mampuku2024/08/18MMA漫画、群雄割拠朝倉未来に端を発るする格闘YouTuberブームにRIZIN、BREAKING DOWNと総合格闘技の人気が高まっている。漫画界もまた『アスミカケル』『レッド・ブルー』と、MMA作品が次々と現れている。この流れに満を持して、そう、『オールラウンダー廻』の遠藤浩輝先生の登場である。 読む前から面白いことは自明なのであらすじや設定の話は省略する。前作と比べてキャラも舞台も現代的なのは当然のこと、理学療法士でメディカルトレーナーのヒロインの女の子がめちゃめちゃ可愛い。奥手だった廻と違い、今作ではもしかしたらラブコメ要素が濃くなるかもしれない。 ジャンルと言うか類型としては『GIANT KILLING』に近いかもしれない。謎の凄腕コーチが荒削りの若武者を鍛えて勝たせる。前評判を覆す。気持ちいい。(■1巻読了)無敗のふたり遠藤浩輝4わかる
mampuku2024/08/18真の名作は色褪せず、発酵し熟成する十数年ぶりにカイジを読んだ。当時とて当然感動したし面白かった。この間に数多くの漫画や書籍、映画やアニメに出会ってきて、精神的にも豊かになった。今読むとどうなるか? 勝負の勝ち負けも、ストーリーの結末も知っている。 だが面白い。 利根川の名言一つ一つが、熟成された旨味を伴って染み渡るのだ。カイジの小賢しさもここぞの度胸も、俯瞰して「観客」として楽しめる。 「金は命より重い」 当然ながら利根川は本心からそう思ったわけではあるまい。帝愛の企業理念やスローガンかもしれない。だが、間違いなくあの場あの空気に最もズシリと響いた言葉を選んだのだ。賭博黙示録カイジ福本伸行5わかる
mampuku2024/07/20マガジン発、超大型巨星この衝撃度合いといったら、『ランウェイで笑って』の第一話を読んだときに匹敵する。 軽快なノリと迫力のあるシリアスなバトルとの緩急が、新人離れという言葉すら失礼なほど完成度が高い。 あらすじの説明はあえて書かないでおこうと思う。まだ第一話とはいえ、説明の必要があると思えないほどシンプルで完璧なストーリーだからだ。 今後への伏線か?といくつか気になった点をメモ ・最初の故郷の島の名前が「ラニアケア」なのは、タイトル『ガラクシアス』と関係があるのか?(我々の住む天の川銀河を含むのがラニアケア超銀河団) ・もう一人の主人公の少年がフランシスコ・デ・ゴヤの絵画『我が子を喰らうサトゥルヌス』のパロディをしていたのは、これまでの旅の中で西洋の芸術に触れる機会があったからか?GALAXIAS果坂青5わかる
mampuku2024/07/20映画『怪物』みたいな構成の話だったいい意味で誤解や異説の飛び交いそうな、多層構造のストーリーだったように思う。 主人公の一人である芦原(母)は、生意気な息子とモラハラ夫を見返すべく、息子の得意なサッカーで勝負を挑む。 前半は、ママさんたちが友情や努力によって青春を取り戻しながら、悪役(息子と夫)に挑むという物語で、この悪役というのがちょっとやり過ぎなくらいのヘイトタンクっぷりなのだ。その場限りのヘイトを買うキャラクターは、ヒーロー役の株を上げるための装置として少女漫画では常套手段だ。だが『マ・マ・マッチ』はそういう物語ではないため、話はここで終わらない。 後半は時を遡り、息子と夫の目線で描かれ直す。母目線ではイヤ〜な輩にしか映らなかった彼らにも彼らの言い分や考えがあったのだと明かされる。 真っ先に私が思い出したのが、是枝監督の映画『怪物』の主人公の一人、安藤サクラさん演じるシングルマザーの早織である。 息子が教師に暴力を振るわれたことに抗議するため学校に乗り込むも学校側からぞんざいな対応をされ不信感を募らせる早織。その後教師や子供など、さまざまな視点が映し出されることでやがて全体観が像を結ぶ。 『マ・マ・マッチ』でも、後半部分を読んだあとに最初から読み返すと些か感想が変わる。息子や夫がイヤな奴らとして描かれているのは確かだが、先入観によって印象が悪化していたのも事実だ。なにより、序盤に出てくる夫のコマは母を嘲弄するような不快なものだったが、そもそもこれは芦原母の回想であり主観だ。その後実際に登場する夫は彼女と衝突こそすれ至って真面目だ。 つまり、それぞれの立場から不満を抱いたり譲れない部分でぶつかり合いながら、逐一仲直りしたり折り合いをつけているのだ、という話に畢竟見えなくもない。悪者退治という少女漫画にありがちなフォーマットで導入を描いて入り込みやすくしておいて、後半の考えさせる話でモヤモヤさせる。末次由紀先生、さすがの巨匠っぷりを見せつけた怪作だ。MA・MA・Match末次由紀4わかる
mampuku2024/07/15少し前に流行った「行動経済学」の面白うんちく漫画現代経済学の小難しい骨子の部分はすっ飛ばして投資詐欺のスキームや行動経済学のキャッチーなうんちくを楽しく教えてくれるために、「経済学を教えない経済学教授」というユニークなキャラ設定になっています。じつに巧妙。 教授が詐欺師をギャフンと言わせ、読者はスッキリなだけでなく身につかない知識で賢くなった気になれる。まさに読者自身がカモだったのだ…!!と、そこまで性格の悪い作者かどうかまではわかりませんが、これを読んで行動経済学に興味を持って実際にダニエル・カーネマンを読んでみる、くらいの意欲がある人以外は、この漫画読んでも「賢くなったつもり」で終わりでしょうね。カモのネギには毒がある 加茂教授の人間経済学講義夏原武 甲斐谷忍4わかる
mampuku2024/07/13「海底撈月」あまりにかっこいい響きだが、稀によく見る【7巻まで読了】 アニメをリアルタイムで見てた頃は麻雀やらなかったんですが、最近雀魂がマイブーム化しつつあり懐かしくなって読みました。 今読んでも全然面白い、さすがの名作ですね。これだけ多くのキャラクターが全員立ってるのも素晴らしい。 そして今なら解るのだが、想像以上に超次元麻雀だった!(笑)県予選決勝では主人公とライバルがハイテーと嶺上開花で殴り合ってて最高。県予選でこれなら全国で戦うであろうラスボスと思しき主人公のお姉ちゃんはどんなヤバい異能を持っているやら… 最近はMリーグの配信でプロの試合が身近になったので、そういう意味でも当時とは見方が変わってそうですね。 咲-Saki-小林立3わかる
mampuku2024/06/22どちらかというと『テセウスの船』というより『動的平衡』じゃない?時間遡行をして人生をやり直したとしたら、それは本当に同一の自分といえるのか?という問いを有名なパラドックス「テセウスの船」になぞらえたタイトルだ。 ストーリーに関しては論理的整合性や感情的整合性においてやや粗い部分も感じられたもののサスペンスとして緊張感もあり、ラストは新海誠監督『君の名は。』のような美しい締め方だったし概ね面白かった。 ただ、タイトル『テセウスの船』がイマイチストーリーにハマっていない感じがした。 どちらかといえば「動的平衡」のほうが比喩としてしっくりくるのではないだろうか。 「動的平衡」とはシェーンハイマーの提唱した概念であり、日本では福岡伸一氏による著書『生物と無生物のあいだ』『動的平衡』で有名になった言葉である。“生命”とは、取り込まれ代謝されていく物質、生まれ変わり続ける細胞どうしの相互作用によって現れる“現象”である、という考え方だ。 主人公の田村心は生まれる前の過去に遡り、そこで巻き起こる惨劇を阻止することで、その惨劇により自身に降りかかった不幸な運命を変えようと奮闘する。作品では、過去を改変して自らの人生を曲げようとする一連の試みをテセウスの船にたとえているが、やはりピンとこない。作中、田村心は殺人事件を未然に防ぐため凶器となった薬物を隠したり被害者に避難を呼びかけたりするが、その影響で心の知る未来とは異なる人物が命を落としたり、結果的に大量殺人を防げなかったばかりか予想だにしなかった事態を招くことになる。 この予測不可能性こそがまさに動的平衡そのものって感じなのだ。生命体は、船の部品のように壊れた部分を取り替えれば前と変わらず機能する、ということにはならない。ある重要なホルモンの分泌に作用する細胞を、遺伝子操作によってあらかじめ削除してしまったとしても、ほかの細胞がそのポジションを埋めることがある。これは心が殺人事件の阻止に何度も失敗したことに似ている。思わぬ不運や予想しない死者が出てしまったのも、脚のツボを押すと胃腸の働きが改善するなどの神経細胞の複雑さに似ている。 船は組み立てて積み上げれば完成するが、生命は時間という大きな流れの中で分子同士が複雑に相互作用しあうことで初めて現象する。『テセウスの船』での田村心の試みは人生あるいは歴史という動的平衡に翻弄されながらも抗う物語だったのかもしれない。テセウスの船東元俊也 東元俊哉6わかる
mampuku2024/06/15輝きをとりもどせ!ズッコケ三人娘(アラサー)『ゴゴゴゴーゴーゴースト』作者の新作とあって期待値MAX。 あの日思い描いていた理想の未来にはたどり着けなかった、かつての部活仲間のアラサー女三人が、もう一度立ち上がりサヨナラ逆転を目指す友情の物語。 必要以上に飾らず、ツッパらず、アラサー女の物語といいつつも属性関係なく人間の青春の1ページって感じで、カッコ悪いのにカッコいい。蛭塚都先生の見目麗しいキャラクターデザインのなせるわざでもあるようなきがします。 「私たちの延長線の幕が上がる。」という激エモフレーズに殴られてしまったので、これからの連載が楽しみで仕方ないです。さよならダイヤモンド蛭塚都6わかる
mampuku2024/06/01大暮維人が帰ってきた!12年ぶりのオリジナル新連載!『天上天下』からずっと愛読している大暮維人先生の新連載は、『化物語』終了から1年、オリジナル作品という意味では『エア・ギア』完結からじつに12年振りとなる。 バトルあり美少女ありイケメンありのファンタジーで圧巻の画力ももちろん健在だ。和風、バディもの、バトルと『天上天下』ファン垂涎の要素も盛り込みつつ、第一話クライマックスでの変身シーンがなんと『大祓詞』の詠唱に神楽舞!?バカのバイキングか!?オタク歓喜の全部盛りだァ…! ストーリーとしては、“夜”とよばれる災害を模した怪異(あるいは災害そのもの)に立ち向かうべく神を降ろして戦うというもの。まだ謎が多く、圧倒的な情報量に翻弄されているうちに1話が終わってしまった。2話がとにかく待ち遠しい。 マガジン巻頭のインタビューでは、作者の創作観の変化について語られている。AI時代との向き合い方については、膝を叩きたくなるような面白い話を読むことができた。一流の漫画家は、ビジュアル化の鬼であると同時に、考えてみれば当然かもしれないが、言語化の鬼でもあるのだ。灰仭巫覡大暮維人5わかる
mampuku2024/05/17開始から20年の時を越えて、「人生の書」となった第12集巻末のインタビューを読んで涙が止まらなくなった。 信念と哲学をぶつけた集大成である「ロベルタ復讐編」が賛否両論を生んだことを切欠に、うつ病による長期休載へ。その間も「サボり癖」などの憶測による中傷が跡を絶たず、そんな中での10巻以降の再開はいわば“奇跡の復活”にほかならない。 そんな作者の言葉で特に印象的だったのが、 「『ブラックラグーン』自体が若さゆえの産物というか、 (中略) 歳を取ると、世の中のことがだいたい許せるようになっちゃう」 苛烈で虚ろなレヴィと、真面目で歪なロックのたどる結末を、そんな彼らを追い越して“大人になってしまった”広江先生がどう料理するのか、楽しみで仕方がない。ブラック・ラグーン広江礼威5わかる
mampuku2024/05/11ネタバレ「そんなこと」までデスノートと“対”になってたとは!悪魔と天使 天才と凡人 栄光と絶望 狂信と葛藤 ……などと見事に対極的なデスノートとプラチナエンドでしたが、物語終盤、超重要人物として米田博士が登場してから、「もう一つ」あったのかと気付かされました。それが、ファンタジーとSF です。 集合的無意識が量子の動きに影響を与えるなんてのはよく耳にする話ですが、プラチナエンドの神はまさしく集合的無意識によって生まれた思念体あるいは生命体であり、神や天使の駆使する様々な能力(白の矢や翼など)は、かつて電磁波がそうだったように、そして現在ダークマターがそうであるように、未解明のエネルギーでしかないのだという。 この設定、ありそうでなかなか(知る限り)なかったやつで嬉しいです。 「この世界は箱庭で、上位存在としての神がいる」というような話はいくつも思い浮かびますが、「人々から信仰がなくなれば神が居なかったことになる」というのは一見いかにも冒涜的ですが、日本における民俗信仰のそれと構造全く同じだなと考えれば、とても日本人的な「神観」だなと言えなくもないかもしれません。プラチナエンド小畑健 大場つぐみ4わかる
mampuku2024/05/04オタクくんだってたまにはこういうジャンクなのが食べたくなるんや斬新さなどない!だが面白い!それでいい!! ハイテクなぴっちりスーツ(ただし強度があって強そう)な黒髪の美少女が刀持って戦ってるだけでも即買いレベルの好き度であるが、『ドロヘドロ』を彷彿とさせるタッチといい、『ダンダダン』や『炎炎ノ消防隊』などを思い出させるポップでトンチキでかつ軽妙な少年漫画感といい、 「オタクくんさぁ、こういうの好きなんでしょ?」 はい大好きです!ありがとうございます!! としか言いようがない。雷雷雷ヨシアキ8わかる
mampuku2024/04/13ヒトという、幼い種族のジュブナイル【5巻まで読了】 浅野いにお先生、達観しすぎて、言語化もビジュアル化もあまりに上手すぎて、才能が暴発しまくってる感じがあまりにも尊い。 世界をより高い視座から見渡すべきだというリベラルな思想と、それを万人たる読者に伝える難しさが、ある意味ハレーションを起こしたように、意地悪で冷笑的にも映る全方位射撃的な描かれ方が、序盤は特に強く感じられる。 しかし、ここまで散りばめられてきた伏線が回収され、少女が異邦人と果たして出逢い、ぼかされ続けた衝撃の真実が明かされた5巻は、感情を揺さぶる◯◯シーンで締めくくられる。 人間、特に現代人は、こと思想とかの話になると、言語化と説明能力(アカウンタビリティ)が不可欠であり、言語による対話の力を盲信しているフシがある。しかし実際には、身体感覚や感情の揺さぶりも同じくらい立派なコミュニケーションなのだ。 『デデデデ』は、お互いに言葉が通じない同士の、非言語コミュニケーションの物語であり、それがここまででもっともわかり易く表れた5巻だったように思う。デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション浅野いにお3わかる
mampuku2024/03/02人間の美しさも恥ずかしさも手加減無しで【1話読了】 時代遅れかもしれないが、ここには文化があり、研鑽があり、誇りがある。 ポールダンスは普通しないようなポーズが多く含まれるので、画力の高い作者にぴったりのテーマかもしれない。楽しみ。 競技性が高いジャンルではなさそうなので、日常やお仕事、ヒューマンドラマを中心に展開されるのではと予想。POLE STARNON12わかる
mampuku2024/02/25師弟愛にスケート愛、スポ根の本質は愛なのかもしれない【4巻読了】 この『メダリスト』とかいう神漫画を今の今まで読んでこなかったことを激しく悔やんだ。 真っすぐでストイックで鋼メンタルの主人公が、少し遅れたスタートラインからガシガシ上手くなっていくスポ根成長ストーリーが好きみたいです(『BeBlues』など) 読みながら主人公たちに勝ってほしくて本気で応援しまう、勝っても負けても感動の涙を流してしまうこの気持ちはウマ娘で推しを育成してるときの感覚に近いです。残念ながら読むと泣いてしまうので漫喫や移動の電車ではなく買って帰って読む必要がありそうです。 個人的な推しは眼鏡少年の理凰くんです。ツンデレ可愛すぎかメダリストつるまいかだ8わかる
mampuku2024/02/18外堀からじわじわくる系のサイコホラー2巻読了。 ドキュメンタリー風ホラーな雰囲気でミステリー的でもあり、映画『コワすぎ!』シリーズに近い空気も感じつつ、タイトルも相俟って貴志祐介『黒い家』も思い出す。 変な間取りに実は抜け穴が隠されていて……ってこのトリック既視感があるけどどこで見ただろうか。。 とにかくミステリーとして続きが気になるストーリーではあるので原作に手を出すのも検討したい。変な家雨穴 綾野暁3わかる
mampuku2024/01/27「架空戦記」でもあり「歴史」でもある極上の「負」のカタルシスだった。 日本が第二次大戦に突入しそして敗戦するまでを描いた戦記モノで、架空の天才軍人・櫂直(かいただし)が明晰な頭脳と冷静な分析によって開戦を、ひいては敗戦を回避すべく孤軍奮闘する話。 犠牲を払いながら手を尽くしても戦争へ突き進む軍部を止められず、事態は坂を転がり落ちるように悪化の一途をたどっていく。巻数にして30巻を超える長い長い無力感と喪失感を味わいながら、物語終盤ミッドウェー海戦で惨敗、櫂は軍を離れ、そのまま終戦、東京裁判を経て完結へ。 勝利も復讐も俺TUEEEも、およそ快感と呼べるものを与えられないまま、ずっとしんどい思いをしながら読み続けることになるものの、読後感は不思議と悪くない。むしろ心地よいまである。なぜか。 「いわんこっちゃない!」と叫びたくなるような負の感情のカタルシスの連続、喪失感、破壊(と再生)、櫂の決意と忠誠、わずかな希望……。一言であらわすなら、「大人の味すぎる娯楽」って感じ。アルキメデスの大戦三田紀房5わかる
mampuku2024/01/20『ダンジョン飯』最終巻、丸ごと一冊哲学者だった自由にいきるとは何か 欲望とは何か 社会で暮らしていくとはどういうことか 善悪とは何か 食べるとはどういうことか 現実世界を遥かに凌ぐ多様な人種、生物種、民族、価値観が絡まり合いながら各々がそれぞれの“明日”と向き合っていく。 猫のように気ままに振る舞ってきた獣人のイヅツミはいざ自由な地上に放り出されたことで、本当の自由とは何かという問いに直面する。 そんな戸惑う彼女にマルシルは、嫌いな野菜も我慢して食べ、よく運動し、健康で長生きしてほしいと懇願する。すなわち、自由とは何かという深遠なる問いに対する一つの手がかりとして、「健康に生き続けること」こそが自由を叶える方法なのだと一つの“道”を提示したではなかろうか。 というか自由とか欲望とか語りだすと収集がつかなくなるので簡潔にまとめると、たとえファンタジー世界であろうと変な奴らばっかであろうと、飯を食うという普遍かつ不可避な事象の前ではその人なりの哲学や生き様が現れる。人は思考や欲求によって食事をし、食事によって作られた体、食事によって生きながらえた生がまた新たな思考や欲求を生むのだ。ダンジョン飯九井諒子6わかる
mampuku2024/01/13想いが濃すぎて原液どばどばなのに後味スッキリ効果音などを作る「サウンドクリエイター」とアクション漫画としての「喧嘩」が予想外の化学反応を起こす、第一部ともいうべき前半部分。虚構と現実が入り混じりながら詩的にかつ美しく読者を幻惑する。 そして後半部分では、散りばめられた布石を余さず回収しながら、ただただ勧善懲悪でカタルシス満点のストーリーに熱狂させられる。 そしてラスト(エピローグ)で全体の真相が明らかにされる。一本の映画のような、丹念に編み込まれたストーリーだ。 悪を打ち倒しヒーロー気分に酔いしれる主人公にまんまと感情移入させられ、クライマックスを迎えるとそこにはまさかの裏切りが待っている、この読み口は朝井リョウの小説とよく似ている。節々でルサンチマンやシャーデンフロイデを刺激してくる描写が多いがこれもおそらく作者の罠に違いない。 この意地悪なラストへの感じ方は、受け取り手によって様々だろう。無敵の人や弱者の人たちが傾倒してしまいがちな安易で極端な思想や異世界モノのような居心地の良いコンテンツに対して皮肉でもあり、救いへの希望でもあるのだ。 ちなみに各話のサブタイトルには、色々な映画や音楽などの名前がそのままつけられている(『ネヴァーマインド』『タクシードライバー』など)。作中、私が気づいてない小ネタや引用がまだまだあるのかもしれない。いずれ読み返したときには今とは違う読み方ができるのではないかと楽しみだ。アタックシンドローム類吉沢潤一11わかる
mampuku2023/12/24終末を旅する少女が、人々の想いに触れ、出会い、別れ現代よりちょっと進んだサイバーパンクみのある近未来世界のポストアポカリプス。怪物と疫病によって崩壊し汚染された世界を“浄化”しながら人類の生き残りを探して旅をする少女。 説明口調を極力排して没入感を高めてくれているため、「破滅後50年経つのになぜ食料があるのか」「なぜ主人公の少女は感染しないのか」など、読んでいて「あれ?」と思わせる謎が結構あとになってから判明したりする。登場人物に愛着が増して没入度が高まっていくにつれ、情報量も少しずつ増えていく。SF特有の、情報の物量でいきなり殴られるあのハードルの高さがなく、とても読みやすい。ウスズミの果て岩宗治生7わかる
mampuku2023/12/24職業漫画の極致でもあり、実は美少女漫画でもあるこの作者の漫画を初めて読んだが、いったい何者なんだ…… トーチらしい漫画といえばそうだが、果たしてどれだけの知識、取材、リサーチがあればこれほどの解像度で江戸の街が描けるのか。陳腐なコメントになってしまうが職人たちの息遣いや染め物や木材の匂いなどさえも感じられるほど。 ただそれだけでなく、職業モノの短編としてとにかくストーリーがエモい。特に1巻後半の『左官』にはクリエイター物の魅力が詰まっている。江戸というひとつの場所と時代を切り取っていながら、悠久の時間をも感じさせる。 少し幼い顔立ちの女の子が主人公の話が多いのも特徴だ。職人漫画というやや堅苦しくなりそうな舞台がぱっと華やかかつ柔らかくなる、という一般的な美少女漫画的な効果も確かにありつつ、三者三様に奮闘する彼女たちの姿に、この時代にも色々な女性の生き方があったのだろうなと想像させられる。神田ごくら町職人ばなし坂上暁仁6わかる
mampuku2023/12/16個人的読書録■6巻まで読了 肉食獣たちの反社組織「シシ組」が、「ライオン組」でも「獅子組」でもなくなぜカタカナだったのかが伏線回収される。「ししおどし」の「しし」ってことね。 社会派だったり哲学的だったりする部分がフォーカスされやすいけど、結構しっかり少年漫画してるところも好き。 思春期の時分に読んでいたらがっつり性癖歪められていたかもしれない。BEASTARS板垣巴留5わかる
mampuku2023/11/19アンメット(Unmet)であるということはUnmet Medical Need(満たされていない医療ニーズ) これをタイトルに掲げている通り、単に医療という大きなテーマに挑んでいるにとどまらず、いろいろな悩みや欠点を抱えた人間同士の相互のドラマが非常に面白い漫画です。 主人公の脳外科医は外科として優秀なだけでなく常に患者やその家族に寄り添うことによって救おうとする。しかし医療全体の最適化を図りたい経営者たちや、異なる信念を持った同僚たちとしばしば衝突する。また寄り添うべき患者も、患っているのはほかでもない「脳」である。いくら主人公たちが有能かつ真摯だとしても、彼らの苦しみを本当の意味では分かち合えない。数学における不完全性定理のように、医療とは、どこまでいってもアンメット(Unmet)なものである運命なのかもしれません。 医療漫画はどうしてどれもこれも面白いのか、とときどき考えます。膨大な取材や考証、高度な画力、これを社会に訴えかけたいという熱い思い……数え切れないほどに高いハードルが山積みであるため、世に出た医療漫画というのはすべからくハイクオリティでなければならない、という前提はあると思います。ですが読み手の目線から考えたとき、きっと医学とは人間なら誰しも無関係でいられないからなのかもしれないなとも思います。大半の人間は病院で死にますし、日本の制度では死亡確認ができる(=人の生死を判断する)のは医者だけです。病と死について真剣に向き合って本気で描かれたプロの漫画が、面白くないはずなどないのです。アンメット大槻閑人 子鹿ゆずる7わかる
mampuku2023/11/11『二階堂地獄ゴルフ』はロシア文学である私も私の友人知人たちも初め、この漫画の真の価値に気づいていなかった。面白い「読み方」がわかっていなかった。 第12話にもやってようやくふと気がついたのだ。この悶々とした読み口が放つ既視感の正体に。ドストエフスキーやんけこれ。金貸しの婆ァを転がして罪の意識と自己正当化に揺れるラスコーリニコフの頭の中を膨大なページ数で延々と読ませられるあの小説と完全に一致しているではないか。 ということを先週ドヤ顔で投稿仕損ねていたら、今週(第13話)にまさかの新キャラ「ドストエフスキー罰子」が登場してしまったではないか。なに勝手にネタバラししとんねん!モーニング読者全員『地獄ゴルフ』の面白さに気づいてしまうやんけ!自分だけが気づいてドヤ顔していたかった!二階堂地獄ゴルフ福本伸行8わかる