麒麟・川島とかまいたち・山内が「面白いマンガ」に沼のようにハマって楽しむマンガバラエティ『川島・山内のマンガ沼』。今回は、前回放送の「川島・山内のおすすめマンガ」をお送りします(放送を見逃した方はTVerもご覧ください)。
地味に面白い、地味な高校生カップルの話
川島 今回のテーマは「川島・山内のおすすめマンガ」! マンガ沼といえばやっぱりこれですよ。
山内 いかにまだ世に知られてないマンガを紹介するか。それが使命だと思ってます。
川島 今回紹介するのは連載中の作品ばかりなので、今からでも全然追いつけます。僕のおすすめはこちらです。『白山と三田さん』。山内さんが絶対手に取らないだろう、真逆の表紙です。
- 2021年から「週刊少年サンデー」にて連載中
- 単行本は第4巻まで発売中
川島 表紙の2人が主役なんですけども。ぱっと見た印象どうですか?
山内 緩いほのぼの系のマンガ?
川島 舞台は岐阜県なんです。岐阜県に住む、地味なカップルの恋愛喜劇。
山内 二人はカップルなんですね。
川島 カップルに「される」んですね。男の子のほうは、上京することを夢見ている高校生・白山辰彦(しろやま・たつひこ)くん。趣味のラジオばっかり聞いてまして、上京するお金を稼ぐためにバイトばっかりしてます。そんな日々を送る中、田舎なので田んぼがあるんですけど、田んぼにおじいさんが落ちて溺れてたんですよ。そのおじいさんを彼は助けるんですけど、実はその方、その田舎では有名なお屋敷に住む、なかなかのお金持ちだったと。で、おじいさんの孫娘が表紙の女の子、同級生の三田民子(みた・たみこ)さんなんです。おじいさんを助けたときに、白山くんは三田さんと出会うんですけども。おじいさんが「こんな心優しい青年だからうちの孫娘と付き合ったらどうだ」みたいな感じで、流れで交際することになるんですよ。お互いが昔から知ってて、好き同士で付き合うということではなくて。
山内 ああ、成り行きで。
川島 付き合うことが決まってから、お互いを知っていく。そういうほのぼのしたマンガなんですけど、でも二人にしか分からない空気感というのがあって、地味でゆるいんですけども、ギャグはしっかり切れ味があっておもろいよという。で、とりあえずデートに行ってみるんですよ。ボウリング場に。そしたら、見た目に反して三田さんがボウリングめちゃくちゃうまくて、すごいカーブを投げるんです。しかも好きな映画を聞いたら「ハンニバル」っていう。見た目とのギャップがすごく面白い。以前、和山やま先生の『夢中さ、君に。』『女の園の星』『カラオケ行こ!』を番組で紹介しましたけど、それ好きな人はたぶんこのマンガも好きだと思います。
山内 めっちゃ読みやすそう。あと今、パラパラッと見てたら、「これどういうシーン?」っていうくらい、奇抜なカットがあるんですね。
川島 三田さんがスナイパーライフル構えてたりしてね。何かボケがあっても、「●●やないかい!」とツッコんだりはしない。基本的には全てのボケに対して「あらま」で終わらします。脳が処理できないようなことを三田さんがやったりするのに「あらま」。それがいい間になってる。
山内 パッと見た感じ、ご飯にもめっちゃ合いそう。ご飯食べてるときに血が出てくるマンガはちょっと読めないんですよ。これもうドンピシャかな。
川島 緑茶みたいなもんです。お酒じゃなくて緑茶。ぜひ癒やされていただきたい。
任侠×ギリシャ神話という新機軸
山内 僕のおすすめマンガはこちら、『イリオス』です。
- 2022年から「ヤングジャンプ」にて連載中
- 単行本は第2巻まで発売中
山内 これ実はケンコバさんから「ヤンジャンでおまえの好きそうなの始まってんな」って言われて知ったんです。
川島 コバさんセレクトなんだ。
山内 僕は基本、単行本が出るまで新しいマンガの情報は知らないんですけど、教えてもらって読んだら、めちゃくちゃドンピシャで。さすがコバさん。
川島 山内のセンスを認めてくれないですけどね。
山内 「おまえ変なマンガばっか読んでるよな」って。では内容を紹介していきます。主人公は九州の伊莉雄(いりおす)会系亀松組の若頭・亀山パリス。1巻の表紙の男ですね。パリスは日本最大の任侠組織、朱維屋(あかいや)会のパーティーに出席。そこで出会った超武闘派組長の妻・エレネを連れ去ってしまいます。
川島 連れ去ってしまう。
山内 主人公のパリスは、九州のヤクザの組の跡継ぎみたいな立場なんです。で、お父さんに「都会ででっかいパーティーがあるから、お前が代わりに出席してこい」ということで、参加するんです。そのパーティーに自分より格上の組の組長の妻・エレネという若い女性がいて、彼女を連れ去るんです。
川島 やばいじゃないですか。
山内 で、そもそも第1話のタイトルになっている「パリスの審判」というのが、ギリシャ神話に出てくるエピソードなんです。3人の美人の女神が急に目の前に現れて、「誰が1人を選びなさい」と。で、その選んだ美人の神様が何かをあなたにくれますよと。1人目の女神は国をくれる、2人目の女神は勝利をくれる、3人目を選んだら美しい女をあなたの妻にしてあげますみたいな。そういう夢を主人公が見るところから始まるんですけど。パリスはどれを選ぶんだっていうとこからマンガが始まっていくんですけど、パリスは全員を選ぶんです。「俺は全てを手にするんだ」っていう。ベビーフェイスなのにすごい野望を持っているんですね。
川島 野心がすごいね。
山内 でもエレナを連れ去ったことで朱維屋会が激怒するわけです。で、朱維屋会が日本最強の暴力団組織たるゆえんがここで明らかになるんですけど、朱維屋会にはアキレスという殺し屋みたいなのがいるんです。朱維屋会に逆らった人間を全部潰してきた、「半神」と呼ばれてる男。
川島 半分神だと。
山内 主人公のパリスもちょっと人間離れしてるキャラなんスけど、アキレスはそれを上回るくらいの無敵っぽいキャラなんです。その2人が1巻からバチーンとぶつかるという、新しいタイプの任侠マンガです。
川島 任侠なんやけど、名前を見てる感じだと神話が入ってきてるね。アキレスもいるし。アキレス腱の由来になった神ですよね。
川島 絵だけ見てたらなんか結構シリアス過ぎるんかと思ったら違うね。ギャグっぽいのもあるし。任侠マンガは今までおもろいのがいっぱいあったけど、これは神話という新しいスパイスが効いてますよね。
山内 暴力好きの人、血が好きな人、そしてギリシャ神話が好きな人も見れるマンガです。神話に詳しい人が読むと、「あ、あれをなぞらえてるのかな」とわかると思います。
二度と会えなくなるよりは、たとえ偽者でも一緒にいたい?
川島 次は私のおすすめマンガなんですが、これは山内さんも好きかも。ちょっと怖いし、血も出ます。『光が死んだ夏』。知らない?
山内 知らないです。
- KADOKAWAのWEBマンガ「ヤングエースUP」にて連載中
- 単行本第2巻まで発売中
川島 すごく不思議なタイトルなんですけど、主役は「よしき」という男の子なんです。よしきと光の2人は、ある集落で育った幼馴染で親友なんですよ。で、光のほうが山で1週間行方不明になっちゃうんです。何か事件に巻き込まれたんかな、と思ってたら1週間後、普通に帰って来る。
山内 良かった。
川島 と思いますよね? でもよしき君は光の親友だから分かるんです。「これ、光じゃないな」と。
山内 何それ、めちゃめちゃ面白そう!
川島 表面的にはいつもの感じなんですけど、どうも違う。それで1話目の冒頭で言うんですよ「おまえやっぱ光ちゃうやろ」。そしたら「え? 何でや」って。次のセリフが「完璧に模倣したはずなのに」。
山内 え、じゃ誰?
川島 それで「誰にも言わんといて」と言って抱き付いてくるんです。でも、よしき君は行方不明になって帰って来た光と、一緒にアイス食べたり遊んだりしてきて、「もうなんかおまえのこと大好きやねん」みたいなこと言ってくるんです。だからこれ、すごく深い話なんですよ。本当の光はもう死んでるなと分かるんです。たとえば山内さんにとって大切な人……妻でも濱家君でもいいけど、そういう人がこの世からいなくなったとしたら、たとえ偽者でもそばにいてほしいと思えるんじゃないかと。そいつは光じゃない。というか人でもない。だけど見た目も声も光なんです。だったらもう会えなくなるよりは、たとえ偽者でも、こいつと一緒にいるほうがいいって人間やっぱり思うんです。好きな相手であればあるほど。
山内 1話目で「おまえ光ちゃうやろ」って言うわけですよね。いきなりバレたら、その後の方向性はどうなっていくんですか?
川島 「じゃあ分かった」ということですよ。「もうおまえは光じゃないけど俺は偽者でもおまえにそばにいてほしい」ということで、そこから普通に友達になるわけです。自分だけは知ってるんですよ。「これはやばいやつなんや」と。でも他の人は気付いてない。でも外を歩いていると、猫がめちゃくちゃ光におびえたりする。あと、道ですれ違ったおばあちゃんが、光を見て「何で●●様がおるんじゃ!」みたいなことを言い出すんですよ。そのときは「何か変なこと言ってるの」みたいなことを言うんだけど、その数日後におばあちゃんが亡くなるんです。
山内 こわっ。
川島 そういう違和感がちょっとずつある。そうやってずっと奇妙な感じで進んでいくという。違和感や奇妙さの表現がめちゃくちゃうまいですね。夏、普通に歩いてるんだけど、ずっと擬音が「シャワシャワシャワ」。ずっとセミの音だけがでっかく聞こえてるんだけど。何か変なことも起こってるなという。
山内 実写もありそうですね、映画で。
川島 青春の要素も詰まってるし、大事な人を亡くしたときにどう思うかも描かれている、新しいホラーマンガです。
シリアルキラーVSシリアルキラー
山内 続いて僕のおすすめマンガはこちら『シリアルキラーランド』。ザ・山内(笑)。僕の好みのど真ん中かもしれません。
小池ノクト『シリアルキラーランド』(秋田書店)
- 2021年からWEBコミックサイト「マンガクロス』にて連載中
- 単行本は第2巻まで発売中
- シリアルキラーとは、自分の中にすでにある異常な心理的欲求のままにやむにやまれず猟奇殺人を続ける人間たちのこと。
- 物語の主人公、襟峰想(えりみね・そう)は、幼少の頃シリアルキラーに突然家に踏み込まれ母親を殺された経験を持つ。
- その事件から10年、生き残った被害者である想は、理解できない恐怖を理解するために過去の猟奇殺人を調べ、殺人鬼小説を書くことで、その事実と向き合い続けていた。
- そんなある日、彼に届いた1通の手紙、そこから想の運命は思わぬ方向へと動き出す。
- 犯罪歴史上のシリアルキラーが現代によみがえる。シリアルキラー復讐ミステリー。
山内 この「1通の手紙」というのがちょっとファンタジーな部分があって、その手紙を受け取った瞬間に、自分の中に過去のシリアルキラーが宿るんです。想に入ったのが超有名なシリアルキラー「ジャック・ザ・リッパー」、切り裂きジャック。入ったことで、想が意識ない間に人を殺しちゃうという事件が起きるんです。
川島 えええ? こわ!
山内 で、どうやら他にも同じように手紙を受け取ってシリアルキラーを宿している人間が、この世の中にたくさんいるというのが分かってくるんです。
川島 自分だけじゃないと。
山内 母親を殺したシリアルキラーに偶然出会って、想は復讐しようと思うんですけど、逆にそのシリアルキラーに殺されそうになる。殺されそうになった瞬間、ジャック・ザ・リッパーが出て来て、相手のシリアルキラーを殺そうとするんですけど、そこでシリアルキラー同士の会話がなされるんです。相手のシリアルキラーは「シリアルキラー同士で殺し合っても意味ない。同業者なんだからやめようぜ」みたいなことを言ってくるんですけど、ジャック・ザ・リッパーは「何言うてんねん」と。「おまえらみたいなカスのシリアルキラーを殺すために俺はよみがえったんだな」と思って、他のシリアルキラーを見つけて殺そうとするんです。
川島 ダークヒーロー的なところがある。
山内 だからジャック・ザ・リッパーVS他のシリアルキラーみたいな感じで、今マンガが動き出していってます。さらにそこにシリアルキラーを捕まえる政府のチームも出てくる。で、シリアルキラーを捕まえるチームにもシリアルキラーがいるんです。政府側についてるシリアルキラー。だからまさにシリアルキラーランドなんです。このマンガがすごいのは、実在したシリアルキラーを元に話を進めてるんで、「あ、あのシリアルキラーが出てきた!」とか、「『世界まる見え!』で見たことあるぞ!」とか、そういうのも楽しめる要素になってますね。
川島 いや、これは一気に走り切るつもりなんちゃう? 濃い巻数で終わるんじゃないかな。
山内 まさに今、走り抜けていってます。
もしかして今、悪魔系が来てる?
山内 次のおすすめはこちらです。『エクソシストを堕とせない』。
川島 あれ、山内さんらしくないセレクト。売れ筋を出してきてない?
原作:有馬あるま/漫画:フカヤマますく『エクソシストを堕とせない』(集英社)
- 2021年より「少年ジャンプ+」にて連載中
- 単行本は第3巻まで発売
山内 絵のタッチが僕っぽくないじゃないですか。しかも集英社。基本グロいのが好きで、さらに心霊系も好き、『終の退魔師』的な感じも好きなので、たぶん間違っておすすめに出てきたんだと思います(笑)。で、「自分の趣味じゃないけど、おすすめに挙がってるな」と思って読んでみたら、面白かった。しかも、どうやら世間的にも評価されてるマンガということが分かりまして。
川島 山内が「ジャンプ+」のマンガを出してきたの、初めてじゃない?
山内 僕が紹介するのが初めてというより、おすすめで「ジャンプ+」のマンガが挙がってきたのが初めてです。でもこれ、このタッチながら「え?」というシーンもあるマンガでして。あらすじを紹介していきますね。
- 主人公は、魔王サタンを倒すために最強のエクソシストとして神に選ばれ、過酷な環境で育てられた神父の少年。
- 神父はある日、「センセイ」と呼ばれる世話係の男性と出会う。センセイは今までの神父たちとは違い、遊びも娯楽も満喫するイケイケの人物。
- センセイのアドバイスは他の聖職者たちとは違い、「生きてるうちは幸せになれない。悪魔と戦って早く天国に行きたい」と戦いの苦しみを訴える神父に対して、「本気で恋をしろ。人を愛せ。そうすれば死んでもいいなんて思わなくなる。自分のため、愛する人のために戦えるなら、おまえは無敵だ」と教えてくれる。
山内 この少年が最強たるゆえんが「もう神様しか俺は信じてない」というところで。他の娯楽で堕落すれば、最強のエクソシストとしての力は弱まるという設定なんですよ。
川島 信仰心イコール戦闘力。
山内 女性と遊んだりとかしたら自分の力が弱まるんだけど、彼はそういうことをしない。信じっぷりが半端ないから、彼は最強のエクソシストなんですね。で、サタンという敵がいるんですけど、サタンって悪魔の中で最強クラスじゃないですか。そのサタンをもってしても「こいつはやばいくらい強い」と思われてる。そこで、めちゃめちゃかわいい悪魔に人間のふりをさせて、この神父の少年のもとに派遣するんですね。「なんとかこのエクソシストを堕としとてくれ」と。
川島 だからハニートラップよね。簡単に言うと。
山内 「おまえに恋をしてくれたらこいつのエクソシストの力は弱まるから、なんとか恋愛感情に持ち込んでくれ」と。その悪魔も悪魔でサキュバスみたいな、悪魔の力が全然ない悪魔なんです。だから悪魔としては弱いんですけど、そのおかげでこの神父も悪魔と気付かないわけなんです。
川島 なるほどね。
山内 サタンに「堕としてくれ」と依頼されたんですけど、サタンに対しても「その人が堕とすに値する男かどうか私自分で決めますからね」みたいな、ちょっと無邪気な悪魔で。で、その悪魔もこの神父と会って「めっちゃいい子じゃん」みたいに思って、頑張って神父を堕とそうとしてくるんです。
川島 普通に好きになっちゃうわけやね。
山内 神父もその子がめっちゃいい子やから、なんとかこの子を守り抜こうと思ってると。なんとか堕とそうとする悪魔と、「堕ちたら駄目だ。エッチなことを考えたら駄目だ」という神父とのせめぎ合いのマンガですね。
川島 お色気なところはあるけど、構図は「悪魔VS神父」なんですね。
山内 1巻で、七つの大罪のうちの色欲をつかさどるアスモデウスという悪魔が、神父を倒しにやって来る。裸の女子が出てきて、「ほら、興奮してるだろおまえ? 快楽に溺れちまえよ」みたいな襲い方をして、神父もちょっと顔を赤らめてドキドキしちゃうんですけど……。
川島 堕ちそうになってる。
山内 その瞬間、信仰心が勝って自分の目をくり抜くんですよ。それを差し出して、「今エッチな事考えちゃったけど、これでもう償った」と。そんでそのアスモデウスを一気にやっつけるっていう。それくらい信仰心のあつい、強いエクソシストなんですよ。
川島 『ダンダダン』とか、『呪術廻戦』とか、悪魔系が来てるんですかね。
山内 タイトルもいいなと思って。『エクソシストを堕とせない』。堕としたらたぶんもう終わりなんです。神の力を使った神父の強さっぷりもぜひ見てほしいですね。神話系が好きな人はたまらないと思います。
川島 山内さん……もしかして今、お疲れですか?
山内 何でですか?
川島 今日ほとんど神話ばっかり紹介してる(笑)。
人間関係だけでグイグイ引っ張る、地獄のようなマンガ
川島 私のおすすめはこちら、『泥濘(ぬかるみ)の食卓』。もう、ほんとに怖い。ホラーじゃなく、これもう人のやばさですね。
- 2020年からWEBコミックレーベル『ウツツ』にて連載中
- 単行本は第1巻まで発売
- 電子書籍で第2巻・第3巻が発売中
- 第75回ちばてつや賞ヤング部門大賞受賞、新潮社のバンチ漫画大賞第7回奨励賞、タイム涼介特別賞を受賞
川島 今日はホワイトボード用意してもらいましたんで。これマジで人間関係だけでおもろい作品なんで、相関図を紹介しようと思います。まず主人公は深愛(みあ)ちゃん。1巻の表紙の子。たぶん20歳前後だと思うですけど、すごくかわいらしくて、スーパーでアルバイトしてるんですよ。
そのスーパーの店長が夏生(なつお)。従業員のこともバイトのことも全員気にして、忙しいことは1人で全部やって残業するという優しい店長なんですよ。この方が50歳くらいだと思います。
その2人が不倫してるんですよ。すっごいうぶなのに。残念ですね。夏生にはもちろん家庭があります。深愛のほうはお母さんに「はよ相手見つけろ」と言われるくらい、心配されてます。で、不倫してるのを知ってるのはこの2人だけ。
そこにハルキという、深愛ちゃんとそんなに年が変わらなそうな学生が出てきます。彼が、スーパーの前のベンチでなんか座ってるんですよ、ボーッとしてて。で、深愛ちゃんは人に声かける優しさのある人だから「どうしたんですか」と声をかけるんです。そしたらハルキは「学校で嫌なことあり過ぎてちょっと行きたくないんです」と。それで「嫌なことがあっても頑張りましょうよ」みたいなこと言って励ますんですね。そうこうするうちに、ハルキが深愛ちゃんに好意を持ちだす。
さて、ここからなんですけども。急に夏生さんが深愛ちゃんに対して「もう別れよう」と言うんです。深愛ちゃんは「え? なんで?」となるわけです。実は夏生さんの奥さん、ふみこさんというんですけど、そのふみこさんがうつになっちゃて。だからここで夏生さんが家庭を支えないと、家族も自分もバラバラになってしまうと。だからもう浮気できないんです。
ここで深愛ちゃんはどうしたか。「じゃあ分かりました」と諦めない。「じゃあ、ふみこさんのうつを治せば、普通の元の店長に戻ってまた付き合える」と思うんです。「この家庭ごと私が愛で包み込んで、ふみこさんのうつを治せばまた浮気できる」って本気で思うんです。
で、深愛ちゃんはそれに対して具体的にどうしたかというと、「そういうことでお困りの方は電話してね」みたいなチラシを自分で作って、ポストにバンバン入れていくんです。そのチラシを見たふみこさんが連絡を取る。それで深愛ちゃんは、そのセンターの人みたいな顔をして接触するんです。
山内 ちょっと怖くなってきた。
川島 深愛ちゃんはがふみこさんのうつを治そうと頑張るんです。で、夏生とのデートのときに、「実は最近、ふみこさんに会ってます」と自分から言うんです。
山内 えええええ?
川島 「おまえ何してんの?」ってなりますよね。でも「どうりで最近ふみこが最近笑うようになったな」みたいな反応なんです。いかれてんのか、この人。「じゃあこれからも頼むよ」みたいなことになるんですよ。深愛ちゃんは頼まれたから一生懸命通って、ふみこさんが社会に復帰できるように本気でやるんです。
さてそんな中、このハルキくんなんですが。実はですね、この一家の息子なんですよね。夏生とふみこの息子だということが分かるんです。だから家庭もぐちゃぐちゃ、だから学校も行きたくない。
そしてここにちふゆという女性が出てきます。ハルキの幼馴染で、ハルキのことがめちゃくちゃ好きなんです。めちゃくちゃ好きというのはどういうことかというと、もうストーカーなんですよ。1回告白したんですけど、ハルキは「そんなつもりじゃない。ただの幼馴染だよ」となるんです。ちふゆは「分かった。これからも友達同士でね」って言うんだけど、友達としてバレンタインチョコを渡すんです。じゃあせっかく作ってくれたし食べようかとなるんですけど、中から髪の毛がズルーっと。
山内 こわっ!
川島 たまたま混じったにしては量多いぞと。これはやばいぞとなって。さらにハルキ君に対して学校で嫌な噂を流したりするんです。ハルキ君ってけっこうイケメンで、クラスでモテたりするんですけど、ちふゆが保健室で体調悪くて寝てたら、ハルキ君が心配で「大丈夫?」って言ってきたの。それを友達に見られて、「私、ハルキにレイプされそうになったんだよね」と言いふらすんです。
山内 え、どういうこと?
川島 つまりハルキを孤立させて、自分のものにしようという。だからハルキに対してマイナスなことめっちゃくちゃ言うんですよ。「お母さんが実はうつで」というのも、全部言いふらすんです。幼馴染で知ってるから。
ハルキが久し振りに学校行ったときには、もう居場所ないんですよ。「レイプ魔が来たぞ」とか「あの子のお母さんは」とか、いろいろ言われて。それで例のスーパーの前でボーっとしてたと。そこで深愛ちゃんが声かけてくれて、好きになってしまうわけです。
深愛ちゃんに励まされて頑張ろうと思ってたところに、今度は深愛ちゃんと夏生……つまり自分の父親がキスしてるのを見てしまうんですよ。……地獄です。
今3巻まで出てますけど、ほぼこの5人だけでやりとりしてるんですよ。で、僕が説明したのは1巻までの話ですからね。
山内 1巻だけでこんなに。
川島 よく登場人物を増やさず、ここまでの展開にするよねっていう。みんなおかしい。ふみこさんだけが一生懸命リハビリしてるけど、絶対終わりが来ますから。これからどうなっていくか一番目が離せないマンガです。
次回放送は「このマンガがすごい!芸人楽屋編2022」前編をお届けします。
(構成:前田隆弘)
【放送情報】
次回放送
読売テレビ●12月3日(土)深1:28~1:58
日本テレビ●12月8日(木)深1:59〜2:29
「このマンガがすごい!芸人楽屋編2022」前編を放送。
(TVerでも配信中!)
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