こんにちは。
皆さんは、子供の頃から何回も読み返しているマンガはありますか?
私は、『ちびまる子ちゃん』をボロボロになるまで読み返しています。
オチまでの流れが完璧な上に、小ネタで中盤を持たせる技術が抜群に上手いなと感心します。
非常に有名な作品ではありますが、一応説明しておきます。
『ちびまる子ちゃん』とは
『ちびまる子ちゃん』は、1986年からりぼんで連載されていたコメディ少女マンガです。
定期連載は1996年で一区切りとなったものの、現在も不定期で作品が掲載されることがあります。
アニメ化、ドラマ化もされ、特にアニメは国民的アニメの地位を不動のものにしています。
この作品では、非常に切れ味のあるテキストが楽しめます。
特に初期から中期にかけてのナレーションの文章は、必見です。
他にも読むたびに新しい発見があるのですが、今回はコミックス冒頭の人物紹介の一文が、私の感性を揺さぶりました。
「その存在の有無を問われている」
一応、レギュラーか準レギュラーくらいの位置にいるキャラクターに対して、このコメントですよ。
呼び方もおばあちゃんではなく、ばあさんです。
中々、辛口ですね。
確かに、おばあちゃんに対して、目立っているなという印象はないです。
でも、作者から存在の有無を問われるほど出てきてないのでしょうか。
調べてみることにしました。
レギュレーション
① 範囲は、『ちびまる子ちゃん』1巻〜16巻で、話数のカウントがあるものです。
② おばあちゃんの出てきた全てのコマを集計します。
③ 後ろ頭など、体の一部が出ているだけでも1コマ登場したとします。
④ 連載開始前の読み切りなどは、含みません。
⑤ 扉絵は含みません。
⑥ 新聞連載版の4コママンガも、範囲から除外しています。
1巻 9コマ登場(706コマ中)
コミックス1巻でのおばあちゃんの登場コマは、9コマありました。
目安としては、主人公のまる子が482コマ登場しています。
友蔵でも46コマ出ているので、やはり控えめな登場回数といえます。
折角ですので、ハイライトを紹介します。
まずは、初登場と初セリフです。
おせち料理の説明をしているコマに、ちょこんと載っています。
さっそく地味ですね。
全身を描いてもらえないほど隅に追いやられている様子が、今後の活躍しなさを暗示しているかのようです。
年明けの話では、七草がゆの大ファンという情報が得られます。
田舎のおばあさんの何でも食べる感じが良く出ています。
ボケ役の友蔵が引いている、珍しいシーンでもあります。
2巻 4コマ登場(616コマ中)
コミックス2巻では、4コマに登場しました。
岡田あーみんとの合作に出番のなかったことが響いています。
この巻から登場した人物紹介には、「目立った活やくがないので今後に期待したい」(『ちびまる子ちゃん 2巻』登場人物紹介参照)との作者コメントが付いています。
それはあんたの匙加減であろう。
貴重な登場シーンとしては、目覚まし時計を買ったもののすぐに使わなくなったまる子が、家族相手に競売を持ちかける場面があります。
これが2巻に出てくる4コマ中、2コマを占めます。
本当に目立った活躍がない。
3巻 7コマ登場(739コマ中)
3巻には、7コマ登場しました。
過去最高ですね。
人物紹介には、「目だたないがたしかに存在する」(『ちびまる子ちゃん 3巻』登場人物紹介参照)と書いてあります。
路肩のタンポポとかにするコメントですよね。
ハイライトは何と言っても「オセ口(おせぐち)」でしょう。
オセロが読めないという、年寄りっぽさを上手く活かしています。
ハイカラという言葉にも時代を感じていいですね。
地味ながらも、ギャグへの貢献度が高い巻となりました。
4巻 6コマ登場(732コマ中)
4巻は、6コマ登場です。
人物紹介は、先述の通り「その存在の有無を問われている」(『ちびまる子ちゃん 4巻』登場人物紹介参照)です。
「オセ口(おせぐち)」程度では、焼け石に水ということでしょうか。
文鳥を飼う回で、「かわいがるんじゃよ」とのセリフを発しています。
ほのぼのとして温かみのあるやり取りです。
5巻 22コマ登場(692コマ中)
5巻は、大躍進の22コマです。
これまでとの落差で、すごく活躍したように感じます。
人物紹介コメントは、「しゅみ・うめぼしをつける事 性格・おっとり」(『ちびまる子ちゃん 5巻』登場人物紹介参照)と書いてあり、有用な情報が得られます。
個人的に好きなのは、クリスマスの回で変なスイッチが入っているシーンです。
急にどうしたんですかね本当に。
「ばあさん たまに出てきて このセリフ…」というナレーションのおかげで、登場回数の少なさが面白さに繋がっています。
有名どころでは、まる子が風邪を引く回で民間療法を引っさげて登場するシーンがあります。
梅干しを潰しておでこに貼るという気持ち悪い方法で、まる子に嫌がられます。
「しゅみ・うめぼしをつける事」が早くも回収されていますね。
6巻 10コマ登場(759コマ中)
6巻では、10コマに登場しました。
連続で2桁出場は快挙ですよ。
人物紹介には「あまり目立たない存在。ときどき役に立つわき役」(『ちびまる子ちゃん 6巻』登場人物紹介参照)とあります。
あまり目立たないと明言されながらフェードアウトせずに登場人物紹介に留まるのは、家族ものならではという感じがして興味深いです。
これがもし、目立たない同級生や先生だったら、とっくに出番なくなっていますからね。
6巻では、年寄りならではの渋いアイテムチョイスが光ります。
南の島旅行が当たった回では、喜ぶどころかそうめんセットが欲しかったと言ってのけます。
さらに、南の島のお土産に魚の干物をリクエストします。
徹底していますね。
7巻 4コマ(1110コマ中)
7巻では、1110コマチャンスがあったものの、4コマの登場に留まりました。
人物紹介は「あまり目立たないが、気がつくと存在している。ときどきじいさんをたしなめる。血液A型」(『ちびまる子ちゃん 7巻』登場人物紹介参照)でした。
じいさんを嗜めるのは、何となくアニメ版のイメージがあります。
実際、ここまで全てのコマをチェックしていますが、マンガ版で嗜めているシーンはありませんからね。
出てきた4コマは全て、まる子の両親が離婚の危機に陥る回です。
母親に付いていく流れになったまる子が、おじいちゃんおばあちゃんに挨拶しておく場面ですね。
泣かせに来ている回だけあって、一コマ一コマの演出が非常に切ないです。
8巻 1コマ(952コマ中)
8巻は、たった1コマの登場でした。
連続登場が途切れるかという瀬戸際で、1コマだけ見つかりました。
5巻、6巻での無理が祟ったのでしょうか。
人物紹介は「まる子のおばあちゃん。出番は少ない」(『ちびまる子ちゃん 8巻』登場人物紹介参照)でした。
本当に特筆すべきことがないんだなということが伝わってきます。
唯一の出番は、食卓で友蔵に軽く呆れている場面です。
これまた地味ですが「おいおい、このじいさんまた素っ頓狂なこと言ってるよ」という雰囲気を出すのに一役買っています。
9巻 6コマ(926コマ中)
9巻は、6コマの登場となりました。
人物紹介は遂にコメントがなくなり、「おばあちゃん」とだけ書かれています。
初期の頃の毒のある文章が恋しいですね。
全体としては、永沢くんや藤木くんといったアクの強いキャラが台頭する中で、相対的に重要度が下がった構図が見えます。
まる子がススキを採りにいく行く回で、ハサミを渡すやり取りがありました。
温厚な人柄と、季節を大事にする感性を読み取れますね。
10巻 10コマ(1032コマ中)
10巻は、6巻以来となる10コマに姿を現しました。
ただ、同じ10コマでも6巻の759コマに対して、こちらは1032コマなので、割合としては低くなっています。
人物紹介は「ときどき役に立つ」(『ちびまる子ちゃん 10巻』登場人物紹介参照)です。
そんなふわっとした紹介ありますかね。
殆どの人が、ときどきは役に立つでしょう。
ハイライトとしては、「粋」についてまる子に教えようと暴走する友蔵に突っ込みを入れるシーンを挙げます。
7巻に出てきた「ときどきじいさんをたしなめる」がここで回収されます。
まあ、嗜めるというほど強い口調ではないんですけどね。
鈴虫の回では、季節を考慮して涼しげな服装で登場します。
こういうのを見ると、「ああ、まだ作者はこのキャラに関心を持っているんだな」と分かり安心します。
11巻 11コマ(1096コマ中)
11巻は、11コマの出番を勝ち取りました。
徐々に調子を上げてきていますね。
人物紹介は「たまにでてきて年寄りくさいことをいう」(『ちびまる子ちゃん 11巻』登場人物紹介参照)でした。
今回のコメントは、割と力が入っているなという印象です。
この巻のふぐ鍋の回の煽りでは、特におばあちゃんが輝いています。
毒があるからと強情を張ってふぐ鍋を食べないまる子と友蔵に、容赦ない言葉を浴びせます。
12巻 9コマ(1079コマ中)
12巻は、9コマの出番でした。
人物紹介は11巻と完全に同じなため、割愛します。
忘れ物をするまる子に、フォローを入れつつ忘れ物がいけないことだと伝えています。
相変わらず地味な仕事ですが、このコマにおばあちゃんがいないと口調がきつくなりすぎるので、役には立っています。
13巻 27コマ(1089コマ中)
13巻は、まさかの27コマ出場を決めました。
特に、97話ではここに来て最多となる19コマに姿を見せます。
その97話では、別人のように威勢のいいキャラクターになっています。
5巻の登場人物紹介では、おっとりと言っていたんですけどね。
立て板に水のように喋りまくり…
この回の大オチまで担当します。
因みに、次の登場回からはまたひっそりとした立ち位置に戻っています。
本当に何だったのでしょうか。
何かが取り憑いていたのでしょうか。
人物紹介は「友蔵の妻」(『ちびまる子ちゃん 12巻』登場人物紹介参照)だけでした。
情報量がほぼない。
14巻 20コマ(1193コマ中)
りぼん連載の最終巻となる14巻は、1193コマ中20コマに登場しました。
人物紹介は、13巻と全く同じでした。
特徴的だったのは、台風の回です。
床下浸水時に、虫を気にする友蔵やまる子を尻目に、食器棚の生活用品を手際よく運び出しています。
家族の中のぼんやり組としっかり組が、浮き彫りになった格好です。
15巻 18コマ(1120コマ中)
15巻は、18コマに出てきます。
久々の登場にしては、多く出てきましたね。
人物紹介は、13巻、14巻と同じです。
黒豆のビンをゴム手袋で開けようとするも断念するシーンで活躍を見せます。
疲弊してメガネがずれ、輪郭すら崩れかけているおばあちゃんを見るのは初めてだったので、新鮮でした。
16巻でも何か新境地を開いてくれるのでしょうか。
16巻 3コマ(862コマ中)
と思ったら、16巻では完全に置物でした。
ほぼ同じページ数なのに露骨にコマ数が少なくなっているのが特徴です。
人物紹介のコメントは、「やさしい」(『ちびまる子ちゃん 16巻』登場人物紹介参照)の一言です。
まとめ
以上です。
全体では、全14703コマ中、167コマにおばあちゃんが登場した計算になります。
割合にすると、約1.1%です。
1%という数字は、日本人で言えば、左利き(約10%)かつ血液型がAB型(約10%)の人の割合と同じくらいです。
パッとは見当たらないですが、いないこともない位の数字ですかね。
いまいちピンと来ないでしょうか。
なるほど、分かりました。
マイナー感の比較のために、登場コマ数の近いキャラクターを出しておきます。
戸川先生(124コマ登場)より40コマほど多く…
長山くん(203コマ登場)よりは40コマほど少ないです。
参考資料
『ちびまる子ちゃん』1巻〜16巻 1986〜2009 さくらももこ 集英社
『日本人の利き手・利き足について』2002 八田武志、伊藤保弘、川上綾子 日本教育心理学会総会発表論文集44巻
『右利き, 左利きの考え方』2010 吉田友英 Equilibrium Research69巻3号
『歯石沈着とABO式血液型の関係』1958 高野宇多麿 口腔衛生学会雑誌7巻4号
『日本に於けるABO式血液型遺伝子頻度の年次及び歴史的変動について』1984 天野尹 日本輸血学会雑誌29巻6号
『麻雀% 役の一覧(出現確率)』(最終確認2018/1/10)
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