麒麟・川島とかまいたち・山内が「面白いマンガ」に沼のようにハマって楽しむマンガバラエティ『川島・山内のマンガ沼』。今回は、次回放送の「川島・山内のおすすめマンガ4作品」を、放送に先駆けて紹介していきます。
『BLUE GIANT』には「ずっと続くRPGの痛快さ」がある
川島 「川島・山内のおすすめマンガ」、ただただ好きなマンガを紹介するシンプルな企画です。
山内 みんな「これだけでええやん」と言ってます。
川島 そんなことないよ(笑)!
山内 でもこのコーナー、1番人気じゃないですか?
川島 困ったらこれやるからね。好きなマンガを紹介するって、我々ナンボでもできますから。では僕のおすすめマンガはこちら、『BLUE GIANT EXPLORER』です。
石塚真一『BLUE GIANT EXPLORER』(小学館)
2巻まで発売中
川島 『BLUE GIANT』については言わずもがなですよね。世界一のジャズプレイヤーを目指す青年・宮本大(みやもと・だい)が主役という、スポ根にも近いマンガです。『スラムダンク』は桜木花道がどんどんバスケで成長していく成長物語ですけど、『BLUE GIANT』は宮本大という男がテナーサックスを使ってどんどん成長して行くマンガなんです。『BLUE GIANT』は知ってました?
山内 名前はずっと聞いてたんですけど、いかんせん『BLUE GIANT』の表紙には血が付いてないじゃないですか。いろんな人から勧められたんですけど、「僕の好きなジャンルじゃないな」と思って読んでなかったんです。でも昨日『BLUE GIANT』を読んできました。『BLUE GIANT』が第1部なんですよね?
石塚真一『BLUE GIANT』(小学館)
全10巻
川島 そうそう。
山内 今おっしゃったみたいにスポ根チックな感じもありましたし、さらに「インタビューで回想する」みたいな場面があるじゃないですか。
川島 巻末に必ず載ってるやつね(*)。構成が映画的なんですよね。
*各巻の巻末に「宮本大に関わった人たちが当時のことを振り返る」という形式のボーナストラックマンガが付いている。
山内 あの構成もめっちゃ面白かったです。
川島 その『BLUE GIANT』が第1部で、全10巻で完結してるんです。宮本大がほぼ素人みたいなところから始めて、ジャズバンドを組んで、天才と出会って、自分よりも凡才の人とも出会って、この3人でどう成長していくか……という展開がとにかく衝撃的で、読んでるだけで心が熱くなってくるんです。「もっと俺も仕事頑張ろう」と思って走り出したくなる衝動に駆られるくらい。マンガだから音は絶対聞こえないのに、ここまで引っ張っていける力、耳の中でジャズが聞こえてしまうという画力、これはさすが石塚先生のなせる業です。
で、山内くんが読んだ『BLUE GIANT』が第1部なんですよ。第1部というのは要するに日本編なんです。第2部が『BLUE GIANT SUPREME』という作品なんですけども、これがヨーロッパ編です。日本でジャズバンドを頑張ったんだけど、ある結末を迎えてしまったので、海外で勝負しようとなるんですね。で、もう1回ピンになって。単身ドイツに行きます。そこでヨーロッパの中のジャズの位置づけを知ったり、「日本人はこう見られてる」みたいな差別的な経験もしたりするんだけど、そこでヨーロッパのメンバーを集めて、また世界を目指そうとするんです。その続きの第3部が、今連載中の『BLUE GIANT EXPLORER』になるわけです。
山内 今回はどこに行くんですか?
川島 第1部は日本編、第2部はヨーロッパ編、この第3部はジャズの本場・アメリカ編です。ついにジャズの本場に乗り込むんです。このシリーズ、ぜひ第1部、第2部、第3部と順番を追って読んでほしいんですよ。第1部で宮本大は成長して、日本で人におおっと言わせるようなジャズプレイヤーになってヨーロッパに行くんですよ。でも、ヨーロッパでは彼のことは知られてないから、ナメられるわけです。そこでサックスを吹くと、バーンと相手を感動させることができる。読者は日本編の『BLUE GIANT』 を読んで大の実力を知ってるから、「こいつにこんなナメた口きいたらヤバいで」と分かってる。そこでサックスの音色で相手をビビらすのがすごく痛快なんですね。
ヨーロッパではでっかいフェスにも出て、売り上げを上げるCDも出すんですけど、その状態のまま今度はアメリカに行く。アメリカに行ったらまた大のことを誰も知らんから、また「おいおい日本人がちっちゃい体で何しにきとんねん」みたいにナメた奴が出て来て、それでまたさらにパワーアップした音色でバーンと吹き飛ばすのがすっごく気持ちいい(笑)。
ドラクエでいうと、ドラクエ1で竜王を倒した状態のままドラクエ2に行って、スライムが「おいおい何しとんねん」ってナメてかかってくる。それを一発で消し飛ばす気持ちよさ(笑)。今度はドラクエ2でハーゴンやシドーを倒した状態でドラクエ3に行ったら、またスライムが「おいおいコラ」とナメてかかかってくるという。そういう痛快さがあるんです。第1部から読んでいると、ずっと続いてるロールプレイングゲームみたいな感じで、本人のレベルは変わらないのに環境だけがリセットされてレベル1に戻るから、読んでてめっちゃ気持ち良いんですよ。
山内 僕はまだ第1部しか読んでないんですけど、最初のところでサックスをバカにしてきた学校の同級生が、学園祭でサックス吹くのを見て「ええっ」となって、「ごめん、ナメてた」みたいな感じになるシーンはありました。ああいう感じで、敵のレベルがどんどんレベルアップするんですね。
川島 そうそう。敵がさらにレベルアップし、大はさらにその上をいくというのがいい。でもずっと調子がいいわけじゃなくて、スランプが来るのもこのマンガのいいところなんですよ。やっぱり絶対王者じゃないという。スランプや人間関係もすごくリアルに描かれてて、そういうのもめっちゃいいんです。僕はこれでテナーサックス始めましたからね。
山内 えーーっ、それきっかけなんですか?
川島 去年1年間ずっと練習して、大がマンションで練習する時、テナーサックスに毛布とか詰めて練習してたのを、夏場はちょっと真似してやってました。これを読んで悪い気する人なんか絶対いない、全国民におすすめしたいマンガです。まずは『BLUE GIANT』から始めて、『BLUE GIANT EXPLORER』を読んでいただきたいと思います。
ネクスト『呪術廻戦』はこのマンガ!
山内 僕がおすすめするマンガなんですが、実は単行本がなくて電子書籍のみ発売されているマンガなんです。それがこちらです。『終の退魔師 ―エンダーガイスター』。
川島 なんかちょっとエロいじゃない。
山内 そうなんですよ。何系かいまいちピンと来ないかもしれないですけど、マンガアプリ「サイコミ」で、2019年から連載してまして、最新刊が6巻です。主人公は超破天荒な最強のS級退魔師・アキラ。日本では退魔師、海外ではエクソシストという言い方なんですけど、このアキラというのは仮の名前で、ヨーロッパの方で活動してたエクソシストが日本に派遣されて、偽名で「黒沢アキラ」という名前で活動するんです。
川島 「世界のクロサワ」から頂いたんだ。
山内 そのアキラがめちゃめちゃ強い退魔師で敵を倒して行くんですけど、このアキラ、実は魔物に取り憑かれているんですよ。魔物に取り憑かれて人を殺しまくってたところに、アキラのエクソシストの師匠にあたる人が、モンスター化したアキラをバーンと止めて、アキラの中に魔物を封印したんです。それでアキラは生まれ変わったんですけど、その代わりアキラは定期的に魔物を殺して、魔物の煙みたいなのを回収しないと崩壊しちゃう体になったんです。だからずっと悪を退治しないといけない運命を背負っている。
その退魔師のライバルみたいなのがどんどん出てくるんですけど、その登場の仕方がちょっとアメコミっぽくて、カッコいいんです。僕にとっての面白いマンガって、「何回も読み直したくなるかどうか」がめっちゃ大事なんです。ストーリーを分かった上で、「あのシーン今読みたいな」という気分になって、読みたくなるかどうか。このマンガはそういうシーンがめちゃくちゃ多いんです。僕はこのマンガ、ネクスト『呪術廻戦』だと思ってます。まだみなさんそこまで知らないマンガだと思いますけど、今後一気に来る可能性あると思っています。これ、めっちゃ温めてたマンガなんで、僕が最初におすすめしてたというのを忘れないでください(笑)。
川島 こないだの『アメトーーク!』の「マンガ大好き芸人」でも言ってなかったもんな。この番組のために温めておいてくれたんや(笑)。マジで読んでみます。
花沢先生、『たかが黄昏れ』の続きを読みたいです!
川島 僕のオススメ漫画はこちら、『たかが黄昏れ』。
川島 花沢健吾先生、『アイアムアヒーロー』など、他にもたくさん有名な作品がありますが、本当に世界観が独特ですよね。これは今から100年後の世界、西暦2119年の話なんですけど、めっちゃリアルだと思うのは、この世界は男が滅んでるんですよ。男がいない、女だけの世界なんです。
山内 なんでなんですか?
川島 そう、そこなんですよ!
山内 めっちゃ気になる。
川島 100年後の世界に住む女子高生のひなたちゃんにとっては、「昔は男というのがいたらしい」「性別がもう1個あったらしい」くらいの感覚なんです。だけど、建物なんかは今とあまり変わらないんですよ。だから学校のトイレがなぜ2つに分かれてるのか、分からないんです。
山内 男子がもういないから。
川島 そういうの、すごいリアルな観点ですよね。で、妹と一緒に銭湯行くときも、なんで入り口が2つあるのか分からないわけです。この「男がいない」というのをバーンと突きつけるわけじゃなくて、そういう描写で「男がいないのが当たり前の世界」というのをリアルに描いていくんですよね。でも、ひなたは普通の女子高生ですから、人間としての性欲もちょっとあるんです。「男というものに、なんかムラムラするなあ」という感覚だけは残ってるんだけど、男のこと言ったらあかん世界なんで、教頭先生のところに呼び出されるんですよ。そういう発言はよくないよと。男というのが昔いたらしい、男に会いたい……というのすごくゆっくりと、きれいに描写している。で、最後の最後のページで、男が出るんです。
山内 いますやん(笑)!
川島 男の子が1人出てきて、第1集終わりなんですよ。
山内 気になりますね。
川島 めっちゃ気になるでしょ? なんで僕がこれを紹介したかというと、2018年から連載してるのに第1集しか出てないんです。連載止まってるんですよ。花沢先生、他にも『アンダーニンジャ』という作品を連載してて、そっちはどんどん単行本が出てるのにこっちは……先生どないしましたん(笑)? こんな1巻の終わり方しといて、先生そりゃないですよ!
山内 なるほど、確かに。
川島 それを言いたくて、今日紹介させていただきました。何かの間違いで、これを先生が見てくれないかなと思って。もちろん『アンダーニンジャ』も大好きですよ。
山内 花沢先生って特に最初の切り込み方すごいじゃないですか。
川島 『アイアムアヒーロー』も『アンダーニンジャ』も1巻の衝撃すごいですからね。『たかが黄昏れ』も最高のイントロなんですけど、そのあと何も聞こえへんという状態になってる。ゆっくりでもいいので、ぜひ続きを描いていただきたい。だから皆さんも1巻買って待っててください。
山内 みんなで買うことで、先生にプレッシャーをかけましょう(笑)。
予告された猟奇殺人を止められるのか?『ヴェクサシオン』
山内 僕のおすすめはこちらです。『ヴェクサシオン~連続猟奇殺人と心眼少女~』。
湯川義弘『ヴェクサシオン~連続猟奇殺人と心眼少女~』(双葉社)
4巻まで発売中
川島 ブレへんなあ、ホンマ(笑)。
山内 これもオススメで出てきて、購入して大当たりだったマンガです。
川島 ちょっと待ってください。「電子コミック雑誌『毒りんごcomic』にて連載中」って(笑)。ジャンプでもサンデーでもなく、「毒りんごcomic」というのがあるんだ。
山内 ざっとストーリーを言いますと、夜の河川敷で全裸女性のバラバラ死体が発見されるんです。その事件の手口が10年前に発行された小説「ヴェクサシオン」に酷似しているということで、主人公の玲美ちゃんが犯人を探すんです。その玲美ちゃんは視覚に障害を持っていまして、目がほとんど見えない。その代わり、聴覚と嗅覚が優れていて、そして頭もめちゃくちゃいいんです。玲美ちゃんのお兄さんは警察官なんですけど、お兄ちゃんが解決した事件というのは全部裏でこの玲美ちゃんが解決してるという。
この感覚と推理力を駆使して、前代未聞の事件を解決していく謎解きミステリーになってるんですが、その犯人がめちゃくちゃ賢くて、玲美ちゃんも苦戦するんです。「本当に犯人にたどり着けるのかな」と思うくらい。その玲美ちゃんと犯人の対決がめちゃくちゃ面白いというマンガでございます。絵も上手ですし、知的な感じで謎解き感もかなりある。僕は頭を使うマンガはあまり好きじゃなかったんですけど、これは推理しながら読んでいく面白さもあるんです。あと、僕の大好きな猟奇的なシーンもけっこう出てくるんですよ。
川島 (電子書籍の)1巻の表紙にはバッチリ血が映ってるわ。ジャケ買いやろ?
山内 「ヴェクサシオン」という小説に犯行の手口が書いてあるんで、今後どういう犯罪が起こるか、もう分かってるんですよ。犯罪が起こる前に止めたいんですけど、犯人が見事に小説の通りに犯罪を起こしていくんです。たとえば小説には「 双子を同時に殺害し、上半身と下半身を入れ替える」みたいな犯行が書いてあって、何とか止めないといけないのに、それが起きちゃって、双子の上半身と下半身が入れ替えられた遺体が見つかる……みたいな。
川島 「そっちの意味だったか!」みたいなこともあるんですかね。
山内 どんどん起こっていく犯罪をどこで止めるか、という時間との戦いにもなってます。
川島 でも作家さんってすごいよね。推理マンガって『金田一少年の事件簿』とか『名探偵コナン』とかいろいろ先行作品があった上での、2周目3周目になってるから、プラスアルファの部分を付けないといけないわけだから。
山内 見せ方はかなり考えられていると思います。僕、残酷なシーンが好きなんで、先に小説に出てる「警官から奪った拳銃で警官を撃ち殺し、その脳みそを警視庁に送りつける」という犯行も、「間に合わなかったら、このシーンが見られるのか……」というドキドキ感もあって。
川島 カラオケ歌ってるときの「NEXT」みたいなやつね(笑)。「次、あれが聞けんねや」みたいな。
この放送のもようは次回の『川島・山内のマンガ沼』にて!
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(構成:前田隆弘)
【放送情報】
次回放送
読売テレビ●6月12日(土)深1:33~2:03
日本テレビ●6月17日(木)深2:04~2:34
川島・山内のおすすめマンガ4本を放送。
(Tverでも配信中!)
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