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吉川きっちょむ(芸人)
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2023/11/13
自分と友達はどうだったかなと思い出して浸ってしまう
やまもとりえ先生の、大学時代から現在までの少し変わった友人たちとの思い出の日々を描いたコミックエッセイ。 同じ内容をポッドキャストでも話してます。 https://open.spotify.com/episode/5WjmBjW1p7GmQXsDWxLJUW?si=d199b921940442c2 読み始めてすぐ「いつも谷間が見えている友人Yちゃん」というバズった投稿を見たことがあったのを思い出ました。 https://twitter.com/yamamotorie/status/1595362304576868352 作者さんが「大好きで仲が良い私の素敵な友達をぜひ知ってほしい」と紹介してくれてるような形だからこそ、読んでいると自分の友達もぜひ紹介させてくださいよ、という気分になってきて楽しかったです。 自分の学生時代の友人たちとの思い出がいろいろよみがえってきました。 エッセイなので、フィクションのように特別ド派手なドラマがあるわけじゃない、でも等身大の青春劇がそこにある。それがいいんですよね。 美大ならではのクリエイティブな話もあるけど、基本的には普遍的な友達の話。 そして、なんといっても一冊としての構成が素敵でした。 困ったときに友人が助けてくれた最高の人生だったんだなと。そしてこれからもそれが続くと思うと最高です。 どの友人のエピソードも面白くて、その個別の友人紹介の話があったからこそ、最後のエピソードに集約されて際立って輝いて見えて、感動しました。 同時に、男同士の友人グループだともしかしたらこうはならないだろうなっていう羨ましさもありました。男同士は楽しさを共有はしても弱みはあまり見せないこともあるから。 読んでるときの感覚としては、友達の結婚式の新婦側の仲良したちでの出し物とか、学生時代の写真のスライドショーとか見てどういうふうに仲良かったのかなーと想像したときの、最高に楽しい青春の「中身」をしっかり見せてもらった気分でした。 共感ポイントとしては、「自分たちの用語辞典作ったな~!」って思いました。 小さい界隈だけで通じる用語・共通言語ができて集団としての絆が熟成されていく感あって楽しいんですよね。秘密の合言葉みたいで。 ふわっと思い出した自分のエピソード ・Nくん、高校で誰とも全くしゃべったことなくて会話はいつも筆談していたらしく、大学で僕が普通にNくんと話してるのを見られて「どうやってあいつの心開いたんだ!?」って驚かれたことがある。そのNくんは窓が割れたままの部屋にずっと住んでて、いつもお菓子でお腹いっぱいにしてた。 ・Mくん、子供がどうやってできるか知らなくて、植物みたいに受粉するものだと思って通学で乗る満員電車に毎朝めちゃくちゃ緊張してた。その反動か、気づいたらテニスサークルに入って遊びまくってた。 などなど。 一気に読むのもったいないので、ちょびちょび1日2ページずつとか少しずつ読むのもいいかも。とはいえラストはどうやっても一気に読んでしまうはず。
吉川きっちょむ(芸人)
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2023/10/12
「小説を書く」という行為でここまで盛り上がる物語を僕は知らない
ここ半年で始まった新連載の中でトップレベルで心動かされてる作品。 脳が喜ぶ大興奮のドラマの作り方。凄まじい高揚感。 憧れに本気で踏み込めない人はもちろん、小説や表現が好きだったりチャレンジする人を見るのが好きな人にはぜひ読んでみてほしいです。 https://urasunday.com/title/2272 【あらすじ】 会社員、黒田マコト、31歳。いい会社に入って仕事も要領よくこなして結果も出てて、彼女とも結婚が視野に入ってて順風満帆。すべては順調に見えたが、真面目すぎる黒田は実生活の小さな積み重ねによって心を病んでしまう。そんな時、学生時代の文芸部の後輩・黄泉野季郎(よみの・きろう)と再会する黒田。 売れっ子小説家になっていた黄泉野に焚き付けられ、休職期間を利用して再び小説を書いてみることに。 やがて、黒田の人生は大きな変貌を遂げ、小説業界に大きなうねりを生み出すことになる・・・。 アプリ「マンガワン」で連載中。10/19に1巻が発売します。 スカッとした読み味のエンタメ性と、じとっとした文学性のバランスが絶妙です。 心情と描写がすごくマッチしていて漫画ならではの表現が素晴らしい。 セリフがすごく練られているのが分かる。鼓舞してくれる意味でも、痛いところを突かれる意味でも刺さってくるフレーズが多い! 毎回、次の話への引きが上手すぎるし、1話ごとに主人公の才能を予感させるシーンをちゃんと出してくれるから毎回テンション上がる。それでも当然、一筋縄ではいかない。 「小説を書く」という題材で起こり得る展開じゃないことが起きていてすごい。スピード感や迫力がスポーツ漫画で見られるようなアツいやりとりだったり、映画『サマーウォーズ』で鼻血出しながら暗算するような躍動感があってテンション上がる演出がきて最高です! 主人公の黒田は、人の目を気にして常識にがんじがらめに囚われて本心を隠してしまうような人なので、後輩の黄泉野の才能を目の当たりにして、真剣に小説家を目指すことを諦める言い訳を自分で作ってしまっていたんですね。ただ後輩の黄泉野だけは、黒田が良識を捨てて自分をさらけ出したすごい文章を書けると知っていたんです。 この二人の関係性がめちゃくちゃ良いんですねー! 黒田は器用だからこそ、一般社会で上手に立ち回れてしまうけど、売れっ子の小説家である黄泉野が、誰よりも、黒田本人よりもその才能を信じてくれているのがいい。黄泉野だけは黒田の不器用な器用さの奥にある狂気を認めているんです。 黒田的には、後輩の黄泉野の才能に嫉妬して一度は夢を諦めた部分もあったので、当然一番認められたい人は黄泉野で、その黄泉野に後押しされるからこそ、暗闇に一筋の光が差す。俺だってやってやる、という原動力、燃料になって外野の足を引っ張る言葉を全て黙らす展開がアツい。 自分のことを普通の人だと思ってやりたいことを押し込めていた人が、いざ動き出してみると、いろいろ常軌を逸していることが分かっていくのってテンション上がりますよね。 常識人ぶっていた人の才能がだんだん周囲にバレていく様子に、読んでいて快感が溢れていく。読んでいると頭の奥がカーっと熱くなっていく。こいつも天才なんだろうなっていうのがビンビンに伝わってくる。 「作家なんて社会不適合者ばかりなんだから」って黄泉野のセリフがあるんですが、二人ともしっかり頭のネジが外れている。他人からの視線を気にしていた黒田はネジを締めていたんですが、それを黄泉野が外しに来たような形になってて…良い。そもそも黄泉野に小説書くの勧めたの黒田だし、この相互に引っ張り上げ合ってる感じ。 竹屋まり子先生の漫画を読んだのは『あくたの死に際』が初めてなんですが、前作『女心@男子高校生』『井戸端は憑かれやすい』読んでみるとちょっと特殊なシチュエーションのBLコメディという感じなんですね。 BLの事情に全く詳しくない上での個人的な見解ですが、BLを描いていた漫画家さんが青年漫画を描くと、登場人物たちの友情とか嫉妬とかいろんな気持ちの矢印が繊細で上手に関係性に落とし込めていて深みが増してより面白くなる傾向にあるように感じます。 ヤマシタトモコ先生、『女の園の星』の和山やま先生、『ダブル』の野田彩子先生とかそうかな?江野スミ先生だったり、『光が死んだ夏』もそうかも。挙げ始めたらきっとたくさんあるかと思いますが。 キャラの間に、友情以上の複雑な気持ちが重層的に折り重なっている。 BL作家さんたちは、気が向いたらぜひどんどん青年漫画を描いていただきたい。それをいっぱい読みたい…。 小説家と才能がテーマのものだと『響~小説家になる方法~』は暴力的なまでに圧倒的な小説の才能で全員なぎ倒していく剛腕なタイプの話ですが、『あくたの死に際』は才能があるかないか関係なくとにかくやるんだ、という熱量と人間関係のドラマに重きを置いてるように感じるので、アプローチも描きたいことも全く違うのも面白いです。 実写化するだろうなと勝手に楽しみに思っています。
吉川きっちょむ(芸人)
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2023/10/08
人類滅亡が懸かったクソガキ×天使と悪魔の疑似ファミリーコメディ!
ちょっと好きすぎる…!! クソガキに振り回される天使と悪魔のコメディだけど、人情が染みる…! 悪魔と天使が人類を滅亡させるかどうか討論するも、話し合いでは進展しないため、一人の人間を一定期間観察してその結果で審査するという。 そこで選ばれたのがイタズラを繰り返すクソガキ(少女)・上野サチで…。 https://shonenjumpplus.com/episode/4856001361458130011 可愛くて優しくて笑えて大好きです! 人類滅亡派・悪魔代表のボロスと、人類存続派・天使代表のラン。 二人がサチの行動を監視し、悪魔は悪行に減点を、天使は善行に加点。審査期間の終了時に持ち点がプラスで人類存続、マイナスで滅亡。 超越しているはずの存在である悪魔と天使の気安い人間臭さ・俗っぽさ も、サチのクソガキさも可愛くってクセになる。 悪魔が品行方正で、天使が欲深くて怠惰っていう分かりやすく逆でたまらないです。 サチも逆張り気質のあまのじゃくなので扱いが簡単に言うこと聞かせられないんですよね。それがいい! 第1話で分かるけど、笑えるだけじゃなくてじんとくるのも振り幅デカくてポイント高すぎてヤバイ。 サチに対する周囲の目線が、悪にも善にもなり得る未来ある子どもに対する優しい接し方もいいなぁってなります。 子どものコメディであり、悪魔や天使と一時的な疑似家族になるファミリーもののようであり、人類存亡の危機が一人の肩にかかっているという世界系でもあるという複合的な面白さ! クスッと笑える細かいフックも多くてすごい。 施設の人が防犯訓練で学んださすまた術で~と言いながら殺そうとしてきたり、庶民派ハリウッド俳優がまじで仕事選んでなかったり、先生が常に鼻血出てたり、他にもいろいろふんだんに盛り込まれてる。 番外編の短い話もショートで笑えて最高! 実は1ページ目で、神様が「例年通り人間神判で決める」と言ってるんですね。 「例年通り」って、これ毎年やってるってことなのか、いつもどおりって意味なのか。 毎年の場合、人類が滅んでないってことは…?と考えてもいいのかなっていう。悪魔が情に厚くていい人だし。 どう転んだとしても、人類(クソガキ)も捨てたもんじゃないなって結果になれば幸せだなぁ。 茶んた先生の読切もむちゃくちゃ面白いのでぜひ読んでみてください! 読切『小学生歯みがき習慣ポスターコンクール』 https://shonenjumpplus.com/episode/4855956445035434364
吉川きっちょむ(芸人)
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2023/08/22
ネタバレ
「恋と陰謀」を描く魚豊先生の新作!
『ひゃくえむ。』で陸上を新しい角度から描くのに成功し、『チ。―地球の運動について―』で地動説、天動説に翻弄され意志を繋いだ人々のドラマを骨太に描いた魚豊先生の新作がついに! 始まりましたね! 今回、アプリ「マンガワン」での連載開始と同時に一挙4話分200pちかく公開というのが最高ですし、4話まで一気に読んでこそ、この話の本当のスタートを目撃できるかと思うのでぜひそこまで読んでみてください。 ▼裏サンデーでも1話が公開されてます。 https://urasunday.com/title/2484 【あらすじ】 レストランで英語話者の人物によりテロか虐殺か行われ死屍累々の現場から始まるという衝撃のスタート。 そしてそこには触れられず、主人公渡辺の物語が始まる。 小学校4年生での論理的思考を問う小テストでの優秀者というごくごく小さな勲章を胸に、人生上手くいかなくても少なくとも自分には「論理的思考」があると考えそれを支えに生きてきた渡辺19歳。 彼は非正規雇用でコンテナで荷運びをする日々の中で、始まっている気がしない人生に嫌気が差していたが、一つだけ希望があった。 彼の夢は、金銭的に成功し人生一発逆転することだったのだが…。 と、書いてみましたが正直一言で説明するのが難しい内容です。 ただ、これが面白い。 誤解を恐れずに言えば、「恋と陰謀」を魚豊先生らしく社会を斬ったラブストーリーになっていくんだと思います。 魚豊さんは、一旦全体のストーリーを結末まで考えて構成しているようなので、1話単位よりも1冊通して読んだとき、そして作品を一気に読んだときの読み心地を優先させているのかなと。 なので、まずは1巻相当にあたるページ数の4話までを読んでいただきたい。 そしてそこまで読んで「なるほどこれってこういう話になるのか、それでここからどうするつもりなんだ?」までが1セットで、早く続きが読みたいです! 言ってしまえば世に蔓延る様々な社会的格差をまともにくらって、明らかに社会的弱者である主人公が、そもそも社会的弱者である自覚もなく、さらに平等にチャンスが与えられていると信じて考えもなしに成功を夢見ているという痛烈な始まりです。 あえて言葉を選ばず書きますが、「自分のことを賢いと思ってる馬鹿」というのがどうしようもなく辛いです。 ここから知を備えた人物たちにより一つ一つ丁寧に世の中の仕組みが暴かれて彼の希望は繰り返し砕かれていき、恋に辿りつき、さらに陰謀論者に行き当たります。 何も知らずにぼんやりとそれなりに身近な幸せを噛み締めていく人生もあったかもしれないけど、彼は大きな幸せを夢見て無様にも何度も挑戦し何度も敗れた。 何度も希望を打ち砕かれ、自分では手に出来ない仕組みを説明され、格差を見せつけられ疲弊し絶望した先で出会ってしまった恋と陰謀論。 「恋」は全ての論理を凌駕し幸せに至る道であり、「陰謀論」は持たざる者がどうにもできない格差を全てひっくり返せるかもしれない僅かな希望なわけです。 全く繋がらないかに思えたというか考えもしなかったこの2つの点が一人の人物の中で繋がったときにどうなるのか怖すぎます! この題材を魚豊先生はどう描くのか! それを読んだ自分はどう思うのか! 楽しみで仕方ないです!
吉川きっちょむ(芸人)
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2023/03/06
ネタバレ
こんなの絶対に面白いじゃん!っていう「キメラ」狩りアクション!
数多くチェックしたここ数ヶ月の新連載の中でもトップクラスに楽しみな新連載!! となりのヤングジャンプでスタート! https://tonarinoyj.jp/episode/4855956445115379262 多様な生物を取り込み巨大化する生物「キメラ」。 命を懸けて巨大なキメラを狩って生計を立てる「狩人」のユーリが主人公。 狩人として活躍し生活も豊かになり自由気ままな時間を満喫していたが、異変が起こり…。 1話の段階だとこれからどうなるのか全く読めないけど、絶対面白いの確定の超獣ハンティングアクション! 読切『一番槍の狩人』の連載版!! https://ynjn.jp/title/8703?20230126080530 読切の時点で完成度が高くてすでにテンションめちゃ上がってましたが、連載版の連載っぽさ最高~!! あ~、なるほど、読切の味わいそのままにそこを新たに膨らませるんだ~!!というワクワクと納得感! 読切の良さはやっぱり、巨大なキメラに挑む激しいアクションと対極のスローライフな雰囲気のまったり生活でした。 この対比を毎回見れるのも幸せだな~なんて思っていたのですが、そんな素人でも思いつくような連載形式にはしないのがこの作品のすごいところ! 第1話後半で予想の斜め上をいく変化球を投げてくれましたね! こうきたか!と。 絵も綺麗でかっこいいし! 古びて半壊した鉄塔がチラッと背景に出てきたり、もしかしてこの世界は僕たちの世界の地続き上にある?と思わせられる設定も良い!! 「キメラ」の特性上、もしかして生物テロかなにかの未来にあるとか? と、考察するのも今後の楽しみになりそうです!
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2023/02/13
ネタバレ
32歳、再会してふたり暮らしを始めた女ふたりのこれから
読切『普通の人でいいのに!』でネットがどよめき、『まじめな会社員』で、日本中のみんなの心を掻きむしって「このマンガがすごい!2023」オンナ編第3位を勝ち取った冬野梅子先生の新連載! この連載が始まって今日は昼から心がざわざわしていました。 https://comic-days.com/episode/4855956445047546735 それぞれ恋に破れて再会した32歳、高校の同級生の元・売れない役者とフードコーディネーターの女ふたり暮らし! 内容のこと書く前に、まずめちゃくちゃ読みやすくなってます! これまでの画面内に大量の文字詰まった形も好きだったんですが、すっきりしてるし、心の声もこれまでよりかなり減ってます。 その代わり、ナレーションが入ってるのでドラマっぽさというか、実写化にすごく向いてる雰囲気がすでに出てますね! そして冬野梅子さんの漫画で好きなのはなんといっても「図」の魅力。 こちらは健在だったのが嬉しい限り! 全体的に読みやすくなってるので、それで離れたことある人はこの機会にぜひ読んでもらいたいところ。 元・売れない役者できれいにしてるけど怠惰でふらふら生きてバイトしてる待宵マリと、フードコーディネーターとしてしっかり仕事をしてキレイな部屋に住んでる菅野翠が、高校時代の弓道部で意外と仲良かったというのがいいんですよね。 マリは幽霊部員、翠は県大会入賞とまったく違うけど、違うからこそ、関係ない部分で仲良くなれたのかな。 この結果からも分かるように努力型でしっかりしてる翠に対して、その場の感情に任せてる奔放なマリという対照的な二人。 いろいろあって翠の部屋にマリが転がり込んでふたり暮らしが始まる。 そして、この二人に対してまたフラットな視点としてカレー屋の鳥飼さんという男性がいて、いい具合に距離とってるのが客観的でいいんですよね。 客観的でありつつ、少し身を引くタイプの人間なので、消極的な翠と積極的なマリに対する反応も見てて面白いです。 人間関係も立体的になっていきそうでこれから楽しみな連載です! 読切『普通の人でいいのに!』はこちらから読めます。(https://toyokeizai.net/articles/comic/500510)