年も離れた異性の、しかも畑違いの新米編集者に戸惑う中堅(崖っぷち)漫画家の話です。電子化、脱出版化の過渡期である今だからこそな漫画ですね。

既存の慣習に問題提起をしながらも、人それぞれの思いと取り組み方があるというのを、ユルくではありますがじっくり描かれています。ただ感動させるだけで終わらず必ず笑いを混ぜてくるので読みやすいです。ただし打ち切りを告げられる話はやはり読んでてつらい気持ちにさせられます……

読みたい

青木U平先生の作品は「酩酊!怪獣酒場」しか
読んだことがなかったので
マンガに、編集って必要ですか?
を読んで随分と驚いた。
ああ、こういう漫画も描く先生なんだ、と。
ユル系というのか雰囲気漫画というのか、
この漫画独特の時間の流れに包まれて
ごく自然に自分の思考も流されていっていまう。
ただ流水に流されているというのではなく、
時々、なにかがコツンコツンとぶつかったり、
水温が急に変わったりもする。
けして快感だけを感じる流れではないし、
流れて流されて心が洗われるというわけでもない。
けれどもなんだか、こういう流れは嫌いではない。
また読んで、流されてみたくなる。

私は「フリンジマン」しか読んでいませんでしたが、まったく毛色が違いますね。
仕事にかかわる色んな人とのコミュニケーションの中で、感情を搔き立てられたり、新しい考えが浮かんだりする。それらを物語の大部分を占めるモノローグによって一人称で展開されていくので、ときどき会話が予想外の方向に転がっていくのが面白い。
気づいたらがっつり感情移入させられていて、そしてまんまとミスリードされてる(笑)

漫画って主観と客観のバランス取りが難しいと思うんです。
ある程度は作者に「主観的過ぎて」飛びぬけているものがあって
普通じゃなくて驚く部分がないと作品はつまらない
かといってあまりにも「主観的過ぎて」だと、
なんだよこれ、わけわかんねーよ、となって
読者に受け入れられない。
そこらへんを編集の方が適度に客観的に修正して
万人に受け入れられる作品に仕上げる。
これが、少し前までの漫画編集のスタイルだったのでは
ないかと思ったりしています。
その逆もあるかもしれませんが。
その上で現実には、作者と編集者、主観と客観、
それぞれの定義すらが場合によっては
180度違ったりする場合もあるような感じもします。
さらに「面白い」と「売れる」とが一致するとも限らない。
面白い漫画、もしくは売れる漫画を作る作業ってのは
大変なんでしょうね。
だったらとにかくその大変さを漫画にしてやろう、
っていう漫画なのかな、とも感じました。

本当に私もそう思います。主観と客観のバランス取り難しい…。
若くて勢いがある作家は「主観的すぎる」部分が飛び抜けてて、編集さんがうまいこと舵取りすれば売れる、重版、に繋がった気がします。
でもこれも少し前までの話。
今は若い段階で、ネットなど他と比べて売れそうなものを考える機会が多い。
「面白い」自体も、100年山に篭って人と全く違う古文を読んでた、なんて人はそうそう出てこないから浅い。(もちろん作家なので追々深く調べれば「面白さ」も「驚き」も作れます)
編集なしで作者⇄読者でもいいんじゃないか。
作者の客観と編集の客観が同一じゃない不満を持ったまま作品を作らなくてもいいかもしれない。
その他色々…。編集って必要なのか…?自分自身何回も考えました。
大変だと思います。少なくてもヒト二人分は意見があって必ず対立する、もしくは同調する。
マンガに編集って必要なのか私もわからんのですが、この漫画は今必要と思いました。作者目線、編集者目線、どちらも共感できます。いや、共感したいんですよね〜。

SNS等の発達で、旧来の読者アンケート等による
読者の作品批評以外の作品評価の手段は生まれつつある。
けれども、生の意見がダイレクトに受発信されるように
なったからといって、それが正しい評価だとは限らない。
今更に「声なき声が聞こえる」などと言うつもりもないが
多数意見や熱意の高い意見が正解だとは限らないのだから。
一つの漫画に対して正しく批評し改善点を指摘する意見は
必ず生まれて発信されるとは限らない。
だからこそフィルターを通すことの意味が重要なのだと思う。
結局は少数意見や伝達力に劣る意見の中からも
有益な意見を汲み取る能力が必要となる。
ただ、そのフィルター機能が必ずしも編集者である必要はない。
創作者である作家が編集者機能をも兼ね備えていることもありえる。
ただ、常識的に考えれば創作活動でイッパイイッパイの作者に
編集能力の発揮まで求めるのは難しい。
そういう意味で、今しばらくは現代的なSNSなどを
うまく活用したうえで作家に対する的確なアドバイスを
出来る能力のある編集者が必要とされる状況は
ここ数年は続くのではないだろうか。

>>作者の客観と編集の客観が同一じゃない不満を持ったまま作品を作らなくてもいいかもしれない。
重い意見ですね。
その不満を読者にゆだねるわけにもならないわけですし。

わかります。いきなり編集はいらない!とはならないですね。
多数意見が正解とは限らないという考えにも同意です。
自分で制作して自分で売ってらっしゃる漫画家もいますが漫画製作者全員がそれをできるとも思えません。
SNSの活用もうまくいけば作者のモチベーションになりますが、うまく行かなかったら作品にモロ影響出そうですね。想像でしかないですが。
SNSを全くみない作者もいると思います。
編集って必要なのか必要じゃないのかもこれだけ考えられますし、じゃあどんな編集が必要なのかにフォーカスずらして考えてもめちゃくちゃ多数の意見出てくると思いました。

第十三話、すんごい伏線回収でしたね。決まったー!って感じの。今すぐ一巻買って公開中のに追いついて欲しい。

作家側からの目線で進んでいったのが、編集側からの目線に切り替わって更に面白くなっている…!
坂本さん〜!!

不覚にも最終回を見逃してしまった…。これ単行本の2巻からは3話くらいで終わりだよね。3巻どうなるんだろ。

MA・MA・Match

映画『怪物』みたいな構成の話だった

MA・MA・Match
mampuku
mampuku

いい意味で誤解や異説の飛び交いそうな、多層構造のストーリーだったように思う。 主人公の一人である芦原(母)は、生意気な息子とモラハラ夫を見返すべく、息子の得意なサッカーで勝負を挑む。 前半は、ママさんたちが友情や努力によって青春を取り戻しながら、悪役(息子と夫)に挑むという物語で、この悪役というのがちょっとやり過ぎなくらいのヘイトタンクっぷりなのだ。その場限りのヘイトを買うキャラクターは、ヒーロー役の株を上げるための装置として少女漫画では常套手段だ。だが『マ・マ・マッチ』はそういう物語ではないため、話はここで終わらない。 後半は時を遡り、息子と夫の目線で描かれ直す。母目線ではイヤ〜な輩にしか映らなかった彼らにも彼らの言い分や考えがあったのだと明かされる。 真っ先に私が思い出したのが、是枝監督の映画『怪物』の主人公の一人、安藤サクラさん演じるシングルマザーの早織である。 息子が教師に暴力を振るわれたことに抗議するため学校に乗り込むも学校側からぞんざいな対応をされ不信感を募らせる早織。その後教師や子供など、さまざまな視点が映し出されることでやがて全体観が像を結ぶ。 『マ・マ・マッチ』でも、後半部分を読んだあとに最初から読み返すと些か感想が変わる。息子や夫がイヤな奴らとして描かれているのは確かだが、先入観によって印象が悪化していたのも事実だ。なにより、序盤に出てくる夫のコマは母を嘲弄するような不快なものだったが、そもそもこれは芦原母の回想であり主観だ。その後実際に登場する夫は彼女と衝突こそすれ至って真面目だ。 つまり、それぞれの立場から不満を抱いたり譲れない部分でぶつかり合いながら、逐一仲直りしたり折り合いをつけているのだ、という話に畢竟見えなくもない。悪者退治という少女漫画にありがちなフォーマットで導入を描いて入り込みやすくしておいて、後半の考えさせる話でモヤモヤさせる。末次由紀先生、さすがの巨匠っぷりを見せつけた怪作だ。

テセウスの船

どちらかというと『テセウスの船』というより『動的平衡』じゃない?

テセウスの船
mampuku
mampuku

時間遡行をして人生をやり直したとしたら、それは本当に同一の自分といえるのか?という問いを有名なパラドックス「テセウスの船」になぞらえたタイトルだ。 ストーリーに関しては論理的整合性や感情的整合性においてやや粗い部分も感じられたもののサスペンスとして緊張感もあり、ラストは新海誠監督『君の名は。』のような美しい締め方だったし概ね面白かった。 ただ、タイトル『テセウスの船』がイマイチストーリーにハマっていない感じがした。 どちらかといえば「動的平衡」のほうが比喩としてしっくりくるのではないだろうか。 「動的平衡」とはシェーンハイマーの提唱した概念であり、日本では福岡伸一氏による著書『生物と無生物のあいだ』『動的平衡』で有名になった言葉である。“生命”とは、取り込まれ代謝されていく物質、生まれ変わり続ける細胞どうしの相互作用によって現れる“現象”である、という考え方だ。 主人公の田村心は生まれる前の過去に遡り、そこで巻き起こる惨劇を阻止することで、その惨劇により自身に降りかかった不幸な運命を変えようと奮闘する。作品では、過去を改変して自らの人生を曲げようとする一連の試みをテセウスの船にたとえているが、やはりピンとこない。作中、田村心は殺人事件を未然に防ぐため凶器となった薬物を隠したり被害者に避難を呼びかけたりするが、その影響で心の知る未来とは異なる人物が命を落としたり、結果的に大量殺人を防げなかったばかりか予想だにしなかった事態を招くことになる。 この予測不可能性こそがまさに動的平衡そのものって感じなのだ。生命体は、船の部品のように壊れた部分を取り替えれば前と変わらず機能する、ということにはならない。ある重要なホルモンの分泌に作用する細胞を、遺伝子操作によってあらかじめ削除してしまったとしても、ほかの細胞がそのポジションを埋めることがある。これは心が殺人事件の阻止に何度も失敗したことに似ている。思わぬ不運や予想しない死者が出てしまったのも、脚のツボを押すと胃腸の働きが改善するなどの神経細胞の複雑さに似ている。 船は組み立てて積み上げれば完成するが、生命は時間という大きな流れの中で分子同士が複雑に相互作用しあうことで初めて現象する。『テセウスの船』での田村心の試みは人生あるいは歴史という動的平衡に翻弄されながらも抗う物語だったのかもしれない。

まんがにへんしゅうってひつようですか
マンガに、編集って必要ですか? 1巻
マンガに、編集って必要ですか? 2巻
マンガに、編集って必要ですか? 3巻(完)
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