『埼玉の女子高生ってどう思いますか?』のよどみない会話に翻弄されるの巻

『埼玉の女子高生ってどう思いますか?』のよどみない会話に翻弄されるの巻
埼玉の女子高生ってどう思いますか?』(渡邉ポポ 新潮社)というマンガを褒めちぎりたいんですけど、どう褒めちぎったらいいのかのか皆目見当もつかないんですよ。音楽で言えば、革新性を語るべきところは多くないけれど、なんだか心地よくて延々と聴いてしまうアルバムのような。
 
 
それでも、あまりに好きなので原稿にしようと思って気になるコマのスクリーンショットをとりながら再読してたんだけど、ほぼ全ページ撮っちゃいそうになりまして、「これ引用ちゃう、違法コピーや!」となりました。
 
それは全ページいいってことでもあるんだけど、これには理由があって、つまりこのマンガ、会話が絶妙なんですよ。登場人物たちのやりとり、テンポが心地いいんです。故に1コマだけピックアップするってことが出来なくて、いい流れをキャプチャしようとすると、切るポイントが見つからずに延々とキャプチャし続けてしまうというね。どうしたらいいんだ。
 
あ、どういうマンガか説明してませんでしたね。
 
埼玉の女子高生ってどう思いますか?』は、埼玉の、しかも中心部ではなくて群馬との境目にある街に住む女子高生たちの話です。
 
 
埼玉歴=年齢の白鳥小鳩と姫宮アグリにプラスして、東京から越してきたばかりの東上みなとの3人の高校1年生が中心に話が進んでいきます。
 
タイトルから漂ってくるのは、よくありがちな「埼玉に住むことを自虐的に扱う」内容ですよね。そして実際そういう設えになっているのだけど、読後感はぜんぜん違う。埼玉を小馬鹿にするような気持ちとは程遠く、むしろどんどん埼玉というかこの行田という街が好きになっていってしまう。愛おしい。埼玉のことを「イモい」と登場人物たちは語るけれど、それに対して読者は、いやいやいやそこはもっとアピールするところでしょう、と脳内でツッコミいれてしまうというか。
読者の立ち位置はいつしか埼玉を応援する側になっているんですよね。
 
いや、しかし、会話がすごい。
これは100%褒め言葉なんですけど、ほんとしょうもない会話なんですよ。無内容で無目的でただ心地いい。
 
例えば、第二話の「埼玉銘菓 十万石まんじゅう」の冒頭、埼玉歴一ヶ月の東上がゴキゲンに見える、埼玉生まれの二人。その理由を「これから、十万石まんじゅうを買いに行くからじゃない?」と想像する。
 
しかし
「いささか疑問なんだけれども、学校帰りに十万石に行くくらいで……あんなにテンションあげられるかな?」
と疑問を持つ小鳩。それに対して、
「そして実は私も、十万石に行けるかと思うと内心ウキウキしている!」
と告白するアグリの姿を見て、小鳩もまた
「ウキウキ…そうか………アグリ…実は私も…本当はウキウキしてるのかも!」
と気づく。さらに畳み込むように
「ただちょっと自分を大きく見せようと十万石を貶めるような発言しちゃって…」
と反省しはじめる。
 
 
 
いいなあ。
 

埼玉銘菓・十万石まんじゅうCM

うまい うますぎる

 
このあと、全国区だと思っていた十万石まんじゅうを東上が知らなかったこと。そして東上が理解を深めて、まんじゅう以外のラインアップをおいしそうに食べるシーンもいい。
 
 
 
そして、これ。
 
この展開、うまいなあ。うまくてそして、しょーもない。最高ですね。
 
編集者・文筆業を長らくやってきた立場から言わせてもらうと、こういう「しょうもない会話」を描ける人って本当に実力がある人なんだと思うんです。ものすごくどうでもいい会話をぐいぐい読ませてしまう力ですね。
 
実際僕らの生活における会話って、9割9分しょーーーもないものだとだと思うんです。友達たちとのダベリの充実感て、それが意味あるかどうかみたいなことで判断されるわけじゃないですよね。むしろほんとにどうでもいいことがいかにリラックスした状態でラリーし続けられるか、というようなあたりにポイントがありそう。
 
この16歳という設定も、このマンガの最適解だと思う。
受験に苦しむ中3ではなく、まだまだ子供の中2でもなく、性に脳を乗っ取られてしまう前の高校1年生という設定。
もちろん人によってこういうバランスの年齢はぜんぜん違うわけだけれど。この年齢の会話のしょーもなさは、人生の宝だと思うんです。
 
ダメ押しでもう一箇所紹介させてください。
第7話で、彼女たち3人が大宮に遊びに行く話です。
 
アグリ 「さてはお前 今日大宮に行くのが相当楽しみなんだろ?」
小鳩 「は… いや! 全然…全然そんなことないよ! だって大宮だよ」
 「そんな東京じゃあるまいし 大宮くらいでテンションなんて上がりませんよ」
アグリ 「そうか」
という流れからのこれです。
 
 
 
ほら、途中で切ることできないんですよ……。こういうエピソード、思い当たる人多いのではないですかね。
 
このあと埼玉県民にとって一番の待ち合わせスポット「まめの木」の素晴らしさが語られます。
対して東上は渋谷のハチ公とおんなじなんだね!と返してしまう。
 
やばいまたキャプチャしてしまった。
 
そして一行は、大宮にできたクリスピー・クリーム・ドーナツへと向かう。
 
「これは私が上がるやつだよ」
「ここは私が一番ビビるところなんだからー」
と、執拗に埼玉県民としてポジションを守ろうとする小鳩。
 
 
ほら、全部いい。
このあと、クリスピー・クリーム攻略のための謎の熱い友情展開になっていくんですよ。うう、、、そこまで紹介したいが単なる違法キャプチャおじさんになってしまう。
 
というわけで、興味持った人はゼニにものを言わせて買ってくれ!
 

埼玉の女子高生ってどう思いますか?のマンガ情報・クチコミ

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