たか
たか
2021/09/03
ネタバレ
「新人クルマ営業×釣り」平成下関ライフ!
📷
面白かった!やっぱ石川サブロウは画力も高ければ漫画の読みやすさも半端じゃない。無料セールで3巻まで読んで結局最後まで読んでしまった。 もうすぐ子供が産まれるというときに総務から営業に異動になり東京から山口に左遷された太郎が、いきなり慣れない自動車販売の営業として家族を支えていくことになるという話。 序盤の厳しい営業の世界に飛び込んでいき、ボロボロになりながらコツを体得していく過程に絶妙に釣りが絡んでてフツーに楽しんでしまった。 太郎の人の良さ不器用さ実直さが見てて気持ちいい。 担当区域の車検のシール見て回るのとか「はぇ〜なるほど」となった。 釣りシーンでいうと原始釣りがメチャクチャ面白そうだった。やってみたい。 まんが道でいうところの寺さん的なポジションの大ベテラン吉田さん。 クールで非人道的な頭脳メガネ西村。 掴み所のない強キャラ所長。 …などなど、キャラ立ちがすごくいい。 西村との対立が最後の最後に太郎の人柄で勝負が付くという展開がまた綺麗。 作中にはギリギリ携帯とPCが会社にあって「(2000年前後か…?)」と思いつつ読んでたらドンピシャで1999年から2000年までの1年間を描いていた。 とにかく太郎と奥さんの夫婦の関係が超トラディショナル。 夫を支えるために骨を埋める気で一緒に山口に来て、ボロい木造二階建ての我が家で専業主婦として家庭を夫の精神を支えるというスタイル。 妻の両親、特に義父が太郎の仕事や孫についてギャーギャー言ってくるのに対し、太郎はペコペコするだけで「トホホ…お義父さんの言うことだもんしょうがないよね」と、反論や愚痴のひとつさえも言わないのに驚いた。 今の自分が作中の太郎と歳が近いだけに、そうかこの時代はまだこれが当たり前だったんだな…と懐かしいような不思議な気持ちになった。 でもそれに嫌な気分になるとかじゃなくて、何の疑問もなく至極当然のことと描かれているなら時代劇を観てるような感覚になる漫画だった。 すんごいどうでもいいけど、5巻のなかでおっさんたち鼻ほじりすぎで笑ってしまった。昨今漫画でみない表現すぎる。
たか
たか
2021/08/30
小気味良くて耽美でほんの少しシリアス……これは名作だわ
📷
初めて読んだ魔夜峰央作品。想像してたより全く癖がないうえに、「昔の作品だからそういうとこあるよね…」という忖度を全く必要としない、リアルガチで今読んでも本当に面白い漫画ですごい。 パタリロがボケを重ねまくりそれにバンコランが律儀に突っ込むという軽妙なテンポが最高に心地いい……!しかもそのボケが超シンプルでくだらないとこがまた緩くて好き。 地味にびっくりしたのがロンドンからストーリーが始まるところ。そんなお洒落でグローバルな場所で物語が繰り広げられていたとは知らなかった。 あとソッコーで人死にが出るとこ。ループ日常系ギャグかと思ったらそうじゃないのか……。 そしてなにより、美少年殺し・バンコランとその周りの美少年たちの絡みという、本来強烈なボケに当たる部分に一切突っ込みが入らずスルーされてるところが、逆にメチャクチャ今っぽいな〜と思った。他人の性的指向にあえて触れる必要もないしそこをわざわざ弄る必要もないという意味でも、「ボケに突っ込まずボケを重ねていく」という笑いのスタイル的な意味でも今っぽくてスルスル読める。 ほんと読めば読むほど、パタリロ陛下の可愛らしいご尊顔としょーもないボケが癖になるしメッチャ癒される!名作です。 (▽1巻より。陛下のプレシャスなボケ)
たか
たか
2021/08/29
小学生男子2人の自炊withマンションのご近所さん
📷
Pixiv漫画でいつのまにかフォローしてたやつ(いつフォローしたのか全然覚えてない)があって気になって読んでみたら最高だった。ありがとういつかの私……! 母子家庭の一郎太は料理を作るのが大好きな小学6年生。お隣のおっさん家で勝手にパスタを作って一緒につくって晩ごはんを食べる…という驚異のコミュ力でたくましく生きている。 そんなある日、グランディール新田に新しく父子家庭が越してきてそこの子・和と一緒にご飯を作るようになるというお話。 私が通ってた高校の隣の駅が「〇〇新田」で、よく「『〇〇神殿』だったら名前超ウケるな〜」としょうもない考えてたのでこの作品のネーミングにはすごく共感してしまいました。 大胆な一郎太と料理初心者で慎重な和というコンビは見ててニッコリしてしまう。 絵の描き込みが素敵でご飯が本当に美味しそう!そのご飯というのが、一郎太の豪快で大胆な性格を反映した分量や切り方や時間気にしない、気楽にテキトーに作るご飯なのがまたいい。土井善晴2世……! マンションの住人たちがみんな個性的で、奔放に生きてるアンナちゃんとお姉様のカップルが特に好きです。 2019年から連載しているようですが単行本の発売はまだみたいで残念。早く売ってくれ〜!
たか
たか
2021/07/20
ネタバレ
古典的少女漫画美と現代的コマ割りのフュージョン #完結応援
『お金ためます!』の電子書籍発売がきっかけで忠津陽子先生のファンになり、他にも読んでみようと思って手を出したのがこの『ハロー!王子さま』。『お金ためます!』同様、忠津先生の可愛らしいイラストとイマドキなロゴデザインが噛み合った表紙がすごく素敵……! ▼新表紙 https://www.amazon.co.jp/images/I/519cB6aSJ6L.jpg ▼旧表紙 https://img.mandarake.co.jp/webshopimg/01/00/778/0100198778/01001987782.jpg 読んでてびっくりしたのが、コマ割りがメッッチャクチャ現代的だということ……! コマがレイヤー状に前面と背面に重なったり、枠が消えたり、キャラがコマをぶち抜いたり。完全に現代と同じコマ割りで、しかもとんでもなく読みやすい。 ▼『ハロー!王子さま』2巻 https://i.imgur.com/imJQOu0.png https://i.imgur.com/PylCmXA.png なのに絵柄は瞳に星が散っている古典的な美しい絵柄で、一周回って最高にモダンな印象を受けました。 『邦キチ! 映子さん』の服部昇大先生や『イヤキミ』の鬼山瑞樹先生みたいに、若い作家があえて懐かしい画風で描いていると言われても信じるレベル。 (※ここまで書いて自分の前回のクチコミ見直したら全く同じこと書いてて笑った) https://manba.co.jp/topics/28186 『お金ためます!』を読んだ時は、絵やキャラクターが素敵だとは思ってもコマ割りが今っぽいとは全然感じなかったし、クチコミに添付した本編画像を見てもやはり『四角形を並べた』という感じのコマ割りだった。 国会図書館サーチで調べてみたら『お金ためます!』が1972年、『ハロー!王子さま』が1975年出版で衝撃。たった3年で作画がこれだけの進化を遂げたって凄まじい。 一体漫画界と忠津先生に何があったんだ……? 気になる。 2巻に一緒に収録されている読切『おはようMr. ベイビー』もすごく良かった。 子供番組「ベイビーと遊ぼう」の体操のお兄さん「Mr.ベイビー(本名デイビー)」とメロドラマの悪女役エバという、世の中のイメージに振り回されてる2人を描くラブコメ。デイビーが開き直って切れ散らかすところがすごくよかった。(ちょっとルナティック雑技団のルイ先輩ぽい) まだ3作しか読んでないけどますます忠津先生のファンになりました。他の読むの楽しみ〜〜!
たか
たか
2021/07/19
藤本タツキのまんが道は辛くて愛しい #読切応援
最初の扉絵に143ページとあってあまりの長さにビビリつつ読んだらすごかった。なんで藤本タツキの書く少女ってこんなに純粋で愛しいんだろう……胸が苦しい。 超画力の京本とセンスとスピードの藤野。 藤野がクラスメイトに言った「5分で描いた」はフカシではなく本当で、よそんちの廊下でサラッと一瞬で4コマを書き上げる。が、うっかりそれが京本の部屋に滑り込んでしまう。 尊敬する先生の見たことない描き下ろしが突然部屋に現れたときの京本の気持ちを考えるとたまらなくなる。 そしてあの事件のあと、今度は藤野の元に京本が描いた藤野の作風をリスペクトした4コマ「背中を見て」が届く……。 京本の背中には小学生のときに描いた藤野のサインがあり、藤野の背中は、ずっと京本が見ている。 ……。 ……。 話の大筋は「田舎の小学生2人がお互いの才能を見出し漫画家を目指す」というまんが道スタイルでありながら、キャラの造形・演出・話の展開は完全に藤本タツキ味に仕上がっているものすごい作品。 2021年一番心に残った読切でした。 【追記】 京本が家にいるときに鍵を掛けてなくて、藤野が鍵開いてるな〜中に人いるんじゃんって玄関まで入っちゃうとこ田舎あるあるで笑った。自分が子供の頃(20年くらい前)はこんな感じだったけど今もそうなんだろうか。 あのコンビニはあるにはあるけど雪深いところとか、窓から山が見えるところとか……自分の地元と重なる部分が多くて、だからこそ2人が出会えたことの得難さを噛み締めてしまう。 たとえどれだけ辛い別れになったとしても、2人が唯一無二の関係としてともに時間を過ごすことが出来て本当に良かったなと思う。
たか
たか
2021/07/08
魔界から引っ越してきたばかりの父子家庭にPTA役員を押し付ける人間(あくま)
今日たまたま別のPTAマンガを読んで「(そう言えば悪魔かなんかがPTAやるマンガあったよな〜)」と思い出したのがこの2019年の読切。 当時『魔人ローランドの長くて短い役員期間』を読んだ自分の感想がこれ。 >「今のところ自分の人生と全く縁がないPTA。魔人というフィクションの存在を混ぜていてなおビシビシ伝わってくる闇がすごい…これエッセイ形式だったら辛すぎて読めないと思う」 https://manba.co.jp/topics/11534/comments/73997 さっき気付いたのですが、この作者って『暴力亭主から逃れる10の方法』斎藤かよこ先生じゃないですか!! この斎藤先生が現在連載している作品というのが、暴力亭主から逃げて実家に帰ってきたあとのお話『やめちまえ! PTAって言ってたら会長になった件』なんですよね。 ………。 えっ………『魔人ローランド』はフィクションじゃなかったの……? あらためて読み比べると共通点しかなくて絶望します。 『会長になった件』のキービジュアルが、腕掴まれて挙手してる絵なんですけど……そのシーン『魔人ローランド』にも出てきたやつじゃん。あれマンガ表現じゃなかったのかよ……。 というか、フィクションなのはまさか魔人という部分だけ……? この世には引っ越してきたばかりの片親の腕を掴んで挙手させ役員を押し付ける地獄があると教えてくれる、とても貴重な作品です。 ▼『魔人ローランドの長くて短い役員期間』 https://comic-days.com/episode/10834108156660864667 ▼『やめちまえ! PTA ~って言ってたら会長になった件~』 https://comic-days.com/episode/3269632237268231265
たか
たか
2021/06/30
ネタバレ
第1部を知らない&初見でスターウォーズ方式で読んでも熱い!#完結応援
📷
無印のBLUE GIANTはドラムの子が頑張ってるら辺までしか読んでないのですが、いろいろあってSUPREMEの4巻(ラファとブルーノがバーで「真実か挑戦か」をやるとこから始まる巻)を読んだらあれよあれよとハマってしまい 4巻→11巻→1, 2, 3巻 ……と、気付けばスターウォーズみたいな読み方をしていました。 最後のフェスのとこの、関係者・恩人大集合みたいなパートを見てから序盤読むと「はあ〜〜!!こんなキーパーソンばっかだったんか……!」と感激しまくりでした。 特に50ユーロ!意味メッチャ重いじゃん!! ドイツに来て理由もなく親切にしてくれたクリス。その親切にしたイタリア人の彼との再会……熱すぎる。 大の英語の喋れなさがリアルだし(Ukraineは絶対わかんないよな〜と共感)、「アジア人のジャズ」扱いされるし、ドイツのジャズシーンメッチャ独特(クラシック聞くみたいに聞く)だし。ハンナとの出会いと再会も「運命(No. 5)」的で、最初はあんなにクールな性格だったんだな〜と意外でした。 最初から最後まで綿密に描かれているからこそ、どこから読んでも辻褄が完璧に合い面白いんだな〜と感服。 あととにかく絵の熱量がすごい……絵自体に力強さがあるからセリフなしのページが何ページも続いても気まずさみたいなのが一切ない。 (サックスだけでも充分聴ける演奏やれちゃう大みたい) 電子書籍だと各巻、演奏シーンなどのクライマックスではフルカラーになるところもストーリー展開と相まってグッときました。 正直言って、無印を読んでるときは大の「中途半端に正しく、中途半端にドクロベーみたいな仙台弁」が本当に苦手だったんですが、第2部はストーリーが面白すぎて全く気になりませんでした! その他にも舞台がヨーロッパということで、外国にいる孤独感とワクワク感と風景の美しさが方言の違和感を凌駕していました。 今回のことで、基礎知識だけあればBLUE GIANTはSUPREMEから読んでもメチャクチャ面白いし、なんならスターウォーズ的に読んでも面白いのでこれから読むという人は試してみてください!
たか
たか
2021/06/30
ギャグ漫画初心者を引きずり込む強烈な魅力 #完結応援
📷
ルナティック雑技団を読んで、あらためて自分はギャグ漫画というものを全く読んだことがなかったんだな〜と気付かされました。 なので、1巻を読み始めた時は王道の少女漫画設定なうえに絵が上手いので(本気出したらメチャクチャ絵が上手い人がヘロヘロのギャグ絵で描いてるのが丸わかり)、「いったいこれは何なんだ……? どんな顔をすればいいんだ」という感じでした。 が、2巻に入るとだいぶこの世界に慣れてきて自然に吹き出すことが増え、3巻には「えっ、これで終わりなの……!?」と物足りなさを感じるまでになりました。 読みながら終始『ルナティック雑技団』というタイトルについて考えていましたが、本当に言い得て妙ですよね……。 どう考えても狂気漂ってるし雑技団顔負けのアクロバットな日常だし……これ以上ない最高のタイトル。 MVPはやっぱり森夜のお母さんですね。大好き……! 躁鬱気質とゴマすり体質と息子ラブが絡まり合って情緒がヤベ〜〜ことになってて、それがいい。ギャグ漫画の世界の人だから安心して笑える。 ほどほどまともなキャラ(夢実ちゃんとかルイ先輩とか)が開き直ってハイテンションでメチャクチャやりだすところもたまらないです。 なのでその2つが組み合わさった2巻の 「寝起きの天湖くんて意識ないのよねェ」と、開き直って背中に「スキ」と指で文字を書いている夢実ちゃんの背中に森夜ママが「淫婦」と書くとこで爆笑しました。JCに淫婦て……! ・事故チューしてしまったあとの色気前回の夢実ちゃん ・夢実ちゃんの背中を押すルイ先輩のいい演技 のシーンももちろん大好きです! 全体的にだいぶ刺激的な内容が多く、当時これほんとうにりぼんで女児読んでたの……?とにわかには信じられないロックな作品。 初めて読んだ岡田あ~みん作品だったのですが他のも俄然読んでみたくなりました。 ▼2巻(第21回)のルイ先輩のこのセリフがツボ