※ネタバレを含むクチコミです。
くらもちふさこの凄さは、ファンにとってはもう自明でしょうし(知り合いに何人か「私はくらもち漫画から生まれたの!」と言う女性がいます)、『ショパン』から近作『駅から5分』『花に染む』まで、各時代にとんでもなく素晴らしい名作が並んでますので、まだ読んでいない人がただただ羨ましいです。 ここであえて、とても反時代的で「偏見」に満ちた個人的断定を書きますが、 少年マンガ=男から見てカッコイイ「男」を描くジャンル 少女マンガ=女から見てカッコイイ「男」を描くジャンル だと自分は思っているのです。 (異論反論、当然あるでしょう。申し訳ない) そういう点で、くらもちふさこ漫画に出てくる「男」ほど、女性から見て魅力的なオトコはいないのではないだろうか、と愚考しておりまして、その極めつけとして頭に浮かんだのが、この『海の天辺』です。 現代日本を舞台にした最良の少女マンガ、だと思います。
黄金のラフ、面白すぎる。12巻を読んでたら、次巻が最終巻とのこと。チームきりたんぽ復活してほしい。復活して、続編が始まってほしい。
くっさいしょーもないタイトルだなぁと思いつつも絵が好みだったのでつい読んでしまった……。 ちゃんと「ゲーム内世界」という舞台設定だったので安心しました。「異世界」でスキルとか属性とかやはり言われると少し萎えるので。。 ともあれ内容ですが、最序盤の第一印象としてはまぁ読みにくいったら。キャラ付けのためにか皆よく喋るのですがそれが冗長というか、無駄なセリフが多すぎてテンポよく読めない。絵も構図もそれほど上手いとはいえないですが、やはりそれ以上に言葉選びのイマイチさが目立ちます。 とはいえ「親同伴で冒険に出る」というのはアイデアの勝利だと思うし、ゲーム内世界という特殊な環境をメタな笑いに昇華してるのは上手いです。最初に出会った王様が「だってNPCじゃし…」と説明を面倒くさがるくだりの脱力感(笑) あの一言でこの作品がなにを狙っているのかがだいたいわかりました。異世界へ旅立ってからが本領発揮ですね。メタネタだけでなく、思春期の親子の微妙な距離感がほほえましく、単なる「バブみ」を売りにした漫画ではないんだなと良い意味で裏切られました。これは萌え漫画じゃなくてギャグ漫画なんだなと判ってからはとても楽しく読めています。
近年、ややニッチな分野をテーマにした医療マンガが人気になりつつあります。ドラマ化された作品だけでも、病理医が主人公の「フラジャイル」、産婦人科が舞台の「透明なゆりかご」そして平成最後の月9ドラマとなった放射線科が舞台の「ラジエーションハウス」などなど…そして、"病院薬剤師"である葵みどりを主人公として描かれるのが今作です。 今作には、何でも解決できるようなスーパードクターも、私腹を肥やす倒すべき悪徳医師も登場しません。そのかわりに描かれるのは、主人公の葵先生を始めとした「患者さんのため」を想って日々の業務に携わる医療従事者達。彼女達は患者の「当たり前の毎日」を守るために日々の業務を遂行していきます。 そのため、この作品は従来の医療マンガとは少し異なった雰囲気を見せます。例えば、葵先生は主人公らしく熱血漢気味の性格なのですが、その熱血の心で突っ走るだけで問題を解決することは決してありません。突っ走りそうになるところを周りが諭したり影ながら支えたりして、気持ちだけでなく薬剤師としての知見をちゃんと駆使しながら解決を図ろうと奔走します。 また、主人公が医師ではなく薬剤師ということから、患者の生死に関わるような大きなイベントを常に扱ってはいないというのも特徴の1つです。あくまで日常の業務の中で、薬剤師として患者に接する中で直面する問題を描いており、他作品に比べてドラマチックな展開はないかもしれませんが、その分心構えをすることなく読むことができ、でもしっかり心に残るものがある作品となっています。 そして、私がこの作品の1番の魅力と感じている点が「チーム医療」を感じられる作品という点です。医療マンガ・医療ドラマといえば、スーパードクターが問題をバリバリ解決していく、もしくは悪徳医師が登場してそれを仮想敵として打倒していく、という作品が多いように思います。また、ドラマではナースが主人公の作品も多々ありますが、そのような作品も物語の舞台はナ―スステ―ションが中心で、他の医療従事者との接点が薄い作品が多い印象があります。でもこの作品は、仮に初出で性格の悪そうなキャラが出てきたとしても、それは敵対すべき存在ではなく、共に医療を作っていくチームの一員という描かれ方をします。そのため、意見が違った場合には、相手を論破するのではなく今後長く協力していくための"説得"もしくは"議論"するという様子が描かれます。実際、医師と薬剤師が治療方針について"議論"をしている様子を描いている作品はこれまでに殆どなかったのではないでしょうか。この作品は主人公の薬剤師だけでなく、医師、看護師、その他の医療従事者も含めて病院の全てのメンバーで"チーム医療"を支えている様子を垣間見ることができる、稀有な作品だと思います。 このように、色んな意味でこれまでにない医療マンガになりつつある、それがこの「アンサングシンデレラ」という作品だと思います。 2巻では"調剤薬局の薬剤師"という、同じ薬剤師でも特徴の異なる存在も描かれており、今後もたくさんの面から医療の現場が描かれることを期待しています。 2巻まで読了
良かった点 ・登場する通気取りがいい感じで面白い。 ・卵かけご飯回の「ジブリネタ」がいい 総評 ・「掌で30分温めた卵で作った卵かけご飯」は魯山人曰く「この世でもっとも美味い」と作中に書いてあったので気になる ・最終的なオチも含めて良かった。
良かった点 ・特に難しい話もなくいい感じで1話完結する。 総評 ・漫画も充分面白いが「大江戸コラム」も面白い
怪人症を患っているショウが変異するシーンがすごかった。序盤はスラスラ読んでいたのですが、ここでグッと心を掴まれました。唯一の理解者であるヒロインも複雑な事情を持っていて、単純じゃないラストに繋がるのも良かった。次回作もとても楽しみ。
同じ書店で働く二人はもうすでに付き合っている。同性の恋人に対して奥手なアラサー未亡人を女子高生が積極的にリードしていきます。完全に相思相愛なのでデートやハグのシーンは恋の熱量がハンパないです。これは連載になったら化けそう…!
サラリーマン山崎しげるの作者・田中光の読み切り。学校でAVを観るには部室が必要だ!ということで、地層研究部を立ち上げた関根と岡谷。なんとか規定の部員数も集まり、偶然にも美人な顧問も得た、よし目的を果たすぞ、と思いきや…。回を重ねていくほど面白くなるタイプの漫画だと思うので連載化を希望。
ヤクザの若頭×女子大生という、現実にはなかなかありえないハードな恋愛物。 ものすごく売れているらしいけれど、どこが人気の要素なのか考えてみた。 まずはエロシーンが濃厚なこと(?) あとはケータイ小説的な分かりやすい萌え(?)があるような気がする。 悪い男に溺愛されたいという女子の夢(?)が詰まっている(?) ……と、現状?だらけなのだが、チーズ本誌で連載開始したので追いかけてみたい。
人々から存在を忘れられて、退屈な毎日を送っていた神様(高齢)のもとに、翼が折れてしまったかわいいかわいいエンジェル(ピカエル)が現れてからというもの、いきなり子育てならぬ、天使育てが始まって、神様は毎日振り回されっぱなし…という話。 最初は神様と天使のピカエル、たった2人の生活から始まりますが、 そのうち天狗(イケメン)や個性豊かないろんな神様、更には人間も登場、一気に賑やかになります。 主人公の神様が、鼻毛の長いじじいなので、あとから続々と出てくるイケメンたちが際立ちます。 素敵なのは、誰ひとりとして突然現れた正体のわからないピカエルのことを、邪険にあつかったりしないところ。 親(この場合は神様)だけじゃなく、「みんなで育てる」の理想形じゃないでしょうか。
大剣、コワモテ、マッチョ、グロテスクな怪物。ベルセルクかな? どっかで見たような要素の寄せ集めでありながら、一話目からキャラクターや物語の見せ方が上手く絵もかなり気合入ってるのでまだ1巻ですが先が楽しみな作品です。 とくに昨今中世風ファンタジーを名乗りながらスキルだのレベルだのジョブだの手抜きな世界観の作品が氾濫しているなかで、こういった骨太な本格的なファンタジーは嬉しいです。
出オチかと思いきやちゃんと面白いあたりさすが甲斐谷先生。 狂言回しにして紅一点のみやびが驚くほど可愛い。リアクション役なので顔芸が映える映える。ライアーゲームでも振り回される女主人公だったが、とくに顔芸可愛い漫画だとは思わなかったので、作者の成長あるいは変化? パーフェクトなまでにヤンマガにフィットしてますね。ベテランなのに凄い…
主人公はセールスマンの仕事をしていたが気が弱いので成績が振るわず上司にも嫌われ仕事を辞めることに。再就職したのは高齢者の話し相手となり心のデトックスサービスをする仕事だった。根っからの性格が受け身なので利用者からの評判も上々。まさに天職ともいえる環境で出会ったのが、パワハラ気質の元上司に似ているお得意様の北川様とその娘だった。 読み返すとタイトルが秀逸なことに気づきました。あの絶叫はある意味プロポーズだと思います。笑
「パティシエールを目指していた女の子が、和菓子職人の弟子になる物語。「そんなん面白いに決まってんじゃん…!」と読んだら、案の定面白かった! (違う世界に挑戦する話が大好きなんです…Real Clothes、スピナマラダ!、空手小公子 小日向海流みたいな) まずこの絵柄がいい! キラキラした少女漫画やシュッとした少年漫画じゃ出せない「素朴さと温かみ」が下町の義理人情を引き立ててたまらない。 そして職人の在り方・心構えをガッツリ丁寧に描いてるところがいい! 和菓子を作るには、材料から日本の四季と文化に精通しなくてはならない。よって親方や女将さんがなっちゃんを育てるために、あれやこれや手を尽くすし、なっちゃんも期待に応えるために真剣に努力する。 店には親方、兄弟子、店を取り仕切る女将さんがいて、和菓子の道を極めるうえで主人公彼らとは「師弟関係」という線引きがある。 尊敬と愛情で繋がる「親しいが馴れ馴れしさはない」、職人の世界の人間関係がすごくよかったです。 そして何より、全く道の厳しい世界でもヘコたれない、主人公の真っ直ぐな心とタフな根性が読んでいて気持ちがいい! こういう子好きです。 何も知らずに読み進めていたところ、20巻のあとがきで衝撃を受けました。 作者の方がご病気で逝去されており、その遺志を継いで未完のまま完結させるというお知らせでした。 アメリカから来た新しい弟子となっちゃんの関係がどう決着するのか本当にワクワクして読んでいただけに、「ここでなっちゃんの世界は終わり」といきなり知らされショックで呆然としました…。 未完ではありますが、作中の下町人情や美味しそうなお菓子、日本の伝統文化は本当に最高。 最初から未完であると知ったうえで楽しんで読んでほしい名作です!
恐らくご自身と同年代を主人公に描かれているので、新しい作品になるほど登場人物も年を取り、内容も「老い」や「死」についてが中心になりますが、表現する力はよりイキイキとしているように感じます。 どの作品もまるで存在したかのようにリアルな人物描写なので、ストーリーというよりも人生を読んでいるようです。年齢や境遇によって読後の感想も変わると思うので、次に読み返した時に自分が何を思うのかも楽しみです。
絵が可愛かったこともあり、知ったその日に購入し読みました。 僕自身もFtMなので主人公ナタンには感情移入が止まりませんでした。 僕はナタンと違って性別に違和感を覚えながらも、スポーツが嫌いで可愛いグッズが好きな男だったこともあり男性と自認をしたのは最近ですが、思春期になり女性の姿へと変化していくことに怯えるナタンの「子どものままでいたい」と零す悲痛な姿を見て、あの時のあの感情あの想いは自分だけじゃなかったのだと安心すると同時に当時の自分を思い出し胸が締め付けられました。 日本に限った話ではないですが、多くのメディアではトランス女性の話はよく聞くけれどトランス男性の話は少なく(ボーイッシュという言葉の存在による弊害も大きいのかもしれません)、FtMを大きく取り上げる事が少ないのでこういった作品が多くの人の目に触れられると良いなあと思います。 訳者の後書きでFtMを取り上げた作品を紹介しているところも良かったです。
良かった点 ・俺の好きな小池一夫節が全開で何も言うことがない。 ・「チュチュ・ヒステリーカの場合」「VIVA エルザ」の回は主人公の「ヒステリーカ」の判断が面白すぎる。この感じこそ小池一夫原作だよな 総評 ・アンゴラ内戦編が一番好き
伝記漫画としてもグルメ漫画としても面白いです。何気なく読んでたら熱い展開もあり夢中になりました。賢治の人柄が数々のドラマを生んでいきます。印象に残ったグルメはやっぱり表紙の天ぷら蕎麦とサイダーですね。当時とても高価でしたが給料を三日で使い果たすほど店に通ったそうです。これを貧乏な教え子にご馳走するエピソードも賢治の優しさにほろりとします。
絵が可愛いです! SFが好きな人が書いたSFって感じでした。
『傘寿まり子』、『凍りの掌 シベリア抑留記』で知られるおざわゆき待望の新連載が月刊office YOUでスタート! https://twitter.com/yukiozawa/status/1120505842602844160
最後のオチのためだけに描かれたマンガ。 透視ができるようになった幼馴染の男子が、女子の心も読うとしたとき… あー!透けてるーーーーーーー!!!!笑 勘が良い方はなんとなく言ってることはわかると思いますが、 「透け」の仕掛け方が良いです。声出して笑いそうになりました。
すごくチープになりそうな設定なのに1巻で気持ちよく捌いてて満足です! ヤカラと線の細い少年の相性のいいこと。 対極のものはものすごい相性がいいと思っています。個人的ツボポイントはビニール袋に天使の羽詰めるとこですね。 少年愛と男らしい筋肉。これが描きたいってのが伝わってきます。恥ずかしさ捨てて表現できる、BLの良いところ。 幸せな話でした。
なかなか無い切口の設定では? しかも父親目線! あらすじではサスペンスとあったので尚更気になります。 1話でふっと現れた娘の友達、そして引きこもりの娘を持つ父親。 どっ…どう展開するの? すでに色々妄想してしまいます。
アニメーターという「絵を動かす人」が漫画を描いたら、紙の上でどのくらい「絵を動かす」ことができるのか、その恐るべき力を見せつけた快作である。 アニメーターが描く漫画と言えば、宮崎駿の『風の谷のナウシカ』漫画版が有名だと思うが、連載時期がかなり重なるこの『アリオン』は、「絵が動く漫画」として、勝るとも劣らない素晴らしさだと思う。 漫画とアニメの二刀流だった神様・手塚治虫の出世作『新宝島』は、まるで映画のような臨場感溢れるダイナミックな画面構成で、多くの読者に衝撃を与え、現代漫画の始まりを告げたのだから、そうした「動く絵」の魅力は、漫画の本質的な要素だと思うのだけれど、最近の漫画界にはそういうタイプのヒット作が少ないのは残念だ。 安彦良和は以降、漫画家として多くの作品を発表しているが、この第一作ほど「絵が動く」魅力に溢れる作品はないように思う。
BLってすぐエグいシーンになるから読み進めるのに緊張するんですが、こちらはクスっとくるような軽い漫画なので良かったです。生々しくない。 でもその分まったくリアリティはないです。特に主人公。
画風と時代背景がよくマッチしていてすごく雰囲気が良かったです。残虐坊主が語る、嘘か真かわからない恐ろしい話にどんどん引き込まれ、三吉の末路は予想外すぎてゾッとしました。 自分の理解が足りないため、末男・卍丸が結局どういう存在だったのか全く掴めぬままなのが残念です…。(本当にただの豪胆な子どもだっただけなのか、何かの象徴とか暗喩なのか…)
マザー・ドロテアの過去を遡るほどにドロテアの姿も若く、美しくなってゆくのが心に残ります。 そして、現在の姿からは想像できない、壮絶でせつなすぎる彼女の人生を知ることになります。 100ページ弱で読み切れますが、一本の映画を見たような読後感です。 多分、2度め、3度めと読むごとに違う感情で読むことができそうです。
ネコのほんわかフォルムからは想像できない圧倒的な画力とストーリーがそこにはあります。 そして、一話目を読んでみれば、そこからは最後までノンストップで読み切ってしまうことでしょう。その瞬間、はやく他の人にも読んでもらわないと!!!という気持ちが湧き上がるはずです。 短編集ですが、基本的には表紙のネコのようなキャラが主人公です。 ファンタジーのような、近未来のような、なんとも言えない世界観の話が多いですが、一見、訳のわからない設定に思えても読んでみるとしっかりまとまってます。そしてわりとしっかり笑えます。 説得力があってすべて身近な出来事のようにも感じるんですよね。柴犬の話とか、実際にありそ〜、というかあったら良いな…みたいな
天才・木村紺の処女作であり代表作。大学入学と同時に家族で神戸に引っ越した東京出身の一人の女子大生の物語。 淡々とした筆致で描かかれる日常風景は文豪が紡ぐ上質なエッセイのようであり、それだけでも一級の作品として評価されるものですが、この作品にはそれだけには止まらない、魂を震わす素晴らしさがあります。 まだ震災の痕跡が残る神戸の街と人々。少女は様々な出会いと、そして悲しい別れを経験します。作中の時期の、未だ復興を完全になし得ていない神戸という街の時代の空気感と、繊細な少女の成長という、この作品でしか描き得なかったフレーバー。彼女の受けた傷と、そこから立ち直る場面は、月並みかもしれませんが、明日を生きる勇気を与えてくれます。まだ年若く、何かを喪うことを恐れているあなたにこそ、読んで欲しい、そんな名作です。
過激度ゼロの純愛キュンキュンBLでした。 童貞が二人出てきておいしい(?)ですね。
数年ぶりにハロルド作石の『BECK』を通して読んだら、もういい歳のくせに、ページをめくるそのたびに泣き腫らしてしまった。まだ青春時代と呼ばれる十代の頃、自分も『BECK』を読んでそう思うまでもなく、すでに社会の爪弾き者として、自身のインスピレーションに従って生きて行くしかないと心に誓ったものだったのが、いつしか歳を重ね、つまらない反骨精神だけは相変わらずだが、そのいっぽうでは自身は社会によっても生かされていると思うほどには大人になった。ようするにある程度の分別がついたのである。いまだに社会人などいう言葉には虫唾が走るが、ふいに気がついてみれば、あの頃にはあんなにも嫌悪していた社会の構成員としての大人になっている自分がいる、そんなつもりはなくても税金を払ったり健康保険の恩恵に授かったりしている自分がいる。 つまらない話になった。単に『BECK』のように徹底的に社会の爪弾き者となり、次々と難題が降りかかり、追い詰められ、尚且つそれらを乗り越えてゆくというのはマンガだからこそ起きうる事態であり、だいたいどんなに非市民的に見える人間であっても実は社会と地続きに繋がっているという意味で凡庸さからは抜き出ていないということである。もっとつまらない話になってしまった。嗚呼、マンガとは所詮嘘いつわりの虚構ではないか、夢もへったくりもあったもんじゃない、死のうかな。とでもなりそうなものだが、まだ死んでいないのは、数年ぶりにハロルド作石の『BECK』を通して読んだら、もういい歳のくせに、ページをめくるそのたびに泣き腫らしてしまうほど感動したからに他ならない。 なんか言ってることが矛盾してるんとちゃいますか、と死亡遊戯の金本くんばりの関西弁で言われてしまいそうだが、はい、その通りです、と頷くほかもない。じっさい『BECK』ほど嘘くさい話もないというか、あたかもマンガのように次々と問題が降りかかり、どうにか乗り越えたと思ったら、もっと大きな問題にぶち当たり、それら問題-解決は回を追うごとにどんどん雪だるま式に大きく膨れあがり、とうとうコユキはスターにまでのぼりつめる。そこで、ああ嘘くさい! 言い切ることができるのなら今すぐにでも自殺して楽になれるのだが、そうはならないのは『BECK』というマンガがめぐる季節の内部にあるからではないのか、という仮説が立つ。とりわけこのマンガは夏という季節から始まり夏という季節で終わる、すなわちこのマンガは夏という季節の内部にある。だいたい音楽マンガであるくせに、ライブハウスとかスタジオのコマなんかよりも釣り堀とかプールとかコインランドリーとか夏の一部を切り取るようなコマが多すぎはしないか。そして何よりも、あの夏の、膨張して怪物のように膨らんだ白い雲。それが問題-解決的なものの契機のたびに大きなコマで挿入される。だいたい雲というのは気体であるくせに、なんであの夏の雲というやつはくっきりとした輪郭をもっているように見えるのか、それこそ、ずいぶんと嘘くさい話ではないか。 私たちは誰もが皆めぐる季節の内部にいるが、その内部にいればこそ真偽の答えは常にその外部にしかない。とりわけ夏休みという季節がそうで、夏休みのあいだはすべてのことが何がなんだかわからないのが常である。そして夏が過ぎてから、そこに夏があったということを、さながら夢でも見ていたように悟る。季節はめぐり、夢は募る。あの夏の雲を見上げるたびに、私たちはまるで嘘のような夢に魅入られたひとだと気づく。
平成を代表するラブコメ漫画。ニヤニヤ無しでは読めない展開で読者を悶絶させたかと思えば、キャラの悲しさや苦しさがダイレクトに読み手に伝わるような心に迫ってくるシリアスな展開は、見事と言うしかない。作中で少しずつ育っていく、幼馴染の恋は必見……!
絶対に読むべき漫画
とある登場人物に似てると言われて読んでみましたが面白いですね!!
※ネタバレを含むクチコミです。