マンガを読んでいて「おっ、得したな」と思うことって何だと思いますか?
もしそんなことを聞かれたら私は、「全然知らないジャンルのことを知れたとき」って答えると思います。
自分が体験してこなかった部活。
通ってこなかった界隈。
外からは想像できない、研究室などの様子。
小説や映画も同じですが、マンガに助けられて知識の新しい扉を開いたことは多々ありました。
そんなマンガの一つが『銀の匙 Silver Spoon』という作品です。
銀の匙とは
『銀の匙 Silver Spoon』は、2011年から『週刊少年サンデー』で連載されている作品です。
サラリーマン家庭の次男だった八軒勇吾が、ひょんなきっかけから北海道の農業高等学校に進学し、新しい世界でもがいていくストーリーになっています。
舞台が農業高校というだけあって、農業についての専門知識が日常的に飛び出します。
もちろん、予備知識がなくても楽しめるように手は尽くされていますよ。
が、それでもやはり、マンガの登場人物と同じ温度感を味わってみたくなる場面が出てきます。
巨大コンバインハーベスター
その最たるものが、コミックス4巻で巨大なコンバインハーベスターに出会う回です。
2学期の初めに、八軒たちは夜に寮を抜け出して、ハーベスター(小麦収穫機)を見に行くんです。
道中で脱落者を出しながらも艱難辛苦を乗り越えて、何とか機械の前に辿り着くんです。
そのとき一緒にいた、西川の反応がとてもいい。
興奮してコンバインハーベスターの性能を一気にまくしたてます。
畑作農家の子である西川は、おそらく実家でたくさんの機械を見て、運転もしているのでしょう。
作中で自在に農機具を乗りこなす場面があります。
同じ作者のエッセイマンガ『百姓貴族』によると、農家の子供は当たり前のように機械を運転するらしいです。
だからこそ、巨大コンバインハーベスターの性能にも興奮できると思うんです。
「これだけの性能があれば、この広さの畑がたった数分で収穫できるぞ。感動的だ!」ってね。
ここで、ですよ!
自分に知識がないばっかりに、西川の説明に対して「なんかすごそう」でいつも終わらせてしまうんです。
きっとあの場に居合わせても、八軒のように呆然とするだけでしょう。
もっと熱を共有してみたい。
そこで今回は、他の機械と比較しながら巨大コンバインハーベスターのすごさを感じようと思います。
コンバインハーベスターとは
そもそもコンバインハーベスターとは何なのでしょうか。
焦らず、初歩からいきましょう。
コンバインハーベスターとは、作物を収穫するために使う機械です。
普通型コンバインあるいは、汎用コンバインともいいます。
単にコンバインでも一応通じますが、日本でコンバインと言うと米の収穫機(自脱型コンバイン)のイメージが強いので、少し注意が必要です。
作中での目的は小麦の収穫ですから、誤解のないようにコンバインハーベスターという表記なのでしょう。
メーカーによって種類は様々です。
今回は大きく分けて、国産コンバインハーベスターと外国産のコンバインハーベスターという括りで話します。
銀の匙に出てきた巨大コンバインハーベスターは外国産です。
土地の広大な外国産のものは、機械のスケールもとんでもないことになります。
まずは比較のために、国産の普通型コンバインハーベスターにご登場願います。
比較項目は、西川の解説してくれたセリフから次の7項目をメインにします。
①総重量
②燃料タンク容量
③エンジン
④排気量
⑤最大出力
⑥グレインタンク容量
⑦ドラム幅
グレインタンクとは、一時的に収穫物を入れておくタンクのことです。
後でまとめて袋などに詰めることができるので、モミ袋の運搬などの作業を省くことができます。
ドラム幅は、脱穀部にあるこぎ胴の、こぎ歯先端径と幅のことを指しています。
国内の普通型コンバインハーベスター
今回は、普通型コンバインハーベスターとしてクボタコンバインというブランドを参照します。
WORLDシリーズのWRH1200という機種です。
当然ですが、手作業よりも圧倒的に作業効率がいいです。
ワイドクローラ(幅の広いキャタピラ)を使えば、なんと麦や大豆10a(1aは100m×100m、その10倍)が最速5~25分で収穫できます。
こちらが国産ハーベスター(クボタコンバイン)のスペック表です。
重量は、ワイドクローラタイプで5480kgです。
この時点でかなりの重量がありますね。
最大出力も120PS(PSは、Pferdestärkeの略。馬力の意味)を誇ります。
価格は、新品の希望小売価格で1500万から1650万円はします。
と、いうのが普通型コンバインハーベスターのスペックです。
大きく業務を効率化できる上に、農作業による疲労も軽減できます。
さて、では真打登場といきましょう。
以上を踏まえた上で、外国産のコンバインハーベスターも見ていきます。
外国産のコンバインハーベスター
ここでもう一度、西川のセリフを掲載してみましょう。
赤枠の記載を鑑みると、ほぼ一種類のコンバインハーベスターに絞れてきます。
ドイツのクラース社というメーカーから出ている、「クラース レキシオン」というシリーズです。
それも、連載時期と仕様から察するに、レキシオン670がモデルかと思われます。
クラースレキシオン670テラトラックや、クラースレキシオン670モンタナといったタイプがあります。
クラース社は、自走式ハーべスターの製造販売で世界シェアの半分を占める、業界では有名な企業ですよ。
マンガに出てきている性能は、レシキオンシリーズのいいとこ取りをしている感じです。
クラースレキシオン670テラトラックが誇る最大11,000ℓのグレインタンクと、クラースレキシオン670モンタナの特徴である、横17%、縦6%までの傾斜対応を兼ね備えています。
総重量の14800kgは、レキシオン670の重量(ホイール仕様、カッターバー・チョッパー付き)と同じです。
先端部分はアタッチメントとして取り外しが可能です。
マンガでは小麦用のアタッチメントがついていますが、大豆用やコーン用、ヒマワリ用など複数の作物に対応できます。
しかもアタッチメント部分は、人間の関節と同じように、ある程度の可動範囲を持っています。
少しくらいなら傾斜があっても、アタッチメントが横に傾いて問題なく作物を切ってくれるわけです。
なので、横17%、縦6%の傾斜まで平地と変わらない作業効率を確保できるんですね。
価格は、中古でも2000万から3000万円はします。
まあ、それだけの働きをしてくれるということですからね。
規模の大きい農作業ほど、価値を感じることでしょう。
表とグラフで比較
ここまで言葉で性能の違いを説明してきましたが、ちょっと分かりづらいですよね。
そこで、普通型コンバインハーベスターと外国産のコンバインハーベスターの違いを、表とグラフで視覚的に表してみます。
日常生活との違いが分かりやすいように、軽自動車も掲載しておきます。
軽自動車で販売台数1位のホンダ N-BOXシリーズから、ベンチシート使用、ターボ方式のものを参考にしています。
まずは、表で並べてみます。
おお。やはり軽自動車と比べると、ハーベスターの方が重いし馬力もありますね。
さらにその中でも外国産は、国産よりも3回りほど規模で凌駕している感じです。
グラフにするとどうでしょうか。
今、はっきりと腑に落ちました。
外国産ハーベスター圧倒的じゃないか!
軽自動車の何倍あるんだ。
そりゃ西川も興奮しますわ。
まとめ
以上です。
巨大コンバインハーベスターの大きさや迫力を視覚的に理解できるようにしてみました。
外国産のコンバインハーベスターは言わずもがな、国産のハーベスターの時点でかなり大規模でしたね。
実際、日本の土地の広さでは国産のコンバインハーベスターの性能でも持て余し気味な現状があります。
稲作での資料になってしまうのですが、『新品種・新技術の開発・保護・普及の方針 1経営体当たりの農業機械の平均利用面積』によりますと、日本のコンバインの平均利用面積は、2.0haです。
それに対して、コンバインのスペック的に15~17haは作業可能だと見積もられています。
西川の実家もさぞかし狭いスペースでコンバインを稼動させていたのでしょう。
どれくらいの畑面積なのか、最後に見てみたいと思います。
確か、GWに帰省するときに実家についてポロっと言ってましたよね。
ご…56ha!?
参考資料(URL最終確認はいずれも2018/8/24)
『銀の匙 Silver Spoon』1巻 荒川弘 2011 小学館
『銀の匙 Silver Spoon』4巻 荒川弘 2012 小学館
『銀の匙 Silver Spoon 公式ガイドブック ~大蝦夷農業高校青春マニュアル~』 荒川弘 2013 小学館
『百姓貴族』3巻 荒川弘 2014 新書館
『エム・エス・ケー農業機械株式会社 クラース レキシオン』
『ホンダ N-BOXシリーズ 主要諸元』
『クボタ電農スクエア』
『クボタコンバイン WORLDシリーズWRH1200 主要諸元』
『wikipedia コンバインハーベスター』
『wikipedia Claas Lexion』
『CLAAS社 LEXION670-620』
「マスカス ジャパン」
『新品種・新技術の開発・保護・普及の方針 1経営体当たりの農業機械の平均利用面積』農林水産省 2013年
『コンバイン導入の経済性』農林水産省
『汎用コンバインによる収穫』
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