一九七四年晩春 夏の甲子園大会の予選がもうじき始まろうとしていた――― コントロール抜群で武蔵中学のエースだった桜木雄は、球拾いや雑用を嫌い入学した東征高の野球部に入らず軽口を叩く日々を過ごす。キャプテンの小田切はそれでも桜木の実力を信じ、不満を爆発させるチームメイトをなだめ彼を入部させるが… 色仕掛けあり、男色ありの戦う青春の物語。
女優、デザイナー、そして芥川賞作家と、まるで昆虫が脱皮をくりかえすように次々と華麗な変身を続ける女、十村十枝子。はたして彼女は神が作りあげた天才なのか、それとも!?ヘビのように貪欲な女の執念を描く野心作!
やり手のディレクター、門前市郎がスカウトした新人歌手、小百合チエには門前自身も驚くような“秘密”があった。彼はこの秘密を利用して芸能界に君臨すべく策謀をめぐらせるのだが…。異色のSFドラマ、ここに登場!
昭和20年、満州から祖国への道は、まさしく離れて遠き何百里だった。飢餓と危険におおわれた逃避行に、少年は生存の適応力を身につけ、暗い瞳を虚空にむすび身体を震えさせた。昭和34年、武居捨郎と名付けられた少年はボクサーとなっていた…。虐げられた男たちによる敗者復活戦。そのゴングは鳴った。天才劇画家・宮谷一彦によるエロスと暴力の讃歌、もしくは日本近代文学へのひとつの返答!「肉弾人生嫁賣ジャイアンツ篇」併録。
昭和11年2月、青年将校らのクーデターに遅参した猪野矢一郎少尉は、死に場所を求めて彷徨するうち、スペイン公使館に保護された。そして時あたかも共和政府とフランコ軍との間で内乱たけなわのスペインへとおもむく…!!
一見、軽薄さを与える人物に見えますが、そこには男の気位と一抹の哀感を漂わせているおとぼけ課長。人間の実像を、軽妙なテンポとペンで描いた4コマ漫画の真髄です。思い切り笑って、ストレスを吹き飛ばしてください!
最低ランクの競輪選手・山川素一は、故郷に向かう列車の中で、やくざに追われている小浜ばっちゃと再会。ばっちゃは学生時代、競輪のイロハを教えてくれた恩人だ。そんな素一は今場所かぎりで登録抹消の危機を迎えている。ばっちゃの借金返済と、自分のB級脱出をかけて、素一はレースを勝ち進むが……!? 若手競輪選手の日常をユーモラスに描く表題作ほか、おちこぼれチックな高校球児の姿を綴る傑作短編集を収録!!
80年代の旧ソ連を舞台に、実在の最高指導者「チェルネンコ書記長」本人ズバリそのものを主人公として(何故?)当時の国際事情を描いた珍妙な政治時事パロディ漫画。「チェルネンコ」とか言われても知らねーよ、なんて人も多いはず。当然です。現実に「最も影の薄い指導者」として名を残した人ですから。作中でもそういうポジションでいじり倒されてます。ちなみに、連載中に現実のチェルネンコが死去し、作中でも主人公がかの有名なゴルバチョフに交代します。
もしも自動車教習所の先生が若くて可愛い女の子だったら!? 夢ヶ丘自動車教習所、初の女性教官「風早はるか」をはじめとする様々な教官たちと、運転免許の取得を目指す老若男女の生徒たちとの笑いあり涙あり愛ありの人間ドラマ! これから自動車教習所に通おうとする方や連載当時の80年代後半の車が好きな方にもオススメの一冊です! (第1巻は1話~8話までを収録)
取り立て屋の氷川蓮次は極道顔負けの荒っぽい仕事をすることで有名。ある日、蓮次に好意を寄せていた女性が結婚することに。だが相手の男には借金が…。麻雀などのギャンブルで借金をつくらないこと。もし借りたら、すぐに返すこと。麻雀で借金を取り返そうなどと絶対に思わないこと。ハードでオシャレな蓮次が取り立てにやって来ます。
獄中死したはずの平賀源内が執筆した『解国新書』なる書が見つかった!幻の古書を入手した研究者・山之内と、教え子・紅葉緑(ゆづりはみどり)が読み解くと、常識を覆す歴史事実が次々と明らかに!!悪評高き田沼意次(おきつぐ)による幕府の財政改革は、実は評価すべき功績だった!?意次は昭和のあの政治家なのか?石ノ森章太郎らしい巧みな演出とカット表現で、江戸時代と現代を見事に交錯させた人間ドラマ!
揺れる世界、その時、我が政治家(センセイ)達は、何を演じていたか。誰も知らなかった人が、突然、首相候補として名指しされたり、一つのスキャンダルで、大物政治家が、政界表舞台から去っていったりする。この世界も厳しいのだ!!
尾張藩の下級武士・朝日文左ヱ門。性格は意志薄弱、趣味は酒・芝居見物・釣り、そして日記。恐妻に怯える日々を過ごしながらも愛人に癒され、公(との)の色恋噂話を肴に同僚と酒を飲み、出張中に羽目を外してストレス発散……。実在した、お気楽な中流サラリーマン武士のリアルな日常と、当時のスキャンダルを“フォーカス”した『鸚鵡籠中記(おうむろうちゅうき)』が、石ノ森正太郎の手によって漫画化!!
大沢良幸(おおさわ・よしゆき)、弱冠14歳、季節ごとに着がえた女を踏み台に成り上がり、新しい時代を着こなすモデル――。中学卒業後、日本を飛び出した良幸。大人たちの陰謀が渦巻くパリのファッション業界で、美しいカラダと優れた頭脳を武器に、襲いかかる罠(わな)をかいくぐりながら、その地位を築いていく!!良幸が魅せる人生という名のステージングに、誰もが虜(とりこ)になる――!!くさのあきひろのデビュー作品!!
その朝オレの中で、何かが弾けた気がした――。大学の合格発表の朝、正宗は自分の中で何かが変わったのを感じた。実家が呉服屋の正宗だが、今までは呉服屋なんか男のする仕事ではないと思っていた。でもそれじゃあ男のする仕事って何だと考えたとき…、正宗はおやじの跡を継いで呉服屋になろうと決意したのだ!!周りは商売はそんなに甘いもんじゃないと諌めるが、それでも人生に絶対はねえ!この浅草で立派な呉服屋になってみせるぜっ!!
平和な日常をおくりながらも、不思議な夢にうなされる少年オン。どこかで見覚えのあるこの記憶は、いつ見たものだろうか……「原野へ」。思春期をむかえ幼いころの気持ちを失っていく少年を叙情的に描く「さよならインプ」。白亜紀にまよいこんでしまった少年たちが見たものは、侵略者におびえる恐竜人だった……「白亜紀の少年」など、ベテラン・木村直巳のデビュー作「最後の妖精」を含む5編の短編集。
役者志望の22歳、高野祐二は仲間である朝田哲、山上達朗とたった三人で劇団を立ち上げた。スターを夢見る星くず達の集団、名付けて「座・スターダスト」。夢はデカイが超貧乏な三人の行くところ、酒池肉林、阿鼻叫喚、トラブルの連続だっ!
靴をボロボロにしながら事件の核心へと近づいていくベテラン刑事の活躍を描いたポリスアクション。靴がダメになった大道警察署の刑事・中富(なかとみ)は、爆発事件の通報を受ける。そこへやってきた新人女性刑事・星加(ほしか)に靴を買いに行かせて、爆発現場へと急行した中富は、これは一連の手投げ爆弾抗争だと判断するが、事件はますますエスカレートしていき……!?
「赤んぼは愛そのものです。二人の愛の結晶です」と感動しつつ、只今「子づくり」に心が弾む気分はハッピーの太郎と花子。しかし、デキたと思えばデキなくて、ダメかと思えばデキちゃって…一喜一憂、てんやわんやのお二人さん――貧乏にも負けず、心はリッチな楽天夫婦の痛快「子づくり」奮闘記!!
デビュー作「最後の妖精」を含む、木村直己の初期短編集がこれ。「監察医朝顔」や「天涯の武士」など、青年誌掲載の木村作品を読んだことのある人には、あまりに現在と作風も絵柄も違うことに、ちょっとした驚きを感じると思います。この本に収められているのは、すべてSFファンタジー。そして絵柄は手塚治虫や石ノ森章太郎に近い、柔らかなタッチ。漫画家の絵柄は、何年も描き続けていくうちに変わってくるものですが、それにしても現在と比べるとまるで別人のよう。また一方ではそれ以外の絵も描けるんだといわんばかりの、劇画タッチの作品「小雪鬼」なんて作品もあり、将来花開く才能の片鱗も見受けられます。これら5編の短編が中学三年から高校三年の間に発表され、単行本にまとめられていたということにもびっくり。木村直己という漫画家に興味をもった人は、一度読んでおくべきかと思います。