたじあ
ねこ・ねこ・幻想曲
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あらすじ

【少女に変身した子猫が珍騒動を巻き起こす!】年末の樹村家のパパ、ママ、サトコは大忙し。かまってもらえない黒猫シロは、パパがみんなに贈り物をすることを知り、自分もみんなにしたいとお月様に相談した。すると…? ふしぎな猫のあったかファンタジー、第1巻。 【同時収録】キラキラ星のおひめさま/おとぎばなしの休日

SALTY DOG
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あらすじ

喫茶店SALTY DOGのウェイター・おおぞらは、なんとイヌ! しかも人の言葉がしゃべれて…。お手軽ギャグ・コメ。

みかん・絵日記
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あらすじ

吐夢(とむ)が拾ったオレンジ色の猫は“みかん”と名づけられ草凪家の一員に。ところがこの猫、お酒を飲み、人間の言葉を話すからびっくり!?

すぱんくのわおわおたんていだん
スパンクのWAOWAO探偵団
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あらすじ

『おはよう! スパンク』の番外編にあたる、スパンクの冒険ストーリー! 飼い主・愛ちゃんがパリへ行っている間に、スパンクが誘拐事件に巻き込まれちゃった。身代金目的でさらわれたのは、スパンクに瓜二つだという名家の飼い犬・竜馬。その影武者をすることになったスパンクだけど、沈着冷静でクールな竜馬の真似は大変で……!? おなじみスパンクが大活躍! 表題作の他に、『1月なかば春の色』も同時収録。

大好きなスパンクのはみだし編!!!

酒チャビン
酒チャビン
かわよりもながくゆるやかに
河よりも長くゆるやかに 〔PF〕
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あらすじ

少しばかり屈折しているが、立派に21世紀風青春している3人組―― トシ、秋男、深雪。暗い環境も何のその、ラブに、Y談、ドラッグに、ケンカ、何でも明るくキメてみせます。会話の軽妙さも快い、秋生先生の青春コミカルストーリー第1集。

みかん・絵日記 特別編
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あらすじ

大ヒット作品「みかん・絵日記」の読切作品集が全2巻で登場☆コミックス未収録作品を文庫にたっぷり初収録!泣いたり、笑ったり、みかんと一緒の愛いっぱいの日常を楽しもう☆

ざ・ちぇんじ!
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あらすじ

時代は平安、若君&姫君が入れ替わった妹弟を描く古典の名作「とりかえばや物語」を新しい視点で解釈した山内&氷室コンビによる傑作!!

いきなりSF
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あらすじ

ある日転校してきた近藤君。彼の目はあるかないか分からないくらいのものだった。そんな近藤君のことは気にもとめていなかった広瀬だったが、愛しの山下君の方を見ると席順のせいで近藤君が視界に入ってしまう。何度も山下君の方を見ていると、だんだん近藤君の方が気になってきた…。しかしその理由は…!? ▼目次 いきなりSF なんなんなんだっ

私はただものじゃない
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あらすじ

ごく普通の女子高生・川田は、転校先の学校の生徒会長・澤口に「君はただもんじゃないね」とすれ違いざまに言われる。意味の分からなかった川田だったが、その噂はまたたく間に学校中に広まり、川田のやることなすこと全てが「ただ者ではない」言動として受け止められてしまい…!? ▼目次 私はただものじゃない 柳の下に牛がいる 私にぶつかるんじゃない

只者の証明

ただものかただものじゃないかって、なんの差なんでしょう。ただものだって誰かにとってはただものじゃないのかもしれません。 ごく普通の女の子・川田は転校先の学校で、生徒会長・澤田に「君はただもんじゃないね」と言われます。 その一言がきっかけで川田は「ただものではない」と学校中の噂になります。 スポーツも勉強もそんなに得意じゃない川田なのに、天才少女に違いないという周囲の思い込みからドタバタトラブルが起こり出します。 某芸人さんのすれ違いコントとかズレ漫才みたいに本来の意味とは違う捉えられ方をして、天才少女どころか宇宙人だの忍者だのと話が膨らんでいくのがめちゃくちゃ面白いです。噂が事実として膨れ上がっていく様が滑稽だけど怖さもあって、それがまたシュールな笑いに繋がってるのかもしれません。 とは言え、平和な事件しか起きない&オモシロの権化桐島先生だからこういう仕上がりになってるだけで結構怖い話よね…とは思います。 噂ってすぐ広まるけど払拭するのはめちゃくちゃ難しいですからね、ということで川田がただものであることを証明するためにとった行動にも注目です。 結局青春してんじゃねえか!っていうオチも含めてよかったです!

野愛
野愛