吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2019/06/14
三十路美女に転がされる楽しさと絶望のスパイスがいいバランス
例えば『からかい上手の高木さん』のアダルト版のような良さがある。 色気のあるタッチ、夏の暑さを感じさせる温度感、どこか涼し気な美女、手玉に取られてしまうちょっとダメな男性。 なんでだろう、吸い付くように読んでしまう。 余裕と少しの陰がある三十路美女にダメな自分の欲求を見透かされて気持ちよくコロコロ転がされたい男性諸君は読むべし。 主人公(男)が人生めちゃくちゃになって自殺する前に蟹食べたくなったけど金無くてセレブ妻脅したら逆にマウント取られてなぜか一緒に蟹食べに車で北海道に向かうちょっとエッチで闇が垣間見えるロードムービー的なお話。 女性が描いてそうで実は男性が描いてるのかなと思ったら、ちゃんと女性が描いているという部分になんでだか妙に興奮してしまう。 ここで出てくる美女は意識的にか、なんでも許してくれちゃう「嘘のような」母性を見せてくれるし、男性のすべてを見透かし幼稚な欲求さえも叶えてくれるミューズを演じてくれてるので、非常に性的に消費しやすい。 だからこそ、達観したような全く見えてこない本心の部分にやきもきしてしまうし、何が目的か分からないミステリアスさにもんもんとさせられるが、それも気づけば目の前の性欲にかき消されてしまう巧妙さもある。 この女の前だと男はみんな、なんだかよく分からないけど事態は進んでるし気持ちいいからいっか、みたいに思考をスポイルされてアホな感じになってしまう。 この美女は凄まじく出来た女なのだ。 果たしてこれは、上手く行ってない旦那への憂さ晴らしなのか、自分だけを見てくれる純情青年の新鮮さ、嬉しさから振り回しているのか、今後の展開で描かれていくかと思うと楽しみだ。 「幻想ですよ、三十路の女に貞操観念なんて・・」 序盤で事後に出るこのセリフのすごいのは、金の為に強盗した男が人妻と半ば無理矢理にセックスした罪悪感を(じゃあいいか、と)軽減させる謎の効果があることと、ここまで肝が座ってるこの女はなんだか普通じゃないぞ、思わせてくれてワクワクすることだ。 このあたりから毒のようにじわりじわりと効いてきて気づいたらいいように気持ちよくマウント取られて自分では舵を切れなくなってしまっている。 死ぬための旅だと忘れて読んでいてエッチなシーンでドキドキしながら感情移入していると、たまに旅の終わりの死に向き合ったときにとんでもなく気持ちが落ちるので、その感情の落差で頭がクラクラする。 しかしエッチなシーンではどうしても感情移入せざるを得ないので、引き込んで一緒に落とすというすごく上手な作り方だなーと思った。 この手法ってホラー映画でよくある、序盤で若い男女がエッチなことしてると殺人鬼に殺されるみたいなベタなあれと同じ効果なのかもしれない。 それにしても、こんだけ肉体的にも精神的にも良くしてもらったらそこらの男は簡単にコロっと好きになっちゃうわけで、でも相手には世間的に成功している立派な旦那がいるのに比べて自分は北海道にゴールして蟹食ったら自殺するわけで、そして好きになった美女は旦那のもとに帰ってしまうということを考えると、死んでも死にきれないというか、なんて残酷なんだ、と。 もう、恋と性と愛と性と嫉妬と絶望と憧憬と性がぐちゃぐちゃに混ざっていて混乱しまくりの楽しさがあります。
吉川きっちょむ(芸人)
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2019/06/02
恋愛において普遍的なテーマでもある恋人の過去の相手
恋人の過去の相手が全く気にならないという人は極少数なはず。 そんな誰しもよぎったことのある思い、疑惑、心配性、ネガティブさを最大限に高めて爆発させて包み込んだのがこちらの作品。 最高に揺さぶられる。 全く付き合ったことがないわけでもないが、ロクな女性と付き合ってこなかった一郎。 流されるままに、性格もブスな女性や、自己評価低すぎてネガティブすぎる女性、占いやマルチにハマっている女性と付き合ったりして散々な思いをしてきて若干こじらせてしまった一郎。 現在、そんな一郎(28)が奇跡的に2年付き合ってるのは、性格も良くてめちゃくちゃにかわいいゆきかちゃん(28)だから余計に過去が気になってしまう。 そんなある日、居酒屋で言われるがままにゆきかちゃんの写真を見せていると隣で飲んでいた男に見られ「この女ヤったことある!超ヤリマンなのよ!しかも乱交しちゃった♡」と無茶苦茶に最低&失礼な外野がいたもんで、元来の心配性とネガティブさがムクムクと膨れ上がりいても立ってもいられなくなってしまう。 そんなときにちょうどよく?現れてしまった誰の過去でも見れる(情報を収集してシミュレーションして再現する?)VR。 一郎はどうなってしまうのか。 真実とは!? 「恋人の過去の相手が気になる」というのは「最近の若者は・・」という言葉が古代エジプトの石碑から見つかったのと同じくらい世界中で普遍的なテーマな気がする。 結婚相手以外に処女を奪われたら、奪われた女性側が死刑になってしまう国さえあるし、いろんな宗教があるが処女であることをどこでも重要視しているように感じる。 声優も処女であることを求められるというのを聞いたことがあって大変な世界だなと思う。 それほどに世の男性は処女だとか、初めての相手という部分に縛られ頭を抱えている人、女性から言わせると「キモい」人が多い。 だが、そんなのは野暮以外のなにものでもない。 今が違えば過去のことは関係ないし、相手も自分も現在が幸せであればいいじゃないかと思う。 そう、思うのだけど・・。という永遠ループの悩みがこの漫画だ。 乱交、それが事実かどうかは置いておいて、その結果にとらわれて本質を見失ってはいけない。 たとえ事実としても、大事なのはヤったかどうかじゃなく、なぜやったのか、彼女にはそこに至るまでの背景や理由があり、それを現在黒歴史として隠しているとしたらなぜ隠しているのかまで考えなければ相手の気持ちを思いやってるとは言えないんじゃないか。 相手の優しさかもしれないのに。隠したいのであればそっとしてあげればいい。 そして、本来乱交の事実を確かめるすべなど、本人に聞くしかないはずなのに登場してしまったのが、謎のVRだ。 これが事態をややこしくしてしまった。 こんな本当かどうか怪しい機械の情報をストンと信じてしまう。 本当かどうかも分からないのに。インプットした脳内の情報・願望・妄想を勝手に読み取って映像化するマシンなのかもしれないのに・・。 そして一郎は事実かどうかも曖昧な判断材料でさらなる妄執に囚われどん底に堕ちてしまう。 純文学的とも言えるテーマを新しいギミック(VR)の導入で新しく描き、素晴らしいデフォルメ具合の絵で表現されているのがめちゃくちゃにいい! 作者の谷口菜津子先生は漫画家の真造圭伍先生とご結婚されているので、もしかして一郎は真造圭伍先生がモデルだったり?と勘繰ってみたり。 1巻のあとの最新9話に出てくる女性たちの証言もよくあるというか、なんだか三者三様でリアルだけど、女性は男がいるところではあまり言わなそうな話だよなーと。でもそこは作者が女性っていうの思い出して、少し腑に落ちる。 すごく男性主観の話なのに女性が描いているのは本当に凄い。 久保ミツロウ『モテキ』や新田章『あそびあい』もそうだ。 奇しくも二人共男性っぽい名前を使っているのも面白い。 悩んでいるときに一人で思い悩んでクソみたいな考えが醸成されて突っ走る前に周囲に話を聞いているというのは、一郎がコミュ障でもないごくごく一般的な男性という描かれ方をしているからこそなんだか救いはありそうな気がしてくる。 もしくはだからこそ共感できて絶望が広がるのか。 誰しも囚われかねない妄執に区切りをつけて過去の相手ごと恋人を愛する決意をすることで有名なのが「めぞん一刻」だ。 変えられない過去を受け止め前に進む、あまりに有名すぎるあのシーンは感動的だ。 そこに到達できてようやく本当の恋人と言えるのかもしれない。 頑張れ一郎!幸せなはずの現在を、現実を見るんだ!
吉川きっちょむ(芸人)
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2019/05/19
66歳のおじさんが面接に行ったらピンサロ店で即採用だった
コミティア行ったとき新刊が出ていたら買っていた漫画がいつのまにか商業誌で連載していたので購入。 これはよかった! 定年後、妻を亡くし四十九日後も悲嘆に暮れる進さん(66歳)は、新しくスタートを切ろうと清掃の仕事を見つけるが、行ってみたらそこはピンサロのお店だった。 風俗には行ったこともなかったが、覚悟を決めそこで働くことにした進さんは、若い嬢たちとの交流の中で風俗というフィルターを通して今までサラリーマン一筋40年では得られなかった学びを日々獲得していく。 たまに生々しい描写もあるが基本的には楽しくポップな描き方で話は進んでいく。 彼女たちはたくましく仕事をして生きているのだ、と仕事に携わる人間として向き合って描いている。 この漫画で、すすむさんのスタンスが妙に面白いなと思うのは、愛した妻を亡くしたから悲しんでいるのではなく、妻を愛していたが冷めてしまい幸せにしてあげられなかった自分への不甲斐なさで泣いている点だ。 そこに自覚がない。 自分に足りなかったものはなんなのか、とあくまで自分に理由を求めている。 実はこの考え方って独りよがりでそこに相手がいない。 これが問題だ。 ここで効いてくるのが第一話の妻のセリフ「私をただのマネキンだと思ってるのよね」。 すすむさんは自分にしか興味が無いのか、偏見に捕らわれてしまっているだけなのか。 この意味をすすむさんが本当の意味で分かるのはおそらくまだ先だろうが、この言葉をきっかけに知ろうと前へ進み始める。 妻しか女を知らなかった真面目な男が、66歳にして開放的なピンサロ嬢たちと触れ合い、ガチガチに決めた自分ルールを自覚しぶっ壊した先にこそ、妻を亡くした本当の悲しみがあるのかもしれない。 早く続きを読みたい。
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2019/05/09
やっぱりスペリオールの新連載には期待してしまう!
主人公の女の子がかわいくてこじらせてていい感じに意地が悪いのが良い!! 人から良く見られちやほやされることを生きがいにしている女子高生の瓦木叶(かわらぎかのう)ちゃん。 クラスメイトに乗せられうっかり絵が上手い発言をしてしまうが、実際はクソど下手な叶ちゃんのもとに現れた他の人には見えない手のひらサイズの小さなじじい。 寝てる間に身体を乗っ取り凄まじい絵を描くそのじじいの正体は葛飾北斎!? 葛飾北斎は満足するまで絵を描きたい。 叶ちゃんは完璧でありたい。 互いに利害が一致し利用し合うことに! 他人にはいい具合に無害な女の子の小ズルさというか、本質は置いておいて良く見られたいという浅ましさが出ていてとてもいいし、たまに出すかわいくない顔芸も素晴らしいし、じじいがちょうどちょっとキモくて絵が凄くて生活に小波乱を起こしそうないいバディ感を醸し出している。 女の子は良く見られたいという理由で頑張っている基本的にはちょっとアホで残念な女の子なので必然的に幽霊であるじじいがいいツッコミ役になっていて、誰がツッコミやってんだよ感はあるものの、何も知らないアホな小娘よりすべて知り尽くして無茶苦茶やるじじいのほうがまともだわなと納得。 2話目で早速葛飾北斎が大いにやらかしているので、叶ちゃんのその場しのぎのカバー力が試されていて面白かった。 今後、絵画の素材や技法がたくさん出てきそうなので単純に面白くなりそう。 ブルーピリオドなどと合わせて読みたい。 もしも葛飾北斎が人生の続きを現代で生きたらという妄想はロマンがあってとても好き。 シオリエクスペリエンスのジミヘンや、少し違うけど刃牙道での宮本武蔵然り。 現代で無双するのか、どこの時点で成仏するのか、いやそもそも絵に終わりははいから満足しないでしょ?とか、ヒカルの碁的に叶ちゃん自身も成長するのか、どう展開するのか楽しみ! 少し気になるとしたらタイトルが葛飾北斎目線っぽいところ。 いや、どっちとも取れるか・・。
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2019/04/28
すごく興味深く読める妖怪などへの新しいアプローチ
『亜人ちゃんは語りたい』のスピンオフ作品ってだけじゃなく単体として面白い漫画になっている。 ヨーコには他の人には見えないものが見え、感じることができる。 一般的にそれは霊感と言われるようなものだが、この亜人がいる世界では違うように考えることができる。 むしろ、幽霊や妖怪、怪奇現象などはすべて亜人で説明できるのではないか、と。 その発想をきっかけに、ヨーコの周囲で起きる不可解な出来事、存在を分析しその姿をあらわにしていく。 このアプローチは素直にとても面白い。 オカルトめいたものを亜人なんじゃないかという仮設をもとに科学的っぽい切り口で検証、実験し、そして姿を現す亜人の存在によって、あれも亜人なんじゃないかこれもといった具合に可能性がより開けてくるのだ。 僕たちはその世紀の発見を目の当たりにすることができるのだ、一人の女子大生ヨーコの傍らで。 亜人と普通の人間を繋ぐ存在として描かれるヨーコの先入観の無さというか偏見やバイアスがかかっていない感じがとてもいい。 これは現象や妖怪が尽きない限りずっと読んでられるなーと思う。
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2019/04/28
第一話からぶっ飛ばしてて面白いSFアクション
第一話からぶっ飛ばしてて面白かった。 『辺獄のシュヴェスタ』 『不朽のフェーネチカ』 の竹良実、最新作! 天涯孤独・30歳男性に届いたのは世界を守る公務員の採用通知。 それは、25年前から世界各地に襲来し始めた未知の生命体「亞害体」を水面下で撃退する組織だった。 行ってみるとそこには、不良、オタク、コミュ障等、社会不適合者がずらり。 人型のロボット兵器「RIZE」と神経接続によって遠隔操作し、誰かの役に立つべく、地道に頑張る主人公だったが・・。 わりとガッツリSF感あって楽しい。 いまのところ主人公がとてもいい人に見えるし、地味に頑張っているので応援したくなるのだが、どこかにでっかい落とし穴がありそうでめちゃくちゃ怖い。 希望を胸に抱き、ここで幸せを掴もうと最初は頑張ってるが、そんなんじゃないとどこかで絶望してしまうはず・・こわい・・報われてほしい・・でも絶望もしてほしい・・。 痛みはダイレクトに伝わってくるが、「通信機」を破壊されるまで死なない身体をどう使うのか、第一話の見所だ。 そして後出しで告げられる大事なルール。 やはり闇は彼にしっかりと寄り添っていた。 亡くなった両親の直接の描写は無く、言葉で語られるのみなのも実は意味があるんじゃないかと勘繰ってしまう。 幸せな人生にしなきゃと自分のためのように見えてあくまで人の願いのために頑張ってきて、素直でいい人すぎる主人公がどうなるのか見ものだ。
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2019/04/15
ポップでキュートでコミカルな童貞3人組! #読切応援
毎日昼休みに校庭に出てバレーボールで遊ぶ日常系四コママンガのように和やかな女子高生3人組、を見る野暮ったいクラスの端っこにいるような3人組がこの話の主人公。 漫研でもないのに生身の女子3人組の二次創作漫画をそれぞれノートに描いてきては交換するというキモ日課を送っていた。 彼女らのことはずっと見守るだけでいい、と距離を取っているが、その中の一人今井君は違う感情を抱いていた。それは・・・。 めちゃくちゃいい! まずページをめくってパッと目に入ったときの絵の印象が最高で、キャラのデフォルメ具合がたまらなくて見やすい。 イケてない彼らでさえとってもキュートだ。 キュートな絵柄なのに、女の子の描写はたまにエロくも見える色気がある。 団子っ鼻でメガネで白目でニヒルな女の子もいい味出してる。 これでいいのかと自問自答し大いなる一歩を踏み出す今井くんが素晴らしい。 いつまでもそのままずっと、ぬるま湯に見える薄めの硫酸風呂に入り続けることもできたのに。 「眺めるだけで本当にいいんですか!?」「小さな決断があとあと効いてくるんです!!」は自分たち自身に問いかけ続け毎日小さい後悔を積み重ね続けた言葉だろう。 沁みる。 最終的にもなんだかポップでかわいらしい結末が待っている。 ここで、なるほどそうだったのかと腑に落ちる。 そしてもう一度読み返すと、あーほんとだ、と。 とても好きな読切だった。 コンプレックスやダークサイドの描き方も傷心も全部ポップ! 全くエグくならず、コミカルで楽しい読み味が続く。 自分の中で早く連載を読みたい作家さんの一人になった。
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2019/04/10
とにかく複雑な気持ちになり考えさせられる
子供の頃、広島に住んでいて、原爆や戦争に関する授業はたくさん受けてきた。 当時の感覚は分からないまでも、広島に住んでいる人から語られる話はとても強く、嫌というほどに擦り込まれてきた。 通っていた小学校は全ての教室の本棚に『はだしのゲン』が置いてあり、雨の日に少しずつ読み進めていた。 読むたびに冬だろうが手汗をかき、夏だろうが血が冷えるようだった。 とにかく恐ろしく、こんなことは二度と繰り返してはならない、誰にも経験させてはならないと強く思った。 そして、この漫画である。 まさか、現代の原爆資料館から原爆投下されるその日にタイムスリップしてしまう主人公。 それを考えただけでもう恐ろしすぎる。 主人公にとってあまりに突然のことでリアリティが希薄なのかわりと平然としていて、ほんとに?と思うが、そうか、生きるのに必死なのかもしれない。 ダメだ、読むのがつらい。 と思うものの、どういう話に落としどころを持っていくのか行く末を見守りたい気持ちとせめぎ合う。 戦争を、原爆の辛さを机上で知っている主人公が現場で何を見出すのか。 現代の人にとっては3.11の記憶がいまだに鮮烈に残っているはずなので、状況が違うとはいえ、その記憶と3.11当時の感覚を上手く利用してその恐ろしさを伝えようとしてくれている。 彼は現代に帰れるのか。 この経験を経て何を志すのか。 我々は、決して忘れてはならない。これが何を意味するのか改めて考え、伝え引き継いでいかなければならないのだ。 風化させてはならない。 デリケートな原爆や3.11のことを扱うことで批判するひとは出てくるだろうけど挫けず最後まで描ききって欲しい。
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2019/04/08
ワンナイトからの朝ごはん
一話完結でタイトル通り、男女のワンナイトとそのあとの朝ごはんの話。 読切の第一話が読めていないのだけど、連載開始の2話から読み始めた。 面白い。 奥山ケニチさんのこちらの読切『磯辺くんとパンツ』も読んですごくよかったので今後追っていきたい。 http://www.moae.jp/comic/thegate_isobekuntopants 本当にワンナイトこっきりもあれば、二人の続きを想像させてくれるものもありニヤニヤする。 それにしても、なんだろう、ワンナイト明けの朝ごはんがもう美味しそうで美味しそうで。 前日から漬けておいたフレンチトーストみたいなもので、ワンナイト→朝ごはんの時間経過で、二人の間の親密性という甘い隠し味が読者によく沁みていて食事単体よりも美味しそうに見えるのかもしれない。 不思議だ。 これは発明なんじゃないだろうか。 その朝ごはんにはなにか儀式や通過儀礼にも似た神聖ささえあるような気がしてくる。 暗黙の了解、無言の約束事みたいな気持ちの良いものがそこにはある。 そういえば、映画『モテキ』で森山未來と長澤まさみがベッドで目覚めて、水を飲むか聞いた長澤まさみが、口に含んだ水を森山未來に口移しで飲ませるシーンなんかはもう最高だった。 これは僕の人生ベスト朝ごはん賞に入れたいシーンだ。水だけど。 一晩明けたあとの男女の少し曖昧で甘くて気持ちのいい関係に浸れるいい漫画。 これからはどんなパターンで見せてくれるんだろうと楽しみになってくる。 普段ヤングキングはあまり手に取らないのでこれがきっかけで他の作品も読むことがあるかもしれない。
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2019/04/07
これはいい三十路の役者漫画だ!
これはいい! 現時点で三話まで読んだけど、これからどんどん面白くなりそう! 高橋一生みがあってめっちゃいい。 二話あたりから勝手にあの声で台詞が再生され始めてしまった。 「わたしの宇宙」 「いかづち遠く海が鳴る」 「潜熱」 の野田彩子の新連載。 https://viewer.heros-web.com/episode/10834108156642488617 いまだ無名の天才役者・宝田多家良と、同じ劇団で彼の才能を見出して絶望し彼を世界一の俳優にするべく奔走する役者仲間(友人)の鴨島友仁。 世界はまだ天才を発見していない。 が、明らかな天才の片鱗はそこかしこにばら撒かれ少しずつバレ始める。 自分より明らかに突出した才能を持つ人がいたら、その人がその才能以外の社会生活能力が欠如していたら、どうにかうまくいくよう手伝いたくなる、光の当たるところまで押し上げたくなるという気持ちは分かりたくないが、すごく分かる。 二人の関係性は光と影というよりは、光と光の影というような感じ。 相反するものではなく、二人は共生し追随していく形がしっくりくる。 人前に出て脚光を浴びるのは宝田多家良だが、ある意味で前を行き手を引くのは鴨島友仁なのだ。いや、二人にはそうであってほしい。 事務所のマネージャー冷田一恵は一見クールな反面、冷ややかに熱い情念を持っていて、それが宝田多家良に対しての感想に現れててグッとくる。 淡々としているようで宝田多家良の魅力に冷静に熱を上げている。 これはとてもいいものだ! 細部にいたるまで褒め挙げ連ねるそれはもはやファンやオタクのようだ。 おかげで宝田多家良がそれほどまでに魅力があり、世界にバレるのを待っているような説得力が生まれている。 野田彩子さんは人と人の関係性、間にある空気、感情の機微、隠した感情と表れる表情を描くのが上手だな~と思っていたのだけど、なんて言えばいいのか今作でそれがより立体的になっているような気がする。 「わたしの宇宙」「いかづち遠く海が鳴る」のような少し変わった設定のSFめいたものでもなく、「潜熱」のような限定的な関係性でもない、その一歩先の、地に足の着いた社会や影響力、人生のような部分を描いているからかもしれない。 天才と、彼を取り巻く人々、その人生。 この作品を毎月webでの更新を待つか、単行本で一気に読むか迷うけど、うーん、これは毎月チェックしてしまうかな~。 楽しみ!
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2019/03/28
これはいい新連載がきた!
ちょっと未来のちょっと田舎の海辺に住む頑固おじいちゃん。 家族が心配して送ったのは、この仕事が終わったら廃棄が決定している30年動いているメイドロボ。 ガタがきてて首はすぐ落ちるし、包丁を持つとロボット三原則により人間を傷つけてはいけないから震えちゃうし、いろいろぽんこつだけど、とても愛らしくて構ってしまいたくなる。 しかし、500円玉のシーンほんとよかった。妙に説得力があって存在感と寂寥感が漂っててとてもシュールで最高の俯瞰の構図だった。 大ゴマの使い方がとても大胆で潔いので切れ味があって気持ちがいい。 そして、包丁の場面にしろ、イオンにしろ、500円玉にしろ、コマ割りが上手いので間が上手く表現されていてテンポがすごく気持ちいい。 あと単純にかわいい。 ああいう丸い目が好き! 基本的にキャラクターのデザインとか背景の描きこみとか、絵のバランスがすごく良くて好みだ。 最初は、設定的にはベタで手垢がついてるようにも感じたが、いままでの全然上手く描けてなかったんじゃないかって思うくらいすごくよく描けてていいなと思った。 おじいちゃんも「アリスと蔵六」の頑固おじいちゃん的で気持ちがいい。 ドラえもんのような家に転がり込んで一緒に住むタイプになるとは思うけど、のび太君の面倒を保護者の観点から見るような昔のドラえもんとは立場が若干違って、介護という意味では面倒をみられるのはおじいちゃんでも、おじいちゃんの方がより大人だしぽん子の方がトラブル起こすことになりそうだから逆転しそうな気もする。 二人のいい関係性が構築されていきそうで楽しみ。 おじいちゃんのボケ防止になって賑やかで寂しくなくなればいいな。
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2019/03/09
「恋愛」が持つ意味を改めて考えさせられる。
すごく良かった。 すごく良かった! 舞台はそう遠くない近未来である2033年。 主人公の表紙の女性は新聞記者で、とあるテロの被害者たちの追悼記事を書くために故人の遺族や友人・知人に取材してわまっていく。 故人に寄り添った丁寧な取材を通して、この社会における「恋愛」や「結婚」の輪郭を少しずつ捉えていくことになる。 ずっと読みたいと思っていたのに、こんなにいい作品と知ってたらもっと早くに読んでおくんだったと後悔・・。 何がいいって、人物と社会をすごく良く描けてるんですよねー。 それぞれの個人が抱えてる感情や悩みはあくまで秘匿されるべき個人のものなんだけど、それを取材を通していろんな人物の視点からつまびらかにしていくと、それまで外側から見えていた一面的なレッテルでは推し量れない立体的で複雑な人物像が浮き上がってくる。 「恋愛」を"飛ばし"て「結婚」するための出会い目的のシェアハウスでテロが行われるが、同じ目的のもと集まったはずの被害者たちにもそれぞれ全く事情があった。 ここでのテーマは、「恋愛」をダサいもの、古いとする潮流とそれを取り巻くいろんな事情と感情をもった人々、「結婚」、そして「性」だ。 骨太かつ心に優しく触れる繊細な描写に感動した。 恋愛なんてイマドキ流行らないよね、という風潮から逆説的に恋愛の良さ、そして悪さが浮き上がってくるなんて素敵すぎる。 この風潮に救われたように感じる人もいれば、行き場がなくなってしまう人もいる。 いたずらな社会の変化に、もてあそばれてしまった人たちがいる。 確かに、結婚という制度は時代によってどんどん変わってきている。 かつては家同士の政略結婚の意味合いが強かったが、欧米からの流れでトレンディドラマなども流行って恋愛結婚が主流になった。 そして、現代ではこの漫画の設定に少し近い現実的なもの、「婚活」という言葉が示すように就職のような「利」をとった考えで結婚する人が増えている。 恋愛自体が持つ社会における相対的な重要性は目に見えないスピードで日に日に変化していっているけど、実は「恋」の絶対的かつ本質的な部分って変わらないよね、というメッセージを感じた。 「恋」は本質的には「する」ものじゃない。 予期せず落ちるもので、突然で、とても理不尽だ。 社会的恋愛と本質的恋愛を混同するものじゃない。 本質的恋愛は、とてもロマンチックでとても残酷だ。 だから、どの時代においても社会制度が変わっても描かれるのだ。 取材を通して「恋」と一歩距離を置きつつも、「恋」を知り変わっていく主人公が愛しくてしょうがない。 あと、主人公の目が最高。 内容も最高なのだけど、なによりもあのじっとりとした色気のある目。 近年で最推しヒロインかもしれない。 素晴らしい読後感だったので、『ルポルタージュ‐追悼記事‐』での続きを楽しみにしている。
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吉川きっちょむ(芸人)
2019/03/09
海外に住む人は読んで損なし!
現在海外にいる日本人、これから海外に行く日本人が読むべき漫画! ドイツ人の旦那の元に嫁いだ日本人漫画家が、ドイツで欲しい食材が手に入らないのをどうにかこうにか他のもので代用しようというという試行錯誤が楽しい漫画だ。 かつて海外にいた日本人にとっては共感の嵐! そうか、そうやればよかったのか!という気持ちになる。 というのも、僕は帰国子女だ。 小学校6年生~中学校3年生の多感な時期をベルギーで過ごしたわけだけど、時折たまらなく日本食を食べたい、食べたすぎる~、うお~誰か食わせてくれ~という気分になったものだ。 食わせてくれというのが、義務教育中の甘ったれ感たっぷりなわけだが、この漫画の気分は痛いほど分かるのだ。 特にこの漫画の舞台がドイツということでベルギーと隣国じゃないか!と大興奮した。 わりと食の事情は近いものがあるので、うんうんと頷きながら読んだ。 僕が住んでいた2000年~2004年頃よりは日本食事情が少しましになっているような気がしないでもない・・? 手に入りづらい生魚をアボカドで代用したり、ぶり大根のぶりをぶつ切りのサーモンで代用したり、柚子胡椒をレモンで作ったり、お好み焼きのやまいもを牛乳で代用したり、柿の葉寿司を生ハムで作ったり、もう見てて楽しいし、ちゃんと美味しそう。 帰国子女のみんなー!もしくはこれから海外に行く人ー! これは買うしかないでしょー! 海外で食べるいい日本食マニュアルになります! そして、あらためて日本っていいよなぁという気持ちにもなる! ぜひ!
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2019/02/16
ちょうどツボをおさえてきて好き
この話はゾンビものではないけど、 ゾンビものがなんで好きかって、かつてあった日常が破壊されて同じ人間や場所でさえ全く違う表情を見せてくるあの感じ。 それまで戦いやサバイバルを全くしてこなかったような人も必要を迫られ覚醒したり、狂気に飲み込まれたり、人を蹴落としたり、欲望のままに動いたりと、本性が剥き出しになっていく。 そして、いつ命が奪われるかも分からない中で紡ぐ関係性が刹那的で美しいのだ。 上のは、あくまでゾンビものの好きな点だが、この話は少し似つつまた違う文脈で語られているから面白い。 日常が一晩にして崩壊し地獄と化すのは同じだが理由は全く違って、どうやらファンタジーな世界の生物が現実に出現し、なぜか人間を蹂躙しまくっている。 しかもゲームシステムのごとく、モンスターを倒すと経験値が入り、レベルが上がり、スキルを獲得し、目に見えて分かりやすく戦闘力が上がっていくのだ。 現実を舞台としたサバイバルで読みやすいし、敵がゾンビ一種類とは違っていろんなファンタジー生物がいるし、ワクワクしないわけがない。 自分だったらどうするだろう、なんて考えちゃう。 現実の日常が蹂躙される「ゾンビもの」と、いわゆるファンタジーを舞台とすることが多い「なろう」の流れ、その中でもゲームシステムを組み込むタイプが上手く融合されていて、視覚的にも数値的にも成長度合いが分かりやすい。 いろんな面白さがあるけど、主人公が成長のスピードが速いとシンプルに楽しいものだ。 そして犬がかわいい。 総合的に単純な消費しやすさのレベルが高く、ライトな読み口で適度にちゃんと苦境に立たされるというとてもいい塩梅。 ハンターハンターのようなガツンと濃厚でのめり込めるストーリーを求める人には物足りないかもしれないが、優等生的な良さがあり万人受けしそうだ。 この読みやすさなら原作も読んでみようと思う。
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吉川きっちょむ(芸人)
2019/02/13
これは服の話だけではとどまらないもっと誰にでも当てはまるあなたの物語。
世間体。キャラクター。あなたはこうあるべき。そんなもんクソくらえ! 生きたいように生きることの難しさ。 しがらみに絡めとられ身動きができなくなっている人にこそ読んで欲しい。 背が高く、クールな見た目で周囲から思われるようなキャラクターを自然と演じてきてしまった主人公が、バイトのヘルプに来た人の世間体度外視の服装を見てハッとする。 着たい服を着て良いんだ、と。 かねてから好きだったロリータファッションに思い切って袖を通してみると・・。 ズシンッ!と脳髄に響いた。 誰より自分を肯定しなきゃいけないのは自分だったのだ。 そしてそれが何より難しい。 多様性の時代に突入したとはいえ、他人と違うことをするのが怖いと思う人は多いだろう、特に同調圧力が強い日本では。 なぜ、やりたいこと、表現したいことを抑え込み、息を潜め、自らの欲求を見て見ないふりして、日常を過ごさなくてはいけないのか。 自分の欲求に素直に生きた方が100倍気持ちがいいのではないか。 他人に迷惑をかけるわけでもなし・・。 しかし、世間にどう見られてしまうのか・・。 こういった悩み、葛藤を丁寧に描き、「自分らしく生きたいように生きる」大切さを分からせてくれる素晴らしい漫画だ。 まだ1巻なのでこれから、さらにどのように向き合っていくのかが楽しみだ。
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2019/02/10
ネタバレ
潔癖症小学生美少女×美少年殺し屋の恋!?
小説家・舞城王太郎×漫画の新作! ジャンプ+で注目の新連載の一つ。 バイオーグトリニティでもめちゃくちゃ絵がきれいな大暮維人先生とタッグを組んでいましたが、今度は以前マガポケでかわいい女の子に思わせぶりなことをされる男子中学生の話を連載されていた百々瀬新先生。 この漫画がなんだかもう相手は女子中学生なのに妙に色っぽくて、読んでたらどぎまぎして体温上がってしまうんですよ。 前作『コイツ、俺のこと好きなのか?!』一話→https://pocket.shonenmagazine.com/episode/13932016480029158729 今作の主人公は女子小学生の高学年なんですが、かわいいのにやはり妙に人間的な色気がある! そこがなんだかとてもいいんですよね。 超潔癖症な女の子がいじめで目隠しされてゴミ屋敷に閉じ込められたら、地下に美しい少年が閉じ込められてて、帰ってきた家主はやばい奴で、さらに少年は殺し屋だった。 目の前で人を殺す少年。 鮮烈な出会い、清潔感のある美しい少年。 そう、それは恋。 潔癖症美少女と美少年殺し屋。 そこに一切のリアルさは無いが、なんか概念が美しかった。 そのまま掃除ついでに死体処理する美少女っていう話の続け方で、美少年も小学校に転入してきてこれはいよいよ面白くなっていきそうだなって感じです。 それにしてもやっぱり、絵がかわいいっていうのはとてもいいことですよね。
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2019/02/10
これは人気出そう!
すぐにでもアニメ化されそうなビジュアルと設定! 絵も表現もめっちゃ良いし、話も面白い! 最近ワクワクして連載を追ってる作品の一つ。 夏、青春、入道雲、煩悩を抱えた男子高校生、謎の美少女、転校生、言葉使いが荒い可愛い幼馴染、突然の死、身代わり、呪い、時間遡行、復活、ミステリ、サスペンス・・・。 高校一年、夏、「五六冴郎(ふのぼりゴロー)」が、危うく死にかけた「藤宮しちは」を助けた拍子にキスしてしまったことで契約は交わされてしまった。 「ゴロー」が殺され、そのたびに「しちは」が身代わりになる。 ゴローは犯人を見つけだすと、しちはが蘇って代わりに犯人が死ぬ。 これを7回繰り返さなければいけないという。 死を繰り返す壮絶なミステリが始まった。 一人目からほぼ何の因縁も無い犯人だったため、2人目からめちゃくちゃ難航するんだろうなあと思ったら、やっぱりそうだった。 しかし、なんだかちょっと訳知り顔っぽいようなユニークなキャラクターたちが出てくるので全く飽きない。 そして、みんなかわいい。 システム的には、何度も殺されるなんてたまったもんじゃないから身代わりになったしちはを放置することもできる。 だが、それをやらないのがこの主人公だ。 ちゃらんぽらんでスケベなだけな男かと思いきや一本芯が通ってるというか、困った女の子は見過ごせないということなのか、迷いながらも覚悟を決めていく。 その過程もちゃんと恐怖と葛藤があってすごくいい。 「"狼(ウルフ)" "山猫(リンクス)" "生贄の山羊(スケープゴート)"」っていう呪文?もかっこよくて最高に中二心をくすぐってくれる。 すぐアニメ化しそうとはいえ、7人分ちゃんと終わらないと厳しいだろうなとも思う。 怪しくて面白いキャラクター達ばっかりだが、ラストに向けてどうなっていくのか! 楽しみにしてます!