おおかみ書房より刊行された白取千夏雄「全身編集者」を読んで、やまだ紫作品を読み返したら更に面白かった。白取さんはガロの元編集者でやまだ紫さんの旦那さんなのですが、尊敬する作家であり最愛の人への言葉がとても真を突いていて、より深い作品の理解に繋がった気がする。
この漫画の主人公は主婦である。最小限に抑えられた線と研ぎ澄まされた言葉で彼女の心情を描いたことから、少女漫画ではなく女性漫画が誕生したと評価されたけど、決して女性しか共感できない内容ではないと思う。
夫と子供の世話に追われる日々を過ごしながら、それらの役割から解放されることが自由だというのではなく、初めから自分は自由であったことに気づく。実は幸福とは成るものではなく気づくものであり、ただそれだけのことで世界も変わるのだ。その為には彼女のように考えることをやめてはいけない。
今回読み返してやまだ紫さんの描く絵の魅力を改めて感じた。正面を向いた顔でもあえて表情を描かないことで、その余白に読み手の想像が生まれる。こうした大胆なテクニックがすごく格好いい。「全身編集者」で白取さんも語られていた、漫画ならではの省略の美とはこういうことなんだと思い知った。
山川ちはるは二人の娘と夫との4人暮らしの平凡な主婦。夫は家庭に興味を示さず、毎日小さな淋しさを背負う…。たまらなく淋しい時間があり、静かな喜びに浸る時間がある――。平凡な日常の中で生まれる様々な思いをやまだ紫が繊細に描いた不朽の名作。
山川ちはるは二人の娘と夫との4人暮らしの平凡な主婦。夫は家庭に興味を示さず、毎日小さな淋しさを背負う…。たまらなく淋しい時間があり、静かな喜びに浸る時間がある――。平凡な日常の中で生まれる様々な思いをやまだ紫が繊細に描いた不朽の名作。