人間のリアリティ
刻刻 堀尾省太
ストーリーもさることながら、刻刻は人間の描き方がよかった。とくに家族側の俗物のお父さんが印象的だった。普通バトルものでは味方サイドの人間は成長する。それは大人でも、子供でも関わらない。良い見せ場を作り、退場したり、心を入れ替えたりする。しかし、お父さんは最後まで俗物のままである。
主人公や他の人物たちも成長というよりは、見えていなかった本質が徐々に見えてくるという形をとっている。この分かりやすい成長譚でないところが、自分には面白かった。ニートの翼が急に大活躍したりもしない。力を持っている人間が、ただ力を使う。
大きな出来事が起こるからといって人が変わったようになる、なんてことはなく、その本質が出る。そういう意味だとある意味リアルだなと思った。
刻刻
刻刻、すごく面白いのに読んでいる人も知っている人も少ないからもっと読まれてほしい。
誘拐犯VS樹里+じいちゃん(兄と樹里の父は戦力外)の戦いっていうシンプルな構図がまずいい。
派手なビームとか召喚獣みたいな異能系バトルではなく、天才同士の戦いとかでもなく、ニートを多く輩出する普通より落ちこぼれ気味の一家と寄せ集めの誘拐犯の戦いで、敵方を味方に引き入れて状況を有利にしていくリアルな戦いがすごくいい。
交渉材料が味方になったら戦闘終了後、通報しないとか。すごい地味だけどかなり一般的な感覚でリアル。
止界術で時間が止まっているから、作中の時間は全然進まないんだけど、昔にあった事件とかが絡んできて、人間関係がどんどん複雑になって、最後は誘拐犯のボスとの決闘がかなり面白かった。
止まった世界の感じとかの感じもなんかリアルに描かれてて超すごいから、マジでいろんな人に読んでほしいわ