吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2023/08/22
ネタバレ
「恋と陰謀」を描く魚豊先生の新作!
『ひゃくえむ。』で陸上を新しい角度から描くのに成功し、『チ。―地球の運動について―』で地動説、天動説に翻弄され意志を繋いだ人々のドラマを骨太に描いた魚豊先生の新作がついに! 始まりましたね! 今回、アプリ「マンガワン」での連載開始と同時に一挙4話分200pちかく公開というのが最高ですし、4話まで一気に読んでこそ、この話の本当のスタートを目撃できるかと思うのでぜひそこまで読んでみてください。 ▼裏サンデーでも1話が公開されてます。 https://urasunday.com/title/2484 【あらすじ】 レストランで英語話者の人物によりテロか虐殺か行われ死屍累々の現場から始まるという衝撃のスタート。 そしてそこには触れられず、主人公渡辺の物語が始まる。 小学校4年生での論理的思考を問う小テストでの優秀者というごくごく小さな勲章を胸に、人生上手くいかなくても少なくとも自分には「論理的思考」があると考えそれを支えに生きてきた渡辺19歳。 彼は非正規雇用でコンテナで荷運びをする日々の中で、始まっている気がしない人生に嫌気が差していたが、一つだけ希望があった。 彼の夢は、金銭的に成功し人生一発逆転することだったのだが…。 と、書いてみましたが正直一言で説明するのが難しい内容です。 ただ、これが面白い。 誤解を恐れずに言えば、「恋と陰謀」を魚豊先生らしく社会を斬ったラブストーリーになっていくんだと思います。 魚豊さんは、一旦全体のストーリーを結末まで考えて構成しているようなので、1話単位よりも1冊通して読んだとき、そして作品を一気に読んだときの読み心地を優先させているのかなと。 なので、まずは1巻相当にあたるページ数の4話までを読んでいただきたい。 そしてそこまで読んで「なるほどこれってこういう話になるのか、それでここからどうするつもりなんだ?」までが1セットで、早く続きが読みたいです! 言ってしまえば世に蔓延る様々な社会的格差をまともにくらって、明らかに社会的弱者である主人公が、そもそも社会的弱者である自覚もなく、さらに平等にチャンスが与えられていると信じて考えもなしに成功を夢見ているという痛烈な始まりです。 あえて言葉を選ばず書きますが、「自分のことを賢いと思ってる馬鹿」というのがどうしようもなく辛いです。 ここから知を備えた人物たちにより一つ一つ丁寧に世の中の仕組みが暴かれて彼の希望は繰り返し砕かれていき、恋に辿りつき、さらに陰謀論者に行き当たります。 何も知らずにぼんやりとそれなりに身近な幸せを噛み締めていく人生もあったかもしれないけど、彼は大きな幸せを夢見て無様にも何度も挑戦し何度も敗れた。 何度も希望を打ち砕かれ、自分では手に出来ない仕組みを説明され、格差を見せつけられ疲弊し絶望した先で出会ってしまった恋と陰謀論。 「恋」は全ての論理を凌駕し幸せに至る道であり、「陰謀論」は持たざる者がどうにもできない格差を全てひっくり返せるかもしれない僅かな希望なわけです。 全く繋がらないかに思えたというか考えもしなかったこの2つの点が一人の人物の中で繋がったときにどうなるのか怖すぎます! この題材を魚豊先生はどう描くのか! それを読んだ自分はどう思うのか! 楽しみで仕方ないです!
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2023/03/06
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こんなの絶対に面白いじゃん!っていう「キメラ」狩りアクション!
数多くチェックしたここ数ヶ月の新連載の中でもトップクラスに楽しみな新連載!! となりのヤングジャンプでスタート! https://tonarinoyj.jp/episode/4855956445115379262 多様な生物を取り込み巨大化する生物「キメラ」。 命を懸けて巨大なキメラを狩って生計を立てる「狩人」のユーリが主人公。 狩人として活躍し生活も豊かになり自由気ままな時間を満喫していたが、異変が起こり…。 1話の段階だとこれからどうなるのか全く読めないけど、絶対面白いの確定の超獣ハンティングアクション! 読切『一番槍の狩人』の連載版!! https://ynjn.jp/title/8703?20230126080530 読切の時点で完成度が高くてすでにテンションめちゃ上がってましたが、連載版の連載っぽさ最高~!! あ~、なるほど、読切の味わいそのままにそこを新たに膨らませるんだ~!!というワクワクと納得感! 読切の良さはやっぱり、巨大なキメラに挑む激しいアクションと対極のスローライフな雰囲気のまったり生活でした。 この対比を毎回見れるのも幸せだな~なんて思っていたのですが、そんな素人でも思いつくような連載形式にはしないのがこの作品のすごいところ! 第1話後半で予想の斜め上をいく変化球を投げてくれましたね! こうきたか!と。 絵も綺麗でかっこいいし! 古びて半壊した鉄塔がチラッと背景に出てきたり、もしかしてこの世界は僕たちの世界の地続き上にある?と思わせられる設定も良い!! 「キメラ」の特性上、もしかして生物テロかなにかの未来にあるとか? と、考察するのも今後の楽しみになりそうです!
吉川きっちょむ(芸人)
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2023/02/13
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32歳、再会してふたり暮らしを始めた女ふたりのこれから
読切『普通の人でいいのに!』でネットがどよめき、『まじめな会社員』で、日本中のみんなの心を掻きむしって「このマンガがすごい!2023」オンナ編第3位を勝ち取った冬野梅子先生の新連載! この連載が始まって今日は昼から心がざわざわしていました。 https://comic-days.com/episode/4855956445047546735 それぞれ恋に破れて再会した32歳、高校の同級生の元・売れない役者とフードコーディネーターの女ふたり暮らし! 内容のこと書く前に、まずめちゃくちゃ読みやすくなってます! これまでの画面内に大量の文字詰まった形も好きだったんですが、すっきりしてるし、心の声もこれまでよりかなり減ってます。 その代わり、ナレーションが入ってるのでドラマっぽさというか、実写化にすごく向いてる雰囲気がすでに出てますね! そして冬野梅子さんの漫画で好きなのはなんといっても「図」の魅力。 こちらは健在だったのが嬉しい限り! 全体的に読みやすくなってるので、それで離れたことある人はこの機会にぜひ読んでもらいたいところ。 元・売れない役者できれいにしてるけど怠惰でふらふら生きてバイトしてる待宵マリと、フードコーディネーターとしてしっかり仕事をしてキレイな部屋に住んでる菅野翠が、高校時代の弓道部で意外と仲良かったというのがいいんですよね。 マリは幽霊部員、翠は県大会入賞とまったく違うけど、違うからこそ、関係ない部分で仲良くなれたのかな。 この結果からも分かるように努力型でしっかりしてる翠に対して、その場の感情に任せてる奔放なマリという対照的な二人。 いろいろあって翠の部屋にマリが転がり込んでふたり暮らしが始まる。 そして、この二人に対してまたフラットな視点としてカレー屋の鳥飼さんという男性がいて、いい具合に距離とってるのが客観的でいいんですよね。 客観的でありつつ、少し身を引くタイプの人間なので、消極的な翠と積極的なマリに対する反応も見てて面白いです。 人間関係も立体的になっていきそうでこれから楽しみな連載です! 読切『普通の人でいいのに!』はこちらから読めます。(https://toyokeizai.net/articles/comic/500510)