かしこ2019/06/0419年ぶりの短編集もはや国民的作家になった浦沢直樹の短編集。古いものだと1995年の作品『ヘンリーとチャールズ』が収録されています。これはネズミが眠っているネコからケーキを盗みだそうとするカートゥーンのような話なんですが、あとがきで自分の最高傑作かもと語られていて意外でした。代表作は読んでるしメディアにも出てるから浦沢さんのイメージも固まってたけど、やっぱり作家の本心って分からないもんだなと思いました。バナナマン日村さんみたいなキャラが登場する『DAMIYAN!』はうっかり泣きそうになり、やっぱり『月に向って投げろ!』はストーリー展開が面白いなと思いました。くしゃみ 浦沢直樹短編集長崎尚志 浦沢直樹 遠藤賢司
かしこ2019/06/02ほとんど描き下ろしの短編集岩岡ヒサエさんの作品はホッとするような明るい終わり方が多い。自分では気づかなかった幸せを教えてくれるような感じ。絶望してもなんとかなるって思えてくる。あまり描かないらしいエッセイでは作家のルーツを知ることができて嬉しかった。創作の話では点描の奥深さを語っていてマンガへの愛を感じた。パーマネント~まんがの詰め合わせ~岩岡ヒサエ
かしこ2019/05/31大人になって気づいたことぷらせぼくらぶの奥田亜紀子さんの読み切り。田舎の母親から宅急便が送られてくる。仕事は忙しいし新幹線で7時間半かかるくらい遠いけど、ダンボール開けたら故郷の匂いがして帰りたくなった、という話。短いのであっという間に読めるんだけど色んな感情が浮かんでくる奥行きの深さがある。当時は気にも留めなかったのに今になって意味が分かることってありますよね。主人公・多恵子が見た目も母親そっくりになっていて感慨深い。子供だった自分の無邪気さを思い出して気恥かしいうちはまだ大人になれてないんだなぁ…。やま かわ たえこ奥田亜紀子2わかる
かしこ2019/05/264半世紀つづくエッセイマンガリアルなトルコ事情を隅々まで描いたエッセイ。トルコ滞在中に出会ったトルコ人男性と結婚し、日本とトルコを行き来しながら描いています。これを読めば、言語、風習、人柄、流行、が大体わかる。この単行本は2018年発売ですが、シリーズは1992年に始まり、今もオフィスユーで連載中です。 当たり前だけどトルコも約25年で随分と変わり、読者としてもノスタルジーになりつつ、大学生になった息子ケナンくん主観での話があったりして感動しました。今のトルコで気になるのはテロですが、トルコ人はみんな慣れているので日本人にとっての地震のような感覚らしく、かつ地元の人は危ない時間や場所をなんとなく感知しているようだとか。ケナンくんも一人でトルコに行き、従兄弟と旅をして楽しそうでした。それほど身構えずにトルコ旅を計画しても良さそうです。ご飯がめちゃくちゃ美味しそう!トルコで私も考えた ジェネレーションズ高橋由佳利1わかる
かしこ2019/05/26スタイリッシュなだけじゃない!短編集言われてみれば服ってヒフだなぁと表題作に気づかされました。自分のテイストを変えてくれるヒフ、考え方ひとつで未来感が出てきます。登場人物が全員フラットな位置関係にあるのもいい。誰もが主役であり脇役である、そういえばそれって当たり前のことだった。高野雀さんって視点が新しい人ですね。 個人的に一番好きなのは、女の子にとってはホクロが多いことがコンプレックスなんだけどそれが宇宙の中の星みたいで片思いしてる男の子がいる話。コンプレックスはその人の個性だし抗えない程の魅力になり得る。見つけた人だけの特権のようなもの、という感じでドキドキした。あたらしいひふ高野雀
かしこ2019/05/20ネタバレドンちゃんのようにはなれないが…📷どうしよう主人公のドンちゃんに感情移入できない、むしろ私はどんどんダークサイドに堕ちていくテッちゃんだ!とドキドキしながら読み始めましたが、結果的に土田世紀の思惑に上手くハマった気がします。この作品は聖人のようなドンちゃんの生き方を強要しているのではなく、人生のどこかに必ず救いはあるのだという教えなのかなと思いました。登場人物の中でもヤクザの親分と日本画家の大家は達観していて、ドンちゃんにはなれずとも、こうなるべくテッちゃんのように精進せねばと思いました。杉さん登場回は爆笑できるので大好きです!同じ月を見ている土田世紀3わかる
かしこ2019/05/19ネタバレ悩んでる姿も可愛い主人公仕事を機に上京した8個上の幼馴染みと山梨に住む大学生の主人公が中距離恋愛をする。知り合ってからは長いけど恋に発展したのは最近で、主人公にとっては初めての彼氏。この設定とタイトルで恋に溺れていく話かなと思ったらそうじゃなかった!自己評価が低い主人公が人生の波に揉まれて大人になっていく話でした。とはいえ実はお互いフェチ等をこじらせてるナイスカップルなのでいちゃいちゃもある。おまけ漫画はふたりの関係がより深くなって面白かった。姉妹作品があるようなので読んでみようと思います。溺れるようにできている。 完全版シギサワカヤ
かしこ2019/05/01グルメとお侍さんの人柄が見どころ!📷うちにもタイムスリップして来てくれ〜!って思いながら読んでます。 お侍さんが江戸時代から現代へタイムスリップして居候先のOLさんにご飯を作る話です。プロではありませんが料理は得意。食道楽なので美味いものを食べることが何より好き。江戸で人気のメニューはもちろんカルボナーラにも挑戦します。 個人的にグルメより好きなポイントはお侍さんの人柄です。現代に適応するように着物を脱ぎTシャツ短パンを着こなして、家計をやり繰りするため少しでもお得なスーパーで買い物する、だけどマゲはそのまま…!真心を持って慣れない環境を受け入れながら守るべきポリシーは絶対に貫く、まさに尊敬すべきお侍さん像そのものです。 元の世界に妻子がいるので、OLさんとは恋愛ではなく信頼で結ばれた関係なのもいいなと思います。一緒に暮らすうちに関係が変わっていくかも?ですが。半助喰物帖草香去来 灯まりも2わかる
かしこ2019/04/16コミュニケーションとはなんぞや三護さんのガレージセールではどんな物でもお手頃価格である。在宅勤務で一人暮らしには困らない稼ぎもあり、父親譲りの物欲で不用品が溢れているので、人とのコミュニケーションが目的なのです。世間から少し浮いている三護さんですが、人との心の距離の取り方はむしろ巧みかもしれない。お互いにとって心地よい交流って難しいですが、このマンガにはヒントがあるような気がします。三護さんのガレージセール黒谷知也2わかる
かしこ2019/04/15人生の節目を描いた短編集えすとえむさんの漫画をちゃんと読んだのは初めてでしたが、登場人物が皆スラリと美しくて見応えがありますね。 一読しただけではこの短編集のテーマにピンとこなかったのですが、それぞれの人生の節目になった出来事を描いたのだと気づいた時に、一気に好きな作品になりました。 特に好きなのが「ふつつかものですが」という短編です。とにかく面食いな女の人が山のようなお見合い写真の中からめちゃくちゃタイプのイケメンを選んで結婚する話。 結婚式とか名前に「式」が付くような行事はもちろん人生の節目だけど、振り返って思い出すのはその中の一場面だったりする。そういう瞬間を大切に描いているのが見所です。新装版 このたびはえすとえむ
かしこ2019/04/14マチ針が見守る恋のお話同じビルの1階と2階でそれぞれお店を開いている男女のほっこり胸キュンなお話です。1階で喫茶店を営む女性は三雲さん、2階で手作り雑貨を販売する男性が谷野くん。実は両思いなのですが、お互いの気持ちに気付いていません。 タイトルのマチは谷野くんの仕事道具であり、お母さんの形見のマチ針が元になっています。このマチ針に亡くなったお母さんの魂が取り憑いていて、二人の行く末を優しく見守っているのです! 魂が取り憑くって文字にするとホラーですが、むしろおとぎ話のような世界に近いです。問題が起きれば念力を使って応援してくれる優しいお母さんの他にも、霊のような不思議な存在は多数登場します。ほのぼのしたやり取りが面白いです。 全1巻で手に取りやすく、お話のまとまりも大変よいので、色んな人にオススメ出来ます。読んでてめちゃくちゃ癒されました。幸せのマチ岩岡ヒサエ
かしこ2019/04/12ドM上司とドS部下の傑作ラブコメ📷けなされ罵られて爆発的に成長するタイプのドMエリート蛇沢課長は、部下である美々子の女王様としての素質を見抜き、ドSなお仕置きをおねだりしては自らを奮い立たせ営業成績を爆上げしている。恋愛要素もありますが私はギャグが強いと思って読んでいます。蛇沢課長の清々しいドMっぷりと女王様スイッチが入り覚醒した美々子のやり取りは脳が震えるくらい面白い。犬上すくね先生の可愛らしい絵も魅力です。蛇沢課長のM嬢犬上すくね
かしこ2019/03/25ネタバレずっと未読だった名作絶対に面白いってのは分かってるけど何となく読むタイミングを逃してた名作。 驚いたのは最終回だった。私はてっきりそよちゃんと大沢君が高校の卒業式を迎えて、二人の進路がどうなるかまではっきり描いてるんだと思ってた。実際は高校2年生の夏休みが終わって、新学期になっても東京から帰って来なかった大沢君が村に戻ってきて、子供達みんなで海に行くシーンで終わる。 自分は何て無粋だったんだろう。これ以上ない終わり方だなぁと思う。大沢君が戻ってきてくれたこと、みんな村のことが好きだということ、ここで終わることによって、読者の中で天然コケッコーの世界はずっと続く。この先も色んなことが起こるだろうけど、変わらない人柄と健やかな暮らしぶりが想像できる。物語は無限になる。 恋愛とか青春って言葉だけでは収まらない。想像してたよりもずっと面白かったです。天然コケッコーくらもちふさこ11わかる
かしこ2019/03/13おもしろそうな新連載!龍神かごめちゃん📷まじめっぽい小学生男子が橋の下で出会った女の子は…実は龍神様!ひょんな流れで一緒に暮らすことに!ちなみに二人っきりではなくイケイケなお姉ちゃんもいます。ふとしたキャラクターの表情がかわいいです。龍神かごめちゃん松尾あき5わかる
かしこ2019/03/12ずっと大切にしたいマンガかつて中学生だった大人達みんなに読んでもらいたい。 効き目のない薬を飲んでも患者さん自身が効き目があると思い込むことで症状が改善することをプラセボ効果といいますが、その「ぷらせぼ(偽薬)」がタイトルに付いています。思春期の頃って自分や他人に期待し過ぎることがあると思うんです。その過剰な思い込みによってネガティブになったりナイーブになったりするんじゃないかな。主人公の岡ちゃん(表紙の二頭身キャラ)がまさしくその葛藤の真っ只中で、大人になった今は「ありのままの岡ちゃんでいいんだよ」と言ってあげたくなりますが、当時は自分も色々夢中だったかもと懐かしくなりました。岡ちゃんが脇役として登場する回はクラスメイト達の話になるのですが、完璧じゃない恋や友情が物語として特別なものになっています。ちょっと泣けるし、めっちゃ笑えます。ぷらせぼくらぶ奥田亜紀子13わかる
かしこ2019/03/12この作家は大物になりそうと予感させる読み切り #読切応援実はすごく気があって二人は親友になれそうだったのに、ちょっとした誤解でスレ違ったまま不慮の事故で死んでしまったクラスメイト。割とよくある筋書きだけど、この作品には光るものがあると感じた。なんてことないクラスの中の一人だったし、パンツを覗くのが趣味なんて変わってる。けど単純ないいやつじゃないからこそ惹かれるんだろうな。人間の内面の複雑さが磯辺くんというキャラはよく描かれていると思う。コマ割りもパンツの描写もすごく魅せられた。磯辺くんとパンツ奥山ケニチ5わかる
かしこ2019/03/06ストリップを観て描くルポ漫画男女問わずストリップを観たことがない人の為の優しい入門書です。 女性作家さんが描かれていているので、同性としてどうしてストリップに興味を持ったかには私も共感しました。男の人は一人が基本かもしれないけど、女だと友達を誘いやすくて観に行くハードルが低いかもしれない。 連載が続いて色んな劇場や踊り子さんのこと詳しく描いてくれたら嬉しいな。女の子のためのストリップ劇場入門菜央こりん2わかる
かしこ2019/03/01最後の晩餐どうする?いのまま、ものするひとのオカヤイヅミさんが小説家たちに「死ぬ前に食べたい物は何か?」を尋ねるコミックエッセイ。オカヤさんが食と文学の両方をテーマにしたマンガって最強じゃん!と思って読みました。物語を描く人たちの死生観はとても豊かで自分はもっと今を楽しむべきだと感じました。まさにメメントモリ。おあとがよろしいようでオカヤイヅミ
かしこ2019/03/01いがわうみこのギャグセンスやべぇ私は第8話「ファンシーババア」が一番好きでした。親知らずを抜いたことにより洋輔がファンシーババアのテレパシーを受信してしまうという話です。あらすじにすると意味不明で書きながら笑ってしまう…。洋輔は最初から最後までウザいのですが、いがわうみこのギャグセンスにより愛すべきキャラとして無事に昇華することが出来ました。逆にここまでのウザさを描き切るのすげぇと思います。底知れないギャグ精神力を感じるマンガでした。愛され洋輔いがわうみこ4わかる
かしこ2019/02/27ただ悲しいだけじゃない一冊老夫婦が火葬場で心中した実際の事件をモチーフに描かれている。「現実に起きた事と同じ結末になっているけどそこに到るまでは作者の想像である」と、あとがきに丁寧な注釈があった。全1巻で映画1本に相当するくらいの読み応え。ジャンルにするとサスペンスだけど絵がシンプルなので恐くはない。何も知らずに読んでもマンガとして十分に面白い。この夫婦にストーリーを想像することで弔いになっていると感じた作品。もし二人が読んだら喜ぶと思う。よろこびのうたウチヤマユージ2わかる
かしこ2019/02/20小玉ユキさんが描くキテレツが可愛い全話おもしろい短編集!現代モノあり!ファンタジーあり!心掴まれる作品がきっとあると思います。個人的には藤子・F・不二雄先生のムック本「Fライフ」に掲載された作品に鷲掴みされました。時を経て高校生になったキテレツ大百科の登場人物達のお話です。ちょっと泣けます。あとキテレツが変わらず神通鏡を掛けていたのが可愛くて笑いが止まらなかったです。宝石箱 小玉ユキよみきり集小玉ユキ3わかる
かしこ2019/02/20他人に勧められたマンガでこんなにこのマンガにハマってストリップ劇場通いを始めたという女性がいた。飲みの席でその話になり「行ったことない」と言ったら、満場一致で絶対に行くべきだと言われ、その女性に連れて行ってもらったことがある。そしたら気絶するくらい感動した。 あれから数年経ちましたが、やっと読めた!これはハマるわ!生でストリップを観た時の感動も、劇場の空気感も、そのままマンガで再現されている。1巻から目頭が熱くなってくるわ。踊り子さんはみんな女神。ストリップは想像より明るいし面白い。全3巻で終わりは勿体無いくらい面白い。続編を切望します…!池袋レインボー劇場えりちん2わかる
かしこ2019/02/18ゲスくないお泊まりマンガ東京出張の度にホテルの空室がなくて困るサラリーマンの主人公。しかし必ず美女が一夜の宿を提供してくれる。そう!毎回ラッキーなシュチュエーションに恵まれる主人公なのですが、まったくゲスさがないのがいいですね。大人な関係にもなったりするけどクリーンな印象を持つマンガです。絵柄の力もあるのかな?一つのエピソードが3部構成(男性視点、女性視点、一夜の後)になってて、どの視点でもドキドキします。あとがきに「犬上すくね版の孤独のグルメが読みたい!」という担当氏の言葉から発想したと書いてて面白かったです。東京No Vacancy犬上すくね
かしこ2019/02/12明治ロマンと時をかける女子高生の恋河内遙先生が描く王道少女マンガ的ラブストーリー。 曽祖母にもらったネックレス、天気雨、とあるクラシック音楽の一曲、三つの要素が合わさると自分そっくりのお嬢様が生きていた明治時代に飛ぶらしい。主人公は子供の頃にも一度タイムスリップしたことがあって、その時に出会ったお嬢様の婚約者である御曹司とはお互いに初恋の相手でもある。無くしたネックレスを探す為にお嬢様のフリをして御曹司に接しているうちに恋心が増すんだけど、自分の正体を明かすことも出来なくて…というお話です。 これはちょっと展開が読めなくて面白いなと思ったのは、主人公の他にもタイムスリップした人物がいるところです。それがお嬢様が恋心を抱いている若き書生だから益々面白い。人物相関図がワクワクの多角形になってます! 子供の頃のように恋と少女マンガに憧れる純粋さを思い出させてくれる良作。涙雨とセレナーデ河内遙4わかる