しかのこのこのここしたんたん

ガール・ミーツ・シカ物語『しかのこ のこのこ こしたんたん』

しかのこのこのここしたんたん おしおしお
ゆゆゆ
ゆゆゆ

恋愛漫画かバトル漫画が始まりそうな、かわいらしい女の子たちだけど、これはギャグ漫画。 理不尽系コメディと、ほのぼの系と、こち亀系のオチが混ざっていて、フルコースを味わっている気分を楽しめる。 「何を見せられているんだ…?」と、フリーズしそうなほど、フルコース。 登場するのは、清純派かつ高校デビュー元ヤンキーの「虎視虎子(こし とらこ)」、勝手につけられた愛称は「こしたん」。 そして、虎子の真の正体を鹿の角パワーで見破る、鹿と人のハイブリッド「鹿乃子のこ(しかのこ のこ)」、愛称は「のこたん」。 鹿の角が生えた女子高生・のこたんは非常に不可思議な存在、でも周りは彼女の不可思議さに疑問を抱かない。 他作品でいうと、『ジャングルはいつもハレのちグゥ』に登場する、グゥのよう。 読んでいると、のこたんの不可思議さばかり見てしまうけど、そもそもあの鹿の角がおかしいような、おかしくないような。 悩み始めると、自分も謎の力に汚染されて、疑問を抱かないようになってしまっているのでは、とおかしな妄想をしてしまう。いや、そもそも、そんなことを考えるのがおかしいのであって、鹿の角は普通なのでは?? ギャグ・コメディ枠にあって、またまた〜と読み始めたら、ものすごくコメディで、何かがとっても崩壊しそう。

あおげばとおとしいととしつき

旧友と気遣い合いながらも大切にしていきたくなる関係性

あおげばとおとしいととしつき 奥田亜紀子
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

漫画誌「キーホルダー」第1号テーマ「本」に掲載された、『ぷらせぼくらぶ』や『心臓』の奥田亜紀子先生の新作読切。 https://x.com/akikookuda6/status/1799269009067831583 https://www.folkbookstore.com/?pid=180925589 電子版は無いので「キーホルダー」を買うしか読む方法ないのもまたいいですね。 数年ぶりに会った大人の女性二人。柊さんと遠嶋さんは高校時代からの付き合いだ。 当時、中学時代の友人を介して知り合った小説が趣味な二人は、帰り際にお互いもっと話したいと思い、その日のうちに意気投合。そんな頃から何年も経って、お互い結婚もして、子供も出来たり。 互いの事情に気を遣い合いながらも、それでも散歩しながら出逢った頃のように楽しく話す二人。この二人がいればいつでもあの頃には戻れるけど、当然周囲の環境も変わってるから時間の終わりもあり、現実に引き戻される。 あの頃もよかったし、お互いいろいろ変わったいまもいいんじゃない?と思わせてくれる素晴らしい読切でした。 やっぱり僕は奥田亜紀子先生に絶大な信頼を寄せているみたいで、今回も間違いなかった。大好きです。時間の経過や気持ちの拠り所、ここで起きていないこと、心の繊細で深いところまで描いていて最高でした。 大阪在住だったら『キーホルダー』展に行きたかったな。 7/15までやってるとのことなので、行ける方はぜひ。

守娘

怖い話とあったので、どんな幽霊が出てくる怖い話かと思いきや。

守娘 シャオナオナオ
ゆゆゆ
ゆゆゆ

そういう方向ではなかった。 幽霊は出てくるけど、ちょっと違う。 清朝時代の、台湾の女性たちが描かれている。 そこから生まれた、悲しい運命の女性たちとその物語。 当時の女性たちは悪霊になったほうが自由で、できることも多いのでは、と主人公が思ってしまうほど、女性が許されていることは少ない。 さらに見知らぬ男に誘拐されかけて暴れても「娘の躾している、こいつは〜〜」といえば、周りはすんなりと納得する。 大きくなって結婚するとしても、持参金をたくさんもらえば、嫁入り道具は高価なものを用意しなければいけない。 ほとんどの人が貧乏な時代、酷な制度だ。 結婚したらしたで、妻は男を産めと期待され、もひ生んだのが女ならば、男でなかったことへの悲しみに加え、この子も自分と同じような人生を歩むのかと絶望に暮れる。 どうやって男を産むかという民間信仰もコラムに書かれているのだけど、書かれた方法の多いこと、多いこと。 そんな時代なので、女の子が生まれたら親が殺してしまうことも多々あったらしい。 その結果、女が少なく、結婚できない男が増えた。 そこで発明されたのが、幼女を家に迎えて育て、息子の嫁にするという方法。光源氏もびっくり。 というように、作中でも説明されているとはいえ、背景知識がたくさん必要なので、予備知識がない私は2周目でようやく話を追いながら読むことができた。 こわいというより、悲しい話だなと思った。 たしかに、幽霊は出てくるのだけど。