Beast Gamer-凶暴な獣を手懐ける方法-

アウトロー系男女の殴り愛TL!! 〜異世界転生を添えて〜

Beast Gamer-凶暴な獣を手懐ける方法- U佳
天沢聖司
天沢聖司

またとんでもない漫画に出会ってしまった〜〜! すごい!!! これを読んで初めて「あっ、自分ってこういう漫画が読みたかったんだな」と気づきました。こういう漫画大好きです!!!(大声) U佳先生のPixivのキャプション曰く「強い女子が強い男子とバチボコ対等にやり合うケンカ漫画」。女性向けのTL作品ですが、男性でもこういう男女の関係好きな人って結構いると思うので読んでほしい…! https://twitter.com/u_kkaa/status/1278294421910417409?s=20 もう表紙からしてすごく最高ですよね。これでTLですよ? そしてなにより、 ・アウトロー ・ボコり愛 これらの要素をTLにブチ込むという発想がまず半端ない…! これをTLでやるって「抹茶小倉スパゲッティ」くらい奇抜に感じますけど、でもよく考えれば「アウトロー」も「ボコり愛」もBLでは根強い人気のあるジャンルなんですよね。 それを固定観念に囚われず男女で描いてみようと思ったのは、水兵の着るセーラー服を女子の制服にしようと考えた人くらい天才的な発想じゃないかと思います。天才です…! そもそも、ジブリ映画やハリウッドのアクション映画に出てくる『精神的・肉体的にタフな女性』ってみんな大好きなはずなのに、なんで世の中にはそんな彼女たちを主人公にした恋愛漫画は少ないのか……あらためて考えると無茶苦茶不思議ですね。 ゲーム内で最強の男・鷲崎は、サブタイトルの「凶暴な獣」という言葉に偽りなしの野獣ぶり。(しかもテストステロンばりばりの野獣なのに、照れたり恥ずかしがったりするピュアな部分もあって「なんだこいつ無敵か?」という感じ) そんな最強・鷲崎と主人公アンナは互角に拳でやりあっていくのが爽快…! 以前、BL研究家の金田淳子先生が「コワすぎ!」に登場する工藤Dと市川ADの関係性を「男女のやおい、男女のブロマンス」と説明していたのですが、この作品もまさに「男女BL」だなと、しみじみその良さを噛み締めてしまいました。 ちなみに、言うまでもなく自分はまさに主人公・アンナのような女性が好きなので、「スパダリや獣人とドラマチックな恋愛を繰り広げるのが“普通”のTLレーベルでよく載せられたなぁ…!」と感激しつつ読んでいたのですが、実際編集さんには「主人公に感情移入できない」と言われたそう。 ▼Pixiv【商業お知らせ】BeastGamer(女性向けオリジナル) https://www.pixiv.net/en/artworks/82688809 「これ異世界転生の意味あるか…?」と、ただでさえニッチな関係のところへ異世界要素を加えることに首を傾げていたのですが、そういう理由だったんですね。なるほど…。 ということは、異世界転生というエクスキューズさえあれば、普通のTL読者これ受け入れてくれるってこと!?!!! ならバリバリ転生してこういう作品ガンガン描いてほしいです! 男女BL増えて〜〜!

デイズ・オン・フェス

人類、フェスを愛せよ

デイズ・オン・フェス 岡叶
ANAGUMA
ANAGUMA

音楽フェスに行くなんて考えたこともないほどインドアかつダウナーな人生を歩んできた私ですが、このマンガを読んで考えが180度変わりました。 行きてぇ、フェスに。 フェス、爆音の中酒を片手に夜通し熱狂する狂乱の宴だと思い込んでおり「近づくまい!」と頑なに距離を取っていたのですが、『デイズ・オン・フェス』のなかには優しく楽しく賑やかなフェスの世界が描かれています。 のんびりキャンプとかしてるんですよみんな。いいなぁ。 登場人物は主人公・奏と音葉のJK初心者コンビと、喫茶店を営む音葉兄(楽さん)とバイトの律留のベテランチーム。計4名のコントラストが小気味いいです。 奏がフェスに魅了されていく新鮮な過程と、律留たちがフェスの“よさ”をじんわり味わっているようす。互いが互いのパートを引き立たせていて、読んでる自分も「早くこうなってこうなりたい」という欲求が湧いてきます。 行かなきゃ味わえない空気感が内包されてるんですよ…。 奏が自身の推しバンド「デイズ・オン・ユース」を起点に、どんどん自分の興味に従って世界を広げていくのも心地良いです。何かにハマるのってそういうことだよな、という原初的な喜びが押し付けがましくなく描かれていて。 そして3巻にはその「デイズ」の結成エピソードが収録されているんですけどこれもまたいいんですよね…。音楽に救われた者がまた音楽で人を救っていくという円環が完成するんです。美しい。 とにかく読んだら絶対にフェスに行きたくなることでしょう!!行きたい!!フェス!!

本日も休診

人間賛歌

本日も休診 石川サブロウ 見川鯛山
野愛
野愛

那須の田舎町で生きる人々の日常を、小さな診療所を営む見川センセの視点で描いた短編集。 郷愁を誘う美しい大自然と、とぼけた表情の人間味あふれる人物描写から心温まる作品かと思って読んでみたところ、良い意味で裏切られました。 あくまでも那須の田舎町の中だけで、見川センセの見える範囲で物語が展開していきます。短い物語の中、登場人物は見川センセと一瞬心を通わせても、町から去ってしまえばその後のことは誰も知らないのです。 人は自分の見える範囲のことしかわからない。少しだけ思いを馳せて、後は忘れてしまうしかない。 その無力さとやるせなさを嘲笑うことも慈しむこともせず、粛々と移ろう那須の四季の鮮やかさ。 ただ漠然と、生きるってこういうだよなあという感想を抱きました。 美しい四季に目もくれず、メランコリーに浸ることもなく、性を貪りその日を暮らすこと。その強さ、尊さに心が震えます。 泣くほど悲しいとか感動するとかそういうお話がある訳ではないのです。艶っぽいお話も多いですし、ちょっと笑えるような場面もあります。 この作品に描かれているのは間違いなく生身の人間です。素手転の、丸腰の人生です。 読んだら間違いなく、生きること死ぬことに思いを馳せるはずです。

フリクションガール

女性クライマーに「惚れる」視点

フリクションガール noga
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

1巻では少し奇妙なクライマーの生態と、挫折した女子の新たな一歩を描いた本作。2巻ではより本格的にボルダリングを描き始めますが、女子の楽しげなやり取りの中に、クライマーのカッコ良さがふんだんに描かれています。 これを読んで、クライマーに惚れない人はいないでしょう! 分かりやすいのは、鍛えられたボディ。全体的に大きなギャオ&細マッチョなむゆ先輩の彫刻の様な身体は、初心者のうーちゃん&たまちゃんと並ぶとより際立つ。そしてその身体がウォールで躍動する迫力!私の中の乙女心がトゥンク…します。 または精神性。ギャオの望みは「どんな壁でも登れるようにありたい」というもの。その高い志は、ただ自分を高める事に向けられます。強さと、誰かを追い落とさない優しさの同居。その在り方に憧れてしまいます。 そんな強く優しいギャオに、主人公・うーちゃんはかなり惚れて?しまっている様子。同じ道具使いたいだなんて……。そして、ギャオの言った「サイコーになる」を知りたくて、うーちゃんは今後も登り続ける様子です。 ギャオとボルダリングに救われたうーちゃんが、どんなクライマーになるのか……じっくり進む本作、少なくともあと10巻は読みたい!

君には届かない。

じっくり丁寧に進むのがいい…

君には届かない。 みか
たか
たか

クリスマスにオタクの友人とオススメ漫画を贈りあう遊びをしたのですが、その時にもらったのがこれでした。 「成績優秀な男前と地味で勉強が苦手な主人公の幼馴染」という王道オブ王道、今までの人生で100万回読んでる設定のはずなのに「あぁ〜〜〜…いい…!」と悶えてしまう。 ベタな設定に加え、絵も多く描き込まないシンプルで可愛い感じでそこまで自分の好みじゃないのに面白い…! BLは割と「BL世界にしかいない思考回路の男」が登場することが多い。すぐ惚れて大袈裟にドキドキしたり、何の疑念や羞恥を感じず男同士ベタベタしたり…それで面白いこともあるけど、大半はその「あり得ない都合の良さ」に読んでてしらけてしまう。 一方、「君には届かない。」は、そこんとこがすごくちゃんとしてる。 2人の内面での葛藤や疑念をじっくり描いているからこそ、身体的精神的イチャイチャがなく友達として一緒にいるだけで萌える。そしてほんのちょっとな些細な触れ合いが、とんでもない破壊力を持つのがたまらない…!! ヤマトがカケルを思い、自分の恋心に蓋をしてストイックに幼馴染みの距離を保ち続ける姿が本当にいじらしい。 2巻がメチャクチャいいところで終わってて、まんまとハマりました。「君には届かない。」という切ないタイトルの物語が、今後どう進んでいくのか楽しみです!

デイズ・オン・フェス

パーリィピーポーも納得のリアリティ! #完結応援

デイズ・オン・フェス 岡叶
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

ANAGUMAさんが未経験の立場から本作の魅力を語られていて、ついつられて全部読んでしまったので、こちらからは経験者から見た本作の魅力を書いてみたいと思います。 ……フェスの入場口でリストバンド付けて、ステージに進んでいくと、向こうの方からズンズンって、低音が響いてくる訳ですよ。うわぁって小走りになって……1巻の初フェスのワクワクする描写、これ私知ってる。 かつてフジロックに6回行っている私が保証します。この作品、めっちゃリアルです! 例えばテント泊の朝が蒸し暑い!みたいな細かなあるあるが沢山あります。フェス前にフェス用プレイリスト作るよね。また渋谷のライブハウス側のコンビニの山盛りのゴミ箱とか、そんな細かな事が物凄く懐かしくて……よく知っている人ほど嬉しくなる描写がそこに。 新しい音楽との出会いと、何でも受け入れたくなる開放感。あんまりバンドを知らなくても、ダンスが下手でも、若くても歳取ってても、大体の人が何かしら楽しめる。空は広いし飯も旨いし、みんなフレンドリーだし、本当にミュージシャンにも会えるし……トイレとか虫とかは確かに問題だけれど、それさえ気にしなければ、極上の祝祭空間がそこに!……というのも全部描いてある。 大きいフェスに関してはメトロックやROCK IN JAPAN FESTIVALなど、日本人バンドメインのとっつきやすいフェスをモデルにされている一方、小さなフェスに拗らせ男子が好きそうなマニアックさがあったり。日本のフェス、数も種類も豊かになったのだなぁと、しみじみさせられます。 登場するバンドの、ジャンルや音色はほぼ描かれません。「音楽」ではなく、ジャンルや好みを超えた祝祭空間……あらゆるパーリィピーポー(party people)に開かれた「フェス」を描く事が主目的なのだと思います。 初心者・玄人それぞれの楽しみ方、ライブアクトで盛り上がった後ひとり余韻を楽しむ感じ、そして特にアウトドア趣味の方がフェスに行きたくなるような内容、ファッションや細かな持ち物まで、フェスのリアルと楽しさをこれでもかと描いた作品。 そしてフェスの無い日常を、フェスを目指して生きるパーリィピーポー達の物語を描き、厚みのある内容の全5巻!

ケッコーなお手前です。

茶道の楽しみ方を米国人と学ぼう!

ケッコーなお手前です。 みよしふるまち
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

部員一人の廃れた茶道部に、米国留学生男子と茶道の家元の息子が共に訪れることから始まる、高校茶道部の活動物語。茶道という日本伝統文化の楽しみ方について、色々教えられる作品です。 日本文化を格闘術としか認識していなかった留学生。家元の息子の手前に触れ、何かを感じるものの、その心を理解するのには、幾らか時間がかかります。 喧騒を離れ、客に寛いで欲しいという茶の湯の心を理解するのに、邪魔になるのは「無駄を省く」欧米流ビジネス的な効率主義。そこから離れ、茶道の楽しみを覚えた留学生を苦しめることになるのは、一流ビジネスマンの父親という悲しみ。 一方、家元の息子は、茶道は一流だが人と和することが苦手。こちらも父親と、仲は悪くないが微妙な距離感。グイッと距離を詰めて来る留学生や、部員達との交流で彼は、茶の湯と父との、新たな向き合い方を見つけられるか。 茶道というと作法や道具に目が行きますが、本作ではそこよりも、茶席の回し方や設えの意味、意外な場面での茶道部の活躍など、多面的に茶道の「実践」が示されています。ノスタルジーや儀礼ではない、現代においても変わらない茶道の有効性が、ここにはあります。 日々の生活にゆとりを取り戻すために、誰かに茶席に招待されたいな……と、思わず考えてしまいました。

さんさん桜

異文化の熱が伝統文化に風を起こす

さんさん桜 くらの
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

日本舞踊を学びに来た外国人と、そのにわか師匠のやり取りで、日本舞踊を美しく・カワイク紹介する漫画『さんさん桜』。内容については、たかさんが先に書かれたクチコミが、日舞の経験者の視点から興味深い紹介をされていました。 https://manba.co.jp/topics/24511 私はこの作品から「外国人が日本文化に携わる意義」について考えました。 たかさんも書いてらっしゃいますが、この作品では外国から学びに来た子が、とても「楽しそう」で、それがいいんですよね。その楽しみ方、夢中になる目に、一度日舞を捨てた青年は魅せられ、苦しみながらも再び日舞に向き合い始める。 熱烈な外国人の「日本文化の楽しみ方」は、例えば陶芸を描いた『へちもん~信楽陶芸日記~』や、茶道の作品『ケッコーなお手前です。』にも描かれていて、伝統の本質を知り・学びつつも屈託のない、それでいて熱心な楽しみ方が、どこか鬱屈としている「伝統の継承者」を救う。 伝統芸能の内部にいた時に、なかなかその美しさに気付けなかった、というたかさんの告白は、結構重要な事を指摘しておられると感じます。 伝統文化を生きる伝承者達が、見失ってしまう「伝統文化=自分の良さ」を、外部の人から教わる事がある。外から熱気を帯びて、その文化が好きだ!と飛び込んでくる人に、かき混ぜられて再び吹く風がある。そんな爽やかさが、この『さんさん桜』、そして例に挙げた『へちもん~信楽陶芸日記~』『ケッコーなお手前です。』などにも、確かにある。 異文化からの熱と、それに救われた伝統文化、という形を描いた3作品。そこから日本人の私も、自分達の文化の継承について……本質的な楽しさを知り、誰かに伝えることの大切さを、色々考えさせられました。

あざにおしろい

SHBのぱらり先生が描く共感必至のメイク漫画!!

あざにおしろい ぱらり
たか
たか

ぱ、ぱらり先生ーーーっ!!!モーニングを開いたらぱらり先生の名前があってバチクソテンション上がりました…! 「周囲から美人だと思われている篠宮ユキは、メイクが得意で美容の専門を目指している女子高生。ユキは、顔に痣がある同級生白井梢に興味を持ち、痣を隠すメイクを施してあげるが…」というあらすじ。 あざにおしろい(前編)Dモーニング http://dm.m.eximg.jp/viewer/1440/1425/ https://twitter.com/parari000manga/status/1149995308849364992?s=20 んも〜〜!!ユキも梢というキャラクターが持つ説得力がすごい…!! SHBのときからモブにすら読み応えあるバックグラウンドを設定していたぱらり先生。今回の『あざにおしろい』でも、家庭環境・学校生活の違いを提示することで、2人がどんな人間なのかめっっちゃわかりやすく描かれています。 「そのままの自分で自信を持っていたい」 「いつもと違う自分になりたい」 この前編で梢が抱いた気持ちは、痣の有無に関わらず全てのメイクをする人に当てはまる感情じゃないでしょうか。 そして何より、ぱらり先生の描く女の子2人のやり取り…やはり良い…!女の子がメインだからか、SHBのときよりも絵がきれいになっているように感じました。 梢ちゃんのデート、男の子にガッカリされる未来しか想像できなくて辛い…。 後編でユキと梢の2人がどんな決着をつけるのか楽しみです!! >(補足)SHBとは、ぱらり先生の著書「スーパーヒロインボーイ」の略称。ひょんなことから女児アニメにハマってしまったけれど、そのことを素直に認められないヤンキー男子高校生を描いた作品。 >本編のそこかしこで息をするように自然に百合とBLが進行するためか、男性読者むけのレーベル作品でありながら、本屋さんによってはBLの棚に置かれているらしい。 (画像は前編より)