吸血鬼×飯テロ!? 斬新すぎる組み合わせが食欲をそそる『夜さんの愛しの晩餐』

突然ですが、アラフィフなのに食欲が一向に尽きません。

よく、年齢を重ねると人は食欲が落ちていくとか、油っぽいものが食べられなくなるとか、焼肉は胸焼けがするとか言いますが、そんな通説は私には全く当てはまらなかった模様です。身体にはいろいろと不調をきたす様になってきましたので、人生の残り時間が減ってきたなあ、という実感はある……その分、一食の重みをよりいっそう感じるようになり「一口たりとも失敗したくない……!」と執着の念を1日3回唱えながら生きております。

そんな食い意地張りまくりの私が、とっても共感できる作品を発見したのでこちらに報告させていただきます。緒崎カホ先生の『夜さんの愛しの晩餐』です!

『夜さんの愛しの晩餐』/緒崎カホ/KADOKAWA

 

生き血を吸う吸血鬼が飯テロ!? 斬新すぎる設定

主に大学生が暮らしている「下宿 鳩村」。その名物は、大家の園絵が作る美味しい食事です。そこに暮らすただひとりの社会人・陽岡夜(ひおかよる)も、園絵の作る食事を楽しみにしているひとり。しかし夜はある事情で、なかなか園絵の料理を食べられずにいました。そう、彼は吸血鬼だったのです。

『夜さんの愛しの晩餐』/緒崎カホ/KADOKAWA

吸血鬼にとって、食事は「生命維持に必要な栄養を摂取する行為」「飢えを満たす行為」にすぎません。しかし人間にとっては、食事は栄養摂取以上の意味がある行為。夜はその事に気づき、その行為に惹かれ、人間の食事を口にするようになったのです。

ただ、彼は生き血しか受け付けない吸血鬼。人間が作った料理を食べるだけでは、飢えを満たすどころか体調を崩してしまいます。それでも何とか人間の食事を楽しんでみたい……! 研究を重ねた結果たどり着いた最適解、それは、生き血を吸って満腹になった後なら内臓が機能しているため、料理を楽しむことができるというもの。こうして夜は、美味しい料理を楽しむために、極悪非道な犯罪者の生き血を吸って満腹になる、という道を選んだのです。

『夜さんの愛しの晩餐』/緒崎カホ/KADOKAWA

本来の意味での食事の後には、妖艶ではあるものの、とても冷酷な顔をしてる夜。

『夜さんの愛しの晩餐』/緒崎カホ/KADOKAWA

ところが、園絵の手作りのお料理を頂いた後に見せる表情はこちら。

『夜さんの愛しの晩餐』/緒崎カホ/KADOKAWA

「下宿 鳩村」で、園絵や他の下宿人たちと料理を介して触れ合うことで、人間の食事が持つ意味を実感していく夜。その幸せそうな表情を見ると、ついつい読むこちら側の胃袋までも活性化しちゃう、そんな飯テロな吸血鬼マンガなのです。

 

飯テロだけじゃない!人間たちも一癖も二癖もありそうで……?

さらに、一筋縄ではいかなさそうな、濃いキャラクターたちもまた魅力的。

例えば夜に本来の食事である「生き血」を提供する刑事、実篤。また、「下宿 鳩村」の食いしん坊な住人の中にも夜の正体に気付いている者もいるようで……?
 
ただ人間の食事を純粋に楽しみたいだけの夜をとりまく、あらゆる欲に貪欲な人間たちとの関係性も見逃せません。

 

生き血よりも、血の通った料理に喜びを見出す吸血鬼

腹を満たすだけの食事と、愛情をたっぷり受けた幸せなお料理を頂く食事。忙しさにかまけて仕事をしながら片手でコンビニ飯を食べるような時、私たちも生き血を吸った夜と同じ表情をしているかもしれません。

とんでもない苦労をして一食の料理を全身で味わい尽くす夜。そんな姿を見ると、食欲が刺激されるだけでなく、食事をじっくり味わう幸せ、友人と家族と一緒に笑顔で囲むテーブルなど「食事」という概念の深さを思い、より「一口たりとも失敗したくない……!」の思いが強くなったのでした。

取り急ぎ、作中に出てくるビーフシチューかコロッケか親子丼を食べに、本日は街に繰り出したいと思います!

 

 

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