庄司陽子先生の新作。 事故で意識不明の渋滞になった主人公が、幽体になって他の幽霊の事情を聞き、魂を成仏させる話。 一話で一通りのオチはつくため、星新一的なライトさがあり気軽に読める。 命の尊さについて考えさせられ、読後感も良い。 ただ内容的にはよくある幽霊物といった感じなので、もう少しひねりが欲しいところ。
杜野亜希先生の新連載。 熱血で突っ走って空回りしがちな新人警察官が、病院で起きる事件を解決していくミステリー。 屍活師と同じ病院を舞台にしていながらも、ヒロインのキャラは真逆。 第一話ではいかにもミスリードを狙うために配置されたモブキャラ的動きをしていて、事件解決時のカタルシスは今ひとつだった。 今後の成長に期待。
※ネタバレを含むクチコミです。
浅野いにおさんってファンが多いのは知ってたけどなんとなく読んだことなくて、「うみべの女の子」ってなんか可愛いほのぼのした漫画かなぁと思ったら大間違いだった…。鬱…。 青春の痛いとこばっかり見せられてる感じで途中からつらかった。 男の子こわいし。 でもファンがいるのもわかる。作者が描きたいもの描いてる感。
「通常攻撃」みたいな単なる親同伴異世界モノかと思いきや、ハードな展開や意外すぎる主人公の素性など、なかなかに読み応えのある作品です。 掲載誌が掲載誌なのでD.P氏の「Trash.」や山口ミコト氏の「DEAD Tube ~デッドチューブ~」のような暴力的な表現は無いですが、高い画力と気の抜けないストーリーは健在です。同じ作者コンビによる「ガン×クローバー GUN×CLOVER」が好きな人には刺さりやすいと思います。 よくある異世界モノと違って主人公の生来の能力がかなり特殊なので、今後どう展開していくのか予測がつかず非常に楽しみです。
こんな店があったら絶対に通いたい! 40歳の主人公が「若い子」と言われる店で、高齢のホステスたちが毎夜愛のこもった接客をしてくれる。 酸いも甘いも知り尽くした女たちの、明るくて大きく包み込む優しさに、主人公も抱いている不安(40歳独身恋人なし、きつい仕事、貯金なし、田舎の親の心配…)を蹴散らして、これからの生き方を自分で変えてゆく。 読むと年を取ることはちっともマイナスなことではなく、むしろ逆で、プラスでしかないんだと思えます。 アララがホステスたちに影響され新たな生き方を見つけていきながら、同じように将来に希望を見いだせず腐っていた友人をも巻き込んで前を向いて強くなってゆくさまが痛快です。気持ちの変化による見た目の若返りかたも面白い。 後半は店を立ち上げた女性ジルバやくじらママがどのように生きて来たのかを振り返るのがメインです。 この店で働く以上、ジルバという人間のことを知る必要があるのでしょうが、壮絶な生き様を追体験するような感覚があるので読む手が少々重くなります。 40を越えたら自分もこんな店をつくりたいな〜…。
巨大化した海洋生物が襲ってくる街に暮らす男子高校生、夏蔵。 ある日、サメのイラストが描かれたパンツを履く少女、一花が転校してくる。 彼女はサメパペットを手に巨大海洋生物と戦う、サメガール! 「自分に近づくな」と、人と距離をとろうとする一花だが、普段はコケたり物にぶつかったりと少々ドジな様子。そんな一花の強気な態度とは裏腹に、毎日の命がけの戦いに恐怖で震えて泣いている姿を見てしまった夏蔵。 彼女の勇気に触発された夏蔵は、彼女を助けるために、強くなる決心をするのだった。 巨大なマグロが街を破壊しながら襲ってくる状況は、どう考えても学校なんて行ってる場合じゃないのだけど、一花のサメパンチをくらったマグロは、大トロや中トロなど美味しそうなお刺身になって散るという、夢みたいな世界。羨ましい。 もしかしたらサメガール以外にもたくさんヒーロー&ヒロインが出てくるかも…!と期待しております。
自分がまだ小学生の頃、母ちゃんが兄貴に買っていた旺文社の「高校合格」という雑誌に、恐ろしくひねくれたエッセイが掲載されていました。自らカットも描いていたのですが、そのページを書いていた男性は後にサンデー増刊で読み切り漫画を描いたりしたりもしていて、その名前はよく覚えていました。 それから10年後くらいにSPA!のコミック紹介のページで、自分の知らない「がらくたストリート」という作品が取り上げられていました(ライターがどなたかは失念してしまいました)。 かつて山田Xというペンネームで、という一文を読んで思わず目を疑いました。その後この作品を読んで、全て納得しました。 自分も基本おたくですが、中途半端であるという自覚は嫌になるくらいありますし、求道というのはまあ終わらんもんだとも思います。 この作品に関して、面白いけど説明出来ない、という評価をよくみます(まあ自分もよくそう言ってますが)。ギャグに関して「デペイズマン」という概念をエッセイで取り上げていたのは故・中島らもさんなんですが、「構図のズレ」によって産まれる笑いというのは、対象の間にどれくらいの距離があるのか理解出来るだけの知識が問われると思います。そしてこの作品には作者の培ってきたオタクとしての知識がふんだんに込められていますが、それが理解出来るかは突き詰めてしまうと読者次第ということになってしまいます。 おたくとオタクは恐らく違っていて、前者がクリエイターになって後者に受けるかどうかというある種の実験だったのかもしれないと、ふとこの文章を書いていて思ったりもしました。
あらすじにもあるように、"恋愛心理学"という視点から様々な登場人物の恋愛を描いているので、 "恋愛"をテーマにした少女漫画の中でも一味、いや十味ほど違います!笑 タイトルにも書きましたが、なにか新しい少女漫画の衝撃が欲しい方、少女漫画がマンネリ化してきた方は、今作だけでなく吉野朔実先生の作品をとにかく読んで欲しいです。
成田芋虫さんの作品は前作「It’s MY LIFE」から拝読してますが、まず表紙の絵の鮮やかさに目を引かれ、そして本編のマンガが表紙や扉絵のカラーイラストとの相違を全く感じさせない絵柄で描かれていることに驚かされます。 今作「KILLING ME / KILLING YOU」は1話から割とハードな設定が提示されますが、シナリオ自体はコメディ調になっており、重くなりすぎず読み進めやすいテイストに仕上がっています。それでいて盛り上がる所、物語を引き締める所では絵の力で読者を引き戻してくれます。 「IT'S MY LIFE」が好きだった方はもちろん、絵柄もテーマ性も全然違いますが、例えば「少女終末旅行」や「狼と香辛料」のような、相棒と旅をしながら様々な人、ものに出会う作品が好きな方には気に入って頂けるような気がします。 ちなみに、「IT'S MY LIFE」とは世界観を共有してる他、スターシステムとはちょっと違う形でキャラの共有をしており、興味がある方は前作にも手を出してみることをオススメします。 (一応違う出版社の作品なんですが、作品のリンクどころか1巻発売時にはそれぞれの公式でお互いの作品の試し読みが配信されるという大盤振る舞いっぷり。今後ももしかしたら同様のコラボがあるかもしれませんね) 1巻まで読了
マンバで江口寿史の作品一覧見たら、『パイレーツ』と『ひばりくん』と『キャラ者』と、この『お蔵出し』しか登録されていなくて驚いた。 ほとんどクチコミも書かれていない。 つい最近も、雑誌のillustration (イラストレーション)2019年3月号【特集:江口寿史】がよく売れて増刷されたとか聞いていたので、人気は衰えないなあ…と感心していたのだが、やはり漫画家としては、忘れられた存在になっているのだろうか…。 江口寿史って、むちゃくちゃ「センスの良い」漫画家です。 「センス」という曖昧な言葉が、なにを意味しているのかは、実は結構難しい問題なんですが、やっぱり江口寿史は、「センスが良い」としか言いようがない。 私見ですが、「センス」には二種類あると思ってます。 例えば、ジャンプで同時期に活躍した鳥山明みたいな、もう「生まれつき」としか言いようがないような才能を持った天才タイプのセンスの良さ。 もう一方は、自らの趣味性や嗜好を大切に捉まえて、その大きくはないかもしれないけれど堅固な才能を、多様な方法で一所懸命に磨いて磨いて、「センス」として花開かせた努力型のタイプ。江口寿史は後者だと思うのです。 漫画家としてもイラストレーターとしても、江口寿史は本当に磨き上げたセンスを持つ、優れた表現者です。 絵については、多くのかたが今も魅了されていて知られていると思うのですが、ホント、ギャグ漫画のセンスが良いんですよ。 テーマも演出もすごく考えられていて、読んでいてとても快適で、ちゃんと笑えて、読後こちらもセンスが良くなったように思える、風通しの良さがある。 もちろん、いろいろ「悪名高い」人ですから、未完の作品も多いですし漫画を描かなくなって長いので、作品世界の風物に少しアウト・オブ・デイトなところもありますが(ジャンプ系は特に)、彼のイラストは好きだけど漫画を読んだことがないというかたがもしいたら、とりあえず、この『お蔵出し』とかショー3部作(『寿五郎ショウ』『爆発ディナーショー』『なんとかなるでショ!』)あたりの短篇集で、そのセンスの良さに触れていただきたいです。
中高一貫の男子校に1人紛れ込んだ女子・八坂。なぜそのような事態になっているかは(今のところ)不明。そしてそんなことはこの作品においてはどうでもよい。 男子校、寮生活、何も起きないはずがなく…と書くとBLっぽい導入になってしまうが、シンプルな中学男子のエロ妄想に八坂(+不幸にも八坂が女子だと知ってしまった同級生・白石)が巻き込まれていくという下ネタコメディ。 周囲の男子たちはもちろんなのだが、面白いのは振り回されるべきキャラなはずの八坂も適度にアホの子で適度にエロネタに食いついてくるという所。位置原光Zさんの作品に近い感じではあるものの、男子校の中に紅一点の女子という特殊性、男子の分かりやすい突き抜けたアホさ下加減に割とノッてくる八坂のキャラクター、会話劇の中に絵としてのネタも所々混ぜてくる感じ、もちろん普通にコメディとして読んでも面白いんだけど、もしかしたら一部の人の性癖にはガン刺さりしたりするんじゃないかなと思ってる。 1巻まで読了
目つきが悪いからという理由で「死神」というあだ名で学校でからかわれている西村さん。その背景を知らない転校生の高田くんは「死神」というあだ名を純粋に「カッコいい」と思い、西村さんと仲良くなりたいとグイグイ迫ってくる、というお話。 舞台が小学校というのもあり、登場人物たちはみな素直な分かりやすい振る舞いをしている。それゆえに、小学生の素直さ故の無邪気な悪意に対して、それを120%の純粋さで高田くんが打ち破っていく様にこちらも素直に感動する。作中でも随所に示されてる高田くんの「アホの子」っぷりや、2巻での帰省のエピソードなど、高田くんが本当に裏表なく振る舞っていることがわかるからこそ、からかいによって閉ざしがちだった西村さんの心が氷解していく様子に心を打たれる。 表紙やタイトルに騙されて買うとうっかり感動させられる、ある意味ではマンガらしい体験の出来る作品。 2巻まで読了
「囀る鳥は羽ばたかない」等、BL方面では知らない人はいないと言っても過言ではないヨネダコウさんの、おそらく一般紙(講談社イブニング)初連載作品。 主人公は保険調査員という、保険金の支払いが発生する事案に対して保険会社から依頼を受けて詳細を調査するという仕事をしている夜明至(よあけいたる)という人物。キャラ自体の魅力もさることながら、保険調査員という特殊な立ち位置ゆえに、警察ほど正義感を振り翳す存在でもなく、かといって探偵ほど自由に動いたり被害者に過度に寄り添ったりしない、あくまで事案の事件性や過失度を中立な立場で判断するというのが、謎解きものとしてこの作品を見たときには新鮮に映る。 そして、夜明さんおよび夜明さんが預かることになる少年・高比良玄(たかひらくろ)の持つ過去や能力の描き方が巧妙で、特に玄が持つある"能力"については、物語の起点としても絵の表現としてももっと前面に出していいはずなのに、あえて作品の重心から少し外れた位置に配置してより人間関係の描写に焦点が当たることを意図してるようにも感じる。夜明さんと玄、2人のバディもの、および周囲の人々も含めた群像劇としても魅力の高い作品。 「囀る鳥は羽ばたかない」等のBL作品でもそうだったけど、恋愛要素を中心に置かずとも人間関係をこれだけ魅力的に描けるというのは流石の一言に尽きる。 1巻まで読了。
この作品が「ガンダム」というコンテンツに興味のない方は恐らく手に取る機会は全くない漫画だということは、嫌になるくらい理解しています。「ガンダム好き」で「漫画好き」という市場はニッチでしょうし、たとえガンダム好きでも若い年代に訴えかけるような派手さには欠けているとも思います。 しかし、この作品の存在は「ガンダム」という作品の成熟を示しており、読み終えた時に感じる充実感は、ちょっと他では味わえないなあと思っています。 カイ・シデンという名前は、ガンダムの世界でも異彩を放つ存在です。1年戦争を生き延び、軍に残らずジャーナリストという生き方を選んだのはオールドファンにとっては語る必要のないことですが、どのように生きたのか語られることはあまりありませんでした(基本、ガンダムというアニメが戦場を描いているからですが)。 本作では、ジャーナリストとして中年となったカイ・シデンが、1年戦争の展示のオブザーバーとして自身の体験を語るというスタイルになっています。 そこで語られることは、勿論「原作」に準拠している部分もありますし、知らないと厳しい部分も多々あります。ただ、勿論それだけではなく、行間を埋め、語ることぶき先生の語り口は本当に素晴らしく、漫画の表現としての巧みさを感じます。 正直、ガンダムを知らない人には勧め辛いタイトルではあります。ただ、宇宙世紀のガンダムをある程度知っている方には、是非とも読んで貰いたい作品です。 前述の通り、決して派手な作品ではありません。しかし、原作を持ちつつ、その世界を活かし、新たな魅力を作り出すというのは、メディアミックスにおける成功例であり、漫画という異なるジャンルでこれほど優れた作品に出会えたことの幸福は、まだ出会っていない人に広く伝えたいと思っています。
吉田戦車『伝染るんです。』は、4コマというジャンルを超えて、ギャグ漫画の歴史における激震のサード・インパクトだった。 それは、劇画における大友克洋の存在に匹敵する衝撃だっただろう。 しかし、とりあえず4コマというジャンルに絞れば、吉田戦車に先行する才能として、今は忘れられがちなふたつのギャグ漫画家の名前を思わずにはいられない。 (「西の巨人」いしいひさいちは、ちょっと別格とさせてください) いがらしみきお(『ネ暗トピア』等)と、なんきんである。 彼らふたりがいなければ、吉田戦車に代表される「不条理4コマ・ムーブメント」は起こり得なかった、と個人的に思っているのです。 いがらしみきおは、『ぼのぼの』で大きな商業的成功を収め、『I (アイ)』のようなシリアス長編でも評価されていますが、もともとは「とんでもなく破壊的な4コマギャグ漫画家」だったのです。 そして、なんきん。 素晴らしく先鋭的、まさに「シュール」でキュートな4コマギャグを発表し、『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』や『ポンキッキーズ』に絵柄を提供するなど、一部に熱狂的なファンを得た稀有な才能なのですが、なぜか漫画シーンからは早々に姿を消してしまいました。(WAHAHA本舗とか、ご本人はずっと活躍中ですが) 自分は『ネ暗トピア』と『変態性低気圧』が大好きだったので、吉田戦車が登場してきた時に、「ああ、ついに“この新たな流れ”の決定版が現れたぞ!」と、すごく嬉しかったし、納得感が強かったんですよね。 今は、ギャグ漫画不遇の時代だと言われます。 それについて細かく考察していくことは、このクチコミの趣旨と異なると思うので控えますが、「いがらしみきお」と「なんきん」が4コマギャグを描かなくなったということが、その手がかりになるのではないか、と思っていたりしています。 まあ、そんな面倒くさいことは置いておいたとしても、なんきんの漫画は、超ステキですから、現在の読者にもぜひ読んでいただきたい! 手に入れるのは大変だと思うけど!
吉祥寺に住んでる子と吉祥寺を歩きながら「吉祥寺だけが住みたい街ですか?」(漫画タイトル)なんて談笑しましたが、吉祥寺漫画こういうのもあったんですね〜 柔らかでかわいい絵柄で描く吉祥寺。 こういう人、モデルになった人吉祥寺に本当にいるんだろなと思いながら読んだり。 ラブホに住んでるとか俗っぽい話題、ロッテチョコレートの歌とかが作中に出てくるからすごく身近に感じるんでしょうか。 どの登場人物もいい感じです。
伊橋は新しい職場で働き始めてこれからかなというところで終わった。 別の新シリーズが始まったからこれは全2巻なのかもよくわからないな
武富先生が描く殺意を持った人間の表情が怖すぎる。覚悟してページをめくっても予想を超えてきます。流石だなぁと思いました。 原作は映画化もしたベストセラー小説だそうです。ストーリーも最後まで飽きない展開で、サスペンス好きとして満足でした。
衿沢先生の作品の持つ「可愛らしさ」は、他に類を見ない唯一無二の魅力なんですが、この作品は本当にその可愛らしさに溢れています。 この後に発表された「新月を左に旋回」や「うちのクラスの女子がヤバい」でも感じたことですが、のびのびとした想像力の自由さは、ふわりと空に舞うような心地好さを読者にもたらしてくれます。 ウイちゃんに見える不思議なもの達。お節介だったり迷惑だったり、時にウイちゃんを助けてくれたりもするんですが、衿沢先生の柔らかな想像力は、たまらなくいとおしい世界を見せてくれます。 ウイちゃんも友達も、皆可愛い。同じ言葉を繰り返すのは些か知性に欠ける気もしますが、読後感はとてもハッピーになること請け負いです。
両親を早くに交通事故で亡くし、兄夫婦の元で暮らしていた女子高生の志乃。しかし、半年前に兄も病気で失ってしまい、始まったのは兄の嫁"希さんとの共同生活。 1話で志乃のモノローグとして語られる「今は 兄の嫁と 暮らしています ただ それだけの話しです」という言葉の通り、彼女たちの"日常"が淡々と描かれる作品です。2人の周囲の人々も過度な心配を見せずに普通の"日常"として彼女たちに接しており、発生する事件も高校生や社会人であれば充分起こり得るもので、基本的には明るい作風で展開していきます。このあたりは元々コメディ寄りの作品を中心に発表されているくずしろさんならではという感じがします。 しかしながら、物語の中でときおり彼女たちが感じる「後ろめたさ」や「心のトゲ」のようなものが見え隠れします。志乃のほうは自分が居ることで希さんの将来を縛ってしまっているという罪悪感のような感情、希さんは亡き夫の影や理想の生活を志乃の向こう側に見てしまっていることなど、お互いがお互いの事を想っているからこそのすれ違い、それが"日常"の中に見え隠れするという繊細な作りの作品です。 「百合姫」等で百合作品を多数発表されているくずしろさんの作品ということで、この作品を百合作品として見る感想も見かけますが、私としてはこの作品は百合ではなくむしろ家族愛に近い、でもそれともどこか違う、もしかしたらまだ日本語には存在しない愛の形の物語なのではないかと思っています。 近作でいえば「違国日記」や「春とみどり」、百合作品との対比という意味で「たとえとどかぬ糸だとしても」などが好きな方には是非読んで頂きたい作品です。 5巻まで読了
ジャケ買い。絵には概ね満足。 内容は良くも悪くもいかにも課金アプリ漫画っぽさを煮詰めた感じ。展開も構図も台詞回しもじつに大味で、万人受けしそうな等身の高いキャラデザ、アリバイっぽく申し訳程度のパンチラ、などなど(お色気的な場面も、服の脱げ方が雑すぎてシリアスギャグみたいになってしまってました) この雑なごった煮感がこの手の作品の醍醐味ではあるんですよね。あまり褒めてるように見えないかもしれませんが、なんとも言い表せない愛着があって。絵がうまくていろんな意味でサービス精神旺盛なところが好きなんだと思います。
主人公は30代独身OL・木根真知子。会社では課長という役職もあり、キャリアウーマンとして完璧に擬態しているが、趣味は映画鑑賞と映画感想ブログの更新という、ゴリゴリの映画オタク。という木根さんの日常を描くコメディ作品。 「怒りのロードショー」「シネマこんぷれっくす!」「私と彼女のお泊まり映画」「邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん」「映画大好きポンポさん」等々、近年名作が多数登場している"映画マンガ"の中でも草分け的な存在のマンガであり(単行本基準。1話の発表自体は「怒りのロードショー」のほうが先みたい)、かつテーマ的には「トクサツガガガ」に近いものがあり、映画を知らなくても何かしらの趣味を持つ人であれば誰でも楽しめる作品。 この作品の1番の魅力は主人公・木根さんの"オタクとしての"性格の悪さ(笑)。ブログの内容に反する意見を受けてボロクソに罵ったり、ナチュラルに萌えアニメを見下してたり、木根さんはかなり面倒くさいタイプのオタク。だからこそ職場では擬態しているわけだが、(ここは「トクサツガガガ」とは明確に差別化できる点だけど)映画の場合はオタクじゃなくても嗜んでいる人間が周囲に普通に存在していて、だから職場でもナチュラルに映画になったりして、でも"映画を全く見ない"という体で擬態しているため、例えば「スター・ウォーズどこから見るのがベスト?」「ジブリ作品で何が1番好きか?」という話題に対して、"擬態した状態での正解の回答"と"映画オタクとしての自身の回答"とでせめぎ合ったりする。この絶妙なテーマ設定が、この作品を純然たるコメディ作品へと仕上げている。 ちなみに、先日発表された第23回手塚治虫文化賞で、マンガ大賞選考委員の秋本治さん、桜庭一樹さんが動画コメントで自身のイチオシ作品として(大賞ノミネート作品でもないのに)この「木根さんの1人でキネマ」を挙げており、主に私の中で話題になりました。このコメントがうまい具合にバズってこの作品が広く知られるきっかけにならないかなぁと密かに期待してたりします。 6巻まで読了
「男キャラ」の呪いから逃げられないヨシキの、救世主になりそうな女装男子の佳人と、佳人同様「若さと美しさの期限」に異様に執着する未果子による、グチャグチャににごちゃごちゃな複雑すぎる三角関係! にもかかわらず、読んでて全然イライラしない不思議。 若さゆえの、実態のない不安や焦燥感がつきまとう重くて暗い空気と、欲望のままにやりたい事やってる開放的で明るい空気のバランスがものすごく良い。
文学部部長にして唯一の部員である児玉さんと、そんな文学部に入部しようと試みる笛田くん、2人の文学部の活動記。文字数の多い会話劇+モノローグが中心で絵の表現は最小限に抑えられており、限りなく文学に近い作品なんだけど、読めば読むほどこれはマンガなんだという印象を強くする。 これは多分最初の2ページで心を掴まれるかどうかっていう作品のように思う。私はがっつり掴まれたし、そこからはほぼ会話劇のみで繰り広げられる現実とも非現実ともつかないこの物語を読むのが楽しくて仕方なくなる。 冒頭から児玉さんの発言の文学的な雰囲気に圧倒されるけど、よく見ると笛田君のモノローグもかなり独特で、それ自体も文学性を感じる独特な印象を感じる。話が進むにつれて徐々に児玉さんに認められているような様子だけど、最初から笛田君は文学部に入部するに足る人物だったように思う。 一応巻数のナンバリングが付されてるけど、個人的にはこれで完結でもいいと思えるような美しい幕引き。というかこれで終わらせてるほうが"文学性"が高い気がする。 ともあれ続きがあるのならばこれまでとはかなり違った児玉さんの表情が見られると思うので、それはそれで楽しみ。 1巻まで読了
中高大一貫の名門女子校、清蘭学園を舞台に様々な少女たちの物語が描かれるオムニバスストーリー。 中心となるのは成績学年1位、品行方正の優等生、白峰あやかと、高校から編入してきて白峰さんから成績1位の座を掻っ攫った、奔放なのに一匹狼な振る舞いの黒沢ゆりねの物語。2人は対立しながらも徐々に関係性を深めてゆくという王道の物語が展開されます。 しかしながらこの作品の特徴は、メインの2人の物語と平行して、2人の周りの様々な登場人物の恋愛模様が描かれる点。2巻以降の各巻で異なるキャラにフォーカスが当たる構成ですが、登場人物ごとに関係性の深さ、濃淡が様々で、仲の良い友人関係のような組み合わせからお互いががっつり恋愛対象として見ている2人まで、まさに「少女たちの数だけ、物語は存在する」というキャッチコピーに相応しい、たくさんの表情を見せてくれる作品です。 そして最終巻では白峰さんが黒沢さんとの関係性に対して結論を出します。その過程でこれまでに登場したキャラが再登場し、黒沢さんとの関係性に悩む白峰さんに助言を与えていきます。再登場したキャラにしっかり焦点をあてつつ、最後に白峰さんと黒峰さんの物語に収束していくという見事な構成で、まさに万感胸に迫る最終巻。 各巻単体で読んでも、作品全体を通して読んでも素晴らしい、百合マンガの金字塔といえる作品だと思います。 全10巻読了
幼少期にトラウマを持つ女の子、車椅子の女の子、同性を好きになった女の子、家庭環境に問題を抱える女の子…そんな"普通じゃない"少女たちが性愛と向き合う様子を描くことで、性愛を持つ事自体は"普通"だけどそれを叶える事は"普通"じゃない、そんなメッセージを感じた。特に第1話の「終わらない夏」は全体の爽やかな色使いに反して冒頭から結末に至るまで何度も心にズシンとくる作品。これだけでも読んでみてほしい。 各話ごとの締め方が様々で起承転結ではなく描き出した物語自体からメッセージを伝えようとしてる印象があり、そういう意味ではアートに近い立ち位置の作品かもしれない。なので読む人によって受け取るものがきっと大きく変わってくる作品。どうか"普通の"十代の少年少女に多く届いてほしいと思う作品。
「メガネ画報」「眼鏡橋華子の見立て」をはじめとし、趣味職の強いマニアックな漫画を描く松本救助先生がどんなエロを……と気になって手をだしましたが、想像以上でしたw 眼鏡系や「いっぽん」などと違いこちらは完全にエロ漫画です というか原作者が「はたらく細胞BLACK」にも関わっていることに驚き。たしかに白血球さんセクシーだけども…!
アカメシリーズは大好きなのですが、この表紙の絵にイマイチときめかなくて今まで手を出していませんでした。いざ読んでみるとさすがはアカメといった練られたストーリー。絵も粗削りではあるものの、キャラの意志の強さを感じさる不思議な魅力は実際に中身を読んでみないと(表紙だけでは)わかりませんね。線の綺麗さ、背景の書き込み、少女漫画ばりのトーン使いなどどれをとっても、ジャケ買いで食わず嫌いした己を恥じ入る出来。
知らない漫画を読もうと思って手に取って、出会えたことに感謝している作品は沢山あるんですが、この作品と、この作者に出会えたことは本当に幸運だったと思っています。 池辺先生の描く女性の美しさに惹かれるのは、その魂の凛とした気高さに魅了されるからです。 同時期に描かれていた「繕い裁つ人」と共通の登場人物がいたり(そもそも主人公同士が親友)して、とりとめもない会話の中でも叡智を感じます。 池辺先生の作品の輝きというのは、貴金属の放つ輝きではなくて、知性が宿す、ふくよかな美しさによるものなのであり、初期の作品でありながら、老成した詩人のような巧みさがあります。 自分が一番好きなのは、翔君が訪れるところです(彼のような若者を魅力的に描けるのも池辺先生の漫画の力だと感じています)。 モノローグを排して、言葉と表情で描かれる作品は、美しさと力強さと知性に溢れています。未読の方は「繕い裁つ人」も併せて是非。
作者がインドには漫画がないと知って、インドで漫画を売って大儲けしようと考え漫画を翻訳して売る話なんだが、全編通してトラブルだらけなかで意地でも成功させるぞという強い気迫を感じることができて読んでるとむちゃくちゃ勇気が出る。 インドで漫画を売るという時点ですごい発想なのに売る漫画が平田弘史の「血だるま剣法」というところに本人の本気度を感じます。
逃げ恥ではその部分は大っぴらに描かれていなかったので、初めはギャップに戸惑いました。しかし、あとがきで「一度はこのテーマと真摯に向き合いたかった」とあるように、欲望そのままでありながら下品ではなく、女性向けだからといって甘過ぎない、驚くほど絶妙なバランスで本当の官能が描かれていました。とはいえ、ふっと気を抜いて笑える場面もたくさんあります。いつもの海野先生らしいなと思ったのは、ドレスを着たお姫様がいる時代なのにWi-Fiが登場するところです。楽しい作品なのでぜひ。
後に長篇の代表作を描く漫画家の、初期作品集が好きだ。 それも、ただその作家さんが(キャリア初期に)描いた短篇を集めた本というのではなく、「自分はなぜ漫画を描くのだろう…」と自問自答しながら足掻いている、そんな苦悶がページから匂ってくるような、不器用で地味な作品集が好きだ。 (「私はこういう世界が好きなんです」といろいろ表明している感じの初期短篇集が多いのですが、そうじゃない無骨なヤツ。もちろん「好きなんです」系の作品集にも優れた本はたくさんあります) 『骨の音』は、とても誠実で、地味で、絶対売れなそうだけど、でも、読んだ時に、こちらの心をギシギシ揺すってくるようなザラついた力に溢れていて、とても心に残ります。 これがあるからこその、『寄生獣』なんですよ!(『風子』もあるけど) 新井英樹『「8月の光」「ひな」その他の短編』とか、豊田徹也『ゴーグル』とか、伊図透『辺境で』とか、五十嵐大介『はなしっぱなし』もそうかな、同じ感じで、好きですねえ。 作者が「これは売れないだろうなあ…でも、今はこれしか考えられないんだよなあ、仕方ないよなあ。クソぉ」と思いながら描いていそうな感じ。(実際どうかは知りませんよ) ものを作ると決めて、見返りはないかもしれないけれど、誠実に漫画に向き合っている。 ダイヤの「原石」というのは、『骨の音』のような本のことを言うのだと思います。
修復士?いや違う。国宝修理装潢師。 そんな仕事あったんだ!と初めて知りました。 直すけど自分の痕跡は残らないのが好ましい。 作業としては創造的なのに、実際は何も残さない、黒子。修理して遺し伝える職。 地味だけどかっこいい職業ですね…そりゃ医者並みにブドウ糖を欲しますわ。 知らない世界を垣間見れるのが漫画のいいところ!美術館行ったら美術品のそのウラ側で走り回ってる人がいるんですねぇ… 個人的に先生がイケメンで良かったです。
読んでいて一番驚くのは、まるで主人公たちを自分も昔から知っているような、自分も大洋アパートの住人かのような感覚に陥ることです、 これはさすがくらもち先生、、本当に場の雰囲気を描くのが上手いです。 そしてさらに驚くのは、主人公チャコ(田代寿子)と達ちゃん(姫野達)の恋愛話かと思いきや、実は大洋アパートの住人たちの物語だったということです、 真の主人公、それはクンちゃん、あなただった…! 個人的には、どの作品よりもくらもち先生のストーリーテラーの才能が垣間見える作品だと思います。 また、舞台も"マンション"でなく"アパート"ですから、こういう作品はまずもう現代では中々読めないと思います。 住人同士の会話も本当にリアルで、どこか懐かしい時代を感じることができると思います。
星野之宣の短篇連作といえば、『2001夜物語』がまず思い浮かびます。ハードSFマインドをリーダブルで感動的な物語に詰め込んでいて、本当に素晴らしい大名作です。(SFっぽいセンスで描かれた漫画は多いのですが、星野之宣は折り目正しい「ハードSF」なんですよね、それがすごい) でも、個人的に思い入れが強いのは、ヤングジャンプに連載されていた『妖女伝説』! SFはもちろん史劇や伝奇など手を変え品を変えた多様なテーマを、実に平明で丁寧なドラマに織り込んで、しかもそれを、あの無類に「端正」な絵柄で見せてくれる。 良質、ハイ・クオリティー、佳品…そういう表現が本当にぴったり。 短篇漫画を読む悦びを、これだけビンビンに感じさせてくれる作品集はないです。 自分は十代の中頃に、この作品を何度も読み返すことで、「物語感覚」のようなものを学ばせていただきました。 その「感覚」は一生の宝物だと思っています。
宝塚で舞台化されるので読みました。 道明寺司が想像していたよりやばい人で驚きました。怖い。 私は西門が一番可愛くて好きです。
超が3つつくほど真面目人間を作り上げると神様みたいになるのでは? 自分の叔母に対して「嫌じゃなければ将来介護したいくらいなんだけど」とか言ってる16歳すげえな!? 誠実すぎると一周回ってタラシになるのかもしれません。 これはもうほんと主人公の町田くんありきの漫画。 彼のキャラクターが一番立ってます。こんな人近くにいたらいいなぁと思える漫画。
2巻まで読了! このタイプの女性主人公ってなかなか無い気がするのでどうせ花とゆめで恋愛ものでしょと思って読んで無い人、読んでみてください。 「君の色気は胸焼けがする」と言われるほどの色気ムンムン&振られたガールx芝犬の元気系男子! 色気ムンムンなのに自分のポテンシャルに嫌気が指してるという羨ましい設定なのですが、持つものには持つものなりの悩みがきっとあるのでしょう。 あと絵とかなんかエロいです。どこかそこはかとなくエロい! 会話のセレクトも秀逸すぎて作者頭いいな!?と思います。
作者のツイッターで読めてしまった… 美大漫画あんまり好きじゃ無いけどこれは好き https://twitter.com/nagayama_koharu/status/1123732259377434624
社会と上司に小さいながらも抵抗するぺんぎん。じわじわきます。口は悪いけれど、頷けることばかり。言えないけれど言いたいことをばっさり代弁してくれてます。本屋さんにずらっと並べたい!理不尽な事があってもこの本を読んだらなんだかすっきりします。
庄司陽子先生の新作。 事故で意識不明の渋滞になった主人公が、幽体になって他の幽霊の事情を聞き、魂を成仏させる話。 一話で一通りのオチはつくため、星新一的なライトさがあり気軽に読める。 命の尊さについて考えさせられ、読後感も良い。 ただ内容的にはよくある幽霊物といった感じなので、もう少しひねりが欲しいところ。