2000年頃の作品。政府開発援助(ODA)により、発展途上国の農業開発に携わる主人公を軸に環境問題を題材としたヒューマンドラマ。しばしば日本企業や日本人が悪として描かれ、読めば読むほど不都合な事実を知ることが多い。純粋まっすぐな少年期に読んだ事もあってか、この作品が掲げる思想にとても感銘を受けていた。特に、作中に登場する「シードボール」というアイデアが持つ可能性は素晴らしかった。誰でも簡単にできる方法で、粘土に種子を入れて団子を作り、それを砂漠に蒔いて緑化するというものだった。いつか本当にこれに近いアイデアが、世界の砂漠化問題を解決するんじゃないかと信じている…。原作は『MASTERキートン』の勝鹿北星(ラデック・鯨井)なのは後で知ったことだが、原作としてはキートンの次に手掛けた作品となる。キートンと同様、世界を舞台にした作品の視野はやはりとてつもなく広かった。

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特装版「女が叫ぶとき~戦争という地獄を見た~」

「ヒロシマのおばちゃん」を読みたくて購入

特装版「女が叫ぶとき~戦争という地獄を見た~」
ひさぴよ
ひさぴよ

https://www.shogakukan-cr.co.jp/book/b110795.html 『漫画が語る戦争 焦土の鎮魂歌』(小学館クリエイティブ)で読んだ曽根富美子の短編「ヒロシマのおばちゃん」が衝撃的だったので、もう一度読みたいと思って電子書籍版を探してたら、この短編集に収録されていた。 「ヒロシマのおばちゃん」以外の短編は、戦争の話というよりちょっと昼ドラっぽい話が多いものの、それでも表題作を読むためだけに買っても損はないと思う。 作品の詳しい時期は分かってないのだが、状況からして1990年代頃の設定と思われる。広島での戦争体験を語り継ぐの”一人のおばちゃん”を通して、戦時中の自身の半生を振り返るところから物語は始まる。巧みな語り口と、曽根先生お得意の、不幸で陰湿な心理描写にグイグイと引き込まれてゆく。そしておばちゃんは不幸のドン底と同時に、原爆の日を迎えるのだが…。 変わり果てた広島の街を、怨念そのものとも言える鬼気迫るタッチで描き出し、一度目にしたら忘れられないような光景がこの漫画にはある。おばちゃんは最後に「あれは地獄だったよ」とだけ語る。と同時に、この出来事が教科書の中のたった数行に収まってほしくない、と願うのだった。 個人的には「はだしのゲン」と同じく、ぜひ読み継がれてほしい戦争漫画の一つだ。

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NOAH’S ARK

NOAH’S ARK

45億年ともいわれるこの地球の営み。そこに住む膨大な生き物たちの一つにすぎない我々、人類の歴史はあまりにも浅い。文明・科学の名のもとに行われる自然破壊、そして今なお地球上に生きる生命たちの暮らしを奪い、生きる権利を圧迫し続けている。今こそ、動物たちのことから、この星のことへと考えをすすめる時期である。“共存”という永遠の課題に正面から向き合う、人間と動物たちのふれあい物語。その瞳にウソはつけない。愛すべき“仲間”がそこにいるから。実力派作家・本庄敬が贈るドキュメンタリー&ネイチャーロマン!

羆撃ちのサムライ

羆撃ちのサムライ

明治二年、北海道がまだ蝦夷と呼ばれた頃。箱館戦争で新政府軍に敗退した旧幕府軍の伍長・奥平八郎太は、兄の喜一郎そして戦友の佐吉とともに、箱館のはるか北の遊楽部の森に落ち延びる。深手を負い衰弱する八郎太と佐吉は、このまま犬死にしても意味はないと兄一人を逃がす。だが、その直後に300kg超の巨大な羆(ヒグマ)に襲われてしまう。羆に殴られ森の中で昏倒していた八郎太は、羆撃ちを生業とする元庄内藩士・鏑木十蔵に救われ……すべてを失った敗残兵が北の大地を舞台に羆撃ちとして再生するビルドゥングスロマン。

三国志メシ

三国志メシ

「三国志」×「食」の異色コラボ! 肉まんは、孔明が作ったって、知ってた? 中華料理店を営む“三国志マニア”の家族が、『三国志』に出てくる料理を再現したら、三国志時代にまさかのトリップ! あの武将や有名軍師の食ネタも満載! 作品内に登場する料理のレシピも巻末に掲載!

【連載版】三国志メシ

【連載版】三国志メシ

店名に劉備玄徳の生まれ育った「桜桑村」を掲げ、『三国志』が知り合うきっかけとなった中(あたる)と華(はな)夫妻は、本日も元気に赤字続きの中華料理店を営業中。店にはいつの間にか『三国志』好きが集まるようになった。そんなある日、客として訪れた謎の老人から「どんな客にどんな料理を提供するのか?……技術だけが料理人の腕じゃない」と言われ、中は料理人を目指した頃の、己の原点に立ち戻る。「三国志×食」の異色コラボ、美味しく召し上がれ!!

新・蒼太の包丁

新・蒼太の包丁

北海道・静内で料理屋「きたおか」を営む家に生まれた北丘蒼太は、寂れた実家の店を立て直そうと修業のために上京する。そこで銀座の老舗料亭「富み久」の主人に見出され、厳しい板前修業を積み、やがて「富み久」の板長を任されるようになる。その後、料理修業の旅を経て東京・練馬に自分の店「富み久 カムイ」を持つ。あれから数年後の今、ついに蒼太が再始動! 2020年の東京五輪に向け「おもてなし」の真髄を突き詰める! 名作料理漫画、待望の復活第1弾――!

蒼太の包丁

蒼太の包丁

料理には人生を変える力がある――。北丘蒼太(きたおかそうた)、20歳。銀座の名店“富み久”で、厳しいけれど情に厚い親方のもと、板前目指して奮闘中。いつの日か、人の心に届く料理を作るために……。そんなある日、高校の同級生・加賀美がアルマーニのスーツに身を固め“富み久”を訪れる。ブランド品を輸入する会社を立ち上げ成功し、追加出資を申し出た久米社長の接待に使いたいと言うのだが……。

ハルの肴

ハルの肴

歴史の街、相撲の街…東京・両国――北海道から絵描きを目指して上京した春野ハルは、ひょんなことから老舗居酒屋「大門」で働くことに!はたしてハルの新生活の行方は!?「蒼太の包丁」で大人気を博したゴールデンコンビが描く、美肴と人情満載の両国居酒屋物語。

文豪の食彩

文豪の食彩

国民的作家たちが描いた食の情景と、そこに込められた苦悩や喜びに迫る!!毎朝新聞の深川支局に配属された主人公・川中は、趣味の食道楽を生かして、文豪たちと食を結びつける企画を提案する。それは、夏目漱石や芥川龍之介、太宰治らが書き残した“食”の数々を通して、彼らの生活や本質を描く文豪探訪記であった。果たして、近代文学を代表する文豪たちはどんな思いで食を描いたのか?ラズウェル細木氏も推薦!!カラー記事「六人の文豪ゆかりの食を訪ねて」&書き下ろしコラム30ページも収録!!

マジンジラ

マジンジラ

たとえばケニアの草原で、たとえばアマゾンの大砂漠で、たとえばニューヨークのダウンタウンで、地球と命のふしぎに向き合った少年の物語。 学研「5年の学習」2002年4号~2004年3号に掲載。子どもから環境ビギナーの大人まで楽しめる名作です。 海外編・国内編の2部構成★~原作:ラデック・鯨井より~ 「戦後まもなく生まれた私には、米進駐軍が憧れの全て。本は翻訳もの。その結果が『なんか妖かい!?』や『MASTERキートン』なのだろう。だが日本がアメリカ 並みになり私は喘息に。魚を手掴みした川はヘドロだ。なにか変だと、皆さんと考えるのが『マジンジラ』です!」  ★~作画:つやまあきひこより~ 「日本人と世界の国々の人々とのつながり、そして人間以外の生き物と人間のつながり…、地球表面の広がる「丸い空間」にボク達は住んでいるんだ、ということを想像しながら読んでもらえるととてもうれしいです。」

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