『天上天下』からずっと愛読している大暮維人先生の新連載は、『化物語』終了から1年、オリジナル作品という意味では『エア・ギア完結からじつに12年振りとなる。

バトルあり美少女ありイケメンありのファンタジーで圧巻の画力ももちろん健在だ。和風、バディもの、バトルと『天上天下』ファン垂涎の要素も盛り込みつつ、第一話クライマックスでの変身シーンがなんと『大祓詞』の詠唱に神楽舞!?バカのバイキングか!?オタク歓喜の全部盛りだァ…!

ストーリーとしては、“夜”とよばれる災害を模した怪異(あるいは災害そのもの)に立ち向かうべく神を降ろして戦うというもの。まだ謎が多く、圧倒的な情報量に翻弄されているうちに1話が終わってしまった。2話がとにかく待ち遠しい。

マガジン巻頭のインタビューでは、作者の創作観の変化について語られている。AI時代との向き合い方については、膝を叩きたくなるような面白い話を読むことができた。一流の漫画家は、ビジュアル化の鬼であると同時に、考えてみれば当然かもしれないが、言語化の鬼でもあるのだ。

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MA・MA・Match

映画『怪物』みたいな構成の話だった

MA・MA・Match
mampuku
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いい意味で誤解や異説の飛び交いそうな、多層構造のストーリーだったように思う。 主人公の一人である芦原(母)は、生意気な息子とモラハラ夫を見返すべく、息子の得意なサッカーで勝負を挑む。 前半は、ママさんたちが友情や努力によって青春を取り戻しながら、悪役(息子と夫)に挑むという物語で、この悪役というのがちょっとやり過ぎなくらいのヘイトタンクっぷりなのだ。その場限りのヘイトを買うキャラクターは、ヒーロー役の株を上げるための装置として少女漫画では常套手段だ。だが『マ・マ・マッチ』はそういう物語ではないため、話はここで終わらない。 後半は時を遡り、息子と夫の目線で描かれ直す。母目線ではイヤ〜な輩にしか映らなかった彼らにも彼らの言い分や考えがあったのだと明かされる。 真っ先に私が思い出したのが、是枝監督の映画『怪物』の主人公の一人、安藤サクラさん演じるシングルマザーの早織である。 息子が教師に暴力を振るわれたことに抗議するため学校に乗り込むも学校側からぞんざいな対応をされ不信感を募らせる早織。その後教師や子供など、さまざまな視点が映し出されることでやがて全体観が像を結ぶ。 『マ・マ・マッチ』でも、後半部分を読んだあとに最初から読み返すと些か感想が変わる。息子や夫がイヤな奴らとして描かれているのは確かだが、先入観によって印象が悪化していたのも事実だ。なにより、序盤に出てくる夫のコマは母を嘲弄するような不快なものだったが、そもそもこれは芦原母の回想であり主観だ。その後実際に登場する夫は彼女と衝突こそすれ至って真面目だ。 つまり、それぞれの立場から不満を抱いたり譲れない部分でぶつかり合いながら、逐一仲直りしたり折り合いをつけているのだ、という話に畢竟見えなくもない。悪者退治という少女漫画にありがちなフォーマットで導入を描いて入り込みやすくしておいて、後半の考えさせる話でモヤモヤさせる。末次由紀先生、さすがの巨匠っぷりを見せつけた怪作だ。

テセウスの船

どちらかというと『テセウスの船』というより『動的平衡』じゃない?

テセウスの船
mampuku
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時間遡行をして人生をやり直したとしたら、それは本当に同一の自分といえるのか?という問いを有名なパラドックス「テセウスの船」になぞらえたタイトルだ。 ストーリーに関しては論理的整合性や感情的整合性においてやや粗い部分も感じられたもののサスペンスとして緊張感もあり、ラストは新海誠監督『君の名は。』のような美しい締め方だったし概ね面白かった。 ただ、タイトル『テセウスの船』がイマイチストーリーにハマっていない感じがした。 どちらかといえば「動的平衡」のほうが比喩としてしっくりくるのではないだろうか。 「動的平衡」とはシェーンハイマーの提唱した概念であり、日本では福岡伸一氏による著書『生物と無生物のあいだ』『動的平衡』で有名になった言葉である。“生命”とは、取り込まれ代謝されていく物質、生まれ変わり続ける細胞どうしの相互作用によって現れる“現象”である、という考え方だ。 主人公の田村心は生まれる前の過去に遡り、そこで巻き起こる惨劇を阻止することで、その惨劇により自身に降りかかった不幸な運命を変えようと奮闘する。作品では、過去を改変して自らの人生を曲げようとする一連の試みをテセウスの船にたとえているが、やはりピンとこない。作中、田村心は殺人事件を未然に防ぐため凶器となった薬物を隠したり被害者に避難を呼びかけたりするが、その影響で心の知る未来とは異なる人物が命を落としたり、結果的に大量殺人を防げなかったばかりか予想だにしなかった事態を招くことになる。 この予測不可能性こそがまさに動的平衡そのものって感じなのだ。生命体は、船の部品のように壊れた部分を取り替えれば前と変わらず機能する、ということにはならない。ある重要なホルモンの分泌に作用する細胞を、遺伝子操作によってあらかじめ削除してしまったとしても、ほかの細胞がそのポジションを埋めることがある。これは心が殺人事件の阻止に何度も失敗したことに似ている。思わぬ不運や予想しない死者が出てしまったのも、脚のツボを押すと胃腸の働きが改善するなどの神経細胞の複雑さに似ている。 船は組み立てて積み上げれば完成するが、生命は時間という大きな流れの中で分子同士が複雑に相互作用しあうことで初めて現象する。『テセウスの船』での田村心の試みは人生あるいは歴史という動的平衡に翻弄されながらも抗う物語だったのかもしれない。

かいじんふげき
灰仭巫覡 1巻
11/15(金)に2巻が発売!
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BURN-UP EXCESS&W

BURN-UP EXCESS&W

「BURN-UP」とは、2023年のネオトーキョーを舞台に、特殊犯罪に対抗する少数精鋭の警官隊、ウォーリアーズの活躍を描いたアニメシリーズ。大暮維人先生が描いた「BURN-UP EXCESS&W」は、1996年に「BURN-UP」のOVAがリリースされた折に連動したメディアミックス作品。ストーリーは大暮維人オリジナル。98年に少年キャプテンコミックスで刊行されたものを、10年ぶりに復刊。台詞を含め、可能な限り、リテイクを入れています。 表紙イラストは、描き下ろし。ほかエッセイ、あとがきなどの描き下ろしも有り。

試し読み
エア・ギア 超合本版

エア・ギア 超合本版

誰よりも迅く! 誰よりも高く! 自由に空を走ることができるインライン・スケート「エア・トレック」が夜のストリートを変えた。暴風族と呼ばれるA・Tライダーたちがチームを作り、パーツ・ウォウという名のバトル・システムの中で一つでも上のランクを目指してバトルを繰り広げているのだ。主人公イッキもチーム「小烏丸」を率いてパーツ・ウォウに参戦! 目指すは、全てのライダーの頂点。天空の塔の頂に舞い降りる伝説の「空の王」!!

エア・ギア UNLIMITED

エア・ギア UNLIMITED

「週刊少年マガジン」で大人気だった『エア・ギア』が新装版で登場!巻頭カラー付き!描き下ろし巻末おまけ、大暮維人初のエッセイマンガも必見!超小型強力モーターを組み込んだ自走シューズ「エア・トレック」(A・T)を装着して暴走する「暴風族(ストームライダー)」が街を騒がせていた。東雲市一部エリアを仕切っていた「東中ガンズ」は、縄張り争いが高じて暴風族チーム「髑髏十字軍」に襲われる。無残に敗北した「東中ガンズ」のベビーフェイス・南樹(イッキ)は、リベンジを果たすためにA・Tを始めることになった!

エア・ギア

エア・ギア

自由に空間を駆けるインラインスケート、A・T(エア・トレック)を使い、街を疾走する暴風族(ストームライダー)たち。A・Tチーム髑髏十字軍(スカルセイダース)が夜の街を席捲していた。東中(ヒガチュー)最強のベビーフェイス・イッキは、髑髏十字軍の罠に落ちるが、リベンジのため、幼なじみのリンゴ達の誘いのままA・Tを手にした。憧れの空へ、誰よりも高く、迅く、そして強くなるためにイッキは跳ぶ!鬼才、大暮維人が描くハイスピードストリートアクション!!

魔人~DEVIL~

魔人~DEVIL~

『エア・ギア』の大暮維人が描く「血」と「進化」!夜と朝のはざまに蠢く異形のモノたちの物語。――奴の血を飲んだ時から、オレの命のDNAが書き換えられた……人類の進化か、それとも突然変異?闇の中で蠢く「魔人」と呼ばれる異形の者たちが、街に蔓延っていた。図らずも、「魔人」となってしまった男が「死」を許されないモノとなった恨みと悲しみを抱え、紫色の空の下、異形の者たちと戦い続ける……。

化物語

化物語

【 西尾維新 × 大暮維人 】!!! 阿良々木暦を目がけて空から降ってきた女の子・戦場ヶ原ひたぎには、およそ体重と呼べるようなものが、全くと言っていいほど、なかった――!? アニメ化・ゲーム化など多数のメディアミックスを果たした西尾維新の代表作『化物語』を、『エア・ギア』の大暮維人が豪華漫画化!!現代青春ノベルの金字塔を世界一の絵で! 「週刊少年マガジン」にしかできない最高最興奮の新しい“物語”!!

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