かしこ2019/12/11すべての人に勧められる作品ではありませんが…もし自分がポックリ死んで田舎から親が遺品の整理に来て見つかったら一番ヤバいと思う漫画が早見純かな…。なんせタコシェで買ったサイン入りだし、どんだけ好きだったの?!うちの子どうしたの?!ってビックリさせそう。それでも持ち続けなければならない、必ず本棚の片隅にいて欲しいと思う、そういう作品です。漫画を読んで人が殺せるくらいの狂気を感じたのは初めて。誰かと共有したい訳でもない。自分だけの秘密の悪を持ちたい人は覚悟して読んで下さい。性なる死想早見純1わかる
かしこ2019/12/06今週のモーニングで一番おもしろい漫画だった #読切応援第76回ちばてつや賞一般部門大賞受賞作。 まず扉絵でゴミ袋の中に制服が捨てられてるのがいいですよね。 家出先の男とはどうやって知り合ったのか説明がないのもいい。 結局は一人じゃ何も出来ない、何も変えれない弱い人間であるというヒンヤリとした冷たいオチもよかった。 まだ色んな漫画家の影響が見えるけど、すぐ消化して自分のものにしそう。 https://comic-days.com/episode/10834108156713779026本がある部屋西田荘7わかる
かしこ2019/11/21子供も大人も一緒に読んで成長できるマンガアニメにしたらいいんじゃないかな?今の時代の日曜日の夕方にぴったりな気がする。 小学4年生のスミレちゃんが主人公。両親は離婚していて今は料理人のお母さんと二人で暮らしている。メガネをかけてるけど実はハリーポッターに憧れてかけ始めた伊達メガネ。将来の夢は小説家。スミレちゃんもユニークな性格をしているけど、ロシア人の転校生ソンチェフ君や、マンガ家のお姉さんとか、スミレちゃんの周りの人達も同じくらいユニーク。それぞれに色んな事情を抱えてて、泣きそうになるエピソードもあるんだけど、いつも前向きな捉え方をして終わるのがいい。子供も大人も一緒に読んで成長できるマンガだと思います。 一番最初のエピソードが再婚して広島に暮らすお父さんに会いに行く話なんだけど、最終話もそこに繋がるのが自分はとても好きでした。 すみれファンファーレ松島直子3わかる
かしこ2019/11/13くらもちふさこの良さをギュッと凝縮したような短編ちょっと誤解しがちなタイトルだと思うんですけど「百年の恋も覚めてしまう」なので「冷めてしまう」話とはちょっと違います。けれどもストーリーとしては主人公の笙子が小学生〜大人になるまでの成長物語で、その時々で好きになった片想いの相手に何度も「冷める」からダブルミーニングでもあるのですが。そういうところもくらもちふさこらしくて面白いです。 小学生の時は魚屋さんちの新田君が好きだった笙子ですが、ママから「あの子目と目が離れてておもしろい顔してるわよねー」と言われて急に新田君のことが嫌いになってしまいます。中学生の時に好きだった広瀬君は声変わりする瞬間を聞いて嫌いになってしまいました。高校生の時は友達に紹介された宇佐美君のことを出会った瞬間から「もう会わないだろうな」と思ってたけど、笙子の本心に気づきながら優しくしてくれた宇佐美君の気持ちを知って切なくなったりしました。大人になった笙子は編集者になり漫画家のおつかいで昔住んでいた町の商店街に行きます。そこには新田君ちの魚屋があって二人は再会します。 ほとんどネタバレしてしまいましたが、あらすじを知っていても心に響く作品なのでぜひ読んでください。こんなに少女の気持ちに寄り添って描けるってすごいです。あんなに好きだったのに些細なことで嫌いになったり、自分の不誠実さに反省したり、誰もが経験したことあると思う。そういうことを大げさじゃないエピソードで語れる素晴らしさもある。現実の人生って細やかなことの積み重ねだから、そこを汲み取ってくれることがとても嬉しいんです。 この短編の為に作られたような一冊ですが、その判断はめちゃくちゃ正しいと思います。百年の恋も覚めてしまうくらもちふさこ6わかる
かしこ2019/10/21笑えるラブコメはお好きですか?なぜか森高千里ネタが多くてウケる。主人公が渡良瀬橋渉なんて無理やりすぎるのに名前が出てくるだけで笑っちゃう。ストーリーとしては奥手なサラリーマン渡良瀬橋渉が恋愛の神様にアドバイスされながら同じ会社の森高里子と恋を育んでいくラブコメ。社会人恋愛モノによくある一話ごとに女の子が変わるんじゃなくて、ずっと同じ相手なのもいい。あとタイトルにもなってる恋愛の神様がそれほど役に立ってないのもいい。恋の渡良瀬橋を渡れ!渡良瀬橋渉!は名シーン。恋愛の神様鈴木マサカズ
かしこ2019/10/18わななきの義兄は面白いぞ!作者の窓ハルカ曰く、わななきの義兄は「レディコミ」らしい。たしかに不審者にしか見えない夫の兄と同居しなければいけないシュチュエーションとか、身内のゴタゴタってレディコミっぽい。主人公がめっちゃ巨乳の若妻なのがいい!マンガ界のお約束的エロも、あるある過ぎる展開も、窓ハルカが描くとめっちゃ面白い。なんだかんだ和太鼓で家族が一致団結するのも素敵やんと思ってしまった。窓ハルカで一番好きな作品だから紙でも単行本化してほしい。わななきの義兄【単行本版】窓ハルカ3わかる
かしこ2019/10/16読むと人に優しくなれる少女漫画町田くんの世界の作者・安藤ゆきさんの読み切り集です。この方の作品はどんな人間も弱いんだよという視点で描かれているのでとても優しいです。表題作の「透明人間の恋」の主人公はちょっと町田くんに似ています。フラれた相手の言葉を素直に受け止めて自分を前向きに変えていく女の子の話です。人と向き合うことの大切さ、そして何より恋って素晴らしいな!と思いました。自分が中学生だった頃に出会っていたら人生が変わってたかもしれない。別冊マーガレットを読んでる子は同じ学校に好きな人がいたり、ちゃんと恋愛してて漫画で恋を学んでるというイメージがあったので、今の別マ読者の女の子がこの作品を読んでどんなことを思うのか聞いてみたくなりました。透明人間の恋安藤ゆき
かしこ2019/10/13水風呂のよさを知る人は共感度が高いはずサ道、湯遊ワンダーランドに続くサウナ漫画の登場です。サ道は元祖サウナ漫画だしサウナを学びたいなら先ずこれを読めって感じ、湯遊ワンダーランドはサウナ好きじゃなくても読んだらハマる面白さ、お熱いのがお好き?はサウナ気持ちいよね!を素直に共感できる漫画でした。 主人公がアラサー女子なので最近よくある妙齢女子のモヤモヤお悩み漫画っぽい印象を持ちがちなんですけど、これって自分がサウナにハマってないからそう感じるんじゃないかな?と思って読んだ後にサウナへ行ってみたんですよ。やっぱりそうでした。水風呂のよさに目覚めるとめちゃくちゃ共感度が上がります。 サウナはお肌ツルツルになるけど髪はパサつくからヘアオイル持ってた方がいいよ〜!とか、いつもカバンに入れて持ち歩いてる最低限のお風呂セットの中身とか、友達みたいな感覚で教えてくれるのもいいですね。さっそくマネしようと思います。お熱いのがお好き大町テラス3わかる
かしこ2019/10/11ネタバレ「クリスマスにブスと過ごすのが嫌だった」は名言ヤクザの組長も、グレた女子高生も、医大生の伊藤も、抱えてるトラウマは漫画的によくあるネタなんだけど、人間って本当にそういう些細なことから歪んでいくんだと思う。だから主人公である名越のコンプレックスも突き詰めていけば「クリスマスにブスと過ごすのが嫌だった」になるだろうし、この一言を絞り出した名越には感動した。精神の歪みと向き合う場面の見せ方もめちゃくちゃ上手くて、荒いタッチで描いた滝汗をかく人間の真っ黒なシルエットはすごく印象に残った。鬼才と呼ばれる理由が分かった気がする。殺し屋イチもそうだったけど終わらせ方も好き。ホムンクルス山本英夫2わかる
かしこ2019/09/27ネタバレ読み終えた感想です。読み始めたら止まらなくなって全巻一気読みしてしまった。 見た目も性格も好青年なのに学生時代にいじめられたトラウマからSとしての本能が目覚めそれを殺しに利用されてしまう主人公イチ。最初の頃の主人公なのにコイツが一番ヤバイ奴じゃん!なイチのエピソードが好き。夫からDV受けてる風俗嬢に「あいつを殺して僕が変わりに蹴ったり殴ったりしてあげるから」と言ったり、新潟から新宿までチャリで来てるとか(笑)そんなイチと対立するヤクザの垣原のドMっぷりにも感動してたんだけど最後はちょっとガッカリ。輪切りにされて喜ぶ姿が見たかった…!でもイチのその後とか、誰よりも欲深いジジイが最強なラストは余韻も残るし満足。面白かったです。殺し屋1(イチ)山本英夫1わかる
かしこ2019/09/24サスペンス好きとしてもおもしろかった!あまり少年マンガを読まないタイプなのですが、表紙が気になって読んでみました。女の子が可愛い系の話かな?と思ったらめちゃくちゃサスペンスでおもしろい。サスペンス大好き!話の見せ方がゲームをしてるみたいな感じだ…と思ったら、作者さんがゲーマーさんっぽいので納得。廃病院の地下での戦闘シーンとかめっちゃホラーゲームみたいで怖かった!この作品はアニメ化よりゲーム化してくれたら嬉しい。いや、強制的にタイムリープさせられるとか苦痛でしかないか。サマータイムレンダ田中靖規
かしこ2019/08/19文豪達の恋愛遍歴を描いた「恋愛烈伝」も読んで欲しい!太宰治が玉川上水で心中したことは誰でも知っているけど、なぜそんなことをしてしまったのか、その気持ちを理解することは困難だ。けれども齋藤なずな先生はそれを漫画で描き表している。まるで太宰本人の告白のようにリアルな心情描写である。もし自分が同じ量の資料を読み込んだとしても、ここまでの人物像を突き詰めることはできない。なぜなら作家に対しての憧れという妄想を抱かずにはいれないからだ。もしかしたら齋藤先生の観察眼は描かれている文豪達より鋭いかもしれない。齋藤なずな作品集齋藤なずな
かしこ2019/08/17ネタバレ連載になったら面白そう! #読切応援近未来の日本では人々のストレス値を下げる為にアンドロイドAIを社会投入している。面白いのはロボットだと認識されると効果がないので正体は絶対にバレてはいけないというところ。主人公のアンドロイドAI・愛ちゃんも一般家庭に派遣されて娘として暮らしながら学生生活も送っているが、ロボットらしく機械的に役割を果たしながらも家族や友達と会話してる時は表情が可愛かったりする。キャラクターがすごく魅力的なので読切ではもったいないと思う。メンタルリリーブズAI夜鳥よう4わかる
かしこ2019/08/10ネタバレ噛みしめるほどに味わい深い #読切応援いきなり3人の女がファミレスで語り合う場面から始まるが、喪服を着ているので彼女達が葬式からの帰りであることがわかる。話が進むにつれ亡くなった1人も含めて学生時代からの友人であり、それぞれの名前に「東西南北」が付くこと、30歳になってお互いが自分の人生を生きるようになり抱える悩みも違ってきたことが語られる。シンプルな絵柄が複雑なストーリー構成や友人の死などの重い内容を受け入れやすくしてくれいる。また、線の太さが均一だからこそ何気ないような描き込みも人物や背景と同じくらい意味を持つものになっている。スマホの画面に映るLINEグループ名が「東西南北」であること、最後のシーンで主人公が前日に別れ話をした恋人の分も牛丼を買っていること、そうした気づきが作品の奥行きを増してくれる。残された3人のこれからの関係について物語る「友達でいよう これは 変えないでいよう」というセリフも心に残るが、そこに重ねるように主人公が自分自身の将来に対して肯定的に捉える様子が描かれるのが素晴らしいと思った。前後左右へ光用千春7わかる
かしこ2019/08/08この作者の頭の中を覗いてみたい「子どもの頃に爆笑しながら読んでて思い出したら懐かしくなって最近大人買いした」という人から借りて読んでいるのだが、令和になって初めてこの漫画を読む身とすれば素直に爆笑できなかった。もちろん笑ってはいるんだけど!今の時代にこのネタは描けないだろうな…と冷めている自分がニクい。ただ、やはりこの作者は普通ではないと感じさせる気配がずっとある。例えば、ふっ子が空を飛ぼうとして木から激しく落下すると場面が変わり「今年の正月につくった雪だるま」が現れてふっ子を死後の世界に連れて行こうとする。天使とか死神ではなく溶けて消えてしまった雪だるまなのがすごい。エロ・グロ・ナンセンスなネタの中にふいピュアな部分があったりする、その何を考えているか分からなさがオリジナリティーだし、この作者の頭の中を覗いてみたいって思わせるのは才能だと思う。パパと踊ろう地下沢中也3わかる
かしこ2019/07/26必読!東村アキコの名作小学生の時に本屋でジャケ買いをした思い出。「海月姫」「東京タラレバ娘」から人気が爆上がりした東村先生ですが、今の絵柄になったのは「ひまわりっ ~健一レジェンド~」「ママはテンパリスト」で週刊連載と育児を抱えて超多忙になられた頃からではないでしょうか?それ以前はこの「きせかえユカちゃん」のような女性マンガらしい線の細い(自伝的マンガ「健一レジェンド」では祥伝社系とご自身がネタにされていたと思います)絵柄でした。とはいえオシャレな表紙だと思って買ったものの内容は東村節全開のギャグです!ちなみにギャグを描かれたのもこれが初だと思います。しかし個人的な意見を正直に言えば数ある東村作品の中でもズバ抜けて面白い!月刊連載で時間に余裕があったのかなと邪智してますが凝ったネタが多いです。超大好きなのは「ボイン夏の陣」の話。主人公ユカちゃんがお姉ちゃんの彼氏に「お前ボインな女と浮気してないだろうな?!」と問い詰めるんですが、ライバルのボイン含め脇役キャラも主役級に濃くて最高!この「きせかえユカちゃん」があるからこそ私はずっと東村アキコ先生が好きなのです。きせかえユカちゃん東村アキコ3わかる
かしこ2019/07/26コミカルに心えぐる傑作! #読切応援友達の彼女がめちゃくちゃ可愛くて大好きだったはずの自分の彼女に冷めてしまう…という男にとっても女にとってもあるあるだけどフラれる側からすると受け入れがたい残酷さのある話だった。今までは全く気にならなかった肌のカサつきや髪のパサつきが見えてきたり、彼女の笑顔にも嫌悪を感じるようになってしまった主人公。夢から覚めるように現実が見えてきた様子はまるでホラーだった。恋の空虚さと喪失を辿る青春読切‼と言いながら実はホラーなんじゃないか?「僕の彼女は原風景」というタイトルも諸星大二郎の作品っぽくないか?とか思い始めるくらい笑。とはいえ彼らは高校生なので恋に恋する年頃なのだろう。人との付き合いは色々あるから薄目で見ることも大人になると時には必要ですね。優しくなりたいです。僕の彼女は原風景冨手優夢4わかる
かしこ2019/07/24めちゃくちゃ怖いと思いながら読んでた個人的にはこどちゃよりもこちらを熱心に読んでいたので小花美穂といえばホラーのイメージがある。りぼんなのに容赦なく怖いのがいい。ホラーといっても幽霊ものではなくフランケンシュタインのような話。双子の妹が交通事故で死んでしまい何者かに遺体が盗まれてしまう。妹はとある実験によって「生きている人間剥製」にされてしまっていた。見た目は生きてた頃のままなんだけど記憶は残ってないから人格も少し変化してて、やけに無邪気でハイテンションな感じが人造的だった。人間剥製同士で赤ん坊が作られて母になった妹が嬉しそうに抱いてる場面が印象に残ってる。トラウマになるくらい怖いんだけどクセになって何度も読んだ。パートナー小花美穂2わかる
かしこ2019/07/154姉妹が主人公の4コマ漫画これは哲学では…?!と思うような話がふいにあるのが秋月りす先生のすごさですね。人間の人生をわずか4コマで表現する程の力量で、このレベルに達してる人は他にいないんじゃないかな? かしましハウスは個性豊かな4姉妹が主人公のお話です。私が特に好きなのは3女のみづえちゃん。マイペースな女子大生でいつでもどこでも寝ています。けれどもくじ運と商才があるのでお金持ちです。パンツはおでん柄。 姉妹の中でも地味な立ち位置だけど独特な味のあるキャラで、自分はみづえちゃんみたいな女子大生になりたいなと憧れていた。そしてある意味その夢は叶ったのだと思う。それが良かったのかどうかは分からない。かしましハウス秋月りす6わかる
かしこ2019/07/02植田りょうたろうは天才かもしれないうたちゃんとはなちゃんが秘密基地で遊んでいる場面まではほのぼのとした日常を描いてるんだけど、ダムが放水を始めて濁流がふたりを飲み込んでからは世界崩壊後のような雰囲気になって、しかも死のイメージを彷彿とさせる内容も出てくるのでとてもヒヤリとした。この死後の世界の描写がとてもすごいので、これはうたちゃんの書いた作文なんだ!と、ピンとくるまで時間がかかった。(赤ペンで先生のコメントがあるので自分はこう解釈したけど、ほんとに世界は崩壊しちゃったのかもしれない。どう読んでもいいんだと思う。)うたちゃんの文才がすごすぎることはさておき、単なる空想も形にしてみると残酷だったりするのかも。前回の卓球セラピーでも顔を隠しているお姉さんが出てきたけど、ふとしたダークな要素によって人間の心の奥深さを描き表されている。うたちゃんの宿題植田りょうたろう4わかる
かしこ2019/06/20百七不思議の少女と新米教師のゆかいなホラー漫画 #読切応援自称どこにでもいる関西人の新米教師が赴任した丑光高校には百七不思議が存在する!いやいや107ってありすぎだろ、こりゃ完全にギャグ漫画だなと思ったら意外とちゃんとホラーでビックリ。というかハイレベルなシュールギャグだった!大きな黒目がまことちゃんを彷彿とさせる謎の小学生スイカちゃんは百七不思議の一つ。彼女に振り回される新米教師の慌てふためきようがもっと見たい。スイカ(読切)森とんかつ2わかる
かしこ2019/06/17砂漠だらけの世界でサクラに憧れる女の子 #読切応援トラベルカルチャー誌TRANSITに掲載された異色の作品です。今号の特集「砂漠の宇宙を旅しよう」に沿った内容になっています。 世界が砂漠だらけになった近未来が舞台。街はガラスのようなドームに覆われてよく管理されているのでほとんど不自由なく暮らせる。主人公の女の子〈サテ〉は絶滅植物のサクラに憧れていてVRでいつもそれを観ていた。ある日、研究者のお父さんが勤めてる会社の仲間がドームの外でサクラを見つけた話を聞いたので連れて行ってもらえることに。砂まみれになりながら車のような乗り物で向かっていくが…。 サザンウィンドウ・サザンドアは身近な世界である団地が舞台でしたが、今回はガラリとジャンルが変わって近未来SFだったので驚きました。けれども絶滅したサクラに憧れる女の子というストーリーはとてもロマンがあり、余韻にも特別なものを感じました。マンガ雑誌ではないのでページが左開きなのもオツな違和感かもしれません。温室都市の暮らし石山さやか
かしこ2019/06/15歳をとることはこわくないのかも雁須磨子先生はその年齢にしか分からないリアリティーを描くのが上手い。『かよちゃんの荷物』は30歳についてだったけど、この『あした死ぬには、』には40歳のあるあるが詰まっているんだと思う。これは近い将来の私の話だと共感しながら読みました。主人公の多子(さわこ)さんが自分自身の急激なメンタルの変化を更年期だからと決めつけて終わるのではなく、今まで現れていなかった自分の本質の一部ではないかと捉えていたことが印象的でした。このシーンはとても重要だと思うのでぜひ読んで頂きたい。男性にもおすすめです。あした死ぬには、雁須磨子3わかる
かしこ2019/06/13いつまでも名作であり続ける漫画おおかみ書房より刊行された白取千夏雄「全身編集者」を読んで、やまだ紫作品を読み返したら更に面白かった。白取さんはガロの元編集者でやまだ紫さんの旦那さんなのですが、尊敬する作家であり最愛の人への言葉がとても真を突いていて、より深い作品の理解に繋がった気がする。 この漫画の主人公は主婦である。最小限に抑えられた線と研ぎ澄まされた言葉で彼女の心情を描いたことから、少女漫画ではなく女性漫画が誕生したと評価されたけど、決して女性しか共感できない内容ではないと思う。 夫と子供の世話に追われる日々を過ごしながら、それらの役割から解放されることが自由だというのではなく、初めから自分は自由であったことに気づく。実は幸福とは成るものではなく気づくものであり、ただそれだけのことで世界も変わるのだ。その為には彼女のように考えることをやめてはいけない。 今回読み返してやまだ紫さんの描く絵の魅力を改めて感じた。正面を向いた顔でもあえて表情を描かないことで、その余白に読み手の想像が生まれる。こうした大胆なテクニックがすごく格好いい。「全身編集者」で白取さんも語られていた、漫画ならではの省略の美とはこういうことなんだと思い知った。しんきらりやまだ紫