楽しみにしていた「空気人形と妹」のたみふる先生の新作。 開いてすぐの2人の手がもう最高…やわらかそう 読みながらニヤつくのを止められない!! あとがきで作者は「自分の恋愛はうつくしくない…? そんなことない! OKOK!」と語っていますが、打算・すれ違い・本音といった、現実の恋愛の美しくない部分をこの作品は描いています。 だがそれがいい…! 恋愛の嫌な部分は、焼き魚でいう肝みたいな大事なところだったんですね。 OK、ぜんぜんあり。 百合に限らず、こういうリアルで生々しい恋をもっと読ませてほしい。自分たちになりに愛し合っている姿は、メチャクチャ美しいから。 (今のところ)1巻には2人に悪意を向けるような人物は出てこないので、安心して最高の恋を楽しんでください!!!
表紙のイラストと装丁(ピンクの液体のところがちょっと立体になってる)が素敵で思わず購入。ファッションをテーマに、ヤマシタトモコ先生が好きなものや悩みを語ります。 好きなメンズファッションの話題で、スケーター男子、空港で見かけた素敵なアフリカ系ビジネスマンのおじ様と並んで、**日曜日のお父さんファッション**(※私服にスーツ用靴下をあわせる)が登場したのには笑いました。 **「田舎貴族の娘が着てそうなドレスが好き」**から始まるヤマシタ先生の妄想がジブリの影響を多大に受けていて、「わかる!!!そういうの大好き〜!!」と激しく共感しました。 読んだのはかなり前ですが ・槇村さとる先生とお食事することになったら ・入院したときのファッション ・フンドシとブラの話 **・松たか子が姉ちゃんだったら** ・ファッションを褒められたときのリアクション など、面白すぎてメチャクチャ記憶に残ってます! この本1冊でヤマシタ先生のことが大好きになりました…! わたしもいずれ手ぶらで新幹線乗りた〜い。
1巻を読み終えるのが早すぎて呆気にとられた。 なにより「小さい男の子と背の高い女の子」という使い古されたテーマで、これほど夢中になれるとは嬉しい驚きだった。 もっと、もっと2人を見せてくれ…!!! どうしてこんなにもこの作品にハマってしまったのか? それはたぶん、渋木くんと高峯さんが「自分の魅力に無自覚」だから。 渋木くんはかわいいけれど、かわいさを利用してない。 高峯さんはかっこいいけど、誰かのためにかっこよく振る舞っているわけではない。 この2人が自然体でいるところが、読んでいて清々しい理由なんだと思う。 ※なお見開きの高峯さんがイケメン過ぎるので、電車の中とかで読むときは表情筋の崩壊に注意してください
歴史マンガ・動物マンガ・コメディマンガの良いとこどりしたすごい作品。 日本の妖怪漫画といえば、人間と妖怪が心を通わせる姿に胸を締め付けられる夏目友人帳と、民俗学的に「ありそう」と思わせるリアルな妖怪の百鬼夜行抄。 そして千年狐はこの2つの良いとこどりをしてあり、舞台は中国。そんなん面白いに決まってる…! 物語に説得力を与える高い画力。そしてキレのいいギャグ。いったい天は作者に何物を与えたんだ…!? あぁ〜ッ!!もふもふかわいいし、ストーリーはしっかり歴史要素あるし…面白さ一人じゃ抱えきれない🙈 買って絶対後悔しない作品です! 続きはよ〜〜〜!!!
※ネタバレを含むクチコミです。
力士の熱い戦い、それを支えているのは思えばなにより食事。腹が減っては戦は出来ぬという言葉が表すとおり。腹が減っては相撲はできない。主人公はちゃんこを使い、力士の胃と心を掴んで投げ飛ばす。アホっぽいけど、勢いがあって面白かった。
身長差を取り扱った作品はたくさんあるけど、これは特別に好き。身長が違うからこそ視点が合わないふたりが出会ったのはただの恋じゃなくて、奇跡。それを丁寧に描いている。コマ割り、トーン、背景。どれもが印象的なシーンを鮮やかに彩っている。いい作品。
当初こそモテたい男女への辛口指南書という体でスタートしていますが、後半になってくるとより話は広がっていき、最終的にはもうこれ万人のためになるコミュニケーションの教科書です。「○ーチェ先生」や「マンガでわかる心療〇〇」のように似た感じのズバッと言う系漫画によくある寒さやイタさを感じません。普通に面白い。上野さん、キャラに嫌味がないので自然と耳が傾きます。 「上野さんのアドバイスのお陰でうまくいきました!」ってところまで書かないのが下品でなくて良いですねw
ずっと雪が降っているのが印象的だった。雪が電車を止めて、雪玉をぶつけ合って、子供が言う『雪国』の引用で、救われた気分になる。家族という題材はモーニングでよく目にするけど、そのためか新鮮に思えた。
不良ってものに憧れてしまう時期はある。けどそれっぽいことをしても、なんだか授業のことが頭から離れない。この主人公の思考はそういうリアル感が描かれていて、共感できた。 彼のレイアップを打った時の飛翔は、そうしたこれまでの自分からも飛んでいった瞬間だったのだろう。物語のラストでは、ハーレーを知らない主人公は扉絵で、それに跨っている。それがはっきりした就職などの現実的未来には繋がっていないだろう。けど、彼にとってこの1ページはかけがえのないものとなるに違いない。そんな青春を瑞々しく感じ取れた。良作
本屋で表紙買い 読んでビンビンきました 連載ぎりぎりで2巻まで出たようで3巻は少し先のようで残念 マンガUPのWeb連載はまだ序盤で最新話見れなくて残念だな ひさびさに雑誌買うかな。。。。。
原作ともアニメとも違う描写がされていてどの層でも楽しめるコミカライズ。 柳洞寺のキャスターと宗一郎の脱落の経緯、真アサシン召喚など、他媒体では割愛ぎみだったシーンがこのコミカライズでは細かく描かれていて理解が深まった。 5巻最後の士郎がライダーに淫夢を見せらせるシーンで遠坂が犯されていて完全にエロマンガ。
作画とかキャラはいくえみ男子…でも読んだら伊坂幸太郎!確かに繋ぎ方とか起承転結が伊坂幸太郎です! いくえみ綾の恋愛話、とても人間の繊細なとこ書かれてて好きです。 伊坂幸太郎の全部伏線回収して最後で繋げるあの気持ちよさたまりません。 両方が合わさるとこうなるのか…とちょっと感動。
『SKET DANCE』の篠原健太氏の作品。 全5巻で完結と、コンパクトにまとまっていてとてもいいです。それでいて話の骨子は結構シリアス目。とはいえコミカル要素もたっぷりと詰まっていて読みやすさも十充分。 宇宙へ行くことが当たり前となった世界で、地球から遠く離れた惑星にキャンプをしにいくことになった9人の学生たちのサバイバル劇。謎の球体によって突然宇宙へ飛ばされ、本当に唐突に遭難してしまう。しかし、運よく宇宙船を見つけ、9人で協力して母星を目指すことになる。なんとも突拍子も無いスタートだが、全部読めば「なるほど」と思うはず。 様々な惑星の多様な生態系に翻弄されながらも生き延びていく……だけかと思いきや、それだけで終わりません。ネタバレになるので詳しく書くことは避けましょう。後半からラストにかけての怒涛の伏線回収がなかなか見事ですよ。
1巻にして傑作の匂いがプンプンする! 生まれてこの方ずっと日陰を歩んできたような地味な女性が、30歳の誕生日に芝居のチケットを買わされ初めて観劇したことで、舞台上のキラキラ華やいだ世界に想いを馳せ、人生に光が差し始める。 「まぶしい・・・。 私も・・・私も、舞台に立ちたい! 私も、キラキラしたい!」 出てくるキャラクターが全員一面的でなく、ほどよく癖があって場面によっては良くも働き、ときとして悪くも映る。 かわいくて派手で嫌味なようで、実は素直でとても姉想いの妹。 娘の幸せを願ういい親であるようで、偏見まみれで視野狭窄的かつ前時代的な母。 他人を見た目で判断し、下に見ることで安心を得ようとする職場の同僚たち。 おじさんになるまで芝居の夢を追い続け、他人の心にズカズカ踏み込む押しが強い売れない舞台俳優。 絶世のかわいさでちやほやされ、地味なものに何の価値も感じなかった人気女優。 ただ悪いだけの人は登場しないし、同じように全くの善人もいない。 世の中、はっきり白黒つけられることの方が少ない。 とにかく人をすごくよく見て描かれているなと思わされる。 30歳にして初めて一歩踏み出し、ゆるやかに青春が始まっていく様がたまらなくワクワクするし、まだ何者にも染まっていないピュアすぎる主人公に「頑張れー」ってエールを送りたくなる。 一話のラストなんて最高だ。 ストーリーの進行具合にもよるだろうけど、すぐにでもドラマ化してもおかしくなさそう。 描写力がずば抜けて良くて、デフォルメされたかわいい絵でも感情がしっかり伝わってくるから、心の声がほとんどないにも関わらず何を考えているか手に取るように分かる。 ビッグコミックオリジナル2018年第17号に載っていた同作者の読切「特別読切『初恋』」も素晴らしかった。 早く2巻出てくれないかなー!
鬼退治の話ですが、真剣な場面や大事な場面でも少し笑えるところや、グッとくるところがとてもハマります。
現実世界で大金持ちになった主人公が異世界に飛ばされてヒドイ目に… そこまで遭うこともなく持ち前のズル賢さでクズとして無双するというのがこの手のテーマでは斬新かも。 ちゃんと努力したり一本スジを通すところが主人公の性格の悪さとギャップがあっていいですね。
まず上野さんが先輩っていうのが当然最高だし 脇を固めるキャラをまんべんなく揃えたりSF考証が毎回きちんと考えられているところに作者の几帳面なこだわりを感じます。いいぞ!!!
プー●ン大統領、異世界転移、架空生物、格闘技、美少女、冒険、そして騎乗(ライドン)と面白い要素しか入ってないバチクソ熱いマンガ!! 転移前の世界でもチートなプルチノフ大統領(※石畳を足で踏みつけて、めくれ上がった敷石を盾にして防御できる)が、異世界でライドン(※何かを乗りこなすこと)のために敵を片付けていくさまは爽快!! キン肉マンとドラゴンボールのパロディは笑った。 成金趣味のサキとポーション中毒のベルという2人の残念美少女、プルチノフに懐くボッチ(馬代わりの走る鳥)、そして大統領。 美少女・かわいい動物・最強のおじさんという愉快なパーティの冒険にワクワクがとまらない!! 果たして閣下はケンタウロスに騎乗(ライドン)できるのか? 雑誌で閣下の動向を追いたい…!
日𠮷ゆい子さんの読み切りはほのぼのしてて癒される。 娘から婚約相手を紹介したいと言われたお父さんの話で、お嫁に行っちゃうのが嬉しい反面ちょっぴり寂しいっていう繊細なニュアンスがすごく伝わってきた。 このお父さんが大阪弁でつるっぱげで可愛いんだよなぁ。
白黒の紙面に色が見えるマンガは初めてで胸が一杯になった。 5巻の表紙に惹かれて手にとったけど、純平と山崎が握ったロープが鮮やかな赤に見えた瞬間、これはすげえ作品を読んでるなと感じた。 山崎がブラインドマラソンに出会い、健常者だった頃と同じ風を切って走るという感覚を取り戻したように、読者も白黒の世界でランナー2人を繋ぐロープだけが色がついて見える体験は、簡単には得難い素晴らしい追体験だと思う。 そして単行本しか読んでない自分としては、正太郎の只者じゃないオーラがメチャクチャ気になる...! お前は一体何者なんだ〜!!
「バーズ」休刊により、「空電ノイズの姫君」がイブニングに移籍。 女子高生でバンドものというと元気で爽やかというイメージを抱きがちですが、この作品はやはり冬目景といいますか、ゆったりとしていてどこか陰のある雰囲気です。 また私が音楽をやっているのでどうしても敏感になってしまうのですが、作品内に「音楽」という概念・文化がごく自然に息づいていて、すごくリアルだなと感じました。たとえば少年漫画にありがちなように「これが私たちの音楽だ!」みたいに変に美化されたり特別視されているようなこともなく、サラリーマンのお父さんが普通に会社に行くがごとく彼女の傍らにはギターがあります。 1話でギター少女と歌う少女が出会ったからといって、その場で組んでグラミー賞獲ろうぜ!!とはならない代わりに、じっくり見守っていきたくなる漫画です。 というかスタジオ付きの家に生まれ育つってめっちゃ羨ましいw
あらすじだけで興味惹かれる...「わたしを離さないで」とか「7 SEEDS」的なSF要素があるんだろうか わけありの子どもたちが学園で暮らしているところに、トーマの心臓やら名作古典少女漫画に通じるギムナジウムの雰囲気が感じられて好き flowers2019年1月号の4話から読んだので、早く2月に出る1巻で全部読みたい!
「人間の宇宙」を読んだのもつい最近のような気がするのにさっそく新作読切が!絵が上手くなってるなぁと思った。読みやすくなってる。前作もきょうだいのお話だったけど、じんのあいさんは色んな人間関係のエモさを描けそう。
去年、読切だったのが新連載として帰ってきた!めっちゃ嬉しい! 弓道部の後輩が憧れる咲宮センパイは、プライベートだと超天然。 でも凄腕の殺し屋でもある。もちろん標的は弓で狙い撃ち。 基本はギャグマンガ! だけど殺し屋としてのクールな一面とのギャップもたまりません。 このコマかっこよすぎ…。
岡崎京子作品の映画化ということで予告的にも期待できそうだし漫画の方も未読だったので読んでみました。チワワちゃんの話はチワワちゃん以外の語りメインで進むので周りのキャラクターが引き立つ感じかと思います。 他の話も魅力的でいいです…。 理想とかブランドとか男、女、現実いろんなものを詰め合わせてかっちょいい漫画にしてある感じ、毎度惚れますね。 https://youtu.be/43jYUfX4xUI
奥様の伊藤理佐さんも他誌で育児マンガを連載されているので、そちらも併せて父と母の両視点を読めるのが面白かった。ネタはなるべく被らないようにしていたらしいけど。
もう、漫画という枠を超えたものと思っていいんじゃないですか。だって当時も今読んでも面白すぎるし、絵だって綺麗で完成度最高。 ドラマ・映画・舞台・ミュージカル…漫画だけじゃあもったいない!みたいな感じで二番煎じされていくんでしょうかね。実写化もまぁ良かったですが、いろんな媒体に広がりすぎてストーリー自体に若干飽きてしまいまして、原作ファンなら漫画だけをたまに読み返すくらいにしておけば良かったと最近になって後悔しまくっています。
「日本国紀」が賛否を呼んでいる百田尚樹氏のベストセラー。「日本国紀」は未読なので言及は避けますが、議論の経緯や論点はこの記事がわかりやすかったです。 https://news.yahoo.co.jp/byline/yamamotoichiro/20181222-00108643/ 「永遠の0」では太平洋戦争を、そしてこの「海賊と呼ばれた男」は戦後の復興を描いています(どちらも同じ作家さんがコミカライズを担当しています。)どちらも単純に読み物として面白いです。 主人公・鐡造のモデルは出光興産の創業者・出光佐三氏。戦争で焼けた会社を立て直し、石油をめぐり英米と渡り合いながらイランとのシーレーンを切り開いた痛快な半生の物語です。鐡造は愛国的で厳格で、同時に封建的で古臭い人物として描かれています。昨今の働き方改革の世代とはまるで違う生き物のようです。どちらが優れているとかではなく、時代がそうさせたというか、結果的に豊かな日本を築いたのは彼ら戦前生まれの人々でした。 「日本国紀」といい、学校教育や大メディアをなぞるだけでは知ることのない不可視の歴史にスポットを当てるのが好きなようですね。「これが真実か……!」と鵜呑みにさえしなければ「永遠の0」もこれも面白い本だと思います。
良かった点 ・主人公の刀鍛冶としての成長部分と歴史上の人物との絡みが良かった ・刀と刀鍛冶に詳しくなれる 総評 ・あおきてつおの漫画はどれを読んでもそこそこ面白い
韓国/アメリカでも映画化されたオールド・ボーイの元になった漫画 「嶺岸信明」「土屋ガロン」こと「狩撫麻礼」のサスペンスで主人公 五島慎一 はある日突然誘拐され10年間監禁された。解放された五島が自分が監禁された理由を解き明かすために奔走する。 前半の謎を解き明かす部分の方が好きかな ラスト周辺で監禁された理由が明らかになるが衝撃的な内容だ 「マジでそれかよ」って思うけど、物事は受け取り側がどう思うかだよな
吾妻ひでおの『うつうつひでお日記』のなかに、福満しげゆきの『僕の小規模な失敗』(『僕の小規模な生活』の前日譚)について言及している頁があったように思われる。うるおぼえだが、いわく、さいごのコマの表情がとてもよかった云々と書かれていたような気がする。たしかにその表情はとても小さなコマながら私の印象にも強く残っていて、すぐに思い浮かべることができた。また、ほかの頁には『うち妻』の妻が吾妻ひでおタッチに模写されていたりする。要するに、年の差はあれど、どうやら吾妻は福満のファンらしいのである。 そして『失踪日記2 アル中病棟』をさいごまで読んだときに、この表情のことを思い出さずにはいられなかった。どん底で、先行きは何もままならない、そんな状況下で街を彷徨い歩きながら、けっしてすべてには落胆しきっていないような、あの何ともいえない表情。同じ自伝的マンガ作家の先輩と後輩であり、またマンガ家として同志でもあるふたりを繋げたひとつの表情、こんなに美しいオマージュがほかにあるだろうか……と感嘆に震え、目頭が熱くなったのだった。
江口寿史という漫画家がいまして、彼は世間的にはマンガを放棄したひととして有名(マンガをやめてイラストレーターに転身した)なようなのですが、じっさいのところ、彼は自身が漫画家であることに、いまだ深い誇りと拘りとを持ち合わせてやまないようなのです。そして、ここにもひとり、吾妻ひでおという一度はマンガを放棄して戻ってきたひとがおります。 手塚治虫文化賞、日本漫画家協会賞、文化庁メディア芸術祭、星雲賞など、権威ある賞を総ナメにした吾妻ひでおの『失踪日記』ですが、ここに辿り着くまでには"失踪"の一言では片付けられない前途多難なエピソードがあるのです。タイトルそのまんま、自らの失踪からのホームレス、アル中などの体験を描いた『失踪日記』の内容ついては、たくさんの賞のお墨付きがあるので面白くないわけがない、ということで割愛させて頂き、このたびは、吾妻ひでおはどうして失踪しなければならなかったのか、というところについて触れていきたいと思います。 失踪日記の冒頭にもある通り、原稿を途中で投げ出して行方を眩ました後、失踪してしまった吾妻ひでおですが、同じように原稿を放棄した江口寿史とは似て非なるところがあります。それは一言でいうと、やりきったかやりきってないか、の違いだと思います。江口寿史は良い作品にしようと拘るあまり完成に間に合わず、どうせできないなら止めてしまえ、という立場をとりました。いってしまえば只の不真面目です。対して、吾妻ひでおは大真面目。失踪後の今でこそ、アウトローの代表格のようになっていますが、失踪前のキャリアはむしろ真逆で連載を掛け持ちしまくり月に100頁以上を描き上げる仕事ぶりでした。こういう書き方をすると、あまりの仕事量に音を上げて失踪したと思われそうですが、それもまた少し違います。さきほど、江口寿史に不真面目のレッテルを貼りましたが、彼にしても元々は漫画に対する真面目すぎる気持ちが仇となって、どうせ完成させられないならやらない、という不真面目に振り切る経緯があったわけですが、吾妻ひでおの場合は真面目に真面目を貫いた、つまり、締切や作風等の出版社や編集者の意向には従いつつも自らの誇りと拘りを発揮し続けたのです。対して、江口寿史のばあいは自らの誇りと拘りを守るために放棄したといえるかもしれません、そこにはもちろん週刊少年ジャンプというメジャー誌の王道で連載していた江口と、マイナー誌やエロ本等の辺境で活躍していた吾妻との土壌的な違いがあるのですが。 では、具体的には何に拘ったのか? 従来のギャグに(小説家の筒井康隆らから影響で)SFやナンセンスの要素を盛り込んだスタイルで人気を博した吾妻ひでお。当時その試みは新鮮で、大友克洋、いしかわじゅんと合わせてSFマンガのニューウェーブ御三家と呼ばれたりしていました。しかし、新しいものが古くなるのは自明の理、吾妻ひでおはブームが頂点に向かう最中、新たな試みをはじめます。彼はブームに乗っかって同じネタを繰り返すことはしなかったのです。彼が見据えたのはナンセンスのさらにその上、「表現の解体」というテーマでした。そもそも「ナンセンス」とは約束事や理論性をあえて無視することで生まれるユーモアの総称で、そこから吾妻ひでおが得意とするスラップスティック(ドタバタ)や不条理な笑いが引き出されてきたわけですが、彼はそれだけでは飽きたらず、自らが考え出したギャグの体系や方法論、さらには先人たちが創り上げてきた漫画表現そのものを壊していったのです。つまり、先人たち、そして自らが積み重ねてきた漫画表現という名の「建物」を文字通りひとつずつ解体していったのです。 実に様々な方法で「解体」を試みた吾妻ですが、その代表的な例に「ナハハ」というキャラクターの存在があります。この時期(奇想天外社から『不条理日記』等を発表)の吾妻漫画に頻繁に登場する「ナハハ」という名のキャラクターは喜怒哀楽の表情を持っていません。もっというと大人なのか子供なのか、男なのか女なのかも判別できない、つまり登場人物としての情報を全く持っていないのです。「ナハハ」の他にも、無口、無表情、無感情を徹底したキャラクターが当時の吾妻漫画にはいくつも登場します。表現豊かな漫画が描けるようになった時代に、あえて、その逆を突き進み「空虚」を描こうとしたのかもしれません。 そして、あらゆる漫画表現を解体し壊しきった先に吾妻が見たのは正に「空虚」そのものでした。当然のことながら、何もかも壊してしまった後には何も残りません。吾妻の周囲には先人たちや自らがかつて創った漫画表現の残骸が散らばっているだけで、目の前には只々広がる真っ白な闇、空虚があるだけだったでしょう。これを目の当たりにした吾妻は遂に何も描けなくなり、逃げ出し、酒に溺れることになります。ここらへんまでが『失踪日記』には描かれなかった前日譚になるかと思います。 表舞台から姿を消してから十数年……、心と体の健康を取り戻しつつあった吾妻は、かつて自らが壊した漫画表現のスクラップを広い集めて再構築をしはじめます。それが『失踪日記』であり、あるいは、そう、『失踪日記2~アル中病棟~』で吾妻が作っていた、ガラクタのネジや何か、どうでもいい金属片でできた、あのオブジェ作品のように。『失踪日記』の魅力は、正にあのオブジェと同じようなものなのでは、という気がします。つまりそれは、不完全の美学であり歪な面白さなのではと。思えば、ナンセンスにしても解体にしても、吾妻ひでおはいつだって歪さを追い求めて漫画を描いていたような気がします。これこそが吾妻の自己表現の形であり、誇りと拘りの種だったのではないでしょうか?
これほど読んでいてハラハラさせられる恋愛漫画は久しぶりに読んだかも!弁護士としてバリバリ稼ぐ仕事女の主人公が、既婚者に本気で恋してしまう話です。 大人のぐちゃぐちゃした恋愛群像劇といえば「東京タラレバ娘」や「きみが心に棲みついた」なども面白いですが、それらや他の少女漫画のような予定調和感がなく先の展開がまるで読めません。また女性向けコミックにありがちな共感や自己投影ばかりに重点をおかず、気持ちのいいスピーディーさとこちらの想像を超えるキャラクターの行動力で楽しませてくれます。 3人のセフレと日替わりで遊び周り、仕事人間だから結婚しなくていいと豪語し、高根の花を自認していたにもかかわらず、一見冴えないが天然女たらしの既婚の公務員にコロリと初恋に落ちてしまい本気で困惑する美留町さん可愛いです。 2巻まで読みましたが完全にハマりました。 仕事が終わったら急いで書店へ行って続きを探そうと思います。
圧巻のSFダークファンタジー巨編。 バンドデシネ好きや、松本大洋、大友克洋、寺田克也、弐瓶勉、宮崎駿、鶴田謙二、ドロヘドロが好きな人には特に響きそうな構図のダイナミックさ、話の壮大さ、絵の緻密さ、気持ちの良いシーンや動きがあって素晴らしい。 その系譜に連なる凄味がある。 これは紙で買ってよかった。 装丁もいいし大型本で万歳! 先日、サイン会があったらしいが行けなかったのが悔やまれる。 冒頭に出てくるアリスとヘビと番号とドア。 ページをめくるたびにいろんな世界を見せてくれる。 中盤までのそれぞれの欲望を描くのも悪夢のようで不気味で良かったが、中盤以降の加速度的に変わっていく展開にはどんどん前のめりになって読んでしまった。 少しずつ世界の仕組みや謎が解かれていくポイントも気持ちよく、いいラストだった。 この単行本自体、鈍器になりそうな重さがあるがこのマンガのテーマとも合っていて、それでこそという感じ。 いろんな人に知ってほしい一作。
今流行のラップバトルに、深窓のご令嬢がハマってしまうというインパクトのあるストーリー。 過去、何人もの天才キャラを描いてきた曽田先生の実力が遺憾なく発揮されている。 しかし、いかにも悪そうな(?)若者のクラブシーンを描きつつも、その根本にあるのは『日本語』という語学への深い造詣。 言葉をうまく使いこなすこと=コミュ力の向上、ひいては恋や友情など人間関係の構築にも繋がるというテーマが面白い。
昭和テイストの萌えエロコメ。絵柄や構図などはビームコミックスなどでよく見る(若干食傷気味の)人工的なレトロタッチなんですが、この作者が凡百のレトロ風漫画より全然見れるな、というか良いなと思えるのは、少女漫画ばりのキラキラ感があるからでしょうか。その点は入江亜季にも似てますが、あちらはキャラまでが少女漫画的であるのに対し、こちらはどちらかというと少年漫画的です。昔の少年漫画的なセクシーなお姉さんが、昔の少女漫画ばりのキラキラ絵柄で描かれるとなるほどこうなるのか、と(もちろん、どちらも萌えの文法で今っぽくブラッシュアップされているのは言うまでもないですが。) まず、頭の悪さ全開のスピード感がシリアスな笑いを誘う冒頭5ページでなんとなくこの作品の楽しみ方がわかります。掴みの強烈さは柴田ヨクサル「東島丹三郎は仮面ライダーになりたい」に近いです。ただしあれと比べると「レイチェル」の方が計算してやっている印象を受けます。色々と展開が雑で無茶苦茶なんですけど、そこが笑えるというか。 また、各話のサブタイトルが「ダイタンな○○」「○○に御用心」など昭和全開なところも芸が細かいというか、コンセプトがわかりやすくていいですね。私は「思ってたのと違う(ので残念)」という考え方が嫌いなんですが、目次と冒頭5ページでしっかり作品紹介ができていてとてもスマートだと感じました。
多分もっと続く予定だったが掲載誌のコミックギガが休刊になる都合で後半があんなに急展開になったのだと思う。 内容の雰囲気は「狩撫麻礼」だが「田村信」の作画の感じでコメディよりになっている。 掲載時の最終ページには未完とあったが電子書籍版はその文言はなくなっていた
私が思う芸術の力というのは、元気や勇気をもらうみたいなポジティブなものではなくて、この作品のように「駄目さに誘惑する」力のことだ。殺人犯の口から人を殺す話を聞く、出所したら大麻を取りに行く約束をする、小豆とマーガリンを挟んだパンを隠れて食べる(見つかったら仮釈放取消し)…順風満帆、特に不自由のない人生を過ごしていたとして、「本当にそれでいいのか?」と語りかけてくるような体験が描かれている。読み終わってから冷静になって考えると、「やっぱこのままでいいや」と思うんだけど。
最初の方は好きだけど、後半になるといまいちこの世界観にのめり込むことができなかった。急激な展開で理解が追いつきそうなところで終わってしまった。 勝手な言い方だが狩撫度数はそんなに高くない
アイリウムを飲めば嫌なことをしてもその未来の記憶は数時間後に確実に消える。 そういう設定で話が進みます。 映画監督、ママ友、女医、軍人、ホスト色んな人がアイリウムを飲んだり飲ませたり。 飲んだらどうなるか全員オチが違います。 こういう結果になるのか!!全話数すげぇ…というオチ。面白い。オススメです。
80年代の「ビッグコミック」や「ビッグコミック増刊」で連載されたボクシング連作の短編集 「十点鐘」「ザ・リミット」「真夜中の挑戦者」「アフター・アワーズ」は特によかった。 「真夜中の挑戦者」「アフター・アワーズ」あたりはのちの「ハード&ルーズ」などにも通じるものがありそう 掲載時期の前後は不明ですが、同じボクシング漫画の『ナックル・ウォーズ』や『青の戦士』の内容に比べて「狩撫麻礼」っぽさはあんまりない感じもする。 掲載誌の差かそれとも漫画家の差かわからないが両方とも面白い事には違いない
『POWER FOOL』 途中までは方向性がよくわからないがラスト2回は間違いなく「狩撫麻礼」の思想が出まくってる 面白いかを聞かれたら答えに困るがラスト1ページの名言は一見の価値はあると思う 『Rock喫茶開店入門編』 Rock喫茶の開店を考えているカップルに対してRock喫茶の店主が奇妙な提案をするがなんというか条件が「狩撫麻礼」っぽい Rock喫茶の店主って「狩撫麻礼」本人の姿が元になっているのかな 最近出た「地球探査報告 ロンリネス」の表紙の「狩撫麻礼」に似ている
シェアハウスから始まる恋!一緒に住んでみたらダメだったとかがない設定で距離が近い設定だと思います。しかも社会人×高校生 絵が繊細で綺麗で!!!各コマ「うまいなぁ〜」とまじまじと見入ってしまいます。 ずるいですね。これだけ距離が近い設定だとラッキーすけべな展開が限られてくるように思いますが全部がずるい! そのシチュエーションずるい!
1巻の段階では「お江戸ガールズコメディ」ってコピーだったんですよ。これがたった4巻でこれだけ完成された人間ドラマを見せる時代劇に変容しようとは。3巻の終わりから続くこの展開の盛り上がりはただただ圧巻と言うしかない。1巻でも若干布石っぽいのはあったけど基本コメディ路線、巻が進む毎にドラマ性が強くなってくる、色んな要素が入りすぎてTAGROさんがこれまで培った手法やアイデアを全部ぶつけて描いてらっしゃるのではと思うほど。 3巻発売の辺りからか、売り上げが芳しくないのかTAGROさんがtwitter上で全力の広報活動を行なってらっしゃいました。正直、この作品が売れないと、作者側からのSNSを使った宣伝活動の努力の限界を見せつけられてしまっているような気がするので、何とかして売れてほしいのです。読めばわかります。
お互いを大事に思ってるからこそ、告白劇があっても性急に答えを出さずに付かず離れずの関係が続いていく。でもそれぞれの心境にははっきりと変化がある、その様子がとにかく甘酸っぱい。 イケメン女子と女装男子っていう大元の設定が3巻に入ってもちゃんと活きてて、特にあきらの方は自身の性格にも根付いてる部分だから、一挙手一投足が初々しくてずっと見ていられる。 何より1年9ヶ月振りの新刊。大事に読ませて頂きました。 3巻まで読了。
身体が塵みたいになって拡散してしまう「病気」で、自分の意志ではどこに移動していつ実体化するかコントロールできない男が時間と空間を超えて色んな人と出会う。 この設定や世界観で小説『マレ・サカチのたったひとつの贈り物』やドラマ『Stranger Things』を思い起こしたが、描かれたのは1992年。完成までに6年かかったらしい。 話されている言葉がかなり内省的で、何を言っているのかよく分からないのだけど、とにかく絵に迫力があるので、目で追うだけでも「不思議な体験したなぁ」と思えるくらい没入できる。
楽しみにしていた「空気人形と妹」のたみふる先生の新作。 開いてすぐの2人の手がもう最高…やわらかそう 読みながらニヤつくのを止められない!! あとがきで作者は「自分の恋愛はうつくしくない…? そんなことない! OKOK!」と語っていますが、打算・すれ違い・本音といった、現実の恋愛の美しくない部分をこの作品は描いています。 だがそれがいい…! 恋愛の嫌な部分は、焼き魚でいう肝みたいな大事なところだったんですね。 OK、ぜんぜんあり。 百合に限らず、こういうリアルで生々しい恋をもっと読ませてほしい。自分たちになりに愛し合っている姿は、メチャクチャ美しいから。 (今のところ)1巻には2人に悪意を向けるような人物は出てこないので、安心して最高の恋を楽しんでください!!!