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漫画家のデジタル化への道を描くエッセイ『デジタル原始人☆川原泉』

漫画家のデジタル化への道を描くエッセイ『デジタル原始人☆川原泉』

漫画制作のデジタル化が進んでいます。ベテラン漫画家ももはやデジタル化を避けては通れない。『デジタル原始人☆川原泉』は、『笑う大天使』などを手掛けた漫画家、川原泉先生が手首の骨折をきっかけにデジタル制作を目指す過程の悲喜こもごもを描いた、川原先生と同業の福田素子先生の合作エッセイコミックです。ご本人たちは今後も漫画制作を続けられるかの瀬戸際で死活問題とあって大変なのですが、冒険の旅として描かれるデジタル化への道は、新しいツールを手に入れたときの楽しさも感じさせます。

 

『デジタル原始人☆川原泉』(川原泉,福田素子/白泉社)より

 

漫画は川原先生のパートと、川原先生のご友人で、デジタル化を支援してくれる福田先生のパートが交代で進みます。

川原先生は右手首の骨折をきっかけに、ペンを持つ手に違和感を感じるようになります。周りの編集者ら「賢者」に勧められ、デジタル化を決意しました。

セルシスの漫画制作ソフト「Comic Studio」が発売されたのが2001年。すでに20年以上経っており、デジタルで漫画を制作している人も増えました。解説テキストも発売されており、これからデジタル化しようという人は困らないはずです。それでもまったくのデジタル初心者がその世界に足を踏み入れるのは勇気が必要で、大変なこと。これを川原先生と福田先生はまるで魔王の城に魔王を倒しにいくかのような「冒険の旅」として描き出します。

パソコンやソフトウェアはモンスターを倒す武器。冒険に出ようとする川原先生の作業環境を整えてくれる助っ人は、福田先生が召喚するエルフたち(葛井美鳥先生、梶本潤先生)です。エルフの魔法は、あれよあれよという間に川原先生のパソコンとタブレットを強力な武器に進化させます。ときには謎の呪文を唱える黒魔術師も登場。川原先生は「保存」などの呪文をひとつひとつ覚え、「新作をデジタル制作する」というゴールに向かっていきます。

小説やゲームで描かれる冒険の旅で、冒険者は地図を読み解き次々と襲い掛かる敵を手持ちの武器で倒さなければいけません。川原先生と福田先生も同様です。エルフらから与えられた武器はありますが、それを実際に使いこなさなければいけないのは本人たちなのです。デジタル用語がわからない初心者中の初心者は、どんなに武器そのものや使い方を説明されても意味不明。言葉が通じないがゆえに感じる孤独に耐えながら、川原先生ら「冒険者」は前に進んでいきます。

もちろんデジタルデータで原稿を編集部に送ることができるなどデジタル制作によるメリットは大きいです。特に地方や海外に住んでいる漫画家にとっては日本の出版社と仕事をする道を作ることになります。でも福田先生もご指摘されているように、もっと楽に楽しく漫画を描きたいだけなのにツールをマスターしなくてはいけないというのは本当に大変だなと感じました。

決してこの作品を読んでも、デジタル化のコツがわかるわけでもベテラン漫画家の秘策を知れるわけではありません。でも、一度デジタル化を断念した人やなんとなく不安に思っている人のハードルを大きく下げ、「私も冒険に出てもいいかもしれない」と思わせてくれることは間違いありません。

 

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