神無き世界のカミサマ活動

異世界転生して神になるマンガ!

神無き世界のカミサマ活動 半月板損傷 朱白あおい
異世界スキー

昨今の転生モノ市場、これまでにない題材でいかに外角際どめのコースを攻められるかという過酷なレース展開になってきた感があります。 もはやなにが外道でなにが正道か分別つかないバーリトゥードの様相を呈してきたおかげで、逆説的に物語やキャラクターそのものが持っているパワーを見極めやすくなっているのでは?という気がします。(気がするだけか?) それでいうと本作のキャラとストーリーフックはなかなかエネルギッシュで見応えあります。 主人公のユキトは父親に宗教団体の教祖として生きることを強制され、神の依代として「望まぬ死」を迎えることになります。転生後の異世界は宗教も神も存在しない彼にとって理想の社会でしたが、決定的に異なるのが死生観。 異世界の住人は死を恐れず、国の定めによって自らの命を絶つことを厭わないどころか、それを拒む者を「カクリ」と呼称して差別し、その命を奪うことも当然としています。 ユキトはその行為を許せず、皮肉にも彼らに「救い」を与え、神としての権能を振るうことになるのです。 古今宗教とは人間の死生観と密接に関わって発達してきたものです。 死生観が根本からズレている世界で神を描くというのは個人的には非常に興味深い試みに思えます。 特に最新6話では、この異世界には「理解できないもの」に神性を見る原始宗教的な心のあり方が存在しないことが示されました。 神のいない世界で神となり、人間の生死を左右する…。 「キャッチーな装いの下で実は相当に重厚感のあるテーマを描こうとしているのでは…?」とひとりソワソワしてしまいました。 観測していきたいと思います。

新九郎、奔る!

走る、じゃなくて、奔る!

新九郎、奔る! ゆうきまさみ
名無し

奔走ってのは、物事がうまくいくようにと 駆け回って努力することだそうで。 「ゆうきまさみ先生の作品にハズレなし」 と思っているので期待していましたが、 この題名や、第一話の最初の数ページで、 やはり、ゆうきまさみ先生は面白い、と思いました。 もうね、最初の見開きでの 名告りを上げる新九朗と、従者のツッコミ?や、 それから数ページ先に11歳の新九朗が登場するという 流れだけで、もう色々と話の筋を想像してしまいます。 27年間も雌伏のときを過ごす物語なのかな、とか、 題名からしても翻弄されて奔走する物語なんだろうな、とか。 新九朗という名前って実名らしいけれど、 心苦とか苦労とかを引っ掛けて題名にしたのかな、とか。 ただ第一話の数ページ後からは、延々と、 馴染みのない時代の話が続きます。 制度や世相や、官職名や名前すらわかりにくく覚えにくくて 読み進めるのに少々時間がかかる。 けれどもこれはむしろ、ゆうきまさみ先生の作品だから、 まだわかりやく展開されている、と思います。 他の作品に比べると、強烈なギャグとか少ないので 少し退屈な展開にも見えてしまうけれど。 いや、随所にゆうきまさみ先生らしい 愛嬌のあるシーンが出てきて面白いですけれどね。 おそらく話の展開としては、数巻分の話を経た上で 最初の名告りをあげるシーンに回帰して、 さあいよいよ新九朗が思うがままに暴れだすぞ、 という展開になるのでは、と思います。 そうなったら、それまで溜めた分だけの 爆発力は凄いだろうと期待しています。

フレデリック

望月ミネタロウ流の多様性を肯定してくれそうな新連載

フレデリック 望月ミネタロウ 山川直人
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

望月ミネタロウ × 話・山川直人 かつて描いた漫画は評価されたが、しばらく新しく描けていない30過ぎの主人公がフランスで翻訳、出版されてサイン会をすることになったところから話は始まる。 1話目には出てこない『フレデリック』とは一体なんなのか? 気になって調べたら、 https://www.excite.co.jp/news/article/Rooftop_30674/ 「絵本『フレデリック』(作:レオ・レオニ、 訳:谷川俊太郎)からインスパイアされた、 まったく新しい物語。」 らしい。 絵本『スイミー』と同じ作者の作者さんですね。 この絵本『フレデリック』を読んだことはないけど、評判を見てみると人の存在や役割にはいろんな形があり、他の人とは違う考え方をするようなことがあってもそれでいいんだよ、と多様性を許容してくれるっぽい内容なのかなと受け取れる。 読まずにこんなの書くのは駄目すぎると思うので早めにちゃんと読みます。 待ち合わせの空港で、モブ化してて気づかなかったと担当編集に言われたのは、どこかで見たことあるような髪型、ファッションだからだろう。 冒頭で、マクドナルド(っぽい店)にいて、旅先であるパリでさえ知った味であるスタパ(スタバっぽい店)に行きたがるのは、そういった誰もが知り冒険しない安心感を求めてのことからなのではないか。 主人公は内向的で人見知りだと自覚しているが、担当からそれがプラスになるなら評価するしマイナスになるようなら見捨てると宣言される。 誰もが知るなにか、ハズレがない、尖ってないなにか、例えばファッションだったり食事だったりそういったところで、他人と同じことをしていることに安心しきって、挑戦すること刺激を受けること他人と違ってしまうことをどこか怖がっているようにも見える。 他人と違ったっていいのに。 旅に同行する大手出版社担当編集・大畑壮吾(40)、同出版社入社3年目の国際室の風見悠子はそれぞれ分かりやすく極端に違う人間だし、それを気にする様子もない。 そして、こういった他人による違いをこの漫画がさらに奥までつっこむためのフランスだろう、移民の問題だろう。 1話の終盤で少しだけ出てきたチュニジア移民で清掃員をやってる女性、メリナ。彼女に焦点が当てられていくことで、その国ではマイノリティとして扱われるということなどの問題にスポットライトが当てられ自分らしく生きることへのヒントを掴むのではないか。 そこで、冒頭のマクドナルドでの移民女性従業員に対してモヤッと感じたなにかもはっきりするに違いない。 担当編集が求めているのも、人間至上主義、その作家自信から滲み出るものだから再び漫画を描けるようになるのではないか。 そうなってほしいと願ってしまう自分もいる。 最近自分自身、何をしたらいいのか、どこへ向かえばいいのか混乱している部分がある。 自分が何をしたいのか、はっきりさせて道を見つけたい。 誰かが言っていたからとか、最近こうだからというのは抜きで、自分の意志を貫きたい。 主人公の井手陸さんと僕も年齢が近い。 職業も不安定だ。 この連載が進む中で、読者として僕自身も何かつかめたらいいなと思う。 君は、何のために生まれたの、フレデリック。 君は、何のために生きてるの、フレデリック。 君は、何のために働くの、フレデリック。 僕は、誰のために戦うの、フレデリック。

鉄人マコちゃん

素晴らしいバランスの美少女サイボーグアクションコメディ

鉄人マコちゃん タカミ
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

世界観はSFだけど基本的にゆるい会話でボケるテンションで進むサイボーグアクションバトルコメディ! https://www.futabasha.co.jp/tachiyomi/vtreader.html?pc=1&fd=ac_makoLR 若くして全身サイボーグに改造されたマコちゃんのハードめな設定かと思いきや、ゆるいボケ連発してくるのとか、前のページでふって次のページの上の方のコマでボケるのとか仕事が丁寧で素晴らしい! ボケってサプライズの味もあるから前のページから見切れずに新鮮な気持ちで読みたいから、その読ませ方にはグッときた!本当に新人なのか? 絵もやたら上手いし、アクションも見やすい。 マコちゃん以外も油断してたらボケてくるからいいんですよね。 1話中盤以降完全なツッコミになってる生体サイボーグ派遣会社のロウでさえも序盤でボケてツッコまれている。 ツッコミ役はツッコミ役のままぶれない絶対的ツッコミではなく、関係性によってはボケにも回り得る相対的ツッコミなのがいまどきの流れっぽくていいなと思った。 『ヒナまつり』好きな人は好きなテイストなんじゃないかな? 作者さんはどうやら初連載?のようで、漫画アクション2017年10月17日号に「緑ワニ」というペンネームで読切?版の『鉄人マコちゃん』を載せているっぽい。そこから連載用にどう変わったのかも気になる。 会話もゆるめだけど、設定もふわっとしてていいなー。 若い時にサイボーグ化した方が強いとか、マコちゃんが全然本当のこと言わないからどこまで信じたらいいのかとか。 シリアスな空気とアホな空気の緩急が素晴らしい。 「サイボーグ」のことをタイトルで「鉄人」と表現しているのも無骨でとてもいい。 作品としてのバランスも素晴らしいし、このままダレずに連載が続いたら絶対アニメ化すると思う! 文句なしに面白い1話目から今後どうなるのか早速気になって仕方ない。

パワハラ美少女カンパニー

全リーマン渇望のテクノロジー

パワハラ美少女カンパニー 広間月下
六文銭
六文銭

やれIoTだの、MaaSだの、AIだのテクノロジーの進化で、生活が豊かになる昨今。 ついに、おっさんが美少女に見えるVRメガネがでたようです。 おっさんが美少女にかわるからなんだよ? とお思いかもしれませんが、いやいや、ちょっと考えて欲しいんです。 本作にあるとおり、サラリーマンでいえば職場環境がいかに改善されるかを。 上司からの無茶振り、例えば おっさん上司「予算が未達なんだけど」 ↓ 美少女上司「予算が未達なんだけど」 おいおいおい!なんてこった、字だけなのに全然違うぞ! 後者は「なんだけど~」みたいな語尾上がりで萌える感じがある! (個人的感想) これで従業員の満足度もパフォーマンスも向上し、ブラック企業とかの概念も撲滅されることでしょう。 パワハラ発言も、ドSな発言と解釈され、興奮すること請け合い。 ・・・といった、感じで、本作も、ブラック企業に苦しむリーマンが美少女にみえるメガネの効果によって、職場環境をパラダイスに変え、上司との仲も良好になり、自身の業績も向上して、という夢物語。 イヤな取引先もすべて美少女なんで、会いに行くのも苦ではないのです。 なんという、サクセスストーリー。 公平を期すために、女性側でも、イケメンに見えるメガネが欲しいですね。大変なことになりそうですが。 テクノロジーの進化は、生活の利便性や効率化だけでなく、こういうこともやって欲しいなぁと、つくづく思いました。 もうね、いいんですよ、自動化とかRPAとか。 効率効率で心が貧しくなるので、もっと楽しくなって欲しい。 Goo○leパイセンとかやってくれないかなぁ。

鉄界の戦士

多脚フェチは読むべし!!墨佳遼の描く生物メカSF!

鉄界の戦士 墨佳遼
名無し

墨佳遼先生といえば生き物というところがあるので、今回はどんな動物が登場するのかな〜と何気なく読んだら、昆虫がモチーフのメカメカしいSFで驚きました…!! 自分はメカバレ&多脚フェチを抱えているので、読んでみてもうドンピシャでした!(正確にいえば本作は「多腕」がテーマです) https://twitter.com/magapoke/status/1213838192794730496 神により全ての生き物に1対の鉄の腕が与えられたとされている世界。「2対の鉄の腕」を持つ少年・アシダカとゲジは「多腕」として宗教的に迫害され、鉄くずの森と呼ばれる場所で機械生物を狩り、そのパーツを利用し生きている…というお話。 テーマはすごく面白かったものの、自分の漫画読みとしてのレベルが足りないのか、画面が見づらくてアクションを理解するのが少し難しかったです…。 ストーリー以外だと、本作は日・英・仏・中、4か国語で世界同時配信なのだとか!最近だと週刊少年ジャンプは日英、シャドーハウスは日韓サイマル配信で、今後もこういう作品が増えていくのかなと思います。 腕が6本(合計3対)ある主人公たちは、昆虫の暗喩のように思えますが実際どうなのでしょうか。今後の展開が気になります…! http://www.gmaga.co/comics/24/ https://pocket.shonenmagazine.com/episode/10834108156731973287

WORST

伝説の鈴蘭高校を継ぐ者達

WORST 髙橋ヒロシ 高橋ヒロシ
さいろく
さいろく

クローズと打って変わって、というのは主人公だけかもしれないけど、しっかり時代も(ファッションとか)ちょっとだけ進んでいます。 主人公はむしろ田舎から出てきた月島花(ハナ)という野生児で、人間だけどドラゴンボールの悟空みたいな性格してるやつ。 争うのはいいけどその後は認めあって仲良くなる、そんな自然界での生存術を伝説のカラスの学校に持ち込んだらどうなるんだい、という感じですね。 クローズは映画化されてたりしてスポット浴びてる気がするんですが、多分実際にみんなに読まれていて今の若い子たちに人気があるのはダントツでこっちだと思われます。 スピンオフでの花木九里虎ストーリーなんかも人気みたいですし(絵も高橋組の皆さんはいい意味で似てて崩さすぎず良いと思いますし鈴木大先生もちゃんと独立?できてると思います多分)コンテンツとして一つの大きなカテゴリを作ったなーという感じ。 WORSTにおいてはクローズで作られた地盤をそのまま崩さず、ライバル校や武装戦線、その他地方との関わりやなんかもまたいい感じに世代交代が出来ていて、胸アツな物語が繰り広げられています。 なんだろう、安心して読めるっていうのが一つ強みなのかもしれないな。QPとかトムとジェリー外伝みたいなのはハラハラするけど。 もちろん予定調和ばかりなわけでは全然ないし、何度読んでもいいシーンがいっぱいあります。 クローズ知ったのがちょっと遅かったんでWORSTは単行本で新刊追う感じに読めてたんですよね、だからリアルタイムでちゃんと読めてたのはこっちなのかも。 絵がうまくなってるから、という理由でこっちの方がクローズより好き、かな。

クローズ

新鋭な方だけど最高峰のヤンキーマンガ

クローズ 髙橋ヒロシ 高橋ヒロシ
さいろく
さいろく

高橋ヒロシ節、というものがわかりやすく定着しているぐらい今の高橋ヒロシ率いる高橋組の影響は強い。 私の時代だと特攻の拓、湘南純愛組、カメレオンがマガジンで連載してて、サンデーでは今日から俺は!!、ジャンプだとろくでなしBLUES、あとなんだろ?でも割とヤンキーマンガブームだったんじゃないかなと。 その頃にちょうど月刊チャンピオンでやってたのがこのクローズでした。(もっと前の世代でいうとBE BOP HIGH SCHOOL、湘南爆走族、荒くれNIGHT、押忍!!空手部とかかな?) 坊屋春道という一人の少し古いタイプのツッパリが、カラスの学校と言われる鈴蘭高校に入学するところから始まるヤンキー成り上がり伝。 といえばよくある感じに見えると思うんですが、キャラクターの立て方が抜群に巧いんですよね。 ステイタスの表現など含め、クローズに出てくるキャラクターたちはみんなつよーーーい人気を誇ります。 読んでいくとわかるんですが、ろくブルほど登場人物少なくないのに(あれも超好きだしキャラ立ってますが)みんな印象がしっかり残ってくんですよね。 割と頑張ってたんですね高橋ヒロシ先生…適当そうなのに。 あとなんかそこらへんにいそうなお兄ちゃんって感じがあります、多分著者がそんな印象だからだと思うんですが、登場人物たちもそんなにめちゃくちゃ特別な人達ではないんだよね。そこがいいのかも。 リンダマンとの決戦を見て是非次はWORSTに進んでください。

ブッダ

手塚治虫の中でも一番

ブッダ 手塚治虫
さいろく
さいろく

一番面白い、とは言いません。でも一番好き。 漫画を読み始めた小学生の頃、実家にはブッダの愛蔵版と秋田書店版ブラックジャックの単行本とDr.スランプがあり(後に手塚作品は拡充されていってたけど他は自分で買うようになった)それらをひたすらに読み返していたので思い入れも一番深いです。 火の鳥は雑誌ぐらいの大きさの○○編とかごとに別れてるやつがピアノの先生の家にあって待ち時間に読むのが楽しみでした。 なんか書いてるとすぐ脱線してしまう。。。 ブッダ(仏陀)に関して、私は正直この手塚治虫のブッダ以外の知識がないです。本来の意味としては「悟りを開いた人」ということだったと思う。 ただ、どこまでが世間一般で言う意味合いと合致しているのかわからないのでそこは置いときます。 今作はシッダールタがブッダとなり亡くなる(正しい表現じゃなかったらすみません)までの間の物語。 宗教的な背景や知識がなかった小学生でも、シッダールタを取り巻く登場人物たちや出来事のインパクトに惹き込まれあれよあれよと最後まで読み切り、また何度でも読み返してしまうほど深い作品でした。 タッタがすごい好きだったなぁ…ダイバダッタが本当に憎くて、でもみんな憎みきれない感じのストーリーを持ってるんですよ。 一言で言い表せない内容で、なんとも感想が書きづらいけど、本当に面白いし読まないのはほんと損だと思う。 人生への影響が色濃く強い!というほどではないかもしれないけど、きっと心に残ると思います。 大人になってから行ったタイ旅行で見た涅槃像を全部ブッダだと思って見てました。心臓を上にして横になるので右肘で頭を支えてるんですよね。これも事前知識なく手塚ブッダで学んだことだったけど合ってました。楽しい。

BASTARD!!

ザーザードザーザードスクローノーローノスーク

BASTARD!! 萩原一至
さいろく
さいろく

「ザーザードザーザードスクローノーローノスーク  漆黒の闇に燃える地獄の業火よ我が剣となりて敵を滅ぼせ  爆霊地獄(ベノン)」 ていうすごい長台詞なんですが、これは今作における有名な魔法詠唱のうちの1つとなります。 BASTARD!! しか萩原一至作品を知らないけど、それで十分。 前述のとおりアホ長ったらしい魔法詠唱が各シーンにおいて多数出てきては「今回はなんだろう」とドキドキさせてもらえるところはもちろんのこと、世の中学生がどれだけお世話になったか計り知れないギリギリアウトな描写、更にはヤケに魅力的なネーミングセンスの裏の意味など、ストーリー以外のところでも見どころが超絶満載な作品です。 ストーリーはものすごく俺ツエー主人公な大魔法使いであるダーク・シュナイダーが魔法ですべてを薙ぎ払っていい女をすべて自身のものとすべく頑張るお話です(間違ってない) ダークファンタジーとしてはベルセルクなどよりもはるか昔から連載されており、ふんだんにヘビーメタル要素と美女コマシシーンが散りばめられた世界観は小学生には刺激が強すぎ、色々とジャンプ編集部も怒られたと聞きます。 「週刊少年ジャンプ」のいわゆる黄金期が終わった後の時代を支える代表的な作品の一つでもあり、序盤は今読むとさすがに古いですが読んでいくと今でも絶対面白いので超おすすめできます。 あとはいつ次が出るのか問題。。。。 昔から(たぶん90年代後半から)2~3年空くのが当たり前になってしまっていたので1988年とかから始まったはずの連載作品が2020年(32年…!)時点で27冊しか出ておらん。。。 書いてる私も25巻までしか多分読んでないのですが、話が思い出せなくなってしまっているのでまた28巻が出た頃に振り返りたいと思います。

サイボーグ009 【石ノ森章太郎デジタル大全】

誰がために戦う

サイボーグ009 【石ノ森章太郎デジタル大全】 石ノ森章太郎
さいろく
さいろく

歌詞って書いても大丈夫なんだっけ、とちょっと考えてしまったw 言わずとしれた石ノ森章太郎の代表作。 石ノ森章太郎を知らないという人は手塚治虫は知ってるだろうか。 ドラえもんの作者である藤子不二雄がFとAという二人いるのは知ってるだろうか。 おそ松さんを知っていたとしたらおそ松くんは知ってるだろうか。 今でも色々なところでリメイクされたり世界中にファンがいたりする作品たちを生み出した、日本の誇るジャパニーズマンガ文化の礎となった大作家たちにちょっとでも興味を持ってもらえたら嬉しいなと老婆心がうずく。 最近でも何度目かわからないアニメ化がされ、そこそこ話題となっていた「サイボーグ009」は、9人のサイボーグたちが世界の悪と戦う話。 実は彼らそれぞれの背景が割と凄まじく、ちゃんとそこら辺も謎に包まずに描いてくれているので(全部じゃないけど)キャラクターへの愛着も湧きやすい。 あとサイボーグっていう単語はこれで初めて聞いた気がする。 機械人間なのかーキカイダーと同じかなーとか思ってたら同じ著者だったという衝撃。仮面ライダーも石ノ森先生だからね! そして何よりこのサイボーグたちはそれぞれ異なる特殊能力を持っているのだが、なんと主人公は奥歯に加速装置が入っていて超スピードで移動することができる。すごい発想。 全然「へぇ」とすら思われないかもしれないけど、当時はたぶんそんなこと考えた人いなかったと思うのよね、私もだいぶ後発組なのでほんとの当時は知らないのですが。 奥歯に仕込みなんて男塾でカヤクメシの起爆するので初めて見たもん。 小学生はあれ信じちゃうんだもんなー民明書房はすごいよね… 違う漫画の話になってしまった。 今振り返って1巻を読んでみたが絵が全然違って軽く衝撃を受けた。 石ノ森先生は009の中だけでも語れるぐらい進化されていたのだなーと。あんまり詳しく知らないけど、きっと他にもいっぱい同時に連載を抱えてらっしゃったのであろう。 なんにせよ009以前と009以後では人間の「妄想」の広がり方が大きく異る。そのぐらいの影響を残した超超超名作なのである。 日本に生まれた少年は皆読むべきなのだ、ダークなとこもあるけど。

ジパング

自衛艦が"タイムスリップ"したらどうなるのか

ジパング かわぐちかいじ
さいろく
さいろく

本作の主軸となる自衛艦「みらい」は、自衛隊活動としてエクアドルへの遠征の途中で突如タイムスリップ。1942年のミッドウェー海戦のど真ん中にいきなり飛ばされてしまう。 自衛艦っていうのは自衛隊員が乗っているわけなのだが、"自衛隊"を本当の意味で理解していなかったなと深く考えさせられる本作。 同じくかわぐちかいじ著書の超名作「沈黙の艦隊」の主人公:海江田四郎のようにゴリゴリのカリスマが率いるのかと思いきや、自衛隊員としての葛藤を全員が抱えているため割と登場人物が強め。 ちなみに歴史上の実在の人物たちも多く登場している。 「やってみせ言って聞かせてさせてみて~」の山本五十六ぐらいしか私はすぐにわからなかったけど、当時の"大日本帝国"がそのまま存在する設定なので「艦これ」とか好きな人はたまらないのではないだろうか。 私は戦艦も戦争も本当に全く知らなかったけど、それでもストーリーを追っていくだけで考えさせられるシーンが多々あり、感心しながら読み続けられた。長いけど。 読後にWikipediaとかブログとかを探してみたけどやっぱりかなり熟考されてる方がいるようで、実際の史実との差異であったり細かな指摘はあるもののみんなジパング大好きだなーっていうのはよくわかった。 絵がリアルで大人向け感強く見えるかもしれないけどめちゃくちゃ難しい話だけということでもなく、画力と雰囲気とテンポの良さによってかわぐちかいじという稀代の漫画家の実力を知ることが出来る素晴らしい作品だと思う。 かわぐちかいじ先生はきっと若い世代の人たちからすると「沈黙の艦隊」や「太陽の黙示録」「イーグル」そしてこの「ジパング」と戦争や政治ものを描く漫画家というイメージなんじゃないだろーか。 最近はたしかにそんな感じだけど「アクター」とか「ハード&ルーズ」とかみたいな時代の色が強く反映されている作品も多く、こっちの方が個人的に推しだったりもするので是非もっと若い人たちにも読んでいただきたい。 政治とか戦争とかとっつきにくいと思うし(私はそう)

わたし、公僕でがんばってました。

まんがでよくわかる!公務員のおしごと

わたし、公僕でがんばってました。 古林海月
ひさぴよ
ひさぴよ

作者の古林海月先生が1993年〜2002年まで、県職員として働いた実体験を描いた漫画です。 最近のお役所では、非正規職員の雇用が増加し、全体の半分近くを占めているそうですから、職場事情は変化していると思いますが、それでも末端公務員の仕事の大変さは、時代に関係なく、そんなに変わらないのかもしれない…と読んでて思いました。あと公務員と聞くと、長年勤めているイメージありますけど、意外と転職も多いのだとか。 作者は、さまざまな課を経験していく中で、生活保護のケースワーカーとなり、精神的にも肉体的にも負担の大きな仕事のため身体を壊していきます。 |彡サッ(あわせて読みたい →『健康で文化的な最低限度の生活』) そして、ある事をきっかけにプロの漫画家を目指すことになるのです…。 最終章では、退職してから漫画家デビューするまでの自伝的なエピソードとなっており、これはこれでとても面白いお話。 ちなみに漫画家エピソードの中で、デビュー作の話が出てくるものの、この本には収録されていません。デビュー作の読切は「米吐き娘」の巻末に収録されていますので、もし読みたい方はそちらをどうぞ。 話が逸れましたが、この漫画が伝えているものは「公務員は決して楽な仕事ばかりではない」という点と、言われなき公務員バッシングに対しての憤りも結構込められているのではないかなあ。

ちづかマップ

古地図とちづかの広がる世界

ちづかマップ 衿沢世衣子
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

『講談社無印版』の続編がこちら『小学館版全三巻』。古地図を愛するちづかは、祖父や友人に触発されて、東京+αを歩き、その土地の記憶と共に、色々な世界を知ります。 若干、講談社版のちづかより積極的かな?彼女独特の『面白がる』能力で、どんどん新しいものを吸収するようになります。 美大の先輩、元気な犬、古典芸能+甘味好き同級生、相撲好きの親友、イケメンスイーツ同級生、天文台好き小学生……彼らの専門性にちづかの提示する土地の記憶を掛け合わせると、互いにとっての新発見が生まれます。 特に複数回登場する従姉妹のりんちゃんの、小学生離れした勉強量と、ちづかの地形感覚が合わさると、そこには古の風景が広がり、心踊ります。 一方、隣人とのドライブのナビでは、地図作りとリサーチで徹夜した結果、失敗してしまったりもします。 そういった経験の集大成として、ちづかが後輩の為に、来日ミュージシャンの東京観光を特定・再現する時……あれ、これって『尋ネ人探偵』じゃん!となるのです。 講談社版で一度手放した試みが、復活する驚き! ここに至るまでのちづかの積み重ねを、様々な東京+琵琶湖、高野山、坂越(兵庫)の発見と共に、楽しみたいところです。

ちづかマップ

ちづかと古地図と東京の今昔

ちづかマップ 衿沢世衣子
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

東京を散歩する女子高生漫画『ちづかマップ』には版型の違う二つのバージョンがあります。こちらで紹介する、講談社の無印版が最初に描かれ、小学館から出た全三巻は、その続きです。 講談社版は連載当初『尋ネ人探偵』という題名だったそうで、全5話中3話は、探偵っぽく探し人・物をしています。 ちづかは大好きな古地図片手に、依頼者の微かな思い出から土地の来歴を紐解き、探し物に辿り着く……とカッコよく書く程、ちづかは積極的ではありません(1話以外は)。 ただ、ちづかは『面白がる』能力が高く、どんな所でも何かを発見し、夢中になります。 従姉妹の勉強熱心な小学生・りんちゃんと共に浅草の過去と未来を空想し、同級生の音塚君に誘われて新旧の「書体」に興奮し、連れて来られた京都で幼馴染みの三四郎と「御朱印」集めを競う……そんなちづかの柔軟な頭脳は、「道を見つけ、辿り着く」工夫の楽しさに満ちていて、ワクワクさせられます。 主体性に欠けるちづかが、古地図を起点に次第に面白い事を見つけ、積み上げていく道程の「始まり」が、この『講談社無印版』なのです。 三四郎、音塚君、りんちゃんは、引き続き小学館版にも登場します。小学館版はキャラの嗜好から行動目的が設定される事が多いので、彼らの背景を知る為に、講談社無印版を読んでおくと楽しめると思います(特にりんちゃん!)