3.11後の8.6
陰キャな男子高校生の主人公が修学旅行で広島に行った際に、1945年8月6日早朝の広島にタイムスリップしてしまうお話。 釜石に住んでいて被災してしまった祖母を持ち、東京で3.11を経験した主人公。広島に原爆が落とされる前後の時間を過ごしていく中で、自身の経験を通した彼の思考に読者も様々なことを思わされます。 原爆と大地震。異なる部分はありますが、個人の力など到底及ばないそれまでの日常を吹き飛ばしてしまう無慈悲な破壊であることは共通しています。そんな経験は、時代を多少隔てたとしても同じ人間として普遍。そうであるからこそ、主人公はヒロシマでできることがあるのではないかと試行錯誤していきます。そして、時に無力さに打ち拉がれます。もし自分だったらそこで何を思い、何をするだろうか。何ができて、何ができないだろうか。そんな考えをせずにはいられませんでした。 ヒロシマから3/4世紀、東日本大震災から8年経った今こそ大いなる戒めとして改めて読み、思考する価値のある一冊です。